Legal Update

第57回 2026年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向

法務部

シリーズ一覧全57件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  45. 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  46. 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  47. 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  48. 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  49. 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  50. 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  51. 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  52. 第52回 2026年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  53. 第53回 2026年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  54. 第54回 2026年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  55. 第55回 2026年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  56. 第56回 2026年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  57. 第57回 2026年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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目次

  1. 就活セクハラ、カスハラの防止措置の義務化
    1. 就活セクハラとは
    2. カスハラとは
    3. 就活セクハラ・カスハラへの対応
  2. 新・「同一労働同一賃金ガイドライン」の施行
  3. 最低賃金の改定
  4. 平成30年食品衛生法改正の施行後5年を目途とした検討のとりまとめ(サプリメント規制の導入等)
  5. 消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」の公表
    1. 調査の概要
    2. 景品表示法上の問題点
    3. 本報告書に沿ってラベル表示の自社点検を
  6. 法務省「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」の公表
    1. 規制対象行為の主体
    2. 「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」取扱該当性
    3. 具体的な当てはめ
  7. 商事法務研究会「AI時代における民事司法を考える研究会 取りまとめ」の公表
    1. 想定ユースケース
    2. 想定基本機能
    3. AIを利用して作成された証拠への対応
    4. その他の利活用場面
  8. 金融庁「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」(改訂案)の公表
    1. 「推奨される事項」
    2. 「期待される事項」
    3. 「その他」(「期待される事項」)

本稿で扱う内容一覧

日付 内容
2026年7月31日 平成30年食品衛生法改正の施行後5年を目途とした検討のとりまとめ(サプリメント規制の導入等)
2026年7月31日 金融庁「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」(改訂案)の公表
2026年8月3日 商事法務研究会「AI時代における民事司法を考える研究会 取りまとめ」の公表
2026年8月20日 消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」の公表
2026年8月21日 法務省「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」の公表
2026年9月3日 最低賃金の改定
2026年10月1日 新・「同一労働同一賃金ガイドライン」の施行
2026年10月1日 就活セクハラ、カスハラの防止措置の義務化

 編集代表:大草 康平弁護士(三浦法律事務所)

就活セクハラ、カスハラの防止措置の義務化

 執筆:清水 咲弁護士、菅原 裕人弁護士

 2026年10月1日より、求職者等に対するセクハラ(以下「就活セクハラ」といいます)、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)の防止が事業主の義務となりました。これを踏まえ、本稿では就活セクハラ、カスハラについて簡単に紹介します。

 なお、従来、事業主に対して防止義務が課せられているハラスメントは、以下の①~④であったところ、2026年10月1日より以下の⑤と⑥が加わりました。これらのハラスメントの全体像と平易な解説は、厚生労働省作成の「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」をご参照ください。

ハラスメントの種類・根拠法令

① セクシュアルハラスメント 男女雇用機会均等法11条1項
② 妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント
  • 男女雇用機会均等法11条の3第1項
  • 育児介護休業法25条1項
③ パワーハラスメント 労働施策総合推進法30条の2第1項

④ フリーランスに対するハラスメント(セクハラ、妊娠・出産等に関するハラスメント、パワハラ)

フリーランス・事業者間取引適正化等法14条
⑤ カスタマーハラスメント NEW 労働施策総合推進法33条1項
⑥ 求職者等に対するセクハラ NEW 男女雇用機会均等法13条

就活セクハラとは

 事業主として防止すべき就活セクハラとは、「事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるもの」をいいます(就活セクハラ防止指針2(1))。
 たとえば、採用担当者による、採用面接で恋人の有無を尋ねる、OB・OG訪問をした学生を執拗に私的な食事に誘う、採用の見返りに性的関係を求める等の言動が就活セクハラにあたります。
 なお、求職者等の求職活動における言動を対象とするため、新卒採用に限らず、中途採用においても防止すべきものとなり、採用面接だけでなく、インターンや説明会(オンラインも含む)等広く採用活動での場面で防止すべきものとなります。

カスハラとは

 カスハラとは、以下の3つの要素をすべて満たすものをいいます(カスハラ防止指針2(1))。

  1. 職場において行われる顧客等の言動であって、
  2. その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして
    社会通念上許容される範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

 「顧客等」とは、事業主の行う事業に関係を有する者を指し、顧客・取引先、施設利用者、施設の近隣住民などが幅広く含まれます(カスハラ防止指針2(4))。そして、顧客等による(ア)言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または(イ)手段や態様が相当でないものが社会通念上許容される範囲を超えたものとなり、典型的にはサービスに関係ない性的な要求をすることやプライバシーにかかわる要求行為や、暴言・暴行等の行為がカスハラにあたる行為となります。

