なぜBoostDraftはAIレビューに踏み込んだのか?PR 「情報が漏れれば取り返しがつかない」法務領域ならではの新しいAI設計

法務部

目次

  1. AIの導入・利用自体が目的化 「AI万能論」へのアンチテーゼ
  2. 「指摘が多ければいいわけではない」機能を研ぎ澄ませたシンプルなAIレビュー
  3. Wordとの一体化を実現する自社開発へのこだわり
  4. 「学習に使わない」の先へ AIに機密情報を渡さない設計思想
  5. AI時代の法務人材は二極化 「判断」という人に残った創造的な価値

Microsoft Word上で動作する法務文書エディタとして、インデントの調整や表記ゆれ、条番号・参照先の確認など、形式面における煩雑な作業の徹底的な効率化を追求してきた「BoostDraft」。BoostDraftは、あえて生成AI機能による内容審査を行わない独自の立ち位置を取り、大手企業や法律事務所から多くの支持を集めてきました。

そのBoostDraftが2026年、AI機能で文書の内容を一次審査する「BoostDraft AI」の提供を開始しました。なぜ、AIレビューに乗り出したのか。背景には、AIの導入や使うこと自体が目的化しつつある現状への危機感と、AI・ルールベース・人間の判断を適材適所で組み合わせ、かつ機密情報を外に出さないという、同社なりの答えがありました。

株式会社BoostDraftの創業者兼アドバイザーである渡邊弘氏に、BoostDraft AIの開発思想と、これからの法務人材に求められる付加価値について聞きました。

プロフィール

株式会社BoostDraft 創業者兼アドバイザー・弁護士 渡邊 弘 氏
西村あさひ法律事務所にてM&A/ファイナンス・国際取引を中心に契約業務に従事。その後、スタンフォードロースクール(LL.M.)のリーガルテック専門機関Codex等で英米リーガルテック調査を行う。2019年よりスタンフォード経営大学院(MBA)にて経営を学ぶ傍ら、The Corporate Legal Operations Consortium(CLOC)のJapan Chapter創業メンバーとなる。法務分野の業務効率化余地を探求すべく各国法務関係者へのインタビューを実施し、アイデアを具現化して2021年に株式会社BoostDraftを創業しCROに就任。2026年、創業者兼アドバイザーに就任。

AIの導入・利用自体が目的化 「AI万能論」へのアンチテーゼ

2026年2月、BoostDraft社は数々の世界的テック企業でプロダクトグロースを牽引してきたショーン・ユー氏をCEOとする新経営体制へ移行しました。一方で、それまで共同創業者/CRO(最高収益責任者)として同社をリードしてきた渡邊氏は、創業者兼アドバイザーに就任。自身の強みであり、最も情熱を注げるプロダクト開発に集中する体制へ移行しました。

その新体制のもとリリースされたのがBoostDraft AIです。形式面を整える作業の効率化に特化してきたBoostDraftが、なぜAIレビューの領域に踏み込んだのでしょうか。

この理由について、渡邊氏は、「多くの組織で、AIを導入して使うことが目的化していることへの憤りにも近い感情だった」と表現します。

2026年の上半期にかけて、米Meta社などのビッグテック企業が生成AIによる消費トークン量を人事評価に盛り込んだとの報道 1 が注目されました。
「とにかく生成AIを使え」という風潮下での取り組みでしたが、Uber社ではAIコーディングツールに設定した年間予算をわずか4か月で使い切る 2 など、膨大な費用を負担した企業が続出。トークン消費を目的とした不必要なタスクの実行など、成果につながっていないケースも確認されたことから、現在では利用量を増やすのではなく、必要な場面に絞ってトークン当たりの成果を高める方向へシフトしつつあります。

「本来、テクノロジーは課題を解決するための手段にすぎません。ところが、手段であるはずのAIを使うこと自体が、いつの間にか目的にすり替わってしまった。生成AIが不得意、もっといえば不必要な領域にまで使ってしまっていた」と渡邊氏は指摘します。

