Legal Update

第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向

法務部

シリーズ一覧全44件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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目次

  1. 2023年金融商品取引法等の改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメント結果公表と改正法の施行
    1. 四半期報告書の廃止後の有価証券届出書における四半期情報の記載
    2. 企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書提出事由への追加
  2. 2023年改正次世代医療基盤法の施行
  3. 特許出願非公開制度の運用開始
  4. 「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」の国会提出
  5. 「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」の閣議決定
    1. 改正対象4法の概要
    2. 本改正案の概要
  6. 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」パブコメ結果を踏まえた実務上の留意点
    1. 『素案に関する意見募集に寄せられた主な意見』に係る事務局回答の概要
    2. AI開発事業者・AIサービス提供事業者および利用者における留意点
    3. 今後もAIに関する議論はウォッチが必要
  7. 消費者庁「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-」の公表
  8. 「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」の公表

 2024年3月27日、金融庁は、2023年金融商品取引法等の改正に係る政令・内閣府令案等について、確定した改正内容とパブリックコメント結果等を公表しました。確定した政令・内閣府令等は、同日付け公布、同年4月1日から施行・適用されています。改正事項のうち、四半期報告書の廃止、企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書の提出事由の追加、についてポイント解説します。


 同年4月1日、2023年5月26日に公布された「改正次世代医療基盤法」が施行されました。主な改正事項は、①仮名加工医療情報の利活用に係る仕組みの創設、②公的データベースとの連結、③医療情報の利活用推進に関する施策への協力、です。

 2024年5月1日、経済安全保障推進法に基づき、いわゆる「特許出願非公開制度」の運用が開始されました。この制度は、特許出願の明細書等に公にすることによりわが国の安全保障に影響を及ぼす事態のおそれが大きい発明について、「保全審査」「保全指定」という手続きによって特許手続きを留保するものです。

 同年2月27日、セキュリティ・クリアランス制度に関する「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」が閣議決定され、通常国会に提出されました。この法案では、①重要経済安保情報の指定、②重要経済安保情報の提供、③重要経済安保情報の取扱者の制限、④適性評価、⑤罰則、が規定されています。

 同年3月1日、「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました。①「消費生活用製品安全法」、「ガス事業法」、「電気用品安全法」および「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」において、オンラインモール等のプラットフォーム事業者や国内消費者に直接製品を販売する海外事業者の責務に係るルールの新たな導入、②消費生活用製品安全法において、海外製品を含む玩具等の子供用の製品による事故を未然に防止するための環境整備に係る規定の新たな導入、といった法規制を進めるものです。

 同年3月15日、文化庁は、「AIと著作権に関する考え方について」の確定版を公表しました。同年1月から2月に実施されたパブコメ結果から、寄せられた意見に対する審議会事務局の考え方を一部抜粋して紹介します。また、パブコメ結果に示された、AI開発事業者・AIサービス提供事業者および利用者における実務上の留意点を解説します。

 同年2月29日、消費者庁は、「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-」を公表しました。この意識調査の結果をみると、自社の内部通報制度の体制面や運用面で見直すべき点がないかを検討するうえでとても参考になります。

 同年3月6日、公正取引委員会は、「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」を公表しました。コネクテッドTV関連分野における競争状況に対する公正取引委員会の評価や、独禁法上問題となる行為類型が明記されている点など、実務上参考になります。

 編集代表:小倉 徹弁護士(三浦法律事務所)

本稿で扱う内容一覧

日付 内容
2024年2月27日 「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」の国会提出
2024年2月29日 消費者庁「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-」の公表
2024年3月1日 「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」の閣議決定
2024年3月6日 公正取引委員会「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」の公表
2024年3月15日 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」の公表
2024年3月27日 2023年金融商品取引法等の改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメント結果公表と改正法の施行
2024年4月1日 2023年改正次世代医療基盤法の施行
2024年5月1日 特許出願非公開制度の運用開始

2023年金融商品取引法等の改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメント結果公表と改正法の施行

