株主総会の運営マニュアル – 事前準備、当日対応、終了後の実務まで

コーポレート・M&A 更新
山口 敏寛弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

目次

  1. 株主総会の電子化に向けた対応
    1. 株主総会の電子化
    2. バーチャル株主総会
  2. 株主総会の実施スケジュール
  3. 株主総会当日までの流れ
    1. 開催日、会場の決定
    2. 事業報告・計算書類・連結計算書類の承認・報告
    3. 招集通知の発送、株主総会資料の電子提供
    4. 株主提案への対応
    5. 事前質問への対応
    6. シナリオ・想定問答集の作成、リハーサル
    7. 書面投票・電子投票による議決権の事前行使
  4. 株主総会当日の対応
    1. 受付
    2. 株主総会当日の流れとシナリオ
  5. 株主総会終了後の実務
    1. 株主総会議事録等の作成と備置
    2. 臨時報告書の提出
    3. 登記申請
  6. おわりに(その他の関連記事)

 この記事は、主に上場会社における定時株主総会を想定して、2022年9月から導入された株主総会資料の電子提供制度を含め、昨今のビジネス環境の変化も踏まえた実務的な対応を簡潔にまとめたものです。個別の項目について、より詳細な内容を知りたい方は、各所で引用した関連記事をご参照ください。

株主総会の電子化に向けた対応

株主総会の電子化

 近年の株主総会は、大きく以下の3点において、電子化に向けた環境の整備・普及が徐々に進んでいます。

  1. 株主総会資料の電子提供制度の導入(2022年9月~)
  2. 電磁的方法による議決権行使(電子投票)の利用の普及
  3. バーチャル株主総会に対応した環境整備(バーチャルオンリー型を可能とする法整備を含む)

 このうち、①は3-3において、②は3-7において後述します。
 本記事では、2以下において、バーチャル株主総会ではない通常のリアル株主総会を前提とした実務対応を解説していますが、近時の動向を踏まえて、以下では③のバーチャル株主総会についてもご紹介します。

バーチャル株主総会

 バーチャル株主総会とは、インターネット等の手段を用いて遠隔地からの参加・出席を可能とする株主総会のことをいいますが、その種類として、株主総会のための物理的な会場を用意するか否かにより、「バーチャルオンリー型株主総会」と「ハイブリッド型バーチャル株主総会」に区別されます。また、後者についても、インターネットで参加した株主の扱いによって「出席型」と「参加型」に区別されます。

物理的な会場 インターネット
参加株主の会社法上の扱い
特徴
バーチャルオンリー型株主総会 なし 会社法上の出席と扱われる 役員や株主の全てがインターネット上で株主総会に出席する
ハイブリッド型バーチャル株主総会 出席型 あり 会社法上の出席と扱われる 株主がインターネット上で株主総会に出席して、議決権の行使や質問が可能
参加型 あり 会社法上の出席と扱われない インターネット上で参加した株主は、議決権の行使や質問はできないが、参加株主から受け付けたコメント等を会社の判断で任意に取り上げることは可能

 バーチャルオンリー型株主総会は、2021年6月、産業競争力強化法の改正により、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設され、一定の要件を満たす上場会社において実施が可能となったものです。もっとも、2023年の株主総会が終了した時点では、大多数の会社が実施しておらず、かつ、実施に向けた検討もされていないというのが実情です。
 なお、バーチャルオンリー型株主総会を導入するためには、場所の定めのない株主総会を可能とする旨の定款変更が必要となりますが、その前提として、経済産業省と法務省による確認手続を経る必要があります。
 詳しくは、経済産業省の「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料」をご参照ください。

 ハイブリッド型バーチャル株主総会については、上記のような手続を経ることなく実施することが可能です。ただし、2023年の株主総会においては、ハイブリッド型バーチャル株主総会の中でも「出席型」のほうはあまり実施されておらず、「参加型」を実施した会社が上場会社全体の約2割程度であったとされています 1
 詳しい実施手続については、経済産業省の「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」や「同(別冊)実施事例集」をご参照ください。

