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第55回 2026年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向

法務部

シリーズ一覧全55件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  45. 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  46. 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  47. 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  48. 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  49. 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  50. 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  51. 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  52. 第52回 2026年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  53. 第53回 2026年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  54. 第54回 2026年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  55. 第55回 2026年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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目次

  1. 金融庁・東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コードの改訂
  2. 経済産業省「企業買収における行動指針」に関する解釈・ポイント・Q&Aの公表
    1. 「企業買収における行動指針」策定の経緯
    2. 「企業買収における行動指針」の解釈・ポイント・Q&A
  3. 法務省「民事裁判情報の活用の促進に関する法律」の一部施行
    1. 本法律の概要等
    2. 「民事裁判情報」の範囲
    3. 「仮名処理」のあり方
    4. 「指定法人」の概要
    5. 留意点
    6. まとめ
  4. 令和7年資金決済法改正に係る政令の公布およびパブリックコメントの結果等について
  5. 総務省「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」の公表
    1. 本ガイドラインのスコープ
    2. 対象とする脅威
    3. 脅威への対策

本稿で扱う内容一覧

日付 内容
2026年1月15日 法務省「民事裁判情報の活用の促進に関する法律」の一部施行
2026年3月27日 総務省「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」の公表
2026年5月22日 令和7年資金決済法改正に係る政令の公布およびパブリックコメントの結果等について
2026年7月21日 金融庁・東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コードの改訂
2026年7月30日 経済産業省「企業買収における行動指針」に関する解釈・ポイント・Q&Aの公表

 編集代表:藤﨑 大輔弁護士、所 悠人弁護士(三浦法律事務所)

金融庁・東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コードの改訂

 執筆:大草 康平弁護士

 金融庁および東京証券取引所は、2026年7月21日、改訂版コーポレートガバナンス・コードを公表しました。
 今回の改訂は、2015年6月1日に適用開始し、2018年6月1日に改訂、2021年6月11日に再改訂したコーポレートガバナンス・コードについて、5年ぶりに改訂するものです。
 2026年4月10日、コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表され、パブリック・コメントが行われていました(意見募集期間2026年4月10日~同年5月15日)。

 本コード改訂版では、成長投資等の経営資源の適切な配分をはじめとして、企業が中長期的な価値向上に向けた本質的な取組みに注力できるよう後押しする観点から、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象となる原則の内容を抽象的かつ概念的なものに限定し、各原則の実効的な実施を支援するための具体的な内容や趣旨・背景を記載した「解釈指針」が新設されました。

 今般の改訂は、コード策定時のプリンシプルベースの精神に立ち返るためのいわば「コードの実質化」を狙いとしており、上場会社において、自社の置かれた状況に応じ、各原則の趣旨・精神に沿った実践を行うことが期待されるとされています。

 改訂版コードの留意事項は以下です。

① 成長投資の促進 経営資源の適切な配分に関し、不断に検証を行うべき内容として、現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているかが例示されています。
②取締役会の機能強化 取締役会における独立社外取締役が占める割合が増加し、独立社外取締役の主たる役割・責務である監督機能をより効果的に果たすための環境が整いつつあることも踏まえ、特に独立社外取締役の実効性向上に向け、独立社外取締役の果たすべき役割・責務、質・量の確保、独立性確保の重要性が強調されています。

③有価証券報告書の定時株主総会前の開示

有価証券報告書は株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましく、選択肢として株主総会の開催時期の後ろ倒しも含めて検討することが考えられる旨が本コード改訂版の原則の解釈指針で補足されています。

 改訂版コーポレートガバナンス・コードは、2026年7月21日から施行され、上場会社は、遅くとも2027年7月末日までに、改訂コードに関する事項を記載したコーポレートガバナンス報告書を提出する必要があります

 コーポレートガバナンス報告書の記載事項への対応のみならず、今後の上場会社におけるコーポレートガバナンスの向上や取締役会の機能強化、株主との対話等においても参照される重要文書の5年ぶりの改訂であり、注目されます。

経済産業省「企業買収における行動指針」に関する解釈・ポイント・Q&Aの公表

 執筆:大草 康平弁護士

 経済産業省は、2026年7月30日、2023年8月31日付け「企業買収における行動指針」を維持することを前提として、買収をめぐる関係者において指針の趣旨がより適切に理解されるよう、①「『企業買収における行動指針』の解釈について」、②「『企業買収における行動指針』のポイント」および③「『企業買収における行動指針』Q&A」を新たに策定し、公表しました。公表に先立ち、これらについては、パブリックコメントが行われていました(意見募集期間2026年6月18日~同年7月17日)。

