BUSINESS LAWYERS COMPLIANCE 導入事例
第12回 「営業表彰の文化を、コンプライアンスにも」。"セゾンらしさ"で進める、全従業員参加型のコンプライアンス推進とBLC活用PR
法務部
シリーズ一覧全11件
- 第1回 年間ロードマップに組み込んだ「全社を巻き込む」研修とは
- 第2回 「受講率が不明」な手作り研修からの脱却。IPO準備を加速させた「全従業員に届く」コンプライアンス体制の作り方
- 第3回 コンテンツ内製の限界。「半月がかりのパワポ作成」から脱却し、担当者の工数削減と従業員の「満足度」を両立させた研修
- 第4回 動画による研修を通じて、全社員のコンプライアンス知識の底上げを実現
- 第6回 マンネリ化した研修から脱却。「分かりやすさ」で従業員の心を掴み、コンプライアンス意識を底上げした方法
- 第7回 「コンプライアンス浸透」の 課題解決の鍵は“リーダー制度”と“ドラマ研修”にあった
- 第8回 妥協なき講師選定で現場が納得する研修を。形式的運用から脱却し、実務に直結させるまで
- 第9回 「部門任せ」の研修体制から脱却。顧客の信頼を守る、全従業員3,000名へのコンプライアンス浸透の仕組みづくり
- 第10回 「答え合わせができない仕事」に確信を。実務経験豊富な弁護士のロールプレイ研修で磨いた、グループ全体の内部通報対応力
- 第11回 内製のコンプライアンス研修からの脱却。法務イントラへの常設で実現した、"いつでも届く"コンプライアンス教育
- 第12回 「営業表彰の文化を、コンプライアンスにも」。"セゾンらしさ"で進める、全従業員参加型のコンプライアンス推進とBLC活用
目次
「コンプライアンスは、なかなか評価されにくい領域です。だからこそ、現場が"自分から動きたくなる"仕掛けを作りたい」――株式会社クレディセゾンのリスク統括部 コンプライアンスグループでは、こうした問題意識のもと、全従業員を巻き込む独創的な取組みを次々と打ち出しています。3年前に20名ほどだったリスク統括部の人員は、体制整備を進めるなかで倍増しました。コンプライアンスを「やらなければならないこと」から「自分たちで動きたくなる活動」へと変えていく挑戦が、いま同社で進んでいます。
今回お話を伺ったのは、コンプライアンスグループ 部長の青木 一雄様と、社内研修を担当されている田原 裕也様、伊藤 彩華様。営業表彰の文化を活かしたコンプライアンス表彰式、社内ポータルの「瓦版」、そして今後構想中のライセンス制度――。"セゾンらしさ"を貫きながら全従業員を巻き込んでいく取組みと、内製研修の限界を超えるためのBUSINESS LAWYERS COMPLIANCE(BLC)活用について、詳しく伺いました。
株式会社クレディセゾン
設立:1951年(昭和26年)5月1日
従業員数:3,446名
事業内容:ペイメント、リース、ファイナンス、不動産関連、グローバル
青木 一雄 様
所属部署:リスク統括部 コンプライアンスグループ
役職:部長
担当業務:コンプライアンスグループ全体のマネジメント。法律・契約・知財、マネー・ローンダリング対策、業務委託管理、諸規程・教育・個人情報の3チームを統括。
田原 裕也 様、伊藤 彩華 様
所属部署:リスク統括部 コンプライアンスグループ
担当業務:社内コンプライアンス教育、コンプライアンス委員会の運営、コンプライアンス表彰式の企画・運営。
課題: 内製研修の限界。「知識を伝えるだけ」では行動に結びつかない
まず、BLC導入前のコンプライアンス研修は、どのように実施されていましたか?
田原様:
以前は完全に内製で、社内で資料を作成し、その資料をもとに音声を吹き込んだ動画を作って、各部門に展開して受講してもらう、というやり方でした。テーマも、当社のカード事業に関わる個人情報や資金決済法といった領域を中心に、その時々の情勢に応じて追加していく形です。
研修の準備にはどのくらい時間がかかっていましたか?
