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第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント

法務部

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目次

  1. プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行
  2. 改正特許法の一部施行
  3. 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律の施行
  4. 改正宅地建物取引業法・借地借家法の施行
  5. 「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書
    1. 本報告書の公表に至る経緯
    2. 本報告書における検討内容
    3. 今後の見通し
  6. 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の公表
  7. 営業時間短縮協力金の支給に係る決定に関する大阪地裁令和3年11月22日判決(処分性が否定された事例)

 2022年4月、5月施行の改正法は、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律、特許法、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律、宅地建物取引業法、借地借家法などが挙げられます。

 また、4月には中小企業の事業再生等に関するガイドラインの適用が開始されました。

 本稿では上記の最新動向と企業における対応のポイントに加えて、昨年11月の営業時間短縮協力金の支給に係る決定に関する判決、本年2月に公表された「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書について解説します。

 編集代表:坂尾 佑平弁護士・渥美 雅之弁護士(三浦法律事務所)

本稿で扱う内容一覧

日付 内容
2021年11月22日 営業時間短縮協力金の支給に係る決定の処分性を否定する旨の大阪地方裁判所の判決
2022年2月28日 「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書
2022年4月1 日 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行
2022年4月1 日 改正特許法の施行
2022年4月15日 中小企業の事業再生等に関するガイドラインの適用開始
2022年5月1日 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律の施行
2022年5月18日まで 改正宅地建物取引業法・改正借地借家法の施行

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行

 執筆:金井 悠太弁護士・坂尾 佑平弁護士

 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下「プラスチック資源循環促進法」といいます)が2022年4月1日に施行されました。

 プラスチック資源循環促進法では、プラスチックを用いた製品に係る以下①~③のライフサイクルの各段階に関与する事業者・市区町村がそれぞれ取り組むべき事項が定められています。

  1. 製品の設計・製造
  2. 製品の販売・提供
  3. 製品の排出・回収・リサイクル

 各サイクルにおいて適用対象となる事業者の類型と主たる規制の概要は下記のとおりです。

  1. 製品の設計・製造:プラスチック使用製品製造事業者等

     プラスチック使用製品(プラスチックが使用されている製品)の製造または設計を行う事業者のうち一定の者は、「プラスチック使用製品製造事業者等」(以下「製造事業者等」といいます)に該当し、以下のような規律の対象となります。
    • 主務大臣が定めるプラスチック使用製品設計指針」に即してプラスチック使用製品を設計する努力義務を負う(プラスチック資源循環促進法7条1項、5項)。
    • その設計するプラスチック使用製品につき主務大臣による「設計認定」を受け、国によるグリーン調達法(「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)上の配慮の対象となる等一定の便宜を受けることができる(プラスチック資源循環促進法8条1項、10条)。
  2. 製品の販売・提供:特定プラスチック使用製品提供事業者等

     「特定プラスチック使用製品」(消費者に無償で提供されるスプーン、フォーク等一定のプラスチック製品)を提供する事業者のうち、飲食料品小売業等一定の業種に該当する者は、「特定プラスチック使用製品提供事業者」(以下「提供事業者」といいます)に該当し(プラスチック資源循環促進法28条1項)、以下のような規律の対象となります。
    • 主務大臣により、提供事業者が使用合理化・排出抑制のために取り組むべき措置に関して、提供事業者の判断基準となる事項が定められる(プラスチック資源循環促進法28条1項)。
    • 主務大臣が上記事項を勘案して行う一定の指導および助言等の対象となる(プラスチック資源循環促進法29条)。
    • 一定の量的基準を満たす提供事業者は、特定プラスチック使用製品多量提供事業者」として上乗せされた規制の対象となる(プラスチック資源循環促進法30条)。
  3. 製品の排出・回収・リサイクル:プラスチック使用製品の製造・販売事業者等および排出事業者

