Legal Update
第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
法務部
シリーズ一覧全51件
- 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
- 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
- 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
- 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
- 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
- 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
- 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
目次
本稿で扱う内容一覧
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年1月20日 | 「同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)」の公表および意見募集の実施 |
| 2026年2月18日 | 経済産業省「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き〔第1.0版〕(案)の概説」の公表 |
| 2026年3月27日 | 経済産業省・国家サイバー統括室「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」の公表 | 2026年4月1日 | 2026年4月1日施行の労働法改正(労働安全衛生法の改正、労働施策総合推進法の改正、女性活躍推進法の改正) |
| 2026年4月1日 | 食事補助の非課税限度額の引上げ(令和8年度税制改正) |
| 2026年4月1日 | 物流効率化法の2段階目の2026年4月1日施行 |
| 2026年4月1日 | 改正GX推進法の施行 |
| 2026年4月1日 | 改正資源有効利用促進法の施行 |
| 2026年4月1日 | 改正著作権法の施行(未管理著作物裁定制度の運用開始) |
編集代表:所 悠人弁護士(三浦法律事務所)
2026年4月1日施行の労働法改正
執筆:岩崎 啓太弁護士
2026年4月1日より、以下の労働法改正が施行されます。それぞれの概要は後述のとおりです。
- 労働安全衛生法の改正
- 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
- 高年齢労働者の労働災害防止の推進等
- 労働施策総合推進法の改正
- 治療と仕事の両立支援の推進
- 女性活躍推進法の改正
- 情報公表義務の拡大
労働安全衛生法の改正
これまで、労働安全衛生法は労働者を対象としていましたが、2025年5月の改正により、「事業を行う者で、労働者を使用しないもの」(改正労働安全衛生法31条の3第1項)と定義される「個人事業者」が、新たに労働安全衛生法の適用対象となりました。また、中小事業の事業主や役員についても、個人事業者と類似の作業を行う実態を踏まえ、同様に保護対象や義務の主体としています。
また、上記の改正により。高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とすることが明文化されることになりました(同法62条の2)。この点に関し、2026年2月10日に「高年齢者の労働災害防止のための指針」が厚生労働省より公表されています。
その他の詳細については、弊所note記事「労働法UPDATE Vol. 20:労働法改正 Catch UP & Remind③ ~【速報】労働安全衛生法の改正~」をご参照ください。
労働施策総合推進法の改正
2025年6月、労働施策総合推進法が改正され、事業主に対し、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によって疾病または負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずる努力義務が定められました(改正労働施策総合推進法27条の3)。
これを受け、必要な措置の具体的な内容に関し、「治療と就業の両立支援指針」が厚生労働省より公表されています。
女性活躍推進法の改正
これまで、従業員数301人以上の事業者に対して男女間賃金差異の公表が義務付けられていましたが、2025年6月の改正により、従業員数101人以上の事業者に対し、男女間賃金差異および女性管理職比率の公表が義務付けられることになりました。この点に関し、関係通達等が厚生労働省のHPに掲載されています。
その他の詳細については、弊所note記事「労働法UPDATE Vol. 21:労働法改正 Catch UP & Remind④ ~【速報】労働施策総合推進法の改正~カスハラ防止対策の義務化等」をご参照ください。