いま、日本のリーガル領域でも同じようなことが起きはじめています。「何でも生成AIで解決しよう」と、生成AIが不得意な領域にまで無理に適用し、膨大なコストと時間をかけて、実務ではほとんど使えない成果物が生まれているケースもあるといいます。数年前のDXブームと同じ轍を踏んでいるのです。

AIレビューツールとは別の立ち位置をとってきたBoostDraftですが、これまでも生成AIを否定していたわけではありません。むしろ、生成AIが持つ可能性には一貫して前向きでした。一方で、「AIは決して万能ではない」という事実も強く意識してきたといいます。
法務文書において、生成AIに任せるべき領域と、特定の条件や規則に従うルールベースで処理すべき領域を明確に分け、適材適所で最大の効率を生み出す。そのコンセプトを体現したのがBoostDraft AIであり、現在の「AI万能論」に対するアンチテーゼともいえます。

株式会社BoostDraft 創業者兼アドバイザー・弁護士 渡邊 弘 氏

株式会社BoostDraft 創業者兼アドバイザー・弁護士 渡邊 弘 氏

「指摘が多ければいいわけではない」機能を研ぎ澄ませたシンプルなAIレビュー

法務実務において、「AIに任せるべき領域」と「そうでない領域」の境界線はどこにあるのでしょうか。渡邊氏は、「AIに任せないほうがよいのは、ミスが許されず、処理によって文書の意味が変わってはならない領域」だと説明します。

たとえば、生成AIに契約書の「及び」「並びに」といった表記ゆれの修正を任せたとします。数千字〜長いものでは1万字を超えることもある契約書の修正だと、膨大なトークンと出力までの待ち時間を消費した挙句、ハルシネーションで本文の意味まで変えてしまうリスクがあります。ブレが許されない形式的な作業は素早く正確に処理すべきで、生成AIを使う必要はありません。

一方で、生成AIに向いているのは、アウトプットにある程度の「幅」が許容される領域です。トップクラスの弁護士10人が同じ契約書をレビューしても、指摘内容は少しずつ異なります。複数の見方が成り立つ領域こそ、生成AIの強みが最も生きる場面だといいます。

内容のレビューはAIで、形式面の修正はルールベースで、という棲み分けです。では、内容面を担うBoostDraft AIは、既存のAIレビューツールとどう違うのでしょうか。

渡邊氏によると、既存のAIレビューツールの多くは、指摘の細かさや機能の豊富さを競う傾向にあるといいます。幅広い機能を備えていることは一見便利に思えますが、現場では「機能が多すぎて使いこなせない」「AIから大量の長文コメントが返ってきて、確認するだけで疲れてしまう」といった本末転倒な事態も起きています。

そこで、BoostDraft AIでは、あえて機能を極限まで絞り込む「引き算」のアプローチを取りました。ユーザー目線で本当に必要な機能だけを残し、法務実務に特化して研ぎ澄ませています。

当然、残す機能の選定や指摘の粒度調整にも余念がありません。BoostDraft社には、第一線で活躍してきた弁護士や法務経験者が多数在籍しています。そうしたメンバーが実際の業務フローを想定してテストを重ね、「これだけ指摘が多いとかえって使いづらい」などとシビアに議論しながら開発を進めてきたといいます。

このメンバーについて渡邊氏は、「実は、『現時点では、AIよりも人間の法務人材のほうがはるかに優れている』と考えるAI懐疑派も少なくありません」と内情を明かします。厳しい目を持つプロが、「これなら現場で使える」と納得できる水準まで、徹底的に調整されているといいます。