 執筆:藤﨑 大輔弁護士、所 悠人弁護士

 2024年3月27日、金融庁は、2023年金融商品取引法等の改正に係る政令・内閣府令案等につき、確定した改正内容とパブリックコメント結果等を公表しました。確定した政令・内閣府令等は、同日に公布されており、同年4月1日から施行・適用されているところ、以下でその内容を一部ご紹介いたします。

 詳細については、弊所のNote記事「ポイント解説・金商法 #16:2023年改正金融商品取引法等の改正に係る政府令案(四半期報告書の廃止、企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書の提出事由の追加等)に係るパブリックコメント結果公表と改正法の施行」をご参照ください。

四半期報告書の廃止後の有価証券届出書における四半期情報の記載

 本連載第25回「2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向」でご紹介したとおり、四半期報告書を廃止する金融商品取引法の改正が2024年4月1日より施行されています。これに関連して、新株発行等に際し有価証券届出書を提出する場合において、改正法施行前は四半期情報が法定開示情報として記載されていましたが、本改正法の施行後においては、情報開示の後退とならないようにするため、四半期決算短信等の四半期に係る財務情報を記載することが可能となるよう、企業内容等開示ガイドラインが改正されました。

企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書提出事由への追加

 2023年12月22日付けの企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、下記①〜③については、有価証券報告書等において「重要な契約等」として開示することが義務付けられています。

  1. 「企業・株主間のガバナンスに関する合意」
  2. 「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」
  3. 「ローン契約と社債に付される財務上の特約」

 これらのうち③は、契約の締結または変更がすでに臨時報告書の提出事由とされていますが、本改正により、①および②についても、契約の締結または変更が臨時報告書の提出事由とされました
 また、有価証券報告書における記載と同様、合意のうち「重要性の乏しいもの」については、臨時報告書の提出事由とはならず、その判断基準の考え方と例示が企業内容等開示ガイドラインに追加されました。

2023年改正次世代医療基盤法の施行

 執筆:小倉 徹弁護士

 2023年5月26日に公布された「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正次世代医療基盤法」といいます)が、2024年4月1日に施行されました。

 主な改正事項は以下のとおりです。

  1. 仮名加工医療情報の利活用に係る仕組みの創設
    仮名加工医療情報(改正次世代医療基盤法2条4項。他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないよう医療情報を加工した情報を意味します)を作成し、利用に供する仕組みが創設されました。
    これにより、希少な症例についてのデータの提供など、既存の匿名加工医療情報(改正次世代医療基盤法2条3項。特定の個人を識別できないように医療情報を加工した情報であって、当該医療情報を復元することができないようにしたものを意味します)では対応できない研究ニーズに対応できるようになることが見込まれます。

  2. 公的データベースとの連結
    匿名加工医療情報と匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)等の公的データベースとの連結解析が可能になりました(改正次世代医療基盤法31条)。

  3. 医療情報の利活用推進に関する施策への協力
    医療情報取扱事業者に関し、認定事業者への医療情報提供等により国の施策への協力に努めることが規定されました(改正次世代医療基盤法4条)。

 改正次世代医療基盤法の施行に伴い、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律についてのガイドライン(次世代医療基盤法ガイドライン)」および「『医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律についてのガイドライン(次世代医療基盤法ガイドライン)』に関するQ&A」も公表されており、実際に次世代医療基盤法の枠組みで医療情報を利活用するにあたっては、これらのガイドライン等も参照のうえ、対応を進める必要があります

特許出願非公開制度の運用開始

 執筆:松田 誠司弁護士・弁理士

 2024年5月1日より、いわゆる特許出願非公開制度(以下「本制度」といいます)の運用が開始されました。本制度は、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(以下「経済安全保障推進法」といいます)において規定された新たなものであり、特許法の例外をなすものです。

 特許法によれば、発明をした者が特許出願をした場合、その特許出願は特許出願の日から1年6か月を経過したときに出願公開されることになります(特許法64条1項、2項)。また、特許権が設定登録されたとき、特許発明の内容等が特許公報に掲載され、公開されることになります(特許法66条3項)。
 特許法は、このように発明を公開した代償として、一定期間にわたり特許権という独占権を付与する制度を設けていますが、一定の技術分野に属する発明については公にすることによりわが国の安全保障に影響を及ぼすことが想定されます。