就活セクハラ・カスハラへの対応

 就活セクハラ・カスハラについても、他のハラスメントと同様に、事業主は以下の対応を講ずべきとされています。

事業主が雇用管理上講ずべき措置の内容

  1. 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 事後の迅速かつ適切な対応
  4. ①〜③までの措置と併せて講ずべき措置
     例:相談者等のプライバシー保護措置の実施/不利益取扱い禁止の明確化など

 カスハラについては、上記の措置①の内容として、事業主としてカスハラに毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の指針とカスハラへの対処の内容をあらかじめ定め労働者に周知することが求められていますので、これに対応する必要があります。

 また、就活セクハラについては、(ア)求職活動等に関するルールの求職者等への周知・啓発、(イ)相談窓口の求職者等への周知も必要となります。

 いずれについても就業規則の改正や方針の周知・啓発等での防止体制の確立が必要となります。対応の詳細については、弊所note記事「労働法UPDATE Vol.23:2026年10月1日施行!ハラスメント防止義務の全体像と、就活セクハラ、カスハラへの具体的対応」をご参照ください。

新・「同一労働同一賃金ガイドライン」の施行

 執筆:清水 咲弁護士、菅原 裕人弁護士

 2025年から厚生労働省において見直しが行われ、2026年4月28日に公表された「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(令和8年4月28日厚生労働省告示第203号。いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」であり、以下「本ガイドライン」といいます)が、2026年10月1日より施行されました。

 本ガイドラインは、いわゆる正社員である無期雇用のフルタイム労働者といわゆる非正規雇用労働者(典型的には有期雇用の契約社員やパートタイマー等)との間の不合理な待遇差を禁止する「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パート・有期法」といいます)8条・9条に関し、改定前の本ガイドラインが公表された2018年12月以降の判例・裁判例等を踏まえ、厚生労働省の考え方を改めて整理して示したものです。

 今般、本ガイドラインの改正により待遇に関する記載で見直しが行われた主な項目は以下のとおりです。

項目 変更点 変更内容
賞与・退職手当 記載の充実(賞与)
新規追加(退職手当)
賞与・退職手当の目的が妥当するにもかかわらず、職務内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合は、不合理と認められる可能性がある。
無事故手当 新規追加 正社員と業務の内容が同一のパートタイム・有期雇用労働者には、同一の無事故手当を支給しなければならない。
家族手当 新規追加 相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者には、同一の家族手当を支給しなければならない。
住宅手当 新規追加 住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイム・有期雇用労働者には、同一の住宅手当を支給しなければならない。
福利厚生施設 記載の充実 福利厚生施設の料金・割引率等の利用条件について、不合理と認められる待遇差を設けてはならない。
病気休職・休暇 記載の充実 正社員に病気休職・休暇期間に係る給与の保障を行う場合には、相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者にも、同一の給与の保障を行わなければならない。
夏季冬季休暇 新規追加 パートタイム・有期雇用労働者にも、同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。
褒賞 新規追加 褒賞が「一定の期間勤続した労働者に付与するもの」である場合、正社員と同一の期間勤続したパートタイム・有期雇用労働者には、同一の褒賞を付与しなければならない。

 そのほか、いわゆる「正社員人材確保論」に関して、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間に待遇の相違がある場合において、その要因として当該待遇を行う目的に「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があったとしても、当該目的があることのみをもってただちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではない旨も記載されており、正社員の人材確保や定着のみで待遇差をすべて説明できるものでもないことが確認される形となりました。

 パート・有期法は、労働局雇用環境・均等部(室)の所管として報告徴収、助言・指導等が行われてきたところ、近時は同一労働同一賃金に対する取組み強化のため、労働基準監督署とも連携が開始され、労働基準監督署による待遇差に関する事実確認、文書による点検要請(アンケートへの回答要求等)等が活発化しています。
 本ガイドラインは法的拘束力を有するものではありませんが、2026年10月1日以降、本ガイドラインを基に指導が行われていくことも想定されます。
 そのため、各社においては本ガイドラインを踏まえて、自社の正社員とパートタイム・有期雇用労働者との待遇差を点検し、必要に応じ対応方針を検討しておくことがよいでしょう。

 本ガイドラインの改正に併せて、パート・有期法施行規則も改正され、パート・有期法6条1項によりパートタイム・有期雇用労働者に対して労働条件通知書に明示しなければならない事項に、「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」が追加されました。この改正も2026年10月1日より施行されたため、パートタイム・有期雇用労働者への労働条件通知書のひな型を忘れずにアップデートする必要があります。