田原様:
1テーマあたり、確認や調整も含めると1〜2ヶ月かかることもありました。法務担当のメンバーに「いま会社で必要としている情報は何か」を確認したり、ルールや規則をどう噛み砕いてアウトプットするかを検討したり、さらに個人情報担当のチェックも経て、最終的にリスク統括部コンプライアンスグループ部長の決裁を取って、ようやく社内に展開できる状態になります。エビデンスも含めて整える必要があるので、相当な工数を割いていました。

課題はどのあたりにあったのでしょうか?
田原様:
一番の課題は、「知識を伝える」ことが中心になってしまい、それをどう実務に活かすか、どう行動に移してもらうかというところまで研修で踏み込めていなかったことです。受講した直後は「そうなんだ」と感じてもらえても、それを自分ごとに置き換えてアウトプットするところまで持っていけていない、と感じていました。
青木様:
内製の資料や動画で正確な情報を伝えようとすると、どうしても堅苦しくなってしまいます。その堅さが、現場の従業員にとって学びにくさにつながってしまっていました。

教育のあり方そのものを見直す必要があると感じたきっかけは、どこにあったのでしょうか?
田原様:
数年前までは、教育に一切お金をかけていなかった時期もありました。「受けなければならないから受けている」といった空気が現場にあって、なぜこの研修を受けるのか、目的が腹落ちしないまま受講だけが進んでいく状態でした。「このままでは行動変容に結びつかない研修を続けることになる」という危機感が、見直しの出発点でした。
取組み:行動変容を促すための「コンプライアンス表彰式」
行動変容を促すために、どのような取組みを始められたのですか?
伊藤様:
大きな柱の1つが「コンプライアンス表彰式」です。コンプライアンスというと、どうしても「決まったことを義務としてやらなければいけない」という押しつけがましいイメージがついて回ります。でも本当は、現場では各部門が細かな工夫や試行錯誤を積み重ねていて、それが横に共有されていないだけなんです。そうした取組みをまずは表に出してもらい、横展開していこう、という発想で企画しました。去年から少しずつ形になってきており、2026年7月には社長を呼んで、本格的な表彰式を行う予定です。
「営業表彰」の企業文化が下敷きになっているそうですね。
青木様:
当社にはもともと、営業で結果を出した人を表彰する文化が根づいていました。「それをコンプライアンスに応用しよう」というのが発想の原点です。他の企業の事例を参考にしたわけではなく、自社の文化を起点に組み立てています。
募集方法など、表彰の設計について教えてください。
伊藤様:
表彰の対象は全従業員です。各部門のコンプライアンス責任者や担当者、現場のマネージャーなどから、それぞれの取組みを応募してもらう形にしました。第1回は最終的に47件もの応募が集まりまして、これは私たちの想像をはるかに超える数でした。応募された内容も、非常にバリエーション豊かでした。たとえば、自分ごと化を促すために「コンプラーマン」というオリジナルキャラクターを作って推進している部門もあれば、事件のシナリオに沿って行動を選ぶというシミュレーションゲーム形式の研修を自作している部門もありました。私たち教育担当の側が、現場の創意工夫から学ばせてもらった部分も大きかったです。
表彰の選考プロセスについて教えてください。
伊藤様:
第1回は、応募いただいた中からまず事務局で最終候補を3部門に絞り込み、その3部門にコンプライアンス委員会の場で役員へ発表・アピールしていただいたうえで、最終的に役員が優勝を決定する、という流れで進めました。今年度に予定している第2回も基本の流れは同じで、最終候補を5部門に増やしています。優勝した部門には、景品もご用意しています。
応募を集めるためには、現場に届く周知の工夫も必要ですよね。
田原様:
おっしゃるとおりです。紙ベースで「お願いします」と発信するだけでは、なかなか動いてはくれません。事務局メンバーで「どうしたら気持ちが伝わるか」と考え、執行役員やリスク統括部コンプライアンスグループ部長の青木にも協力を仰ぎました。たとえば、応募呼びかけ動画や、役員メッセージ動画、応募手順を解説する動画などを制作し、伝え方そのものを工夫しています。
青木様:
当社の従業員には、自分たちが「楽しい」「価値がある」と思えるものに対しては、自ら動いていくという気質があると感じています。だからこそ、こちら側がうまく方向づけをして、その工夫に価値があることに気づいてもらえれば、現場は自走してくれる。私たちの役割は、現場が積み上げてきた工夫を拾い上げて、横に広げる「場」をつくることだと考えています。

仕組み:各部門の自主性を引き出す「責任者・担当者制度」と「瓦版」
各部門との連携体制について、もう少し詳しく教えてください。
伊藤様:
当社では、各部門にコンプライアンス責任者と担当者を置いています。コンプライアンスを推進する役割を、現場側にもしっかりと担ってもらう体制です。年度初めには、その責任者・担当者に役割を改めて認識してもらうための研修も実施しています。
事業部の方々の意識は、年々変わってきている実感はありますか?
