【2021年版】株主総会運営実務ガイド バーチャル株主総会にも対応 事前準備(招集通知の作成など)、当日対応から終了後の実務まで

コーポレート・M&A
橘川 裕樹弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

目次

  1. 株主総会のスケジュール
  2. 株主総会の準備
    1. 開催日の決定、会場選び、バーチャル株主総会
    2. 事業報告・計算書類・連結計算書類の承認
    3. 招集通知の作成と発送
    4. 株主提案
    5. 事前質問
    6. シナリオ・想定問答集の作成、リハーサル、会場の設営準備
    7. 書面投票・電子投票による議決権の事前行使
  3. 総会当日の対応
    1. 総会の受付
    2. 総会の議事・流れ
  4. 総会終了後の実務
    1. 株主総会議事録等の作成と備置
    2. 臨時報告書の提出
    3. 登記申請

この記事は、主に上場会社における定時株主総会を想定して、新型コロナウイルス感染症対応や令和元年会社法改正も踏まえた実務的な対応を簡潔にまとめたものです。 個別の項目について、より詳細な内容を知りたい方は、各所で引用した関連Q&A等の記事をご参照ください。

株主総会のスケジュール

株主総会に関連して必要となる手続は、会社の機関設計や上場の有無などによって異なります。

たとえば、監査役会設置会社である3月末決算の上場会社の場合、定時株主総会の準備から終了までのおおまかなスケジュールの例は、以下のとおりです。

株主総会のスケジュール例

時期 項目 期限など
3月末日 事業年度末日、基準日(※1)
4月上旬 総株主通知の受領(※2)
4月中旬 監査役・会計監査人に対し、事業報告・計算書類・それらの附属明細書・連結計算書類を提出(事業報告は監査役のみに提出)
4月下旬 株主提案権の行使期限 ⑪の8週間前まで
5月上旬 会計監査人から特定取締役・特定監査役に対し、会計監査報告の内容を通知 ③から4週間経過した日まで
5月中旬 特定監査役から特定取締役・会計監査人に対し、監査役会監査報告の内容を通知(事業報告についての監査報告は特定取締役のみに通知) ⑤から1週間経過した日まで
取締役会決議(計算書類・事業報告・それらの附属明細書・連結計算書類の承認、株主総会招集決定)
決算発表
6月上旬 招集通知の発送 ⑩の2週間前まで
6月下旬 書面投票・電子投票の期限 総会前日のある時点(午後5時など)
株主総会の開催 通常は①から3か月以内
取締役会の開催(代表取締役の選定など)、監査役会の開催(常勤監査役の選定など) 通常は⑪と同日
株主総会議事録の作成・備置 備置期間は、本店に10年間、支店に5年間
議決権行使結果に関する臨時報告書の提出 総会後遅滞なく
7月上旬 商業登記の申請期限 ⑪から2週間以内

※1:株式会社は、一定の日を「基準日」として、その日時点の株主名簿上の株主を、後日における権利行使ができる者と定めることができます(会社法124条1項)。

※2:総株主通知とは、証券保管振替機構から発行者(会社)に対して行われる、基準日などの時点における株主の氏名、住所、株式数などの通知をいいます(社債、株式等の振替に関する法律151条1項)。総株主通知により、会社は、基準日時点の株主を把握することができます。

株主総会の準備

開催日の決定、会場選び、バーチャル株主総会

(1)開催日の決定

定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に必ず開催する必要があります(会社法296条1項)。開催月を定款に定めている会社もありますが、通常は、事業年度末日から3か月以内に定時株主総会を開催します。

(2)会場選び

会社法上、総会の会場について制限する規定はありませんが、大多数の株主にとって不便な場所や、来場した株主を収容しきれない場所で総会を開催した場合などには、総会決議の取消原因となる可能性があります。

また、特にコロナ禍では、過去に会場として利用していた場所を押さえることが難しくなる可能性もあります。そのため、総会を開催するにあたっては、できるだけ早い時期に、総会の開催方法や来場が見込まれる株主の人数を考慮したうえで適切な会場を確保する必要があります。

(3)バーチャル株主総会

前記(2)のとおり、会社法上、総会の会場を制限する規定はありませんが、2021年6月時点では、物理的な会場を一切設けずに完全にオンライン上だけで総会を開催することはできないと考えられています(ただし、2021年2月5日に閣議決定された「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が成立すれば、同法案66条1項に基づき、一定の要件を満たす上場会社は、いわゆるバーチャルオンリー型株主総会の実施が特例的に可能となります)。