「同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)」の公表および意見募集の実施
執筆:近藤 知央弁護士、岩崎 啓太弁護士
正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金ガイドライン」(正式名称:短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)について、いわゆる働き方改革関連法(平成30年法律第71号)の施行から5年が経過したことを踏まえ、現在見直しが進んでいます。
労働政策審議会下の同一労働同一賃金部会において、2025年2月から見直しの議論が行われ、同年12月25日には報告書が公表されました。そして同報告書の別添に「同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)」(以下「本見直し案」といいます)が示されており、2026年1月20日から同年2月19日まで意見募集が行われました。今後、意見募集の結果を踏まえつつ、確定版が公表される見通しです。
本稿では、本見直し案の内容をもとに、企業実務に影響を及ぼす主要なポイントを概説します。
本見直し案の主な内容
本見直し案は、同一労働同一賃金ガイドラインの適用開始以降、実務上の課題が顕在化したことに加え、複数の最高裁判決が蓄積されたことを踏まえ、同ガイドラインの運用を改善し、判断基準を明確化する必要が生じたことにより、策定されたものです。
まず、賞与については長澤運輸事件最高裁判決、退職手当についてはメトロコマース事件最高裁判決を踏まえ、それぞれの性質や目的が短時間・有期雇用労働者・派遣労働者にも同様に当てはまるにもかかわらず、職務の内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質および当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる事情の相違に応じた均衡のとれた内容の支給がない場合には、当該賞与や退職手当に係る待遇の相違が不合理と認められる可能性がある旨が明記されました。
また、その他の判例の蓄積を踏まえ、以下の項目についても、具体的な考え方が新たに示されています。
- 無事故手当
- 家族手当
- 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの
- 福利厚生施設の利用
- 病気休職・療養への専念を目的として付与する病気休暇
- 夏季・冬季休暇
- 褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するもの
その他の内容
そのほか、本見直し案では以下の点についても指摘されています。
- 短時間・有期雇用労働法8条における「その他の事情」の解釈や定年後再雇用の有期雇用労働者の取扱い
- いわゆる「正社員人材確保論」について、「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があることのみをもって、直ちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではないこと
- 無期雇用フルタイム労働者およびいわゆる「多様な正社員」の待遇の均衡についても、同法の趣旨が考慮されるべきこと
食事補助の非課税限度額の引上げ(令和8年度税制改正)
執筆:小椋 匠弁護士、迫野 馨恵弁護士
2025年12月26日、「令和8年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この大綱の中には、企業などの使用者が行う食事補助に関する非課税限度額の引上げが盛り込まれました。
食事の支給に関する税務上の取扱い
所得税法上、企業が従業員や役員(以下「従業員等」といいます)に対して、弁当の提供や社員食堂での食事の提供などにより食事の支給(現物支給)を行う場合、企業が負担した分については、当該従業員等が経済的利益を受けたものとして扱われ、所得税の課税の対象となるのが原則です(当該従業員等は、通常は給与として課税を受けます)。
ただし、税務上、一定の要件を満たす場合には、食事の支給が給与として課税されず、企業は福利厚生費として計上することができます。
福利厚生費として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
(2)所得税基本通達に定められた従業員の負担割合・企業の負担金額の要件を満たすこと
(3)金銭を支給していないこと
(2)の従業員の負担割合・企業の負担金額の要件について、現行通達上、①従業員等が食事の価額の半分以上を負担していること、②企業の負担する金額が月額3,500円以下であることという2つの要件を満たす場合には、非課税として扱われることとなっています(所得税基本通達36-38の2、国税庁タックスアンサー「No.2594 食事を支給したとき」)。なお、月額3,500円以下か否かの判定にあたっては、消費税や地方消費税の金額が除かれます。また、10円未満の金額は切り捨てになります。