最低賃金の改定

 執筆:菅原 裕人弁護士

 2026年7月28日に中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)が示した「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」を受けて、各地方都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会において、令和8年度の地域別最低賃金について答申が相次いで出され、同年9月3日には全国の最低賃金の改定額が出そろいました。
 全国の最低賃金の改定見込額は「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」にまとめられていますが、本年の最低賃金の改定の概要をまとめたものは以下のとおりです。

  • 47都道府県で、54円~65円の引上げ(引上げ額が65円は1県、64円は1県、63円は2県、62円は2県、61円は4県、60円は4県、59円は5県、58円は4府県、57円は7県、56円は11道県、55円は3県、54円は3都府県)
  • 改定額の全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)
  • 全国加重平均額56円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さ
  • 最高額(1,280円)に対する最低額(1,085円)の比率は84.8%(昨年度は83.4%。なお、この比率は12年連続の改善)

 例年、最低賃金の引上げ額は高額の傾向にあります。本年も過去2番目の高さの引き上げ額となりました。
 今後、答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経たうえで、都道府県労働局長の決定により、2026年10月1日から順次発効される予定です。

 特に、東京都では、過去最高額の最低賃金(1,280円)になりますので、2026年10月1日以降、パート・アルバイトを募集する際には労働条件が最低賃金を下回らないよう留意する必要があります。
 現在、この最低賃金を下回る労働条件でパート・アルバイトを募集している事業者は注意が必要です(最低賃金法4条1項の違反に該当し、同法40条により50万円以下の罰金の対象になります)。

平成30年食品衛生法改正の施行後5年を目途とした検討のとりまとめ(サプリメント規制の導入等)

 執筆:河尻 拓之弁護士

 厚生労働省の厚生科学審議会食品衛生監視部会は、2026年7月31日に「平成30年食品衛生法改正の施行後5年を目途とした検討のとりまとめ」(以下「本とりまとめ」といいます)を公表しました。

 本とりまとめは、以下の既公表文書の内容を踏まえたものとなっています。

 本とりまとめは、以下の状況に対応するものです。

  • 平成30年改正食品衛生法において、施行(2020年6月1日)後5年を目途として施行状況を検討し必要な措置を講ずることとされていたこと
  • 2024年3月の小林製薬株式会社の紅麹事案を受け、食品業界の実態を踏まえつつ、サプリメントに関する規制の在り方等について必要に応じて検討を進めることとされていたこと

 本とりまとめの対応方針の項目は以下のとおりです。

① HACCPに沿った衛生管理の徹底 衛生管理計画の作成指導の徹底(再三の指導に応じない営業者への行政処分等を含む対応の周知)、記録の負担軽減の支援、導入状況を把握する仕組みの構築等

② 指定成分等含有食品による健康被害情報の報告制度

健康被害との関連が疑われる指定成分等含有食品の販売総数量等の把握、営業許可申請・届出時における指定成分等の取扱いの有無・種類等の記載を必須化
③ 食品リコール情報の報告制度 現時点で見直しを要する課題なし

④ 器具・容器包装ポジティブリスト制度

消費者庁の食品衛生基準審議会で検討済み。現状の取組の徹底・周知等
⑤ サプリメントの規制の在り方 健康被害情報報告の義務化、製造・加工施設の把握

※なお「サプリメント」の定義、製造管理の在り方については、消費者庁食品衛生基準審議会において別途とりまとめ(詳細は下表)

⑥ 自動車による飲食店営業 複数の都道府県等の区域を越えて営業する場合の通報体制・行政処分主体の取決めの周知、営業許可申請時における営業場所の記載の必須化等

 上記のうち、健康食品事業者への影響が特に大きい⑤サプリメントの規制の概要は以下のとおりです。なお、以下の表のうち、「定義」および「製造管理の在り方」については、消費者庁が所管する食品衛生基準審議会の「サプリメントの規制の在り方に関する新開発食品調査部会の中間とりまとめ」において別途とりまとめられたものです。