田原様:
以前は「営業活動が最優先で、コンプライアンスは二の次」という空気もありました。ただ、ここ数年でコンプライアンス意識が全社的に高まってきていて、研修などにも協力的な部門が増えていると感じます。
事業部の方々の意識は、年々変わってきている実感はありますか?
伊藤様:
部門ごとの受講率を社内公表しています。100%に達していない部門が一目でわかるようにしており、課長以上のマネージャーと、各部門のコンプライアンス推進担当者は、自部門のメンバーの受講状況まで確認できるようになっています。「うちの部署、まだ受けていない人がいるから受講を促そう」と、現場のマネージャー自身が動ける仕組みです。
責任者・担当者向けには、どのような研修を実施されていますか?
青木様:
通常の研修に加えて、過去にコンプライアンス上の問題を起こしてしまった部門の部門長に登壇してもらい、当時何があったか、どう改善してきたかを語ってもらう「座談会」形式の研修も企画しました。生々しい話を本人に語ってもらうため、登壇の交渉も大変でしたが、参加した責任者・担当者からは「自分ごととして受け止められた」と非常に好評でした。

コンプライアンスに関する情報を、社内ポータルで発信されているそうですね。
田原様:
はい、昨年から「瓦版」と名付けた記事を当社のポータルサイトで発行しています。コンプライアンスはどうしても堅いと思われがちで、関連する資料を読むのもつらいと感じる人もいるようです。そこで、2〜3分で読める短い記事を、4コマ漫画や写真画像を交えながら発信しています。新しい規程ができたときも、「こういうものができました」と伝えるだけではなく、「なぜ必要なのか」「どんな影響があるのか」までセットで届けるようにしています。
BLC活用:BLC動画を活用し、扱うテーマや切り口の選択肢を広げる
BLC導入後の変化について教えてください。
田原様:
私たちが内製の研修で課題に感じていたのは、知識を伝えるだけで終わらせず、いかに「自分ごと化」して行動につなげてもらうかという点でした。正確さを担保しようとすると、どうしても伝え方が堅くなり、受講のハードルも上がってしまいます。BLCの動画教材は、正確でありながらもわかりやすく、内製とは違う角度からコンプライアンスにアプローチできる内容になっています。当社では、BLC動画を社内のコンプライアンス教育のラインアップに組み込み、内製の研修と組み合わせて活用しています。
教育担当のお立場から、BLCのメリットはどこに感じていますか?
田原様:
大きく2つあると感じています。1つは、教育担当者として扱えるテーマや届け方の選択肢が広がることです。内製だけでカバーしようとすると、研修で扱うテーマや切り口がどうしても限られてしまいます。BLCのような外部教材があることで、現場の関心や情勢に応じて柔軟に組み合わせられるようになりました。もう1つは、準備工数の重さを考えたときの安心感です。従前は研修資料の内製に1テーマあたり1〜2ヶ月かかっていたことを踏まえると、すぐに使える動画教材があること自体が大きな後押しになります。そのぶん、私たちが本当に時間をかけたい「行動変容に結びつく教育設計」、つまり表彰式や責任者向け研修の企画、瓦版の制作といった部分に、エネルギーを集中できるようになっています。
展望:ライセンス制度で、「楽しく学べる」コンプライアンスへ
今後、教育の打ち手をどのように広げていきたいですか?
田原様:
いま構想しているのは、「コンプライアンスのライセンス制度」です。たとえば、夏休みのラジオ体操でスタンプを集めるようなイメージで、試験に合格すればスタンプがもらえ、一定数貯まるとランクが上がっていく――そんな仕組みを作り、「楽しみながら学んでもらう」「進んで学んでもらう」方向に、教育のあり方をシフトさせていくつもりです。
たとえば、これまでコンプライアンスグループでは研修のテーマ選定や資料準備、実施のすべてに携わってきましたが、ゆくゆくは資料さえ用意しておけば、各部門が興味のあるテーマを自ら選んで学んでくれる形にしたいですね。
教育担当のお立場から、BLCのメリットはどこに感じていますか?