     プラスチック使用製品の製造・販売事業者等は、その作成した自主回収・再資源化計画を主務大臣が認定した場合、廃棄物処理法に基づく許可がなくとも、使用済プラスチック使用製品(一度使用され、または使用されずに収集され、 もしくは廃棄されたプラスチック使用製品であって、放射性物質によって汚染されていないもの)の自主回収・再資源化事業を行うことができます(プラスチック資源循環促進法39条1項、同条3項、41条1項等)。

     また、プラスチック使用製品に係る一定の廃棄物を排出する事業者は、「排出事業者」に該当し(プラスチック資源循環促進法2条9項)、以下のような規律の対象となります。
    • 主務大臣により、排出事業者が排出抑制・再資源化等のために取り組むべき措置に関して、排出事業者の判断基準となる事項が定められる(プラスチック資源循環促進法44条1項)。
    • 主務大臣により、排出事業者が排出抑制・再資源化等のた主務大臣が上記事項を勘案して行う一定の指導および助言等の対象となる(プラスチック資源循環促進法45条)。
    • 主務大臣により、排出事業者が排出抑制・再資源化等のた一定の量的基準を満たす排出事業者は、多量排出事業者」として上乗せされた規制の対象となる(プラスチック資源循環促進法30条)

 プラスチック資源循環促進法はESGに関連する重要な法律であり、同法の適用対象となっている事業者は、抜け漏れのない適切な対応をすることが求められます。とりわけ「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」および「多量排出事業者」については、その取組みが著しく不十分と認められる場合に勧告・公表・命令・罰則の対象となる可能性があることにもご留意いただく必要があります。

改正特許法の一部施行

 執筆:遠藤 政佑弁護士・松田 誠司弁護士・西川 喜裕弁護士

 2021年に成立した改正特許法が同年10月1日から段階的に施行されており、2022年4月1日にも、同改正法のうち一部が施行されました。

 主な内容として、まず、特許権者等は、訂正審判請求等や特許権等の放棄を行うためには、従来は通常実施権者から訂正や放棄についての承諾を得ることが必要でしたが、改正後は、このような通常実施権者の承諾は不要となりました。なお、商標権の放棄については、今後も通常使用権者の承諾が必要なので注意が必要です。

 さらに、特許権等侵害訴訟(審決取消訴訟や職務発明関係訴訟は除かれます)に、第三者意見募集制度が導入されました。

 同制度においては、当事者の申立てがあり、裁判所が必要であると認める場合、裁判所は、当該訴訟等に関する法律の適用その他の必要な事項について広く一般の第三者から意見を募集することができます。これにより、第三者は、事実上の影響を受ける法律の適用等について意見書を提出することができ、訴訟当事者は同意見書を証拠として活用することができます。また、弁理士は、第三者が的確に意見書を作成できるように支援することができるようになりました。なお、裁判所のウェブサイトにて詳しく説明されておりますので、併せてご確認ください(第三者意見募集制度について | 知的財産高等裁判所 (courts.go.jp))。

 このほか、下記の点についての改正法も施行されました。

  • 特許料等の支払方法として、窓口でのクレジットカード支払等が可能となった
  • 特許料等の料金体系が見直された
  • 弁理士制度が一部見直された
    ✔︎ 図形・農林水産知財業務の弁理士業務への追加
    ✔︎ 法人名称につき「特許業務法人」から「弁理士法人」への変更
    ✔︎ 一人法人制度の導入

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律の施行

 執筆:小倉 徹弁護士

 2021年5月10日に公布された「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(以下「取引DPF消費者保護法」といいます)が、2022年5月1日に施行されました。取引DPF消費者保護法は、オンラインモール等の「取引デジタルプラットフォーム」(後述)において、危険商品等の流通や、販売業者等が特定できず紛争解決が困難となる等の問題が発生していることから、これに対応し、消費者利益の保護を図るために、新しく制定された法律です。