「サプリメント」の定義
  • 「通常の食事による栄養摂取又は通常の食事による生理機能の調節を補助することが目的とされる食品であって、当該食品に含まれる成分の一部又は全部が製造工程において濃縮されたもの、錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤等の摂取の容易な形状であるものその他過剰摂取のおそれのあるもの」(イメージ 1)
  • 食品として整理し(食品・医薬品以外の第3の区分は新設しない)、保健機能食品を含む横断的な定義とする
  • 過剰摂取のおそれのあるグミ形状等も範囲に含む一方、菓子類としてのグミ等、主に水分補給を目的とする飲料等は範囲外 2
製造管理の在り方
  • 「サプリメント」のうち、錠剤、カプセル剤等食品(錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状である加工食品)についてGMP遵守を義務付け
  • 上記以外のもの(グミ形状等)は当面の間義務の対象から除外し、自主的な取組を促す
  • 原材料を製造等する営業者は適用範囲外(自主点検ガイドライン・HACCPによる管理を引き続き求める)
健康被害情報の報告
  • 「サプリメント」を取り扱う営業者に対し、健康被害情報の都道府県知事等への報告を義務付け(現行の努力義務から引上げ)
  • 報告対象は、機能性表示食品等と同様、「健康被害(医師の診断を受けたものに限る)の発生及び拡大のおそれ」がある旨の情報
製造・加工施設の把握
  • 営業許可申請・営業届出の際に「『サプリメント』の製造・加工の有無」等の記載を必須化(営業許可業種の新設は行わない)

 本とりまとめは、厚生労働省に対し、必要な法令改正を行うなど所要の施策を速やかに講ずることを求めています。食品事業者においては、自社製品への影響を見据え、今後の法令改正の動向を注視する必要があります。

消費者庁「環境ラベルに関する実態調査報告書」の公表

 執筆:土居 大起弁護士、田中 太郎弁護士

 2026年8月20日、消費者庁は、「環境ラベルに関する実態調査報告書」(以下「本報告書」といいます)を公表しました。消費者庁が環境配慮商品の広告表示について景品表示法上の考え方をまとまった形で示すのは、2001年に公正取引委員会が実態調査報告書を公表して以来、約25年ぶりとなります。

調査の概要

 本報告書における調査では、環境ラベル139種類を収集し、消費者へのアンケートや事業者のヒアリング等の調査を行いました。調査では、約3~4割の消費者が商品選択に際して環境ラベルを参考にすると回答しました。一方で、ラベルの表示内容には次のような課題が確認されました。

  • 対象範囲が不明確なラベル:20種類
  • 環境配慮原材料の使用割合が不明確:5割弱
  • プラスチック等の削減率が不明確:6割
  • 環境配慮の内容自体が外形上明確でない:4割強

 また、第三者認証(事業者自身ではなく外部の機関が基準への適合を確認する仕組み)ではないにもかかわらず認証を想起させる表示もみられ、消費者は第三者認証ラベルをより信頼する傾向が示されました。

景品表示法上の問題点

 近年、商品・サービスが環境に配慮したものであることを示す環境ラベルが多様化する一方、限られた表示スペースで環境配慮を訴求するという性質上、その内容によっては一般消費者の誤認を招くおそれがあります。

 本報告書は、基本的な考え方として、環境ラベルによって、商品・サービスが実際のものまたは事実に相違して競争事業者のものよりも著しく環境に配慮していると一般消費者に誤認される場合には、景品表示法上の優良誤認表示(実際よりも著しく優れていると一般消費者に誤解させる表示)として問題となるとしたうえで、具体的に次のような類型について留意点を示しています。

(1)対象範囲を明確にする(商品全体か、包装だけか)

 実際には商品の包装のみが環境に配慮したものであるにもかかわらず、ラベルからは商品全体が環境配慮商品であるように認識される場合には、優良誤認表示となるおそれがあります。この場合、「包装部分」など対象範囲を明示する必要があり、その注記についても文字の大きさや配置等に留意し、一般消費者が認識できるよう明瞭に表示することが求められます。

(2)使用割合・削減率を数字で示す

 本調査では、環境配慮原材料の使用を訴求するラベルの5割弱で使用割合が、石油由来プラスチック等の削減を訴求するラベルの6割で削減率が明確に表示されていませんでした。実際には使用割合・削減率がごく一部であるにもかかわらず単に「再生素材使用」「プラスチック削減」などと表示すると、消費者に100%または大部分について実施されていると誤認されるおそれがあります。本報告書は、「◯%」という確定値のほか、「◯%未満」「◯%~◯%」といった表示も考えられるとしています。

(3)効果の根拠データを用意する

 環境ラベルを表示する場合には、対象商品の製造条件、実際の使用条件、訴求する効果・性能の程度や水準等と適切に対応した根拠が求められます。さらに、法的義務とまではされていないものの、URLや二次元コード等を用いて根拠情報に消費者が容易にアクセスできるようにすることや、ラベルの適合基準を公表することも望ましいとされています。

