AIレビュー全盛期、取り残された95%を動かす「BoostDraft」の法務DXPR 法務の“ムダ”徹底排除で価値創出に集中できる法務組織へ

法務部

目次

  1. テクノロジーの進化と取り残された95%の人々…「第一歩に気づかせない」行動科学から生まれた開発思想
  2. AIレビューとの共存 ムダな作業をなくし、思考を止めない環境の作り方
  3. Excelにも対応!文書の比較にまつわる課題を解決する「BoostDraft Compare」
  4. AIが解決できない無数の課題 法務のムダが消えた先にあるもの

前回実施した2024年6月の取材から約1年。生成AIの技術的進化は、私たちの想像を超える速度で進んでいます。法務業務においてもAIの活用はもはや当たり前となり、多くのサービスが最先端の技術による自動化・効率化を競い合っている状況です。

そんな潮流のなか、あくまで人の業務に寄り添い続けるツールが、法務向け総合文書エディタ「BoostDraft」です。前回の記事で紹介したように「地に足のついた形で時間削減効果を生み出していくサービス」というコンセプトで法務担当者から共感を得ているBoostDraftは、このAI全盛時代をどのように捉え、製品を進化させてきたのでしょうか。

今回は、新たにリリースされた文書比較ツール「BoostDraft Compare」の情報も交えながら、株式会社BoostDraftの共同創業者/CRO・弁護士の渡邊弘氏に、同社が目指す法務の未来について改めて話を聞きました。

前回の記事:「法務DXで仕事はラクになった? 現場課題を見極めることこそ、法務業務を効率化する鍵。その最適解とは

プロフィール

株式会社BoostDraft 共同創業者/CRO・弁護士 渡邊 弘 氏
西村あさひ法律事務所にてM&A/ファイナンス・国際取引を中心に契約業務に従事。その後、スタンフォードロースクール(LL.M.)のリーガルテック専門機関Codex等で英米リーガルテック調査を行う。2019年よりスタンフォード経営大学院(MBA)にて経営を学ぶ傍ら、The Corporate Legal Operations Consortium(CLOC)のJapan Chapter創業メンバーとなる。法務分野の業務効率化余地を探求すべく各国法務関係者へのインタビューを実施し、アイデアを具現化して2021年に株式会社BoostDraftを創業しCROに就任。

テクノロジーの進化と取り残された95%の人々…「第一歩に気づかせない」行動科学から生まれた開発思想

リーガルテック業界を取り巻く環境は変化し続けています。その中心にあるのが、生成AIの急速な進化です。しかしその導入効果については、興味深い実態を示す、とある調査があります。

2025年7月、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表したレポート「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025 1」で、米国企業が生成AIに対して300億〜400億ドルを投資したにもかかわらず、導入企業の95%が明確なリターンを得られていないという衝撃的な調査結果が明かされました。この結果を渡邊氏は、「個人レベルでは便利に使える生成AIも、組織レベルでの活用となると効果につながっていない。これは、テクノロジーの進化スピードに、人間がついていけていないという大きな課題を示唆している」と読み解きます。

テクノロジーはあくまで手段であり、それを使う人間が変わらなければ、組織としての成果には結びつかない。この課題に対し、BoostDraftは独自の視点で向き合っています。そのベースとなるのが、渡邊氏がMBA(経営学修士課程)留学時に専攻したという行動経済学や行動科学の考え方です。

「私たちの製品開発は、常に人間の行動に着目するところから始まる」と、語る渡邊氏。行動科学の世界では、大きな環境変化があっても、人間はもとにいた場所へ引き寄せられる習性があるといわれています。その状態から次のステージへ移行するには、大きな労力と勇気が必要になります。同社では、「その最初の一歩を踏み出すための労力を、いかに小さくできるかを追求している」と言います。

その思想の具体例が、ユーザーが日常的に利用するMicrosoft Wordへのアドオンという提供形態です。この決断について、渡邊氏は「使い慣れたWordに乗せることで、あたかも何も新しいことを始めていないかのように感じさせながら、実は着実に一歩を踏み出せている。そんな世界観を目指した」と、サービスの設計意図を明かします。テクノロジーから取り残されがちな95%の人々が、無理に行動変容を意識することなく、自然と効率化の恩恵を受けられる仕組み。これは、技術起点で開発されるツールとの根本的な違いです。

この「一歩目の歩幅を小さくする」という思想は、製品の導入プロセスにも貫かれています。エンタープライズ向けサービスでは、ソフトウェアの導入自体が大きなハードルとなりえます。セキュリティチェック、IT部門との調整、インターネット環境の制約など、乗り越えるべき壁が多くあるなか、BoostDraftはこれらの課題を非クラウドという設計で解決しています。
オフラインで利用可能なため、データは構造的に外部へ流出しにくく、同社自体もデータを取得できない仕組みです。さらにアドオン形式のため、インストーラーをダブルクリックするだけで導入が完了します。非クラウドかつ簡易導入というハードルの低さは、データ漏洩リスクに敏感な金融機関や、多様なIT環境を抱えるグローバル企業にとっても大きな魅力となっています。

