Legal Update

第1回 2022年4月施行の改正法を中心とした最新動向と対応のポイント

法務部

目次

  1. 改正個人情報保護法の施行等
    1. 令和2年改正の全面施行
    2. 令和3年改正の一部施行等
  2. 改正著作権法の一部施行
  3. 改正育児介護休業法の施行と中小企業のパワハラ防止措置義務
    1. 改正育児介護休業法
    2. 労働施策総合推進法によるパワハラ防止措置義務
  4. 東京証券取引所の新市場区分への対応
  5. タイ個人情報保護法の施行予定とベトナム個人情報保護政令の草案
    1. タイにおける個人情報保護法の動向
    2. ベトナムにおける個人情報保護法の動向
  6. 欧州委員会が「コーポレートサステナビリティ・デューデリジェンス指令案」を公表

 この度、三浦法律事務所は、企業法務分野を中心とした最新の動きをご紹介するLegal UpdateをBUSINESS LAWYERSに掲載させていただく運びとなりました。各法分野において法改正等が頻繁に行われるようになり、「直近の法改正の動きを見逃していた」「至急社内で対応したい」といったご相談が増えています。

 そこで、日々の業務でお忙しい企業の法務部の方々に、原則月1回、一覧性のある形で最新の改正事項等をできる限りタイムリーにお届けすべく、本連載を充実したものにしていきたいと考えております。

 創刊号となる4月号および5月号では、2022年4月に施行される改正法の内容を中心にご紹介します。これを機に、4月施行の改正事項をご確認いただき、対応できていない部分についての検討に役立てていただければ幸いです。

 2022年4月 三浦法律事務所 執筆者一同 (編集代表:坂尾 佑平・渥美 雅之)

本稿で扱う内容一覧

日付 内容
2022年1月1日 改正著作権法の一部施行(放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化)
2022年2月23日 欧州委員会「コーポレートサステナビリティ・デューデリジェンス指令案」公表
2022年4月1日 改正個人情報保護法の全面施行
2022年4月1日 個人情報保護法整備法の一部施行(地方公共団体等に適用される規定以外の規定)
2022年4月1日 改正育児介護休業法の一部施行(育児休業制度等に関する事項の周知や意向確認の義務付け等)
2022年4月1日 労働施策総合推進法の一部施行(中小企業に対するパワハラ防止措置義務)
2022年4月4日 東京証券取引所の新市場区分移行
2022年5月31日 タイ個人情報保護法の施行
2022年6月2日までの
政令で定める日
改正著作権法の一部施行(国会国立図書館が絶版等資料のデータを事前登録した利用者に直接送信すること等)
2022年10月1日 改正育児介護休業法の一部施行(男性育休の促進等)
2023年4月1日 改正育児介護休業法の一部施行(育児休業の取得の状況の公表の義務付け)
2021年5月19日から起算して2年を超えない範囲内に
おいて政令で定める日
個人情報保護法整備法の一部施行(地方公共団体等に適用される規定)
2023年6月2日までの
政令で定める日
改正著作権法の一部施行(絶版等資料以外の図書館資料について)

改正個人情報保護法の施行等

 執筆:小倉 徹・金井 悠太

令和2年改正の全面施行

 2020年6月12日に公布された「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」に基づく個人情報の保護に関する法律の改正法が、2022年4月1日に全面施行されました。

 同改正により、下記の事態が発生し、または発生したおそれがある場合、個人情報保護委員会への報告(速報・確報)および本人への通知が義務付けられます(個人情報保護法26条 1)。

  • 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等(個人情報保護法施行規則7条1号)
  • 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等(個人情報保護法施行規則7条2号)
  • 不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等(個人情報保護法施行規則7条3号)
  • 1000人分を超える個人データの漏えい等(個人情報保護法施行規則7条4号)

 また、本人による保有個人データの開示請求に際し、電磁的記録の提供も含め、本人が指示した方法により開示することが義務付けられます(個人情報保護法33条2項)。

 改正法は、これら以外にも事業者に追加の対応を求める改正点を複数含みます。主なものとしては以下が挙げられます。

  • 外国にある第三者への個人データの提供に際しての本人への情報提供の充実(個人情報保護法28条2項、3項)
  • 個人関連情報の規制の新設(個人情報保護法31条)
  • 保有個人データに関する公表事項の追加(安全管理措置等)(個人情報保護法32条1項)
  • 第三者提供記録の開示の義務化(個人情報保護法33条5項)
  • 保有個人データの利用停止、消去および第三者提供の停止請求の要件の緩和(個人情報保護法35条1項、5項)