(4)第三者認証と誤解される表示を避ける

 さらに、第三者認証を受けていないにもかかわらず、「認証」等の文言や認定番号を用いるなど、第三者認証ラベルであるかのような印象を与える表示にも注意が必要です。調査では、一般消費者は第三者認証ラベルを事業者独自のラベルより信頼する傾向が確認されており、このような表示は環境配慮効果の信頼性について誤認を生じさせ、優良誤認表示となるおそれがあります。

本報告書に沿ってラベル表示の自社点検を

 上記に加えて、「ECO」「グリーン」といった抽象的な文言や自然をモチーフとした図柄のみで環境配慮を訴求する場合には、消費者が実際以上の環境効果を推測する可能性があります。そのため、本報告書は、環境配慮の具体的内容を簡潔な説明文として併記するなど、何が、どの程度環境に配慮されているのかをわかりやすく示すことを求めています。

 消費者庁は今後、本報告書の考え方を事業者等に周知するとともに、不当表示が疑われる事案については、指導による是正を含め、景品表示法に基づき厳正に対処する方針を示しており、環境ラベルを利用する事業者においては、本報告書に沿ってラベル表示の自社点検をすることが重要です。

法務省「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」の公表

 執筆:南 みな子弁護士、小倉 徹弁護士

 2026年8月21日、法務省大臣官房司法法制部から「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」(以下「本ガイドライン」といいます)が公表されました。

 本ガイドラインは、ビジネス分野における生成AI等技術を活用した法務業務支援サービスの提供について、2023年8月に公表された「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」における解釈を前提としつつ、弁護士法72条との関係上、特にその分水嶺となり得る「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」を業として取り扱ったと指摘され得るのかという点にしぼって解釈指針を補完するものです。

規制対象行為の主体

 AI等を用いたサービス提供の場面において、プロンプト等の入力を行い、そのプロンプト等に従ってAI等に自動的に出力結果を生成・表示させることなどの当該サービスの具体的な利用方法に関する最終的な判断は、基本的に、サービス利用者に委ねられています。

 もっとも、利用者のプロンプト入力等に応じて自動的に法律事務等を提供することが目指された機能等が備え付けられているなどの場合、利用者がプロンプトを入力するなどをして利用することは、サービス提供の性質上、当然に行われることが想定されている提供者側が企図していた法務業務支援の契機にすぎません。

 したがって、このような場合には、プロンプト等の入力によりAI等により自動的に出力結果を生成し表示させるサービス利用者側の行為も含めて、サービス提供者の行為であると評価され得るものと考えられます。

「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」取扱該当性

 弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が報酬を得る目的で「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関して「鑑定⋯その他の法律事務」を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることを禁止しており、ここにいう「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、または新たな権利義務の発生する案件をいうものと解されています。
 そのうえで、「訴訟事件…その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に例示列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」、および、これらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件であるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられています。

 そして、サービス提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」を取り扱ったといえるか否かは、サービスの設計・機能およびサービスの用法に関して、それぞれ以下の点を考慮して検討されます。

(1)サービスの設計・機能に関して考慮すべき基本的な考え方

  • 価値中立的なサービス提供と評価し得る場合(たとえば、そもそも「事件性」のある案件に関して利用させることを目指して設計されたサービスでないとき等)には、結果として利用者が「事件性」のある案件に関して利用したことのみにより、提供者が「事件性」のある案件に関して「鑑定⋯その他の法律事務」を取り扱ったと評価するのは困難

  • 提供者が「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」を取り扱ったというためには、サービス提供開始の時点で、利用者がサービスを「事件性」のある案件に関して利用することがサービスの設計・機能に照らして、具体的かつ現実的な可能性として当然に想定されている場合など、利用者側の行為が提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないといえる事情が必要

(2)サービスの用法に関して考慮すべき基本的な考え方

設計・機能上は、価値中立的なサービス提供と評価し得る場合であっても、たとえば、以下のような場合には、当該サービス提供の性質上、サービス利用者側の行為がサービス提供者側が企図していた法務業務支援の契機となるものにすぎないと評価し得る
  • サービスが現に「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」に利用されていること、またはその具体的可能性を認識・認容してサービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」に利用されていると認められるとき

  • サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」に利用する蓋然性が高いと認められる状況下において、サービス提供者もそのことを認識・認容しながらサービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定⋯その他の法律事務」に利用されていると認められるとき