株式会社BoostDraft 共同創業者/CRO・弁護士 渡邊 弘 氏

株式会社BoostDraft 共同創業者/CRO・弁護士 渡邊 弘 氏

AIレビューとの共存 ムダな作業をなくし、思考を止めない環境の作り方

もう1つ、BoostDraftが多くの企業で選ばれる理由に、あくまで法務担当者の日々の業務に潜む “面倒くさい” を、執拗につぶしていく思想があります。

その代表的な機能の例が、パスワードマネージャーです。文書ファイルにパスワードがかかっていると入力が面倒なうえに、間違えれば当然やり直し。パスワード付きのファイルが増えるほど、負担は大きくなります。パスワードマネージャーは、パスワード情報を自動で保存・入力する仕組みです。これも非クラウド設計のため、外部に漏れるリスクはありません。「こんなに細かいところまで?」と思うような “面倒くさい” 排除の積み重ねが、製品のコアであるといえます。

こうした思想は、AIによる契約書レビューが一般的となった現在、より独自の価値を発揮しています。BoostDraftは、契約書の内容に踏み込むAIレビューとは異なり、インデントやフォントの調整といった内容を問わない普遍的な作業の効率化に特化しており、補完関係にあるからです。

たとえば、50ページの契約書を読む際、「本契約は〜」といった定義語の意味を確認するためにページを何度も行き来するのは手間がかかります。BoostDraftでは、契約書を開いた瞬間に定義語や条項参照を自動で解析し、定義をポップアップで表示。リスク箇所の指摘といった内容面をサポートするAIレビューサービスと併用することで、思考が中断されず、より構造的な理解が可能になります。
実際にAIレビューサービスと併用するユーザーも多く、BoostDraftは「あらゆる作業において背骨のように業務全体を支える存在」だと、渡邊氏は力強く語ります。

AIレビューツールとBoostDraft、それぞれの役割イメージ

Excelにも対応!文書の比較にまつわる課題を解決する「BoostDraft Compare」

このように同社がユーザーの課題解決を追求するなかで、新たな製品が生まれました。契約書をはじめとする文書データの比較にまつわるあらゆる課題を解決する「BoostDraft Compare」です。

法務業務に限らず、ビジネスにおいて文書を比較する場面は無数にあります。しかし、多くの場合は、対象のファイルを目視で見比べるという “面倒くさい” 作業です。BoostDraft Compareは、それを解決するサービスです。Word同士の比較はもちろん、WordとPDF、PDFとPowerPoint、さらにはExcelとの比較も可能です。ファイル形式を問わず、編集前と編集後のファイルを入力すれば、一瞬で差分箇所を発見できます。

これにより、たとえば最終版のPDFと元のWordファイルのあいだに意図しない修正が加えられていないか、といった改ざんリスクにも対応できます。BoostDraft Compareも、BoostDraftと同様に非クラウド設計を貫いているため、Web上で提供される比較ツールのように機密情報を外部に送信する心配はありません。

さらに、実務で多用される新旧対照表の作成機能や、複雑な修正経緯をたどる際に役立つ3文書比較など、現場の細かなニーズに応える機能も搭載。BoostDraft本体とCompareの連携も強化されています。Word上で作業中、比較したい箇所があればボタン1つで比較画面に移行できます。

こうした機能は、製品開発の初期段階から一貫して行っている、100名を超えるユーザーへのインタビューから生まれてきたものだといいます。

「たとえ最先端ではなくとも、課題解決に最適であればレガシーテクノロジーも使う」という、まさに課題起点で考える同社らしい製品といえます。

BoostDraft Compareのイメージ

AIが解決できない無数の課題 法務のムダが消えた先にあるもの

テクノロジーが進化し、便利なツールが次々と現れる。しかし、その恩恵を受けられているのは、ほんの一握りのアーリーアダプターだけ…。渡邊氏は、そうした現状に警鐘を鳴らします。

「この記事を読まれているような、最新技術に関心の高い方は、ご自身が特別な存在だと認識してほしいです。周りを見渡してみてください。多くの人は、日々の業務に追われ、新しい技術を学ぶ余裕はありません。テクノロジー導入の鍵は、そうした “普通の人” をいかに巻き込むかです。『今まで導入したツールは高機能だったが、結局使いこなせなかった』。そんな声に応えるのが私たちの製品です」

BoostDraftを導入している江崎グリコ株式会社の法務担当者からは、「そもそも課題だと思っていなかったような作業が効率化できた」「形式面のチェック作業だけでも、1人あたりで月3〜5時間程度削減できている」というコメントが寄せられたといいます。あきらめていた手作業の時間をなくすこと。そこにBoostDraftの価値があるのです。

AIが弁護士を代替するかもしれないといった議論が交わされる一方で、現場には、AIで完全に自動化できない、名前もつかないような無数の単純作業が残っている。それを1つ残らずなくすことが、BoostDraftの目指す姿です。

法務のムダな作業がなくなった先に、どのような未来が訪れるのでしょうか。渡邊氏はこう締めくくりました。

「私が起業してから強く感じたのは、法務は経営やビジネスと表裏一体だということです。会社の設立から雇用、事業のあらゆる意思決定の裏側には、必ず法務的課題が存在します。契約書に付随するムダな作業を私たちがすべてなくします。そうして生まれた時間で、皆さんには、ぜひ経営やビジネスという、より価値の高い領域へ進出していただきたい。かつて『守りの組織』とされた法務部が、これからは企業の成長を牽引する『攻めの組織』へと変革していく。BoostDraftは、その変革を実現するための、最も確実な一歩となることをお約束します」

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