青木様:
大きく2つあると感じています。1つは、教育担当者として扱えるテーマや届け方の選択肢が広がることです。内製だけでカバーしようとすると、研修で扱うテーマや切り口がどうしても限られてしまいます。BLCのような外部教材があることで、現場の関心や情勢に応じて柔軟に組み合わせられるようになりました。もう1つは、準備工数の重さを考えたときの安心感です。従前は研修資料の内製に1テーマあたり1〜2ヶ月かかっていたことを踏まえると、すぐに使える動画教材があること自体が大きな後押しになります。そのぶん、私たちが本当に時間をかけたい「行動変容に結びつく教育設計」、つまり表彰式や責任者向け研修の企画、瓦版の制作といった部分に、エネルギーを集中できるようになっています。
最後に、コンプライアンスを推進していくうえで、御社が大切にされている考え方を教えてください。
青木様:
当社には、「やってみよう」を後押しする文化があります。「失敗しても次に活かせばいい」と捉えてくれる。コンプライアンスについても、「これをやりたい」と私たちが申請すれば、決裁してもらえる土壌があります。だからこそ、表彰式のような新しい取組みにも踏み出せましたし、ライセンス制度のような構想も前に進められる。ともすれば「やらされ感」になりやすいコンプライアンス研修だからこそ、当社ならではの組織文化を活かして、楽しさや意義を実感できるものに設計していくことが大事だと考えています。
「コンプライアンスにも、営業表彰の文化を」。クレディセゾン様の取組みは、一見コンプライアンスとは結びつきにくい「楽しさ」「自分ごと化」「自主性」というキーワードを、自社の文化を起点に組み合わせて形にした、非常に独創的なものでした。 全従業員を対象にした表彰制度、現場の創意工夫を拾い上げて横展開する仕組み、社内ポータルの「瓦版」、そして構想中のライセンス制度。これらの取組みの根底にあるのは、「行動変容に結びつかない研修では意味がない」という強い問題意識と、「現場は方向づけさえすれば自走できる」という従業員への信頼です。BLCのような外部教材も、その全体の仕組みのなかで「教育の選択肢を広げる」1つのピースとして活用されています。 コンプライアンスを"やらされ仕事"から"自分たちで動きたくなる活動"へと転換させていきたい――そう考えるすべてのコンプライアンス担当者にとって、クレディセゾン様の取組みは、「自社らしさをどう設計に組み込むか」という視点で多くのヒントを与えてくれる事例ではないでしょうか。
シリーズ一覧全11件
- 第1回 年間ロードマップに組み込んだ「全社を巻き込む」研修とは
- 第2回 「受講率が不明」な手作り研修からの脱却。IPO準備を加速させた「全従業員に届く」コンプライアンス体制の作り方
- 第3回 コンテンツ内製の限界。「半月がかりのパワポ作成」から脱却し、担当者の工数削減と従業員の「満足度」を両立させた研修
- 第4回 動画による研修を通じて、全社員のコンプライアンス知識の底上げを実現
- 第6回 マンネリ化した研修から脱却。「分かりやすさ」で従業員の心を掴み、コンプライアンス意識を底上げした方法
- 第7回 「コンプライアンス浸透」の 課題解決の鍵は“リーダー制度”と“ドラマ研修”にあった
- 第8回 妥協なき講師選定で現場が納得する研修を。形式的運用から脱却し、実務に直結させるまで
- 第9回 「部門任せ」の研修体制から脱却。顧客の信頼を守る、全従業員3,000名へのコンプライアンス浸透の仕組みづくり
- 第10回 「答え合わせができない仕事」に確信を。実務経験豊富な弁護士のロールプレイ研修で磨いた、グループ全体の内部通報対応力
- 第11回 内製のコンプライアンス研修からの脱却。法務イントラへの常設で実現した、"いつでも届く"コンプライアンス教育
- 第12回 「営業表彰の文化を、コンプライアンスにも」。"セゾンらしさ"で進める、全従業員参加型のコンプライアンス推進とBLC活用