他方、物理的な会場を用意したうえで、株主にインターネット等の手段を用いて遠隔地からの参加/出席を許容するハイブリッド型バーチャル株主総会」を開催することは、現在の法律でも可能です(総会に出席したと会社法上扱われる「出席型」と扱われない「参加型」に分かれます)。コロナ禍の総会における感染拡大防止対策の一環としても、導入する会社が徐々に増えています。

これまでも、総会の様子をビデオカメラで撮影してウェブサイト上で後日公開する会社やインターネットで一方的に中継・公開する会社はありましたが、「参加型」は参加者から受け付けたコメント等を会社の判断で取り上げることが可能という意味でより株主とのコミュニケーションに資するものであり、また、「出席型」はさらに進んで株主がオンラインで総会に出席して議決権の行使や質問をすることができるものです。

ハイブリッド型バーチャル株主総会

ハイブリッド型バーチャル株主総

なお、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」を採用する場合、たとえば、以下の点にも留意する必要があります。

  • インターネット環境の整備
  • 情報セキュリティ対策
  • 本人確認や議決権行使の方法(株主ごとに固有ID・PWを送付するなど)
  • 通信障害があった場合の対応

詳しくは、経済産業省の「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」をご参照ください。

事業報告・計算書類・連結計算書類の承認

取締役は、定時株主総会に計算書類・事業報告・連結計算書類(ただし、連結計算書類については有価証券報告書を提出している大会社または任意に作成している会社のみ)を提出し、計算書類について承認を受けるとともに、事業報告の内容・連結計算書類の内容・連結計算書類にかかる監査結果を総会に報告する必要があります(会社法438条・444条7項)。監査役会設置会社である上場会社の場合、これらの書類の作成・承認の手順は、おおむね、以下のようになります。

【計算書類・事業報告・連結計算書類の作成・承認の手順】

計算書類・事業報告・連結計算書類の作成・承認の手順

会計監査人設置会社において一定の要件を満たす場合には、計算書類についても、定時株主総会に報告すれば足り、その承認を受ける必要はありません(会社法439条、会社法施行規則116条5号、会社計算規則135条)。上場会社の場合は通常、これに該当します。

招集通知の作成と発送

(1)招集通知とは

招集通知とは、総会の日時・場所や議題など、総会の招集に関する決定事項が記載・記録され、株主に向けて発送される通知をいいます(会社法299条。以下「狭義の招集通知」といい、これに株主総会参考書類などの添付書類まで含めたものを「広義の招集通知」といいます)。

総会を招集するにあたっては、取締役会で一定の法定事項を決議しなければならず(会社法298条1項・4項、会社法施行規則63条)、狭義の招集通知には、当該取締役会決議で決定した事項を記載する必要があります(会社法299条4項)。

(2)株主総会参考書類とは

株主総会参考書類とは、議案に関する詳細など、議決権の行使について参考となる事項(会社法施行規則73条~93条)を記載した書面をいいます。

会社は、書面投票・電子投票(後記2–7参照)を認める場合、株主に対し、狭義の招集通知とともに、株主総会参考書類を交付する必要があります(会社法301条1項・302条1項)。

(3)招集通知の発送

公開会社の場合、招集通知は、総会の日の2週間前までに株主に対して発送する必要があります(会社法299条1項)。

もっとも、書面投票・電子投票による議決権行使の期限を定める場合、招集通知は、その行使期限の2週間前までに発送する必要があります(会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。なお、上場会社においては、招集通知を法定の期限より早期に発送する会社や、発送前に自社ホームページで招集通知の内容を開示する会社が増えています。

招集通知についての詳細や実務的な対応については、以下のQ&Aもご参照ください。

(4)株主総会資料の電子提供制度

令和元年会社法改正により、株主総会資料を自社のウェブサイト等に継続して掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を通知することで、株主に対して株主総会資料を適法に提供したこととする電子提供制度が導入されました(会社法325条の2~325条の5)。

これまでも、株主から個別の承諾を得た場合に、書面の代わりに電磁的方法によって株主総会資料を提供できる制度(会社法299条3項、301条2項、302条1項)がありましたが、今回導入された電子提供制度は、定款に定めることで、一律にその電子的な提供を可能とする制度です。

また、いわゆる「WEB開示」の制度(会社法施行規則94条1項・133条3項、会社計算規則133条4項・134条4項。WEB開示の詳細は、以下のQ&Aをご参照ください)は、株主総会資料のうち一部の範囲に限定された制度でしたが、電子提供制度は、株主総会資料のほぼすべてに及ぶものです。