「企業買収における行動指針」策定の経緯

 経済産業省は、2023年8月31日付けで、上場会社の経営支配権を取得する買収をめぐる当事者の行動のあり方を中心に、M&Aに関する公正なルール形成に向けて経済社会において共有されるべき原則論およびベストプラクティスを提示する「企業買収における行動指針」(以下「本指針」といいます)を策定していました。

 その後、ベストプラクティスという当事者間の共通の判断枠組みの下で、真摯な買収提案に対する真摯な検討がよりいっそう実行されるようになり、日本企業が関連するM&Aの件数・金額も2024年・2025年と2年連続で増加し、本指針が参照される場面が増加している一方で、本指針の趣旨が十分に理解されていない可能性が指摘されていることも踏まえ、経済産業省は「公正な買収の在り方に関する研究会」を2026年2月に再開していました。

「企業買収における行動指針」の解釈・ポイント・Q&A

 冒頭記載の①~③の文書は、当該研究会の議論を踏まえ作成され、パブリックコメントを経て正式版が公表されました。

  1. 「『企業買収における行動指針』の解釈について(案)」
     本指針で⽰されたベストプラクティス、その根底にある「望ましい買収」の考え⽅そのものは、今⽇においても妥当であり、本指針を維持することを前提としてベストプラクティスの実践を促すべきであるとして、②「『企業買収における行動指針』のポイント」および③「『企業買収における行動指針』Q&A」を改めて⽰し、本指針の趣旨を広く周知・徹底していく旨が示されています。

  2. 「『企業買収における行動指針』のポイント(案)」
     副題として「〜より適切な実践に向けた趣旨の再確認〜」と掲げられています。本指針策定後の経営者等の認識や⾏動の実態を踏まえて、本指針の趣旨が多くの関係者により適切に正しく理解されることを⽬指して、本指針の原則論・エッセンス、留意すべき点等の重要なポイントを、経済産業省として明確にするものとされています。

  3. 「『企業買収における行動指針』Q&A」
     (1)望ましい買収、(2)真摯な買収提案、(3)真摯な検討、(4)企業価値、(5)企業価値と買収価格の関係性、(6)買収に応じる⽅針を決定する場合、(7)本指針の位置付けの7つの事項についてQ&A形式で解説がされています。たとえば、問1においては、⾼値の買収価格であることのみをもって、「望ましい買収」に当たるものではない旨と、ただし、一般的には、買収価格は、買収後の対象会社の企業価値を示す重要な要素である点に留意が必要である旨が示されています。

 経済産業省が公表するM&Aに関する各種ガイドライン等は、従前からM&A実務や裁判に際して重要な影響を有しており、今回公表の①~③の文書についても注目されます。

法務省「民事裁判情報の活用の促進に関する法律」の一部施行

 執筆:中村 朋暉弁護士、舘﨑 友輔弁護士

 2026年1月15日、民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号。以下「本法律」といいます)の一部が施行され、併せて、その施行規則(令和8年法務省令第1号。以下「本施行規則」といいます)が公布(一部は即日施行)されました。

 本連載では、本法律の法案が国会に提出された際にも取り上げましたが、改めて、本法律の概要を説明します。

本法律の概要等

 本法律は、デジタル社会の進展により民事裁判情報に対する需要が多様化していることに鑑み、民事裁判情報の適正かつ効果的な活用のための基盤の整備を図り、もって創造的かつ活力ある社会の発展に資することを目的としています(法1条)。

 本法律は、最高裁判所が指定法人に民事裁判情報を提供し、同法人が必要な仮名処理を行ったうえで、利用者に有償で提供する制度(以下「本制度」といいます)の創設等を内容とするものです。すなわち、本法律により、民事裁判情報のデータベース化が行われることになります。

 なお、本法律のうち、現時点で施行されたのは、指定法人の指定等に関する諸規定です。今後、指定法人が指定され、その業務の実施に必要な準備行為(附則2条)等を経て、2027年5月30日までの政令で定める日に全面施行されます。

「民事裁判情報」の範囲

 最高裁判所から指定法人に提供され、データベースに収録されることになる「民事裁判情報」とは、①民事訴訟および行政事件訴訟手続において作成された、②以下の電磁的記録に記載されている事項に係る情報をいいます(法2条1項1号、施行規則2条)。