 そこで、経済安全保障推進法の制定により、「安全保障の確保に関する経済施策」(同法1条)の1つとして、「一定の場合には出願公開等の手続を留保し、拡散防止措置をとることとする特許出願非公開制度」(内閣府政策統括官(経済安全保障担当)「経済安全保障推進法の特許出願の非公開に関する制度のQ&A」Q1-1)が導入されることとなりました。

 本制度の基本的な仕組みは以下のとおりです。

  1. 特許庁による第一次審査等
    • 特許庁長官は、すべての特許出願を対象として、特定技術分野に属する発明が記載されているときは、特許出願から3か月以内に、出願書類を内閣総理大臣に送付(経済安全保障推進法66条1項)。
    • 特許出願人から保全審査に付することを求める旨の申出をすることも可能(同条2項)
    • 特許庁長官は、内閣総理大臣に送付をしたときは、その送付をした旨を特許出願人に通知(同条3項)

  2. 内閣府による第二次審査
    • 特許庁長官から出願書類の送付を受けた内閣総理大臣は、①国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれ(いわゆる機微性)の程度、および、②保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情の観点から、保全指定の要否を検討(「保全審査」)(同法67条1項)
    • 内閣総理大臣は、保全審査の結果、当該発明に係る情報の保全をすることが適当と認めたときは、当該発明を保全対象発明として指定(「保全指定」)(同法70条1項)
    • 保全指定の期間は1年以内であるが、継続する必要があると認めるときは、1年以内の範囲で期間を延長することが可能(同条2項・3項)

  3. 主な効果
    • 保全対象発明の実施の制限(同法73条)…保全対象発明の実施は原則として禁止
    • 保全対象発明の開示禁止(同法74条)…保全対象発明の開示は原則として禁止
    • 保全対象発明の適正管理措置(同法75条)…保全対象発明の特許出願人は保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要かつ適切な措置等を講じる必要あり
    • 第一国出願義務(同法78条)…日本国内でした発明であって公になっておらず、日本で出願すれば保全審査の対象となる発明については外国出願を原則として禁止
    • 損失の補償(同法80条)…保全対象発明について保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償

 保全審査の対象となる技術分野は、政令で規定されており、その詳細は内閣府「保全審査の対象となる技術分野について」ページで公表されています。合計で25の技術分野が指定されており、具体的には、航空機等の偽装・隠ぺい技術およびウラン・プルトニウムの同位体分離技術等が挙げられています。
 自社事業について保全審査の対象となる発明が生じ得る企業においては、特許庁および内閣府が公表するガイドラインおよびQ&A等も参照のうえ、社内規程の整備等を進めていく必要があるといえます。

「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」の国会提出

 執筆:遠藤 祥史弁護士、坂尾 佑平弁護士

 2024年2月27日、セキュリティ・クリアランス制度に関する「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」が閣議決定され、通常国会に提出されました。

 セキュリティ・クリアランス制度については、2024年1月19日、内閣官房が設置した「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」が、最終的な検討結果を「最終とりまとめ」として公表するなど、その動向が注目されてきました。

 本法案は、①重要経済安保情報の指定、②重要経済安保情報の提供、③重要経済安保情報の取扱者の制限、④適性評価、⑤罰則を主たる内容としており、具体的には、以下の内容が規定されています。
 なお、ここでいう「重要経済安保情報」は、重要経済基盤保護情報(重要なインフラや物資のサプライチェーンなどの重要経済基盤に関する一定の情報)であって、公になっていないもののうち、その漏えいがわが国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるものが想定されており、具体的には、サイバー脅威・対策等に関する情報、サプライチェーン上の脆弱性関連情報などが考えられます。