電子提供制度を適用するためには、電子提供措置を採用する旨を定款に定める必要がありますが、振替株式を発行する上場会社においては、電子提供措置の採用が義務付けられており、その旨の定款の定めを設ける定款変更の決議をしたものとみなされます(社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項、会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条・10条2項)。

なお、電子提供制度は、令和元年改正会社法の公布日(2019年12月11日)から3年6か月以内の施行(2022年度中の予定)とされており、2021年6月時点では具体的な施行日は未定です。

株主提案

一定の要件を満たす株主は、総会の開催に先立ち、一定の事項を総会の目的(議題)とするように請求することや(会社法303条)、その議題について提出しようとする議案の要領を株主に通知するように請求することができます(会社法305条1項)。これらを株主提案といいます。なお、総会の場で提出される修正動議も広い意味での株主提案に含まれます(会社法304条。修正動議については後記 3−2 (4) をご参照ください)。

令和元年会社法改正により、取締役会設置会社の株主が、会社法305条1項に基づき招集通知への議案の要領の記載を請求できる議案の数は10個に制限されました(会社法305条4項)。

株主提案の詳細や、実際に株主提案があった場合の対応については、以下のQ&Aをご参照ください。

事前質問

総会の開催に先立ち、その総会の議題・議案などに関して、株主から事前質問を受けることがあります。
取締役などの役員は、総会において株主から質問があった場合には、質問された事項について説明する義務を負っていますが(会社法314条)、この事前質問は、あくまで質問の予告にすぎないため、総会中に改めて同じ質問が行われない限り、法律上の説明義務を負うわけではありません(ただし、総会の場で個別の質疑応答に先立ち任意に一括回答するケースもあります)。

なお、総会の日よりも相当の期間前に事前質問が行われた場合で、総会中に同じ事項について質問があったときは、取締役などの役員は、「説明のために調査が必要である」という理由で説明を拒むことができませんので、この点は留意する必要があります(会社法314条、会社法施行規則71条1号イ)。

シナリオ・想定問答集の作成、リハーサル、会場の設営準備

ほとんどの上場会社では、総会を円滑に進行させるための事前準備として、①総会当日のシナリオ(主に議長が議事進行のために読み上げる台本)および想定問答集(株主から想定される質問とそれに対する回答をまとめたもの)を作成するとともに、②総会当日の議事進行の確認や質問対応の練習等を目的としたリハーサルを行います。

また、コロナ禍の総会においては、たとえば、①受付場所へのサーモグラフィの設置医療従事者による検温・問診場所の用意、②会場内の消毒液等の設置マイクの消毒、③株主席における座席間のスペースを通常よりも広く確保するなど、感染対策を意識した事前準備が必要となります。

書面投票・電子投票による議決権の事前行使

会社は、総会に出席しない株主のため、書面による議決権行使(書面投票)および電磁的方法による議決権行使(電子投票)の一方または両方を認めることができます(会社法298条1項3号・4号)。また、議決権を行使することができる株主数が1,000人以上である会社は、原則として書面投票を認めなければなりません(同条2項)。

書面投票は、会社が送付する議決権行使書面を郵送する方法によって行います(郵送先は株主名簿管理人である信託銀行などの証券代行機関とすることが通常です)。また、電子投票は、会社が設置する議決権行使用のウェブサイトにアクセスする方法によって行います。

会社は、総会の日時以前の特定の時を、書面投票・電子投票の期限とすることができます(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。会社が期限を定めなかった場合には、総会の日時の直前の営業時間の終了時が期限となります(会社法311条1項・312条1項、会社法施行規則69条・70条)。

書面投票を認める場合、会社は、株主に対し、狭義の招集通知とあわせて、株主総会参考書類と議決権行使書面を交付する必要があります(会社法301条1項)。一方、電子投票を認める場合、原則として、株主総会参考書類の交付は必要ですが(会社法302条1項)、議決権行使書面については、株主からの請求があった場合に限り、同書面に記載すべき事項(会社法施行規則66条1項)を電磁的方法で提供すれば足ります(会社法302条4項)。

なお、コロナ禍の総会においては、感染拡大防止措置の一環として、可能な限り株主の来場を抑制すべく、書面投票・電子投票による事前の議決権行使の積極的な利用を株主に推奨するという対応も行われています

総会当日の対応

総会の受付

(1)株主資格・代理人資格の確認

総会に出席できるのは、議決権を有する株主本人か、またはその代理人に限られます。そのため、総会の受付において、一般的には、議決権行使書面により株主であることを、また、代理権を証する委任状により株主の代理人であることをそれぞれ確認します。