  • 電子判決書
  • 電子調書(調書判決に係る電子調書)
  • 電子決定書のうち、法令の解釈適用について参考となる裁判に係るもの(具体的には、上告の却下・棄却・不受理の決定、更正決定およびその変更決定)

 なお、たとえば、営業秘密などの閲覧等制限決定により訴訟記録の閲覧等が制限される情報(民事訴訟法92条1項各号参照)は、そもそも、指定法人に提供される「民事裁判情報」からは除かれます(法7条1項かっこ書)。

「仮名処理」のあり方

 本法律により、本制度の利用者には、指定法人が民事裁判情報に必要な仮名処理を行って作成した「仮名加工民事裁判情報」が提供されることになります。

 「仮名加工民事裁判情報」とは、民事裁判情報に含まれる特定の個人の氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる情報および個人識別符号の全部または一部を削除・置換する措置を講じることにより、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないようにしたものをいいます(法2条1項3号)。

 なお、以上の措置を講じた場合であっても、たとえば、報道された情報等と照合することにより個人を識別できてしまう事態も想定されます。そのため、本制度では、個別具体的な事情に応じて、追加で必要な処理を行うことも予定されています(法8条2項5号、施行規則10条1項等)。

「指定法人」の概要

 本法律において、仮名加工民事裁判情報の作成、提供等の業務(民事裁判情報管理提供業務)は、法務大臣から全国から1つに限って指定される「指定法人」が行うものとされています(法5条1項、6条1項)。

留意点

 指定法人から民事裁判情報の提供を受けるには料金がかかります(法8条2項4号)。
 法務省の立案担当者の解説によると、一次利用者は、基本的に利用料金を支払ってデータベースの全部を利用することが想定され、特定の民事裁判情報を1件ずつ提供することは、少なくとも本制度運用開始当初においては想定されていないとのことです 1
 そのため、一次利用者は、主に判例データベース会社などの企業となり、法律実務家をはじめとする個人は、一次利用者からの二次的利用が想定されます。

まとめ

 先述のとおり、本法律は、現時点では一部が施行された段階であり、本制度の業務を実施する法人の指定をはじめ、詳細な運用は今後具体化していく予定です。企業で民事裁判情報を扱い得る法務担当者においては、今後、制度がどのように具体化していくか関心を持っておくことがよいかと思われます。

令和7年資金決済法改正に係る政令の公布およびパブリックコメントの結果等について

 執筆:藤﨑 大輔弁護士

 2026年5月22日、金融庁から令和7年資金決済法改正に係る政令・内閣府令等のパブリックコメントの結果等が公表されました。

 本件は、本連載第40回「2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向」の「5-1 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」でご紹介した資金決済法改正に係る政令・内閣府令等を整備するものです。

 主な改正の内容と改正内容ごとのパブリックコメント結果のリンクは、以下のとおりです。

改正の概要 改正資金決済法
の条文
政令・内閣府令等に
定められた内容
パブリックコメント
資金移動業関連 国境を跨ぐ収納代行への規制の適用 2条の2第2号
  • 国境を跨いで行う収納代行のうち、為替取引規制の適用を除外する類型を定める。
結果
破綻時等における利用者資金の返還方法の多様化 45条の3~45条の5等
  • 改正法による新たな資産保全方法(履行保証人債務引受契約、履行保証人保証契約および履行保証金弁済信託契約)に関して、契約を締結できる履行保証人適格者の範囲、契約の内容等を定める。
結果
第一種資金移動業者に係る「厳格な滞留規制」の緩和 51条の2第2項(法律レベルでは改正なし)
  • 第一種資金移動業者が、保全すべき利用者資金の全額につき改正法による新たな保全方法により保全を行い、かつ、早期確実な弁済体制を備えている場合にあっては、2か月を超えない期間において為替取引に関する債務を負担することができること等を定める。
結果
暗号資産・電子決済手段関連 暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令の導入 62条の21の2、63条の16の2
  • 電子決済手段等取引業者および暗号資産交換業者に対して国内保有を命じることができる資産の具体的な範囲を定める。
結果
信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の裏付け資産の管理・運用の柔軟化 2条9項
  • 特定信託受益権の裏付け資産につき、一定の国債および中途解約が認められる定期預貯金による運用を認めるにあたり、運用対象資産や上限組入比率、元本毀損防止に係る具体的な要件等を定める。
結果
暗号資産等取引に係る仲介業の創設 2条18項~20項、63条の22の2~63条の22の25等
  • 改正法により新たに創設した電子決済手段・暗号資産サービス仲介業について、登録申請書の記載事項および添付書類、利用者に対して明示、説明および情報提供する事項、一定の禁止行為、その他の利用者保護措置、帳簿書類の内容等を定める。
  • 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に係る業務のうち、銀行および保険会社ならびにその子会社等が行うことのできる範囲を定める。
結果