この非課税措置については、現物による食事の支給が前提となっているため、企業が金銭で食事代の補助を行う場合には、(3)の要件を満たさず、夜食の支給(現物支給)を行うことができない深夜勤務者に1食当たり300円以下の金額を支給する場合を除いて、補助する全額が給与として課税されます。なお、1食当たり300円以下か否かの判定にあたっては、消費税や地方消費税の金額が除かれます。
令和8年度税制改正の大綱で示された非課税限度額の引上げ
食事補助については以上のような非課税措置が長年とられてきたものの、近年の物価上昇の傾向とそれに伴う食事補助のコストなどを踏まえ、大綱では、非課税限度額を引き上げる措置を講じることが示されました。
具体的には、上記(2)の従業員の負担割合・企業の負担金額の要件のうち、②の企業の負担する金額を月額7,500円まで、また、深夜勤務者に対して夜食の現物支給に代えて金銭で支給する場合の1食当たりの支給金額を650円以下まで、それぞれ引き上げることとされました。
引上げは2026年4月1日予定
今後、国税庁により所得税基本通達の改正が行われ、2026年4月1日以降の食事の支給について、非課税限度額の引上げが行われる見込みです。
上記改正を見据えて社内の福利厚生制度の見直しを検討する企業も多いと思われますが、非課税となる要件に留意し、適切に運用することが望まれます。
物流効率化法の2段階目の2026年4月1日施行
執筆:菅原 裕人弁護士
2024年4月26日に成立した物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)に関して、2026年4月1日に2段階目の施行が開始され、これより全面的に施行されることになります。
物流効率化法の概要は以下のとおりであり、今回の施行により、中長期計画の作成・定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任が始まることになります。
| 施行時期 | 主要な改正項目 | 改正の概要 |
|---|---|---|
| 2025年4月1日 | 荷主・物流事業者に対する物流効率化のための取り組むべき措置(努力義務)の新設 |
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| 2025年4月1日 | 国による指導・助言、調査・公表 |
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| 2026年4月1日 | 中長期計画の作成や定期報告等を義務付け等 |
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| 2026年4月1日 | 物流統括管理者(CLO)の選任 |
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今回の改正はいずれも一定規模以上の特定事業者が対象となるものですが、重要な施行内容となるため、自社が特定事業者の基準に該当するか確認のうえ、該当する場合には所定の対応を進めることが求められます。
物流効率化法については、国土交通省の「物流効率化」理解促進ポータルサイトにて詳しくまとめられていますので、これを確認して準備を進めることがよいでしょう。
改正GX推進法の施行
執筆:土居 大起弁護士、坂尾 佑平弁護士
2026年4月1日、2025年6月4日に公布された「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)の改正法(以下「改正GX推進法」といいます)が施行されました。
改正GX推進法の概要は、本連載第42回「2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向」の「3 改正GX推進法の成立」をご参照ください。
特に企業にとって重要性が高い排出量取引制度に関しては、2026年4月の施行時点では割当量の算定の根拠となる自社の排出量を正確に把握できていない可能性が高いことから、2026年度は割当申請の基礎となる自社の排出量等を算定する期間とし、これを踏まえて初回の割当を2027年度に実施するというスケジュールが想定されています。そのため、取引市場の開設は2027年度秋頃、初回の償却(2026年度分)は2027年度中となることが想定されています(2024年12月付け内閣官房GX実行推進室「GX実現に資する排出量取引制度に係る論点の整理(案)」参照)。
年間の二酸化炭素の直接排出量が10万トン以上であって排出量取引制度への参加義務を負う事業者(脱炭素成長型投資事業者)は、割当量の算定の根拠となる自社の排出量の正確な把握など、排出量取引制度対応に向けた準備を行うとともに、中長期の排出削減目標やその達成のための取組を記載した移行計画の策定・提出など、改正GX推進法で義務付けられた事項への対応も着実に進める必要があります。
改正資源有効利用促進法の施行
執筆:土居 大起弁護士、坂尾 佑平弁護士
2026年4月1日、2025年6月4日に公布された「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)の改正法(以下「改正資源有効利用促進法」といいます)が施行されました。