株主総会の実施スケジュール

 まずは、一般的な株主総会の実施スケジュールを示します。
 たとえば、監査役会設置会社である3月末決算の上場会社の場合、定時株主総会の準備から終了までのおおまかなスケジュールの例は、以下のとおりです。

株主総会のスケジュール例:3月末決算の監査役会設置会社の場合

時期 項目 期限など
3月末日 事業年度末日、基準日※1
電子提供制度に係る書面交付請求の期限
4月上旬 総株主通知の受領※2
4月中旬 監査役・会計監査人に対し、事業報告・計算書類・それらの附属明細書・連結計算書類を提出(事業報告・その附属明細書は監査役のみに提出)
4月下旬 株主提案権の行使期限 ⑫の8週間前まで
5月上旬 会計監査人から特定取締役・特定監査役に対し、会計監査報告の内容を通知 ③から4週間経過した日まで
5月中旬 特定監査役から特定取締役・会計監査人に対し、監査役会監査報告の内容を通知(事業報告・その附属明細書についての監査報告は特定取締役のみに通知) ⑤から1週間経過した日まで
取締役会決議(計算書類・事業報告・それらの附属明細書・連結計算書類の承認、株主総会招集決定)
決算発表
6月初旬頃 株主総会資料の電子提供措置の開始 ⑫の3週間前の日まで
6月上旬 招集通知の発送 ⑪の2週間前まで
6月下旬 書面投票・電子投票の期限 ⑫の前日のある時点(午後5時など)
株主総会の開催 通常は①から3か月以内
取締役会の開催(代表取締役の選定など)、監査役会の開催(常勤監査役の選定など) 通常は⑫と同日
株主総会議事録の作成・備置 備置期間は、本店に10年間、支店に5年間
議決権行使結果に関する臨時報告書の提出 ⑫の後遅滞なく
7月上旬 商業登記の申請期限 ⑫から2週間以内

※1 株式会社は、一定の日を「基準日」として、その日時点の株主名簿上の株主を、後日における権利行使ができる者と定めることができます(会社法124条1項)。

※2 総株主通知とは、証券保管振替機構から発行者(会社)に対して行われる、基準日などの時点における株主の氏名、住所、株式数などの通知をいいます(社債、株式等の振替に関する法律151条1項)。総株主通知により、会社は、基準日時点の株主を把握することができます。

株主総会当日までの流れ

開催日、会場の決定

(1)開催日の決定

 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に必ず開催する必要があります(会社法296条1項)。開催月を定款に定めている会社もありますが、通常は、事業年度末日から3か月以内に定時株主総会を開催します。

(2)会場選び

 会社法上、株主総会の会場について制限する規定はありませんが、大多数の株主にとって不便な場所や、来場した株主を収容しきれない場所で株主総会を開催した場合などには、株主総会決議の取消原因となる可能性があります。

 株主総会を開催するにあたっては、できるだけ早い時期に、株主総会の開催方法や来場が見込まれる株主の人数を考慮したうえで適切な会場を確保する必要があります。

事業報告・計算書類・連結計算書類の承認・報告

 各事業年度にかかる計算書類およびその附属明細書ならびに連結計算書類については監査役(監査等委員会・監査委員会)および会計監査人による監査事業報告およびその附属明細書については監査役(監査等委員会・監査委員会)による監査を受け、それぞれ取締役会の承認を受ける必要があります(会社法436条2項・3項、444条4項・5項)。
 通常、かかる承認のための取締役会決議は、定時株主総会の招集決定のための決議と同時に行われることが多いと思われます。

 上記のように取締役会の承認を受けた後は、計算書類についても、会計監査報告が無限定適正意見であり、かつ、監査報告においても相当意見である限りは、定時株主総会においては報告のみで足りるとされています(会社法439条、会社法施行規則116条5号、会社計算規則135条)。その場合、定時株主総会においては、計算書類・事業報告・連結計算書類を提供し、事業報告の内容・計算書類および連結計算書類の内容・連結計算書類にかかる監査結果を報告するという手続が行われます(会社法438条、439条、444条7項)。