 以上の考え方を踏まえると、サービスおよび機能設計上、以下の点に留意する必要があります。

  1. サービスの設計等が「事件性」のある案件に関して利用されることを目指したものでないこと(サービスの設計・機能)
  2. 「事件性」のある案件に関する利用に特化した、あるいは同利用が念頭におかれた特性・機能等を具有しないこと(サービスの設計・機能)
  3. ガバナンス措置を講じるなどして、サービス利用者による不適切な利用を回避するための適切な体制を整備していること(サービスの用法)

具体的な当てはめ

 以下のサービス提供は、上記①②を満たし、③の体制整備がされている場合には、一般的に弁護士法72条に抵触しないと考えられます。

  • 文献その他のリサーチ・法的問題点の検討業務支援
  • 書面作成・審査・管理業務支援
  • 社内における研修・経営判断の適法性確認等を含むガバナンス・リスク管理・コンプライアンス業務支援
  • 内部通報事案の調査支援
  • 新規業務スキームの構築・事業再編等業務支援
  • 従業員・顧客・取引先等とのトラブルが発生した場合に会社としての対応方針を決定するための内部調査支援
  • 株主総会・取締役会その他の会議業務支援等

 一方で、以下のような場合には、弁護士法72条に抵触し得ると考えられています。

設計・機能上の問題
  • 法的紛議が現に顕在化している事案や法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件の処理を目指して設計されたサービスの提供
  • 弁護士の関与なしに訴状等の裁判所への提出書面や和解契約書等の法的紛議を前提とした対外使用書面を作成することに特化あるいはこうした作業への利用を念頭においた機能等を有するサービスの提供
用法上の問題
  • 非弁活動を現に行っている、あるいは行おうとする者や、サービスを「事件性」のある案件に継続的・反復的に利用しようとする者に対して、それを認識・認容しながらサービスを提供し、実際に「事件性」のある案件に関して利用されていると認められるとき
  • 利用者のうち例外的とはいえない範囲の者がサービスを「事件性」のある案件に利用する蓋然性が高いと認められる具体的な状況下で、これを認識・認容しながらサービスを提供し、実際に「事件性」のある案件に関して利用されていると認められるとき

商事法務研究会「AI時代における民事司法を考える研究会 取りまとめ」の公表

 執筆:花城 凪弁護士、舘﨑 友輔弁護士

 公益社団法人商事法務研究会に設置された「AI時代における民事司法を考える研究会」(以下「本研究会」といいます)が、2026年8月3日、「AI時代における民事司法を考える研究会 取りまとめ」(以下「本取りまとめ」といいます)を公表しました。

 本研究会は、学識経験者6名のほか、法務省、最高裁判所、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会といった関係機関等の参画を得て設置されました。本研究会では、「民事司法分野におけるAIの利活用とこれに伴う諸課題について検討する必要性が高まってきたこと」を背景に、「技術的側面と法的・実務的側面を架橋」した検討が行われました。本稿では、その具体的な検討事項の一部を取り上げて説明します。

 本研究会では、次の2つが主な検討事項となります。

想定ユースケース 現在の民事訴訟実務における当面の課題解消に向けて、今後数年程度の間において、裁判所及び弁護士・司法書士の業務においてAIを利活用することで一定の効果が見込まれると一応想定できるものを抽出して検討
想定基本機能 将来的な展望も視野に入れたAI利活用のあり方についても検討

想定ユースケース

 想定ユースケースについて、以下のような検討がなされました。

業務 主な利活用場面 期待される効果
裁判官業務
  1. 主張整理表・時系列表のたたき台作成
  2. 大量の文書の要約等
  3. 引継ぎ時等における全体像把握
  4. 文字起こし・要約
  1. 審理の充実・迅速化
  2. 期日直前に大量の訴訟資料が提出された場合における期日の空転防止
  3. 引継ぎ直後の審理の停滞の可及的防止
  4. 裁判官の手続進行上の便宜
弁護士・司法書士業務
  • 膨大なデータの集約・分析
  • 裁判例・文献の要点抽出
  • 主張書面等の着想獲得・素案作成
  • 登記事項証明書の読み取りによる権利関係確認
業務の効率化、依頼者ニーズに適合した事務処理

 なお、いずれの場面でも、バイアスやハルシネーション等AIの利活用に伴うリスク・課題への対応として、AIを活用する範囲や条件については、人間が出力を確認し最終判断を行うこと(ヒューマン・イン・ザ・ループ)が重要との指摘がされています。