① 重要経済安保情報の指定
  • 行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報のうち、要件を満たすものを重要経済安保情報として指定する
  • 行政機関の長は、重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる職員の範囲を定めることなど、当該情報の保護に関し必要な措置を講ずる
② 重要経済安保情報の提供
(提供主体は行政機関の長)
  • 他の行政機関が利用する必要があると認めたときは、重要経済安保情報を提供できる
  • 重要経済基盤の脆弱性の解消等わが国の安全保障の確保に資する活動の促進を図るために必要があると認めたときは、適合事業者(政令で定める保全基準に適合する事業者)との契約に基づき、重要経済安保情報を提供できる
③ 重要経済安保情報の取扱者の制限
  • 重要経済安保情報の取扱いの業務は、適性評価において重要経済安保情報を漏えいするおそれがないと認められた者に制限
④ 適性評価
  • 行政機関の長は、本人の同意を得た上で、内閣総理大臣による調査の結果に基づき漏えいのおそれがないことについての評価(適性評価)を実施(適性評価の有効期間は10年)
  • 評価対象者が、適性評価を実施する行政機関以外の行政機関の長が直近に実施した適性評価(10年を経過していないものに限る)において重要経済安保情報を漏らすおそれがないと認められた者である場合には、改めて調査することなく(直近の適性評価における調査結果に基づき)適性評価を実施可能
  • 重要経済安保情報を取り扱う適合事業者の従業者についても同様の調査・評価を実施
⑤ 罰則
  • 重要経済安保情報を漏えいした者は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはこれを併科

 企業などの民間事業者との関係では、特に、重要経済安保情報の提供を受けることができる適合事業者が行政機関との間で以下の内容を含む契約を締結する必要がある点が重要です。

  1. 適合事業者が指名して重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる従業者の範囲
  2. 重要経済安保情報の保護に関する業務を管理する者の指名に関する事項
  3. 重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備の設置に関する事項
  4. 従業者に対する重要経済安保情報の保護に関する教育に関する事項
  5. 行政機関の長から求められた場合には重要経済安保情報を行政機関の長に提供しなければならない旨
  6. 適合事業者による重要経済安保情報の保護に関し必要なものとして政令で定める事項

 民間事業者が適合事業者として認められるための基準については政令で、適合事業者の認定については政府の定める基準でそれぞれ具体化されることが想定されるため、引き続き、セキュリティ・クリアランス制度に関する法令等の動向を注視していく必要があります。

「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」の閣議決定

 執筆:大滝 晴香弁護士

 2024年3月1日、「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」といいます)が閣議決定され、国会に提出されました。

 オンラインモールをはじめとするプラットフォーム等を利用した取引が活発化する中、越境ECにより海外から直接販売される製品の安全確保や事故の未然防止が課題となっています。
 そこで、かかる環境変化に対応するため、消費者による製品使用の安全性確保に関わる法律である、消費生活用製品安全法(以下「消安法」といいます)、ガス事業法(以下「ガス事法」といいます)、電気用品安全法(以下「電安法」といいます)および液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(以下「液石法」といいます)(以下、総称して「改正対象4法」といいます)において、安全確保のための措置を新たに導入する法改正が進められています。

改正対象4法の概要

法律名 概要
消安法 消費者が日常使用する製品によって生じる生命または身体に対する危害の防止を図るため、ライター等の特定の製品の製造販売等を規制するとともに、日常使用する製品の事故に関する情報の収集および提供等に係るルールを定めている
ガス事法 ガスの使用者の利益を保護するとともに、公共の安全を確保し、公害を防止するため、ガス事業者の運営に係るルールを設け、ガスストーブやガスこんろ等のガス用品の製造販売を規制している
電安法 電気用品の安全性を確保し、危険および障害の発生を防止するため、一般家庭の屋内配線等の電気用品の製造、輸入、販売等を規制している
液石法 液化石油ガスによる災害を防止するため、一般消費者等に対するストーブやガスこんろ等の液化石油ガス器具等の製造販売等を規制している

本改正案の概要

 本改正案では、改正対象4法において、①プラットフォーム事業者や国内消費者に直接製品を販売する海外事業者の責務に係るルールを新たに導入するとともに、消安法において、②海外製品を含む玩具等の子供用の製品による事故を未然に防止するための環境整備に係る規定が新たに導入されています。