改正資源有効利用促進法の概要は、本連載第42回「2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向」の「4 改正資源有効利用促進法の成立」をご参照ください。
改正資源有効利用促進法は、施行後5年以内に、業界ごとの特性や技術的課題、再生プラスチックの需給バランス、品質、産業競争力などを十分に分析した上で、必要に応じて対象資源、対象製品、定量目標の導入等の制度の見直しを実施していくことが想定されています(2025年8月付け経済産業省GXグループ「事務局資料」参照)。
上記資料によると、「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」としては、自動車、家電4品目(エアコン、テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)、容器包装が指定される予定であるため、これらの製品を一定規模以上製造している事業者は、再生資源の利用に関する計画の提出や定期報告義務があることに留意が必要です。
改正著作権法の施行(未管理著作物裁定制度の運用開始)
執筆:大出 萌弁護士
2026年4月1日、2023年の著作権法(以下「法」といいます)の改正で創設された未管理著作物裁定制度の運用が開始されました。
未管理著作物裁定制度とは、著作物等の利用の可否に関する著作権者等の意思が確認できない著作物等について、文化庁長官の裁定を受け、使用料相当額の補償金を供託することにより、当該著作物等の時限的な利用を認める新しい裁定制度です(法67条の3)。
この制度は、既存の裁定制度よりも著作権者等の意思確認の要件・手続を緩和する一方で、著作物等の利用の期間は3年が上限とされており(法67条の3第5項。ただし、再度裁定の申請を行うことは可能)、かつ、著作権者等が事後的に利用を停止させることが可能(法67条の3第7項)という点に特徴があります。
なお、既存の裁定制度である著作権者不明等の場合の裁定制度も、手続面で簡素化・迅速化が図られたうえで引き続き存続しています(法67条)。
具体的な申請手続
政令・省令、あるいは告示で具体化された内容も踏まえた具体的な申請手続は、文化庁著作権課作成の「裁定の手引き 概要版」(2025年12月)および「裁定の手引き」(2026年3月改訂版)のとおりであり、以下ポイントをご紹介します。
(1)未管理公表著作物等
ある著作物が未管理公表著作物等に該当するには、以下を満たす必要があります(法67条の3第2項)。
- 著作物等が公表等されていること
- 著作権等管理事業者による管理が行われていないこと
- 利用の可否に係る権利者の意思確認に必要な情報が公表されていないこと
ポイントは③で、ここでいう情報とは「利用ルール」と「利用申込を受け付けるための連絡先」であり、これらのいずれも示されていないことを確認する必要があります(令和7年文化庁告示第6号2条1項)。
| 利用ルール (記載例) |
「文書を無断で転載又は複写することはお断りいたします。」 「掲載されたデジタル画像及び解説の転載又はご利用にあたっては、XXへのお申込みは必要ありません。商用でご利用いただく場合も同様です。」 |
| 利用申込を受け付けるための連絡先 (記載例) |
「利用に関する申請は、リンク先の申請フォームから行ってください。」 |
出典:文化庁「裁定の手引き 概要版」9頁
なお、アウトオブコマースの問題については、
- 絶版等資料として国立国会図書館のウェブサイトに公表されている著作物等
- 過去に著作権者不明等の場合の裁定を受け、なお権利者が判明していない著作物等
に利用ルールが付されていても、利用ルールの表示があると扱われず、なお裁定制度の対象となり得る、という整理がされました(令和7年文化庁告示第6号2条2項)。
また、裁定の対象となるには、著作者が著作物の利用を廃絶しようとしていることが明らかでないことも必要ですので(法67条の3第1項2号)、この点もあわせて確認をします。
(2)探索方法
利用の可否に係る権利者の意思および権利者の連絡先等を探索するため、以下の全てを確認する必要があります。
- 著作物等の周辺(表紙・奥付、記録メディアのパッケージ、ウェブサイトのキャプション、SNS等のアカウント所有者のプロフィール欄 等)
- 権利者のウェブサイト、権利者情報を掲載しているウェブサイト
- 分野横断権利情報検索システムの検索結果で確認すべきウェブサイトとして表示されたもの
出典:文化庁「裁定の手引き 概要版」9頁
(3)権利者への意思確認措置
上記により取得した情報や元々判明していた権利者情報に基づき、権利者に対し、利用を希望する旨を明示したうえで連絡を行い、連絡ができない(宛先不明による送信エラーでメールが送信できない等)または14日間応答がないことを確認します(令和7年文化庁告示第6号1条柱書)。
(4)外国の著作物
外国の著作物についても、日本国内での利用については裁定制度の対象となります。
ただし、権利者の連絡先として、国外の連絡先のみが見つかった場合は、対象外となるので注意が必要です。
(5)裁定にかかる日数等