想定基本機能

 想定基本機能については、各法律実務家が共通して用いる「法的分析能力」と「事実認定能力」に着目して、以下の3つの機能について検討がなされました。

機能 内容 検討結果の要点
判例文献調査機能
(リーガルリサーチ)
利用者が把握したい法規範等に関連する一定の質問や事実関係を入力することで、これに対応する裁判例や文献を検索するとともに、検索結果(裁判例や文献)の概要や利用者が直面する課題に関連する情報を出力する機能
  • すでに民間でサービス提供開始済み
  • 経験の浅い実務家でも短時間で的確な調査が可能に
法的分析機能 当事者本人の言い分を入力することで、その言い分どおりの事実関係が存在することを前提として、当該事実関係に関する訴訟物たる権利または法律関係について一定の見解が出力される機能
  • 民事裁判情報DBの始動で実装可能性が高まりつつある
  • 弁護士等の利用は事実関係・判例等の調査→法律構成検討等のスパイラル的シミュレーションの質を向上
  • 裁判官の利用は心証形成への影響が強く慎重な検討が必要
事実認定機能 一定の事実関係を明示して入力するとともに、利用者が保有する関係資料データを入力することで、当該事実関係の存否およびそのような事実認定となる理由についての一定の見解が出力される機能
  • データセットや機微情報の取扱い等の課題が多く、未だ実装を具体的に検討する段階にない
  • 弁護士等の利用は法的分析機能同様
  • 裁判官の利用は、利活用の適否自体を慎重に検討する必要

AIを利用して作成された証拠への対応

 本取りまとめでは、①AIによる偽造等がされた証拠と、②画質向上等の「エンハンス」がされた証拠への対応についても検討がされました。
 ①は、証拠として提出されることが不当であることは明らかであるものの、AIによる偽造等ではないことの判断の枠組みや方法は、判定の技術的フローが未確立で、制度化は時期尚早との指摘がされました。
 ②は、有用な場面もあるため一律禁止は不相当としつつ、証拠申出時にAI利用の有無・範囲を明示するプラクティスの確立が期待されるとの指摘がされました。

その他の利活用場面

 本取りまとめでは、将来的にAIの利活用が考えられる場面として、以下のような検討もなされました。

(1)ADRにおけるAIの利活用

 手続の柔軟性等を踏まえ、特に消費者が当事者となる場合にAI利用に関する説明・同意の手続ルールを設けることなどが考えられるとされました。

(2)AIエージェントによる訴訟代理人業務の代替

 潜在的需要は想定できるものの、出力の確認・評価が不可欠であることから現時点で法的素養のない者の利用を想定するのは相当でないとされ、責任の所在等のリスク・課題の検討継続が望ましいとされました。

(3)裁判官の判断傾向分析(勝率予測を判定するサービス)

 フォーラムショッピングへの利用や裁判官の判断の独立への影響が懸念され、実現可能性を含め検討継続が望ましいとされました。

金融庁「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」(改訂案)の公表

 執筆:眞榮平 和花弁護士、所 悠人弁護士

 2026年6月18日に金融庁と経済産業省により共同開催された「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」における検討を踏まえ、同年7月31日、金融庁は「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」の改訂案(以下「本改訂案」といいます)を公表しました。

 「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」(以下「本推奨・期待される事項」といいます)は、ベンチャーキャピタル(以下「VC」といいます)における資金調達・運用実務の指針を示すことで、内外機関投資家からVCへの資金供給の拡大、ひいてはスタートアップエコシステムの発展を図ることを目的として、ベンチャーキャピタルに関する有識者会議により、2024年10月17日に策定されました。

 本推奨・期待される事項は、VCのLP(ファンドへの投資者)に対する受託者責任を踏まえ、VCとして備えておくことが推奨されるものを示す「推奨される事項」、および投資先企業の価値向上等を通じたLPの中長期的リターンの向上の観点から、VCが目指すべき全体的な方向性を示す「期待される事項」の2段構成となっています。
 本改訂案は、「推奨される事項」および「期待される事項」の各項目について、見直しを行っています。

 以下、本改訂案における各項目の改訂の概要をお伝えします。

「推奨される事項」

(1)受託者責任・ガバナンスの深化

  1. 受託者責任
    GP(ファンド運営管理者)の受託者責任の項目において、以下の事項が追加されました。
    • ファンド責任者のみならず、キーパーソンを含むファンド役職員に対しても受託者責任の意識の浸透を図ることが重要であること。
    • 投資先企業の企業価値の毀損を通じてLPに不測の損失が生じることを避けるべく、投資先企業選定時および投資実行後において、投資先のコンプライアンスを含めた経営状況について十分に把握することが推奨されること。
  2. コンプライアンス管理
    GPにおけるコンプライアンス管理の項目において、以下の事項が追加されました。
    • コンプライアンス管理体制確保の具体的内容として、GP内および投資先企業へのハラスメント防止規程の整備を推奨すること。
    • 定期的な研修の受講等を通じた意識啓発が重要であること。
    • ハラスメント防止のため、GP内の独立窓口や第三者機関による相談窓口の設置が考えられること。