① プラットフォーム事業者および海外事業者に対する新たな規制の概要
  • オンラインモール等を含む取引デジタルプラットフォームを新たに定義し(消安法改正案2条4項、ガス事法改正案137条3項、電安法改正案2条3項、液石法改正案2条9項、以下「取引DPF」といいます)、取引DPFにおいて提供される規制対象製品について、国内消費者に危険が及ぶおそれがあると認められ、かつ、その製品の出品者によってリコール等の必要な措置が講じられることが期待できないときは、取引DPFを提供する事業者に対し、当該製品の出品削除を要請できるなどの措置を講じるよう求めることができる制度の創設(消安法改正案32条の2、39条の2、ガス事法改正案157条の3、電安法改正案42条の7、液石法改正案67条)。
  • 取引DPFを利用するなどして、国内消費者に直接製品を販売する海外事業者について、届出を行える主体として明確化するとともに、規制の執行を担保すべく、当該海外事業者に対し、国内における責任者(国内管理人)の選任を求める制度の創設(消安法改正案6条2号、ガス事法改正案140条2号、電安法改正案3条2号、液石法改正案41条2号等)。
  • 上記届出事業者や国内管理人の氏名・住所等を公表し、また、法律や法律に基づく命令等に違反する行為を行った者の氏名等について公表することができる制度の創設(消安法改正案10条、46条の2、ガス事法改正案144条、157条の4、電安法改正案7条、42条の8、液石法改正案45条、68条等)。
② 子供用の製品による事故を未然に防止するための新たな規制の概要
  • 子供用特定製品(主として子供の生活の用に供されるものとして対象年齢や使用上の注意を表示することが必要な製品、消安法改正案2条4項において新たに定義)について、その製造・輸入事業者に対し、国が定める技術基準への適合、対象年齢・使用上の注意の警告表示等を求める制度を創設(消安法改正案4条2項、5条2項、12条の2、13条等)。
  • 子供用特定製品の中古品について、国内消費者に対する注意喚起や安全確保のための体制整備等を条件に、販売を可能とする特例を講じる制度を創設(消安法改正案4条3項4号)。

 本改正案により、日本国内の事業者との関係では、取引DPFを提供する事業者や子供用製品の製造販売事業者の責務が明確化された点が注目されます。

 オンラインモール等のプラットフォーム提供事業者においては、出品者と連携しながら、消費者の生命・身体に危害が及ぶ可能性のある製品について確認、情報収集を強化するとともに、危害の発生防止に向けて適切な措置を速やかに講じることが求められていくことになります。
 また、子供用製品に関しては、2023年6月19日に施行された改正消安法(詳細は、弊所のNote記事「危機管理INSIGHTS Vol.13:消費者法と危機管理①-PSCマーク制度と子供の安全のための玩具への新規制-」をご参照ください)により、磁石製娯楽用品(マグネットセット)や吸水性合成樹脂製玩具(水で膨らむボール)について製造販売等の規制が新たに課せられたところですが、本改正案により、さらに製造販売上注意を要する製品の範囲が拡大されることになりますので、留意が必要です。

文化庁「AIと著作権に関する考え方について」パブコメ結果を踏まえた実務上の留意点

 執筆:橋爪 航弁護士

 2024年3月15日、文化庁(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)より「AIと著作権に関する考え方について」(以下「本考え方」といいます)が公表されました。
 同年1月23日に公表された素案に対してパブリックコメントが実施され、同年2月29日、「『AIと著作権に関する考え方について(素案)』に関するパブリックコメントの結果について」(以下「パブコメ結果」といいます)が公表されていました。
 3月15日に公表された本考え方では、このパブコメ結果を踏まえて内容が確定され、タイトルから「素案」の文字がなくなっています。

 素案の改訂経過・経緯や解説については、本連載でもこれまで以前に紹介してきたとおりです(本連載第25回「2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向」、第26回「2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向」、第27回「4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向」)。