また、大量に指摘を出す傾向のツールとは、開発思想が根本的に違うことも特徴です。選択肢や指摘が多すぎると、ユーザーは何を確認し、どう判断すればよいのか迷ってしまいます。BoostDraft AIでは、機能やボタンの数をあえて絞り込み、「ここを見るべき」という要点だけをシンプルに提示し、最終的な判断は人へ委ねる設計にしています。大量の指摘を出すことには価値を置いていません。重視しているのは、ユーザーが迷わず判断し、最終的な成果物を仕上げるための手助けができているかどうかです。

Wordとの一体化を実現する自社開発へのこだわり

他社のAIレビューツールと連携せず、あえて自社開発を選んだのも、現場での使いやすさを重視したためです。「BoostDraftのコアとなる既存機能と深く連携し、あたかもWordの標準機能であるかのように使える操作性を実現するには、自社開発しか選択肢がなかった」と渡邊氏は語ります。

他社のツールと連携する場合、業務の起点であるWordをいったん離れてブラウザを立ち上げ、ファイルをアップロードし、結果が出るまで数分待ち、それをまたWordに手作業で反映させる…といった手間が生じます。BoostDraft AIであれば、普段使っているWordの画面上でボタンを押すだけです。AIが修正案を提示し、反映したいと思えばボタンをもう一度押すだけで、変更履歴を付けた状態でWord文書に反映されます。Wordから離れることなく、これまでの業務フローを変える必要もありません。

要約や翻訳といった機能も搭載されていますが、一般的な生成AIとは使い勝手が異なります。単に文書をLLM(大規模言語モデル)に入力し、要約や翻訳の結果を返すだけではなく、BoostDraftが培ってきたルールベースの機能と連携している点が特徴です。要約文に条文番号や定義語が含まれている場合には、リファレンス機能で該当する条文や定義の内容をワンクリックで確認できます。翻訳も、契約書特有の書式や定義語の対応関係をできる限り維持したまま処理できます。こうした機能は、文書の形式や構造を保持する既存技術と生成AIを統合したからこそ実現できたものだといいます。

BoostDraft AIの利用画面イメージ。Word上でAIチャットが動作する。BoostDraftの条文参照などがチャット上でも動作する。

BoostDraft AIの利用画面イメージ。Word上でAIチャットが動作する。BoostDraftの条文参照などがチャット上でも動作する。

「学習に使わない」の先へ AIに機密情報を渡さない設計思想

法務部門が生成AIを導入するうえでは、セキュリティも大きな懸念になります。従来のBoostDraftでは、インターネット接続を必要とせず、ローカル環境で処理を完結できる仕組みを採用し、セキュリティの懸念をクリアしてきました。

しかし、近年では従業員が会社の管理外にある生成AIなどのツールを利用する「シャドーAI」が問題となっているように、生成AIやそれに類する機能を持ったツールの利用自体に警戒感を示す企業も少なくありません。現在では、入力されたデータが生成AIモデルの学習に利用されない仕組みが標準となっているものの、広く根付いた警戒感の払拭には至っていません。特に法務部門で日々扱う契約書は外部に漏れれば取り返しがつきません。

「学習に使わない」モデルの場合、契約書のデータをAIに渡すことになります。セキュリティ意識の高い会社では、手作業で匿名化したデータを用意しなければならないことも多いでしょう。

そこで、BoostDraft AIは、標準である「学習に使わない」から一歩踏み込んだ、「AIに送るデータそのものを匿名化する」という仕組みを採用しました。ユーザーはWordに統合されたチャットウィンドウ上で指示を送りますが、匿名化機能をオンにすることで、会社名・住所・日付といった機密情報が自動で匿名化された状態でAIに渡されます。さらに、AIからの応答は、伏せられた箇所が元の名称に戻された状態で表示されます。ユーザーから見れば普段どおりのやり取りでありながら、AIに渡っているのは匿名化後のデータであり、機密情報そのものが外部に漏れる心配もないといいます。
「情報が漏れれば取り返しがつかない」という契約実務の緊張感を知るメンバーが社内に多数いるからこその視点が反映されています。