(2)利益相反管理の見直し

 ファンドにおいて生じ得る利益相反の管理に関する項目において、以下の事項が追加されました。

  • GPが他事業との兼任・兼業や複数ファンドの運営を行う場合は、利益相反が生じやすい運営構造にある事を認識したうえで利益相反のおそれがないか広く検証を行うことが推奨されること。

(3)公正価値評価の促進

 GPによる投資先企業の公正価値評価の実施を促進する観点から、事例集の作成等、GPにおけるノウハウ確保や体制整備のための参考情報を提供することが検討されました。
 こちらについては、本推奨・期待される事項の改訂はされていません。

(4)投資方針の新設

 VCへの投資は、他のアセットクラスと比較して、リターンの実現に時間を要する一方で、高いアップサイドのリターンが期待される投資商品であることを踏まえ、以下のとおり、GPによる投資方針の策定およびLPに対する説明について定める項目が新設されました。

  • GPによる投資方針の策定に当たり、LPが、他のアセットクラスと比較して、より高いアップサイドのリターン獲得を期待していることを意識し、自らの強みや特徴を踏まえた他のアセットクラスやVCファンドとの差別化戦略、リスク・リターン設計を明確にした投資方針を策定するとともに、LPにわかりやすく説明を行うことが推奨されること。
  • 運用期間中において当初想定していたシナリオに変化が生じた場合には、投資方針を見直すともに、見直しに至った合理的な理由についてLPに説明を行うことが考えられること。

「期待される事項」

(1)スタートアップとの投資契約の見直し

 スタートアップ投資契約については、日本の投資契約実務をグローバルスタンダードに近づける観点から、経済産業省において「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項(増補版)」(2025年9月)が整備されています。
 これを踏まえ、投資先企業であるスタートアップとの間の投資契約内容に関する項目において、かかる留意事項(増補版)を参考にすることが考えられる旨の追記がされました。

(2)投資先の経営支援の見直し

 GPによる、投資先に対する経営支援に関する項目において、以下の事項が追加されました。

  • 経営支援の具体的内容として、経営体制の構築支援および海外展開への支援を含む各種経営支援の提供が期待されること。
  • 上記経営支援実施のための基盤として、人材紹介等を担う専門チームの配置等の、GPにおける体系的な支援体制の構築を行うことが考えられること。

(3)投資先の資本政策支援の見直し

 GPによる、投資先に対する資本政策支援に関する項目において、ファンドの存続期間満了時の処理や、出口戦略の選択肢を多様化させる方向での修正が行われました。

「その他」(「期待される事項」)

(1)本推奨・期待される事項の対象範囲の見直し

 本推奨・期待される事項の活用が想定される主体や、活用場面について定めた項目において、以下の事項が追加されました。

  • 事業会社や戦略的投資を行う金融機関等の機関投資家以外のLPにおいても、本推奨・期待される事項の活用が期待されること。
  • 新興運用業者促進プログラムに取り組むLPが新興運用業者であるGPのファンドに投資を行う場合においても、ファンドの規模・体制等の実情に応じて本推奨・期待される事項の活用が期待されること。

 本改訂案は、VCに対する内外機関投資家からの資金供給をさらに促進していく観点から、VCにおけるガバナンスの強化や投資先企業に対する適切な経営支援の実施等を目的とした改訂を行うものです。
 本改訂案については、2026年8月31日までの期間、パブリックコメントに付されており、この結果を踏まえて最終化する予定となっています。


  1. 消費者庁中間とりまとめでは、「サプリメント」の定義について、今後の検討により調整の必要が生じ得ることを踏まえ、上記の案をイメージとして示すものとしています。 ↩︎

  2. 厚生労働省「平成30年食品衛生法改正の施行後5年を目途 とした検討のとりまとめに関する参考資料集」4頁「『サプリメント』の範囲のイメージ」参照 ↩︎

シリーズ一覧全57件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  45. 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  46. 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  47. 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  48. 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  49. 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  50. 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  51. 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  52. 第52回 2026年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  53. 第53回 2026年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  54. 第54回 2026年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  55. 第55回 2026年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  56. 第56回 2026年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  57. 第57回 2026年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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