 取引DPF消費者保護法の適用対象となる取引デジタルプラットフォーム提供者」は、事業として、「取引デジタルプラットフォーム」を単独でまたは共同して提供する者をいうところ(取引DPF消費者保護法2条2項)、この「取引デジタルプラットフォーム」は、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律2条1項に規定する「デジタルプラットフォーム」1 のうち、当該デジタルプラットフォームにより提供される場が次のいずれかの機能を有するものをいいます。

  • 消費者が、パソコン等の画面上に表示される手続に従って、通信販売に係る売買契約等の申込みの意思表示を行うことができる機能(取引DPF消費者保護法2条1項1号)
    (例:オンラインモール、アプリケーションストア等)
  • 消費者が、パソコン等の画面上に表示される手続に従って、競り等の方法により通信販売に係る売買契約等の相手方となるべき消費者を決定する手続に参加することができる機能(取引DPF消費者保護法2条1項2号)(例:オークションサイト)

 取引デジタルプラットフォーム提供者は、以下の措置を講じる努力義務を負うとともに(取引DPF消費者保護法3条1項)、これらの措置を講じた場合、講じた措置の概要等につき開示する義務を負います(取引DPF消費者保護法3条2項)。

  • 販売業者等と消費者との間の円滑な連絡を可能とする措置(取引DPF消費者保護法3条1項1号)
  • 販売条件等の表示に関し苦情の申出を受けた場合における必要な調査等の実施(取引DPF消費者保護法3条1項2号)
  • 販売業者等に対する身元確認のための情報提供の求め(取引DPF消費者保護法3条1項3号)

 また、内閣総理大臣は、商品の安全性の判断に資する事項等の重要事項の表示に著しい虚偽・誤認表示がある商品等が出品され、かつ、販売業者等が特定不能など個別法の執行が困難な場合、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、出品の削除等を要請することができます(取引DPF消費者保護法4条1項)。なお、取引デジタルプラットフォーム提供者は、当該要請に応じたことにより販売業者等に生じた損害については、賠償の責任を負わないものとされています(取引DPF消費者保護法4条3項)。

 さらに、消費者は、販売業者等との間の売買契約等に係る自己の損害賠償請求権等を行使するために必要な場合に限り、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、当該販売業者等の氏名、住所等の情報の開示を請求することができます(取引DPF消費者保護法5条1項)。

改正宅地建物取引業法・借地借家法の施行

 執筆:所 悠人弁護士

 2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づく押印・書面に関する制度の見直しの一環として、2022年5月18日までに宅地建物取引業法と借地借家法が改正されます。改正内容は、主に以下のとおりです。

宅地建物取引業法
  • 宅地建物取引士による押印の廃止
    ✔︎重要事項説明書
    ✔︎宅地建物の売買・交換・賃貸借契約等締結後の交付書面(いわゆる37条書面)

  • 書類の電子化が可能に
    ✔︎媒介・代理契約締結時の交付書面※
    ✔︎レインズ登録時の交付書面※
    ✔︎重要事項説明書※
    ✔︎37条書面※
借地借家法
  • 書類の電子化が可能に
    ✔︎定期借地権契約(事業用定期借地権を除く)
    ✔︎定期建物賃貸借契約
    ✔︎定期建物賃貸借契約締結時の事前説明書面※
注:「※」が付されている書類の電子化については、相手方の承諾が必要です。

 今回の改正により、①媒介・代理契約の締結、②重要事項説明書の交付、③売買・交換・賃貸借契約等の締結、④37条書面の交付といった一連の不動産取引の流れが、原則として電子化できるようになります。これまで「紙の交付」が要求され電子化が進まなかった不動産取引ですが、高額な印紙税を節約できるというメリットが存在することから、今後は電子化が進んでいくものと考えられます。
 宅地建物取引業者としては、電子化のためのサービスの導入や社内体制の整備を進める必要があります。