 改正資金決済法ならびに本件の政令および内閣府令等は、事務ガイドライン等と併せて、2026年6月1日から施行・適用されています。

総務省「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」の公表

 執筆:南 みな子弁護士、小倉 徹弁護士

 2026年3月27日、総務省から「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」(以下「本ガイドライン」といいます)が公表されました。
 本ガイドラインは、AIのセキュリティ確保のための技術的対策例を示すものです。

 本ガイドラインは、AIシステムへの攻撃に係る法的整理を行うものではありませんが、本ガイドラインに示す対策を講じ、秘密としたいデータを適切に管理しているAIシステムをAI利用者が利用することで、AIシステムから当該データが漏えいした場合でも、「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)における秘密管理性要件を満たし、その他の要件も満たすことで、不正競争防止法による保護を受けられるものと考えられる旨が示されています。

 以下では、本ガイドラインの概要を説明します。

本ガイドラインのスコープ

 本ガイドラインが対象とするAIおよび想定読者は、以下のとおりです。

対象とするAI 大規模言語モデル(LLM)およびLLMを構成要素に含むAIシステム。なお、AIエージェントは対象外。
想定読者 AI事業者ガイドラインが定義する「AI開発者」および「AI提供者」。
  • AI開発者
    AIシステムを開発する事業者(AIを研究開発する事業者を含む)。
  • AI提供者
    AIシステムをアプリケーション、製品、既存のシステム、ビジネスプロセス等に組み込んだサービスとしてAI利用者等に提供する事業者。

対象とする脅威

 本ガイドラインでは、主に以下の攻撃への対策が示されています。

直接プロンプトインジェクション攻撃 LLMに細工をしたプロンプトを入力(指示の上書き等)することで、不正な出力をさせる攻撃。
間接プロンプトインジェクション攻撃 LLMに細工をしたデータ(Web上のファイルや電子メール等)を参照させることで、不正な出力をさせる攻撃。
DoS攻撃(サービス拒否攻撃) LLMに、AIシステムが膨大な処理を必要とするプロンプト入力を行うことで、AIシステムへの想定以上の計算負荷や、経済的な損失を生じさせ、AIシステムの応答の遅延・停止を引き起こしたり、サービスの継続性を損なわせたりする攻撃。

 上述のプロンプトインジェクション攻撃やDoS攻撃(サービス拒否攻撃)はプロンプト入力のみを介して実行することも可能です。一方で、単純なプロンプト入力ではなく、あらかじめデータを汚染させるなど攻撃に一定の前提条件が必要となるものや、攻撃にあたってLLMへの執拗なアクセスが必要となるものとして、以下の脅威もあります。

データポイズニング攻撃 基盤モデルやLLMが学習するデータに細工をし、LLMに不正な出力をさせる攻撃。
細工をしたモデルの導入を通じた攻撃 細工をしたLLMをAIシステムに組み込ませ、LLMに不正な動作をさせる攻撃。
モデル抽出攻撃 LLMに繰り返しアクセスし、LLMが出力する各単語とその出現確率を分析することで、当該LLMと類似のLLMを複製する攻撃。

脅威への対策

 AI開発者およびAI提供者における直接プロンプトインジェクション攻撃、間接プロンプトインジェクション攻撃およびDoS攻撃(サービス拒否攻撃)への主な対策は以下のとおりです。

AI開発者 安全基準等の学習による不正な指示への耐性の向上
  • LLMが意図しない出力を行わないよう、安全基準を事後学習させる。
  • LLMが従うべき指示の優先度を定義し、優先度の高い指示(例:システムプロンプト)を常に優先的に処理するよう、LLMに事後学習させる。
AI提供者 システムプロンプトによる不正な指示への耐性の向上
  • システムプロンプトに制約事項やセキュリティ上の注意事項などを設定することで、LLMが意図しない出力を行わないようにする。
  • システムプロンプトには、出力を意図しない機密情報(例:APIキー)等を直接記述することを避け、LLMが必要に応じて参照できるよう別個に管理することも重要。