 本考え方において、素案からの大きな変更点はなく、本考え方の表紙では、本考え方自体が法的な拘束力を有するものではないこと、そして必要に応じて本考え方の見直し等の必要な検討を行っていくことを予定しているということが示されています。

 本記事では、上記のパブコメ結果を踏まえ、「『AIと著作権に関する考え方について』(素案)に関する意見募集に寄せられた主な意見」に対する審議会事務局の考え方を一部抜粋して紹介し、パブコメ結果に示された、AI開発事業者・AIサービス提供事業者および利用者における実務上の留意点を解説します。

『素案に関する意見募集に寄せられた主な意見』に係る事務局回答の概要

 まず、「『AIと著作権に関する考え方について』(素案)に関する意見募集に寄せられた主な意見」に対する審議会事務局の考え方を一部抜粋(筆者により一部追記)して紹介します。

① 開発・学習段階関係(本考え方「5. 各論点について(1)開発・学習段階」)
No.145 著作権法30条の4における目的の如何については、行為者の主観と客観の各事情を総合的に勘案して判断される。例えば、RAG等による出力に際して、生成AIへの指示・入力に用いられたデータに含まれる著作物と共通した創作的表現が出力されないようフィルタリングする技術的措置が取られている場合、享受目的を否定する要素となり得る。
No.163 著作権者がAI学習のための利用について反対の意思を示していることのみをもって権利制限規定の対象外とする解釈をとることは難しいとの旨の記載は、権利者と顧客とのライセンス契約との優先劣後について記載したものではない。
No.165 「AI開発事業者等が自社の開発又は提供に係るAI生成物について著作権法上の問題が発生したことを知ったときは、
  1. 意図的な著作権侵害を目的とする可能性が高いと判断したプロンプトを入力しても創作物が生成されないようブロックすること、
  2. (意図的でなくとも)著作権法上の問題を生ずることとなった創作物と同一の出力がされないようフィルタリングを施すこと、等の対策を随時アップデートしながら講ずること」は、「開発・学習段階においてAI学習のための複製を行う事業者に享受目的がなかったことを推認させる事情となり得ること(5.(1)イ(イ))、また、生成・利用段階において著作権侵害が生じた際に、事業者が規範的な行為主体として評価される可能性を低減する要素となり得ること(5.(2)キ)」に当たり得る。
No.201 従来から著作権法30条の4ただし書の該当例として示している「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で複製等する」場合について、「APIが有償で提供されている場合に情報解析目的で複製する行為が権利制限の対象とはならない場合があり得る」と整理しており、その利用規約においてAPIを利用しない情報解析が禁止されているか否かは、上記の判断に直ちには影響しない。
No.208 従来から著作権法30条の4ただし書の該当例として示している「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で複製等する」場合についての考え方が示されており、この場合については、享受目的の販売(ライセンス)市場があることではなく、情報解析目的での販売がされていることが必要。
No.268 海賊版サイトからのAI学習データの収集が、新たな海賊版の増加といった権利侵害を助長するものとならないよう求められており、このような助長行為があった場合、個別具体的な事案によっては、侵害行為の幇助となる場合もある。
② 生成・利用段階関係(本考え方「5. 各論点について(2)生成・利用段階」)
No.333 利用者が著作権侵害の責任を問われるリスクを低減するためには、AI利用以外の場合と同様、AI生成物が既存の著作物と類似していないかを確認することが考えられる。
No.334 利用者は、学習データに既存の著作物が含まれていないこと等を立証するために、AI事業者の協力が必要となることから、利用にあたっては、そうした情報が開示されるかどうかを確認することが望ましい。
No.347 AI開発事業者・AIサービス提供事業者等の関係事業者間で、契約上の表明保証条項等(サービス提供事業者が、開発事業者に対して、類似物の生成を防止する技術的措置を講じていることの表明保証を付す等)により、適切な責任分担が行われることが望ましい。
No.355 利用者が意図的に第三者の著作物に類似した生成物を生成しようとする場合に、AI開発事業者・AIサービス提供事業者等が、侵害主体と評価される可能性を下げるための措置としては、技術的な手段に限らず、エンドユーザー向けの利用規約でプロンプトの入力内容を制限することも挙げられる。
No.364 依拠性の立証に際してどのような情報の開示が必要となるか、また、文書提出命令等の判断において文書提出義務が認められるか等は、個別具体的な事案に応じて裁判所において判断される。
No.366 依拠性の立証においては、データの開示を求めるまでもなく、高度の類似性があることなどでも認められ得る。仮に学習データが営業秘密に該当する場合には、通常の文書提出命令の場合と同様、裁判所において適切に判断される。