 監査役会設置会社である上場会社の場合、これらの書類の作成・承認・報告の手順は、おおむね、以下のようになります。

計算書類・事業報告・連結計算書類の作成・承認・報告の手順:監査役会設置会社の場合

計算書類・事業報告・連結計算書類の作成・承認・報告の手順:監査役会設置会社の場合

招集通知の発送、株主総会資料の電子提供

(1)招集通知とは

 招集通知とは、株主総会の日時・場所や議題など、株主総会の招集に関する決定事項が記載・記録され、株主に向けて発送される通知をいいます(会社法299条。以下「狭義の招集通知」といい、これに株主総会参考書類などの添付書類まで含めたものを「広義の招集通知」といいます)。

 上場会社の場合、電子提供措置がとられることから、狭義の招集通知には、株主総会の日時・場所や議題のほか、電子提供措置をとっている旨や、電子提供措置に係るウェブサイトのURL等を記載する必要があります(会社法325条の4、298条1項)。この招集通知は、一般に「アクセス通知」とも呼ばれます。

(2)株主総会資料の電子提供制度とは

 株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載する方法(電子提供措置)によって、これを株主に対して適法に提供したものとする制度のことをいいます(会社法325条の2以下)。ここでいう株主総会資料とは、株主総会の日時・場所・議題等のほか、株主総会参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類等に記載すべき事項に係る情報(資料)のことをいいます(会社法325条の3第1項各号)。上場会社は、一律にこの制度が適用されています。

 そのため、上場会社の場合、いわゆるアクセス通知(狭義の招集通知)については株主への発送が必要ですが、上記の株主総会資料(広義の招集通知のうち、添付書類に相当する部分)については、原則として電子提供措置をとれば足り、株主から書面交付請求がなされない限りは、実際に株主に対して書面を発送することは求められません。

(3)電子提供措置の開始

 電子提供制度が強制適用される上場会社においては、株主総会資料については、株主総会の日の3週間前の日または招集通知の発送日のいずれか早い日までに電子提供措置をとらなければならないとされています(会社法325条の3第1項)。
 ただし、上場会社は、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)により、招集通知に記載された情報について早期に(招集通知の発送に先立って)電子的に公表すべきとされているほか(CGコード補充原則1-2②)、証券取引所の規則においても、法定の期限より早期に電子提供措置を行うよう努力することが求められています(有価証券上場規程446条、有価証券上場規程施行規則437条3号)。
 これを受けて、実際に法定の期限(原則として株主総会の日の3週間前)よりも早い段階で電子提供措置を開始する会社が増えています。

(4)招集通知の発送

 招集通知は、原則として株主総会の日の2週間前までに株主に対して発送する必要があります(会社法299条1項)。
 ただし、上場会社の場合には、通常、書面投票や電子投票を採用しており、それらによる議決権行使の期限は前日(の特定の時点)に定められますので、招集通知は、その行使期限の2週間前までに発送する必要があることに注意が必要です(会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。
 また、上場会社においては、前述のCGコード補充原則1-2②により、招集通知については早期発送に努めるべきとされており、これを受けて、実際に招集通知を法定の期限(2週間前まで)より早期に発送する会社が増えています。

 なお、上場会社が株主に対して招集通知を発送する際の対応には、以下の3パターンがあります。

  1. 法令上最低限求められるアクセス通知のみ送付する
  2. アクセス通知に、株主総会資料のサマリー版を添付して送付する
  3. アクセス通知に、従来どおりの株主総会資料を添付して送付する(フルセットデリバリー)

 東京証券取引所のデータによれば、電子提供制度の開始初年度である2023年6月総会の状況としては、アクセス通知のみ(①)は全体の5.4%にとどまり、サマリー版送付(②)が25.0%、フルセットデリバリー(③)が70%近くという結果でした。