上記の確認を経たのち、申請書を後述の登録確認機関に提出し、使用料相当額の算出が実施され、文化庁に送付されるのに7営業日程度、文化庁からの決定通知が送付されるまでに3営業日程度が予定されています(「裁定の手引き」45~47頁)。
指定補償金管理機関および登録確認機関の指定・登録
未管理著作物裁定制度における補償金管理業務(補償金の受領や著作権者等への支払等の業務。法104条の20)および確認等事務(申請の受付や未管理公表著作物等の該当性の確認、使用料相当額の算出の業務。法104条の33)は、文化庁長官による指定ないし登録を受けた民間の窓口組織(それぞれ「指定補償金管理機関」と「登録確認機関」と呼ばれます)が行うことができます。
両者を1つの組織が兼ねることも認められ、2025年10月21日付で公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が指定補償金管理機関および登録確認機関として指定ないし登録されました。
2026年4月以降、CRICにおいて著作権等に関する総合的な窓口の設置も予定されており、裁定申請を行う前に当該窓口に相談を行うことが勧められています(「裁定の手引き」49頁、「裁定の手引き 概要版」3頁)。
なお、補償金の額は、登録確認機関の確認等事務規程において定められる使用料相当額の算出方法規程(法104条の35第3項)に従って算出されます。具体的にはCRICが公開する「確認等事務規程」第2章第3節に規定されています。
分野横断権利情報検索システムおよび個人クリエイター等権利情報登録システムの運用開始
裁定のための権利者情報の探索に当たっては、文化庁の「分野横断権利情報検索システム」を用いることが想定されています。これは分野ごとのデータベースを前提として、利用者が探索すべきデータベース等を検索できるシステムです。
さらに、個人クリエイター等の権利情報を集約し、裁定制度における意思表示を行える「個人クリエイター等権利情報登録システム」もあわせて作成されました。
いずれも、2026年2月26日より運用が開始されています。
経済産業省・国家サイバー統括室「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」の公表
執筆:南 みな子弁護士、小倉 徹弁護士
2026年3月27日、経済産業省・内閣官房国家サイバー統括室より、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」が公表されました。
近年、サプライチェーンを通じたセキュリティインシデントが頻発しており、サプライチェーン全体のセキュリティ対策が求められる状況にあります。一方で、委託元企業・委託先企業においては、それぞれ以下の課題があります。
| 委託元企業 | 委託先におけるセキュリティ対策が可視化しづらく、要求事項(チェックリスト等)の適正性の担保も難しい |
| 委託先企業 | 複雑なサプライチェーン下で、様々な委託元から様々な要求事項を求められ、過度な負担につながる |
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(以下「本制度」といいます)では、本制度に基づくマーク(★)の取得を通じて、適切なセキュリティ対策の実施を促し、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策水準の向上を図ることを目指しています。
具体的には、2社間の取引契約等において、委託元が、委託先に適切な段階(★)を提示し、示された対策を促すとともに実施状況を確認することを想定しています。
本制度が対象とするリスクの範囲および本制度の対象範囲は以下のとおりです。
| 本制度が対象とするリスクの範囲 |
|
| 本制度の対象範囲 |
|
本制度における段階(★)別の評価の概要は以下のとおりです。
| ★3 | ★4 | ★5(検討中) | |
|---|---|---|---|
| 想定される脅威 | 広く認知された脆弱性等を悪用する一般的なサイバー攻撃 |
|
未知の攻撃も含めた、高度なサイバー攻撃 |
| 対策の基本的な考え方 | 最低限実装すべきセキュリティ対策 | 標準的に目指すべきセキュリティ対策 | さらに目指すべき高度な対策 |
| 具体的な対策 | 基礎的な組織的対策とシステム防御策を中心に実施 | 組織ガバナンス・取引先管理、システム防御・検知、インシデント対応等包括的な対策を実施 | 国際規格等におけるリスクベースの考え方に基づき、自組織に必要な改善工程を整備、システムに対しては現時点でのベストプラクティスの対策を実施 |
| 評価スキーム | 専門家確認付き自己評価 | 第三者評価 | 第三者評価 |
本制度のうち、★3と★4の部分については、2026年度末頃の制度開始が予定されています。★5については、ISMS適合性評価制度や★3と★4との整合性も踏まえ、2026年度以降具体的なあり方等を検討する予定とされています。
経済産業省「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き〔第1.0版〕(案)の概説」の公表
執筆:松田 一星弁護士