AI開発事業者・AIサービス提供事業者および利用者における留意点

 次に、パブコメ結果に示された、AI開発事業者・AIサービス提供事業者および利用者における実務上の留意点を解説します。

(1)事業者

 事業者は、①開発・学習段階、②生成・利用段階の双方に関わることが想定されます。

 ①開発・学習段階においては、著作権法30条の4の権利制限規定の適用を受けられるようにすることが重要と考えられます。具体的には、享受目的が併存すると判断されないよう、生成AIへの指示・入力に用いられたデータに含まれる著作物と共通した創作的表現が出力されないようフィルタリングする技術的措置を取ること(No.145)や、プロンプトの入力や生成物の出力を制限し得る技術的仕組みを採用すること(No.165)等が有益と考えられます。

 ②生成・利用段階においては、事業者が侵害主体と評価される可能性を下げるための措置として、利用者が意図的に著作権侵害の生成物を生成しようとする場合にこれを防ぐため、技術的な手段に加えて、エンドユーザー向けの利用規約でプロンプトの入力内容を制限すること(No.355)等が考えられます(出力の段階で一定のフィルタリングを講じることも有益と考えられます(No.165))。

(2)利用者

 利用者においては、②生成・利用段階において、既存の著作物の著作権を侵害しないよう気を付ける必要があります。

 本考え方の整理によれば、②生成・利用段階において、著作権侵害の2要件(依拠性・類似性)のうち、依拠性を否定するハードルは非常に高く思われるため、まずは類似性を否定できるように、AI生成物が既存の著作物と類似していないかを確認すること(No.333)、場合によっては大幅に手を加えること等が有益と考えられます。
 依拠性に関しては、利用者においては学習データに既存の著作物が含まれていないこと等を立証できるようAI事業者の協力が必要となることから、利用にあたっては、AI事業者の協力を得られるか、必要な情報開示を受けられる内容の利用規約となっているか等を確認することが望ましい(No.334)と考えられます。

 また、AI開発事業者・AIサービス提供事業者等の関係事業者間で、契約上の表明保証条項等(サービス提供事業者が、開発事業者に対して、類似物の生成を防止する技術的措置を講じていることの表明保証を付す等)により、適切な責任分担が行われることが望ましいと指摘されていることが注目されます。

今後もAIに関する議論はウォッチが必要

 パブコメ結果においても言及されるように、「AI事業者ガイドライン」(総務省・経済産業省)や「AI時代の知的財産権検討会」(内閣府知的財産戦略推進事務局)など、AIに関する関係省庁の議論も引き続きウォッチしながら、生成AIとこれに関わる事業者、また、クリエイターとの間で、新たなコンテンツの創作と文化の発展に向けた共創の関係が実現されていくことが望まれています。

消費者庁「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-」の公表

 執筆:坂尾 佑平弁護士

 2024年2月29日、消費者庁が「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-」を公表しました。
 この意識調査は、就労者を対象に、公益通報者保護法が求める内部通報制度の認知度や通報に対する意識を把握し、制度の普及や実効性向上に向けた施策の参考とすることを目的として、2023年11月にインターネット調査の形で実施されました。

 この意識調査における調査項目は以下の14項目です。

  1. 内部通報制度の理解度
  2. 通報意欲(勤務先で重大な法令違反を知った場合)
  3. 勤務先へ通報する場合の実名・匿名の選択
  4. 勤務先で信頼できる通報先
  5. 内部通報窓口の認知度
  6. 内部通報窓口の信頼度
  7. 通報を理由とする不利益取扱い禁止の認知度
  8. 役員による不正行為の是正
  9. 相談・通報の経験
  10. 相談・通報した後の心情
  11. 内部通報についての印象
  12. 一番通報しやすい先
  13. 通報者に報奨金を支払う制度についての印象
  14. 「リニエンシー制度」(通報者の刑事罰や懲戒処分を減免する制度)についての印象