「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書

 執筆:所 悠人弁護士・峯岸 健太郎弁護士

 日本証券業協会の「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」(以下「本WG」といいます)は、2022年2月28日、新規株式公開(IPO)時の公開価格の設定プロセスのあり方に関する検討結果として、「「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書」(以下「本報告書」といいます)を公表しました。

本報告書の公表に至る経緯

 2021年6月18日に閣議決定された「成長戦略実行計画」において、日本のIPOでは、上場後初めて市場で成立する株価(初値)が上場時に起業家が株を売り出す価格(公開価格)を大幅に上回る傾向にあり、同じ発行株数でより多額の資金調達をしえたはず等の指摘がなされ、IPO時の公開価格の設定プロセスのあり方について見直しを図ることとされていました。これを受けて、日本証券業協会が改善策等を検討することとなり、本WGが設置され、今般、検討結果として本報告書が公表されるに至りました。

本報告書における検討内容

 本WGにおいては、公開価格の設定プロセスの改善にあたり、公正な価格発見機能の向上および発行会社・投資者の納得感の向上に主眼が置かれ、検討課題として以下の19項目が設定されました。本報告書では各検討課題に関する「現状の課題」および「改善策」が提示されているものの、本稿では紙面の関係上、特に公正な価格発見機能の向上に直結すると指摘されている下記①および②についてのみ、改善策を記載しています。

  1. 制度・実務等に関連する論点

    (1)公開価格の設定プロセスの見直し

    仮条件の範囲外での公開価格設定
    【改善策】日本のIPOでは、大半の銘柄がブックビルディングにおける仮条件の上限価格で公開価格が設定されてしまっており、需要が公開価格の設定に十分に反映されていない。そこで、( ⅰ ) 仮条件の範囲の拡大、( ⅱ ) ブックビルディングにおける申告方法の見直し、( ⅲ ) ブックビルディングのやり直しにならない仮条件の範囲外での公開価格設定のルール化といった改善策が提示されている。

    上場日程の期間短縮・柔軟化
    【改善策】現状、IPOの上場承認日から上場日までの期間が長いことによる価格変動リスクが公開価格に織り込まれてしまっている。そこで、( ⅰ ) 上場承認日から上場日までの期間の短縮、( ⅱ ) 仮条件決定日から上場日までの期間の短縮、( ⅲ ) 公開価格設定日から上場日までの期間の短縮、( ⅳ ) 上場日変更の実務対応の検討といった改善策が提示されている。

    ③ 有価証券届出書への想定発行価格や手取金概算額の記載方法の見直し
    ④ 売出株式数の柔軟な変更
    ⑤ 国内、海外並行募集時のオーバーアロットメントの上限数量の明確化
    ⑥ 価格設定の中立性確保

    (2)発行会社や投資者への情報発信

    ⑦ 主幹事証券会社別の初期収益率等の公表

    (3)機関投資家との対話促進

    ⑧ プレ・ヒアリングの留意点の周知および実施の推奨

    (4)発行会社との対話促進

    ⑨ 機関投資家への割当および開示
    ⑩ 実名による需要情報等の提供
    ⑪ 発行会社への公開価格等の納得感のある説明
    ⑫ 主幹事証券会社の追加・変更等

  2. 取引所規則等に関連する論点
    ⑬ 初値形成時の成行注文の禁止
    ⑭ 入札方式・ダイレクトリスティングの改善
    ⑮ 上場推薦審査のあり方
    ⑯ 大型上場、赤字上場の取組み促進

  3. その他の課題等
    ⑰ 配分先の保有状況の確認
    ⑱ 株価変動時のロックアップ解除条項の見直し
    ⑲ 機関投資家へのヒアリング方法の見直し

今後の見通し

 本報告書において提示された改善策には、市場関係者・関係機関において検討が必要なものも含まれているものの、本報告書は、以下のスケジュール感で検討が進められることが期待されるとしており、相応のスピード感をもって対応が進められていくものと予想されます。