2026年2月18日、経済産業省商務情報政策局情報経済課・同局情報産業課AI産業戦略室により「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き〔第1.0版〕(案)」(以下「本手引き」といいます)が公表されました。
わが国では、AIがもたらすリスクへの対応として、既存の法律にソフトローを組み合わせることにより対応する方針が採られていますが、AIに関連する損害等が発生した場合における、民事責任のあり方について、AIの自立性やブラックボックス性を踏まえてどのように解釈適用を行うべきかについては裁判例の蓄積や統一的な見解がなく、責任の所在が不明瞭です。
そこで、2025年8月から2026年1月にかけて、経済産業省において「AI利活用における民事責任の在り方に関する研究会」が全4回にわたって開催され、主として不法行為法等の観点から、AIを以下の「補助/支援型AI」と「依拠/代替型AI」の2つの類型に分類したうえで、AIを用いたサービスやシステムが事故に寄与した基本的な想定事例を題材に、解釈適用上の論点および考え方の整理が行われました。
| 補助/支援型AI | 依拠/代替型AI | |
|---|---|---|
| 概要 | AIが判断の補助ないし支援としてのみ用いられ、最終的に人の判断や行動を介在させることが予定されている類型。 | 人の判断や行動を代替する前提で提供され、AIの出力に依拠しながら用いることが予定されている類型。 |
| 該当性判断のための基準 | 以下のようなケースは、補助/支援型AIに該当すると考えられる。
上記①ないし③に該当しない場合には、補助/支援型AIにも依拠/代替型AIのいずれにも該当する可能性があるが、右記の要件を満たさない場合には、一般的には補助/支援型AIに該当するとされる。 |
依拠/代替型AIに該当するには、以下の2つの要件が求められる。
精度および安全性については、個々の業務によって求められる水準は異なるが、AIが同種業務における通常人の作業水準と比較して同等以上と評価できる場合や、権利侵害リスクが従来の通常人による作業水準と比しても十分に抑制されているような場合には、人の判断や行動の全部または一部をAIに委ねつつ運用することの合理性が認められると考えられる。 |
| AI利用者の責任 |
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AI利用者の判断が介在しないため、注意義務の対象が、AIシステムを組み入れた業務プロセスの適正な構築およびリスクを可能な限り低減しながら運用を行う義務へと転換する。 |
| AI開発者・提供者の責任 |
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依拠/代替型AIでは最終的な人の判断や行動が介在せず、AIの出⼒が直接的に権利侵害や損害に結びつき得ることを前提に、一定の精度や安全性等を維持するために合理的に可能な設計上の措置を講じていたか、リスクコントロールのうえで重要な情報を分析し、情報提供を行うなど説明上の措置が求められる。 |
| 想定事例 |
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また、本手引きでは、7つ目の想定事例としてAIエージェントに触れており、AIエージェントについては、補助/支援型AIにも依拠/代替型AIにも該当する可能性があることが示されています。
もっとも、本手引きでは、AIエージェントのような高度なAIシステムについては、その特有のリスクアセスメントやガバナンス手法について、「現在も国際的に急速な検討が進められている段階にあり、個別技術やユースケースに強く依存するため、当事者の責任を個別具体的に整理することは現時点では困難である」と指摘し、基本的な考え方の整理を行うに留めています。
なお、本手引きは、あくまでAI利活用の場面において、現行法がどのように適用され得るかの方向性を示したものであり、個別具体的な事例に対して現行法がどのように適用されるかを、最終的に判断するのは裁判所である点には留意が必要です。
シリーズ一覧全51件
- 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
- 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
- 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
- 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
- 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
- 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
- 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
- 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
- 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向