 この意識調査の結果は、企業の内部通報制度を考えるうえでとても参考になります
 一例を挙げると、「勤務先の重大な法令違反を一番相談・通報しやすい先」について、内部通報制度を「よく知っている」と回答した人(1,189人)は「勤務先」の回答割合が高く、他方、制度を「知らない」と回答した人(3,646人)は「インターネット上のウェブサイト、SNS等」の回答割合が高いという結果(本調査結果52頁)を見ると、自社における内部通報制度を役職員に周知徹底することの重要さがわかります。

 企業のご担当者は、この意識調査の結果を分析し、自社の内部通報制度の体制面や運用面で見直すべき点がないかを検討することが望まれます。

「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」の公表

 執筆:遠藤 祥史弁護士

 2024年3月6日、公正取引委員会は、「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」(以下「本報告書」といいます)を公表しました。

 本報告書は、①コネクテッドTV・動画配信サービスの概要等、②コネクテッドTV関連分野の規模の広がり、③コネクテッドTV関連分野における取引実態、④市場の特性・競争状況の評価、⑤独禁法上の考え方・競争政策上望ましい対応、を内容としています。

 本報告書のポイントは、大要、以下のとおりです(「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に係る実態調査報告書(概要)」2頁参照)。

動画配信サービス提供事業

動画配信サービス提供事業
項目 論点 独禁法上の考え方 競争政策上望ましい対応
コンテンツの対価等を巡る課題 コンテンツの対価
  • 主要な事業者は優越的地位にある可能性がある。
  • 一方的に著しく低い対価を設定し、不当に不利益を与えた場合、独禁法上問題がある。
  • 対価の設定において十分な交渉を行う。
  • ユーザーの視聴状況等に係る情報提供を行う。
YouTubeの広告収益の配分
視聴データ等の共有
その他の課題 著しく低い利用料の設定
  • 事業活動を困難にさせるおそれがある場合、独禁法上問題がある。
  • 変更内容を事前に通知の上、十分に協議する。
  • 事前に十分に協議した上で、十分な猶予期間を設ける。
動画配信サービスと別サービスとの組み合わせ
  • 競争者の取引機会の減少・競争者排除の場合、独禁法上問題がある。
サービスやルール等の変更 (特に言及なし)
テレビ向けOS提供事業
項目 論点 独禁法上の考え方 競争政策上望ましい対応
自社優遇を通じた競争者排除(競合する動画配信サービス提供事業者の排除) ランキングやおすすめ表示等
  • 競争者の取引機会の減少・競争者排除の場合、独禁法上問題がある。
  • アプリ配置順等の基準を可能な限り開示し、自社と他社とで同等の条件を適用する。
  • 社内における部門間での情報遮断措置を採る。
アプリ配置順やプリインストール
競合サービスの提供制限
データの収集・利用
リモコンボタンの設置
不当に不利益を与える
行為
アプリ内広告に対する手数料徴収
  • AmazonおよびGoogleは、優越的地位にある蓋然性がある。
  • 一方的な不利益変更・要請を行い、不当に不利益を与えた場合、独禁法上問題がある。
  • 事前に十分に協議した上で、十分な猶予期間を設ける。
  • 課金システム利用の選択、他社課金システムへの誘導を許容する。
新規機能の開発等の要求
自社課金システムの利用要求

 特に、独禁法上の考え方については、論点ごとに問題となる行為類型が明記されており、実務上も参考になるといえます。

 公正取引委員会は、コネクテッドTV関連分野における競争の状況を引き続き注視するとともに、独禁法上問題となる具体的な案件に接した場合には厳正に対処する姿勢を明らかにしており、今後の動向が注目されるところです。

シリーズ一覧全44件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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