「制度・実務等に関連する論点」

→解釈の明確化や日本証券業協会の規則改正に関する改善策のうち早期に対応できるものは2022年半ばを目途に取組みを進めること

→市場関係者等との調整が必要な改善策については2022年中を目途に取組みを進めること

「取引所規則等に関連する論点」
可能な限り早期に検討が行われること

 そのため、IPOに携わる市場関係者は、今後の「公開価格の設定プロセスのあり方」に関する議論を注視する必要があります。

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の公表

 執筆:磯田 翔弁護士

 中小企業の事業再生等に関する研究会(事務局:一般社団法人全国銀行協会)が2022年3月4日に公表した「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」といいます)が、同年4月15日より適用開始されました。

 本ガイドラインは、中小企業者の事業再生・事業廃業(以下「事業再生等」といいます)に関し、関係者間の共通認識を醸成し、事業再生等に係る総合的な考え方や具体的な手続等として策定されたものです。本ガイドラインの目的は、以下の2点です。

  • 中小企業者の「平時」、「有事」の各段階において、中小企業者・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、事業再生等に関する基本的な考え方を示すこと
  • より迅速かつ柔軟に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続を定めること

 従来の「私的整理に関するガイドライン」は、大企業や中堅企業が念頭に置かれていましたが、本ガイドラインでは、( ⅰ ) 債務超過の解消を3年以内から5年以内へ変更、( ⅱ ) 経営者退任を原則としない等、中小企業の実態に即したものとされています。また、本ガイドラインでは、中小企業の実態を踏まえて、「再生型私的整理手続」だけではなく「廃業型私的整理手続」についても、具体的な手続や要件等を定めています。

 今なお、新型コロナウイルス感染症が中小企業に与える影響は大きく、今後、本ガイドラインを利用した私的整理の動向が注目されます。

営業時間短縮協力金の支給に係る決定に関する大阪地裁令和3年11月22日判決(処分性が否定された事例)

 執筆:磯田 翔弁護士

 新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」といいます)では、都道府県知事が、一定の場合に、事業者に対して、同ウイルスのまん延を防止するために営業時間の短縮等を要請することができます。また、各都道府県においては、この要請に応じて営業時間の短縮等を行った事業者に対して、協力金の支給が行われています。

 この協力金の支給に係る決定の法的性質について、大阪地方裁判所は、2021年(令和3年)11月22日、協力金の支給に係る決定に行政処分性を認めず、協力金の支給等の義務付けを求めることはできない旨を判示しました(以下「本判決」といいます)。本判決が処分性を否定した主な判断理由は、以下のとおりです。

  • 特措法63条の2第1項は、国および地方公共団体は新型コロナウイルス感染症のまん延防止に関する措置により影響を受けた事業者を支援するために必要な財政上の措置を効果的に講ずるとしているにすぎず、当該措置の具体的な内容を定めていない。
  • 当該措置による協力金の支給につき知事へ委任することを定める法律や条例の定めがない。
  • 支給規則には、支給の申請に対して支給がされなかった場合の不服申立てに関する定めがない。

 本判決における判断枠組みは、従前の裁判例の傾向を踏襲するものですが、法律・条令上の根拠規定の有無や規則・要綱等が規定する内容、不服申立規定の有無等から、地方公共団体の規則・要綱に基づく協力金は贈与契約にすぎず、行政処分ではないと考えています。
 他の地方公共団体における協力金の支給についても、同様に処分性が否定され得るものと考えられ、協力金の不支給を争う事業者は訴訟類型の選択に注意する必要があります。


  1. ①デジタル技術を用い、商品等提供利用者と一般利用者とをつなぐ場(多面市場)を提供すること、②インターネットを通じ提供していること、および③ネットワーク効果(商品等提供利用者・一般利用者の増加が互いの便益を増進させ、双方の数がさらに増加する関係等)を利用したサービスであること、という3つの要件により定義されています。 ↩︎

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