詳細は、以下のQ&Aをご参照ください。

(2)入場制限

株主が総会に出席して議決権や質問権を行使することは株主の重要な権利ですので、株主の入場を制限することは、原則として違法であり、総会決議の取消原因になると考えられます。

もっとも、例外的に、新型コロナウイルスの罹患が疑われる株主の入場を制限することは可能であると考えられています(経済産業省・法務省「株主総会運営に係るQ&A」のQ4)。また、新型コロナウイルス感染拡大防止に必要な対応をとるためにやむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲において、入場できる株主の人数を制限することも可能とされています(同「株主総会運営に係るQ&A」のQ2)。

総会の議事・流れ

(1)個別上程方式と一括上程方式

総会の進め方には、大きく分けて、①個々の議案ごとに上程して審議・採決する方式個別上程方式)と、②すべての議案を一括して上程し、審議したうえで、最後に順に議案の採決を行う方式一括上程方式)の2通りがあります。

詳細は、以下のQ&Aをご参照ください。

(2)総会のシナリオ例

以下では、取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社の定時株主総会において一括上程方式を採用する場合のシナリオ例をもとに株主総会の流れをご紹介します。

総会シナリオ例

総会シナリオ例

(3)株主からの質問と説明義務

取締役、監査役などの役員は、総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、その事項について必要な説明をしなければなりません(会社法314条本文)。法律上の説明義務の履行としては、広義の招集通知に記載された事実を敷衍(ふえん)する程度の説明を行えば足りるものと考えられています。

また、説明義務を負う役員は、株主から質問があった事項が総会の目的である事項に関しない場合などには、説明を拒むことができます(会社法314条ただし書、会社法施行規則71条)。

なお、令和元年会社法改正により、確定額報酬(会社法361条1項1号)についても、取締役の報酬議案を上程する際には「相当とする理由」の説明を求められることになりましたので、注意が必要です(会社法361条4項)。

説明義務についての詳細は、以下のQ&Aもご参照ください。

(4)動議

総会において提出される「動議」には、大きく分けて、議案の修正に関する実質的な動議(会社法304条:修正動議)と、総会の運営や議事進行に関する手続的な動議手続的動議)とがあります。

動議の詳細については、以下のQ&Aをご参照ください。

総会終了後の実務

株主総会議事録等の作成と備置

① 議事録作成義務・備置義務

会社は、総会終了後、開催の日時・場所、議事の経過の要領およびその結果などの法定記載事項(会社法318条1項、会社法施行規則72条3項各号)を記載した議事録を作成し、原本を本店に10年間、写しを支店に5年間、それぞれ備え置かなければなりません(会社法318条1項~3項)。

株主総会議事録の詳細や記載例に関しては、以下のQ&Aをご参照ください。

② その他の書類の備置義務

書面投票または電子投票を採用した場合、議決権行使書面または電子投票にかかる電磁的記録を、総会の日から3か月間、本店に備え置かなければなりません(会社法311条3項・312条4項)。

また、代理人による議決権行使が行われた場合には、その代理人が提出した委任状を、総会の日から3か月間、本店に備え置かなければなりません(会社法310条6項)。

臨時報告書の提出

上場会社などの有価証券報告書提出会社は、総会において決議事項が決議された後、遅滞なく、その決議事項の内容などを記載した臨時報告書を提出しなければなりません(金融商品取引法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)。

登記申請

登記事項に変更が生じた場合には、2週間以内に、その変更を登記する必要があります(会社法915条1項)。したがって、総会において、登記事項(役員、商号、本店所在地など)を変更する決議が行われた場合には、総会の日から2週間以内に、会社の営業所の所在地を管轄する登記所(法務局、その支局・出張所)に申請書を提出して、その変更の登記を申請しなければなりません(商業登記法1条の3、17条)。なお、オンラインによる登記申請も可能です。

総会後の登記に関する詳細については、以下のQ&A、特集記事もご参照ください。

新型コロナウイルス感染症という未曾有の事態への対応に迫られた2020年の株主総会を経て、バーチャル総会も含め、コロナ禍での総会対応実務が徐々に積み重ねられてきました。2021年の総会も引き続きコロナ対応が重要となりますが、加えて令和元年改正会社法への対応も不可欠となります。そのような総会対応に携わる企業の担当者を中心とした読者の方々にとって、この記事が少しでも一助となれば幸いです。

なお、以下は、この記事で採り上げなかったその他の関連記事となりますので、必要に応じてご参照ください。

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