 一方で、新しく創設された「仮名加工情報」(他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報。個人情報保護法2条5項)については利用目的の制限が緩和されるなど(同法41条9項)、データ利活用を促進する観点での改正点も含んでいます。

令和3年改正の一部施行等

 2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「整備法」といいます)に基づく個人情報の保護に関する法律の改正法についても、2022年4月1日に一部が施行されました。

 すなわち、整備法により、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政機関等個人情報保護法の3法の統合が果たされる結果、特に医療分野・学術分野においては公的部門および民間部門各部門の垣根を超えた連携医療、共同研究の活性化が期待されることとなります 2

 また、地方公共団体等における個人情報の取扱いに係る統一的なルールの策定、個人情報保護委員会による監督体制の一元化も図られることになります。

 このように、全体として法の規律や監督体制の統一・一元化を主眼とした改正ではありますが、学術研究に係る適用除外規定の精緻化など、より個別的な改正点も含まれます。

 以上の改正のうち、整備法50条に基づき、まずは地方公共団体等に適用される規定以外の規定について2022年4月1日に施行され、整備法51条に基づき、地方公共団体等に適用される規定については整備法の公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます。

改正著作権法の一部施行

 執筆:遠藤 政佑・松田 誠司・西川 喜裕

 2021年に成立した改正著作権法が段階的に施行されており、2022年1月1日から、同改正法のうち放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する規定が施行されました。主な内容は下記のとおりです。

  • 従前、学校教育番組の放送等において、権利者の許諾なく著作物等を利用できることを定める権利制限規定が置かれていたところ、権利制限の対象が同時配信等に拡充された
  • 従前、権利者との協議が整わない場合において、放送について文化庁の裁定を受けて著作物等を利用できる制度が存在しているところ、同制度の対象が同時配信等に拡充された
  • 権利者が別段の意思表示を契約締結時に行うことなく放送番組での利用を許諾した場合、放送だけでなく、同時配信等での利用も許諾したと推定する「許諾推定規定」が創設された
  • レコード等や過去の放送番組について、放送事業者が権利者に報酬を支払うことにより、事前許諾なく同時配信等を行うことが可能となった

 また、2022年6月2日までの政令で定める日に施行される改正は、国会国立図書館が絶版等資料のデータを事前登録した利用者に直接送信することなどを内容としています。

 なお、絶版等資料以外の図書館資料についての改正は、2023年6月2日までの政令で定める日に施行されます。

改正育児介護休業法の施行と中小企業のパワハラ防止措置義務

 執筆:菅原 裕人・大村 剛史

改正育児介護休業法

 2021年6月に改正された改正育児介護休業法は段階的に施行されることとなっており、第1弾として、2022年4月1日に下記の改正が施行されました。

  1. 妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主が育児休業制度等に関する事項の周知や意向確認の義務付け
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務付け
  3. 有期雇用労働者の育児・介護休業要件において、引き続き雇用された期間が1年以上であることの要件を撤廃(ただし、労使協定によってこの要件を復活させることは可能)

 また、第2弾の施行として、2022年10月1日から下記の制度が実施されることになっています。

  1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の制度
  2. 育児休業の分割取得制度

 さらに、第3弾として、2023年4月1日から育児休業の取得の状況の公表の義務付けも開始されることになります。これらの改正法の施行時期を見据え、施行時期までに準備を進める必要があります。

労働施策総合推進法によるパワハラ防止措置義務

 2019年6月に改正された労働施策総合推進法によるパワハラ防止措置義務として、2022年4月1日から、中小企業においても下記の措置を講じなければならなくなりました。

  1. 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  4. 併せて講ずべき措置(プライバシー保護等)

 中小企業はこれまで対応を猶予されていたものですが、今後はこれらの措置を講じなければなりませんので、未対応の場合には急ぐ必要があります。

東京証券取引所の新市場区分への対応

 執筆:大草 康平・峯岸 健太郎

 2022年4月4日に、東京証券取引所において新市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)への移行が行われました。

 これに伴い、プライム市場の上場会社においては、2021年6月に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードにおけるプライム市場の上場会社のみを対象とする6原則を反映したコーポレート・ガバナンスに関する報告書を、同日以降最初の定時株主総会後に遅滞なく提出する必要があります。

 具体的には下記のとおりであり、グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場とされる、プライム市場のコンセプトに沿った内容となっています。