ガードレール等による入出力や外部参照データの検証
  • 入力プロンプトの検証
    LLMに入力されるプロンプトに意図しない出力を行わせる不正な指示が含まれていないか検証し、そのような指示を検知した場合には、プロンプトの一部削除による無害化や、処理の拒否等の措置を講じる。

外部参照データの検証
  • たとえばWebサイトや外部のデータベースなど、外部データを参照する場合には、これらに意図しない出力を行わせる不正な指示が含まれていないか検証し、そのような指示を検知した場合には、処理の拒否等の措置を講じる。
  • LLMに、入力プロンプトと外部参照データを明確に区分させ、外部参照データに高い注意を払わせる。

出力の検証
  • 出力を意図しない情報が出力に含まれていないか検証し、検知した場合には応答を拒否する。
  • 単語の出現確率など、攻撃者に悪用され得る情報を必要に応じて応答から除外することで、モデル抽出攻撃への対策となる。

オーケストレータやRAG等の権限管理
  • LLMや連携システムを操作するオーケストレータに係る権限を必要最小限とすることで、LLMが攻撃を受けた場合の被害拡大を抑制する(最小権限の原則)。
  • RAG用のデータおよびデータストアへの参照権限をユーザや役割に応じて適切に設定する。
共通(基本的対策) 情報システムのセキュリティ確保に必要とされる以下のような基本的な対策を行うことが重要。
  • 監査ログの保存によるトレーサビリティの確保。
  • システムへの膨大なアクセスによる攻撃を抑制するためのレートリミットの導入。
  • 開発環境における開発者の適切な権限管理。
  • システムの構成要素のセキュリティに係る信頼性の確認。

  1. 石田佳世子・加藤邦太「『民事裁判情報の活用の促進に関する法律』の概要」ジュリスト1622号37頁 ↩︎

シリーズ一覧全55件

  1. 第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  2. 第2回 2022年4月・5月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  3. 第3回 2022年6月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  4. 第4回 2022年7月以降も注目 企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  5. 第5回 2022年6月公表の「骨太方針」、開示に関する金融庁報告書、および7月のCGSガイドライン再改訂に関する対応のポイント
  6. 第6回 2022年3月〜6月の医薬品・医療に関する法律・指針等に関する日本・中国の最新動向と対応のポイント
  7. 第7回 2022年5月〜6月の人事労務・データ・セキュリティ・危機管理に関する企業法務の最新動向・対応のポイント
  8. 第8回 2022年9月に押さえておくべき企業法務に関する法改正と最新動向・対応のポイント
  9. 第9回 2022年10月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント
  10. 第10回 2022年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  11. 第11回 2022年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  12. 第12回 2023年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  13. 第13回 2023年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  14. 第14回 4月施行の改正法ほか2023年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  15. 第15回 2023年4月施行の改正法を中心とした企業法務の最新動向
  16. 第16回 6月施行の改正法ほか2023年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  17. 第17回 2023年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  18. 第18回 2023年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  19. 第19回 2023年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  20. 第20回 2023年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  21. 第21回 2023年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  22. 第22回 2023年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  23. 第23回 2023年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  24. 第24回 2024年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  25. 第25回 2024年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  26. 第26回 2024年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  27. 第27回 4月施行の改正法ほか2024年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  28. 第28回 2024年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  29. 第29回 2024年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  30. 第30回 2024年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  31. 第31回 2024年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  32. 第32回 2024年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  33. 第33回 2024年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  34. 第34回 2024年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  35. 第35回 2024年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  36. 第36回 2025年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  37. 第37回 2025年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  38. 第38回 2025年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  39. 第39回 4月施行の改正法ほか2025年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  40. 第40回 2025年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  41. 第41回 2025年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  42. 第42回 2025年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  43. 第43回 2025年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  44. 第44回 2025年9月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  45. 第45回 2025年10月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  46. 第46回 2025年11月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  47. 第47回 2025年12月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  48. 第48回 2026年1月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  49. 第49回 2026年2月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  50. 第50回 2026年3月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  51. 第51回 4月施行の改正法ほか2026年4月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  52. 第52回 2026年5月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  53. 第53回 2026年6月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  54. 第54回 2026年7月に押さえておくべき企業法務の最新動向
  55. 第55回 2026年8月に押さえておくべき企業法務の最新動向
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