BoostDraftは、「人間は既存のやり方から変わりたくない生き物だ」という前提のもとで、ユーザーに行動変容を強要しない設計や、セキュリティの観点からデータを手元に留める製品づくりを基本にするなど、導入ハードルをなるべく低くする工夫がされてきました。渡邊氏がMBA(経営学修士課程)留学時に専攻した行動経済学や行動科学をベースとした思想は、BoostDraft AIでも一貫しています。

BoostDraft AI 匿名化機能の利用イメージ。会社名・日付・住所などが自動で匿名化されたものがAIに送られる。

BoostDraft AI 匿名化機能の利用イメージ。会社名・日付・住所などが自動で匿名化されたものがAIに送られる。

AI時代の法務人材は二極化 「判断」という人に残った創造的な価値

直近では米Anthropic社による「Claude for Legal」のリリースなどで実務環境が激変するなか、これからの法務人材にはどのような付加価値が求められるのでしょうか。

この問いに、渡邊氏は「前例のない状況で考え、最終的な判断を下すこと」と断言します。現状の生成AIでは、「真に創造的な活動ができない」からです。

生成AIを1日20時間、週7日ペースで使い込んでいるという渡邊氏ですが、そのなかで感じたのが、「AIは意外にできないことも多い」ということです。たとえば、生成AIに複数のアイデア出しを指示しても、ひとつひとつはどこかで見たことのあるものばかり、ということがよくあります。並べられたアイデアを見定め、その価値を引き上げられるのは、人の創造性だけです。

「アイデアには価値がなく、エグゼキューション(実行)がすべてだ」
これは、少し前まで米シリコンバレーを中心にビジネス界で広く語られていた考えです。しかし、生成AIの登場で、これが完全に逆転しました。これからの時代、エグゼキューションは生成AIがやってくれます。価値があるのはアイデアのほうです。

法務の現場に当てはめると、「ここを直して」といった実行作業や、「こう直したほうがよいのでは」という修正提案は生成AIでも担えます。しかし、その選択肢のなかから「自社のビジネスにおいて、どのリスクを取り、どのリスクを避けるか」という最終判断は、人間にしかできない創造的な活動です。そして、「そこに法務人材のコアバリューが残る」と渡邊氏は語ります。

渡邊氏は、今後の法務人材は二極化すると予測します。一方は、生成AIにひたすらインプットを与えるだけの人材。そして、もう一方は、最終的な判断を下し、付加価値を生み出せるトップ人材です。その差は、今後ますます大きくなると見ています。

そして、渡邊氏がトップ人材になるために重要だと考えているのが、「AIを過信しないこと」です。何かを作らせたときも、出力をそのまま受け取って終わりにしてはいけません。「なぜこの修正案にしたのか」「どのようなリスクを想定しているのか」「専門知識がない人にもわかるように説明してほしい」と問い返し、生成AIとの対話を通じて、自分自身でも理解を深めていくことが大切だといいます。

「人の発想力や判断力は、さまざまな知識や経験が結び付くことで磨かれていきます。AIを、自分の代わりに考える存在ではなく、短時間で多くの視点や知識に触れるための相手として使う。その積み重ねが、思考力を鍛えます」

最後に、BoostDraft社の展望を聞きました。渡邊氏は、「今後も重厚長大なオールインワンソリューションを押し付ける気はない」と語ります。企業の法務組織のあり方や業務の進め方は千差万別。これを前提に、システムに業務を合わせる「フィット・トゥ・スタンダード」を強要するのではなく、それぞれの企業が不足している機能だけを、同社のプロダクト群から選んで導入できる形を目指す。それが、製品活用における本当の意味での適材適所だと考えています。

「AIは万能ではありません。『何でもAIに任せればよい』と考えるのではなく、AI、ルールベース、そして人間の判断を、それぞれが最も力を発揮する場面で使い分けることが重要です。BoostDraft AIが、法務実務における『適材適所』を支える存在になれればと思っています」

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