  • 独立社外取締役3分の1以上の選任(原則 4−8)
  • 過半数を独立社外取締役とする指名・報酬委員会の設置(補充原則 4−10①)
  • 支配株主を有する場合の独立社外取締役の過半数選任または利益相反取引に関する特別委員会の設置(補充原則 4−8③)
  • 議決権電子行使プラットフォームの利用(補充原則 1−2④)
  • 英語での情報開示・提供(補充原則 3−1②)
  • TCFD(気候変動情報開示タスクフォース)やこれと同等の情報開示の充実(補充原則 3−1③)

 なお、スタンダード市場、グロース市場の上場会社については、新市場区分への移行に伴い新たな対応が必要となる原則はありません。

タイ個人情報保護法の施行予定とベトナム個人情報保護政令の草案

 執筆:井上 諒一、渡邉 雄太(M&Pアジア)、樽田 貫人(M&Pアジア)

 日本の個人情報保護法制に関するアップデートは上記で説明しましたが、東南アジアにおいても個人情報保護法制につき動きがあります。

 今回は、タイとベトナムにおける動きについて紹介します。

タイにおける個人情報保護法の動向

 タイにおいては個人情報の取扱いを包括的に定めた法律はありませんでしたが、2019年5月27日に、タイ個人情報保護法が公布されました。その主要部分については、企業における準備が十分でないことを背景に、2度にわたり施行が延期されましたが、更なる延期がなければ2022年5月31日に施行される予定です。

 同法においては、データ保護責任者(DPO:Data Protection Officer)の任命義務やセンシティブデータの取扱いに関する厳しい要件等が定められており、タイに進出している日系企業としても、施行に向けて対応を完了しておくことが求められます。

ベトナムにおける個人情報保護法の動向

 ベトナムでは、2021年9月に、ベトナム個人情報保護政令の草案が公表されています。
当該草案では、センシティブ個人情報を処理する場合や、ベトナム人の個人情報をベトナム国外に移転させる場面において、個人情報保護委員会への事前の登録が要求されています。また、この登録手続に際して、個人情報保護委員会に対して、さまざまな情報を提出する必要があるとされています。

 ベトナム個人情報保護政令では、個人情報に対する政府の関与を強める内容となることが想定されており、今後の動向が注目されます。

欧州委員会が「コーポレートサステナビリティ・デューデリジェンス指令案」を公表

 執筆:坂尾 佑平・渥美 雅之

 2022年2月23日、欧州委員会は、会社に対してサプライチェーンにおける人権保護、環境保護に係るデューデリジェンスおよびこれらのリスク回避対応策の策定等を義務付ける “Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence” の案(仮訳:コーポレートサステナビリティ・デューデリジェンス指令案)を公表しました。

 欧州委員会はこれまでも、企業活動におけるサステナビリティを確保するための法的拘束力のないガイダンス等を公表してきましたが、本指令案は加盟国に対して法制化を義務付ける法的拘束力のあるものとして注目されます。
本指令案は、欧州域外の会社であっても、欧州域内において一定規模の売上高を有する企業に対して義務を課すものとなっており、欧州において一定のプレゼンスを有する日本企業にとっても影響が出てくると考えられます。

 本指令案は、対象となる企業に対して下記の対応等を義務付けています。

  1. 人権・環境デューデリジェンスを会社のポリシーに含めること
  2. バリューチェーンを含めた自社の事業活動に伴う人権・環境への負の影響を特定し、これらを防止するための措置を講ずること
  3. 人権・環境問題に係る苦情処理手続を設置・維持すること

 また、加盟国は、本指令案に基づく国内法を制定し、当該国内法違反した場合の制裁を規定しなければならないとしています。

 企業活動における人権・環境保護は各国で課題となっており、日本においても人権デューデリジェンスの指針策定および法制化の可能性について報道されています 3。欧州における本指令案の内容が、日本を含めた各国における今後の同種法令整備への参考となると考えられ、その意味でも本指令案の内容が注目されます。


  1. なお、2022年4月1日時点における条文番号を引用しており、以下も同様です。 ↩︎

  2. この令和3年改正個人情報保護法の内容を踏まえて、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の改正も2022年4月1日に施行されました。 ↩︎

  3. 2022年2月14日付け日本経済新聞「強制労働排除へ現地調査 政府が企業に指針、法制化視野」、経済産業省ニュースリリース「第1回『サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会』を開催します」(2022年3月8日)  ↩︎

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