 招集通知や電子提供制度の詳細や実務的な対応については、以下のQ&Aもご参照ください。

株主提案への対応

 一定の要件を満たす株主は、株主総会の開催に先立ち、一定の事項を株主総会の目的(議題)とするように請求することや(会社法303条)、その議題について提出しようとする議案の要領を株主に通知するように請求することができます(会社法305条1項)。これらを株主提案といいます。
 なお、株主総会の場で提出される修正動議も広い意味での株主提案に含まれます(会社法304条。修正動議については後記 4−2(4)をご参照ください)。

 令和元年会社法改正により、取締役会設置会社の株主が、会社法305条1項に基づき招集通知への議案の要領の記載を請求できる議案の数は10個に制限されました(会社法305条4項)。

 株主提案の詳細や、実際に株主提案があった場合の対応については、以下の関連記事をご参照ください。

事前質問への対応

 株主総会の開催に先立ち、その株主総会の議題・議案などに関して、株主から事前質問を受けることがあります。
 取締役などの役員は、株主総会において株主から質問があった場合には、質問された事項について説明する義務を負っています(会社法314条)。もっとも、事前質問は、あくまで質問の予告にすぎないため、株主総会の中で改めて同じ質問が行われない限り、法律上の説明義務を負うわけではありません(ただし、株主総会の場で、個別の質疑応答に先立ち、任意に一括回答するケースもあります)。

 なお、株主総会の日よりも相当の期間前に事前質問が行われた場合で、株主総会の中で同じ事項について質問があったときは、取締役などの役員は、「説明のために調査が必要である」という理由で説明を拒むことができませんので、この点は留意する必要があります(会社法314条、会社法施行規則71条1号イ)。

シナリオ・想定問答集の作成、リハーサル

 ほとんどの上場会社では、株主総会を円滑に進行させるための事前準備として、①株主総会当日のシナリオ(主に議長が議事進行のために読み上げる台本)および想定問答集(株主から想定される質問とそれに対する回答をまとめたもの)を作成するとともに、②株主総会当日の議事進行の確認や質問対応の練習等を目的としたリハーサルを行います。

書面投票・電子投票による議決権の事前行使

 会社は、株主総会に出席しない株主のため、書面による議決権行使(書面投票)および電磁的方法による議決権行使(電子投票)の一方または両方を認めることができます(会社法298条1項3号・4号)。また、議決権を行使することができる株主数が1,000人以上である会社は、原則として書面投票を認めなければなりません(同条2項)。

 書面投票は、会社が送付する(または電子提供措置によって提供する)議決権行使書面に賛否を記入して、これを郵送する方法によって行います(郵送先は株主名簿管理人である信託銀行などの証券代行機関とすることが通常です)。また、電子投票は、会社が設置する議決権行使用のウェブサイトにアクセスする方法によって行います。

 会社は、株主総会の日時以前の特定の時を、書面投票・電子投票の期限とすることができます(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。会社が期限を定めなかった場合には、株主総会の日時の直前の営業時間の終了時が期限となります(会社法311条1項、312条1項、会社法施行規則69条、70条)。

 電子提供制度の下では、書面投票に用いる議決権行使書面は、狭義の招集通知とあわせて(同封して)株主に送付するか、それともほかの株主総会資料と同様に電子提供措置によって提供するかのどちらかを選択することができます(会社法325条の3第1項・2項)。
 一方、電子投票を認める場合、原則として、議決権行使書面は不要であり、株主からの請求があったなどの場合に、同書面に記載すべき事項(会社法施行規則66条1項)を電磁的方法で提供すれば足ります(会社法302条3項・4項)。

 なお、電子投票は、書面投票とは異なり株主の人数による強制適用がないため、各社において自由に採否を決められる投票方法ですが、近年はコロナ禍による影響もあって、かなり多くの会社において採用されています。今後は、株主総会資料の電子提供制度の定着も相まって、電子投票を採用する会社はますます増加するものと考えられます。

株主総会当日の対応

受付

(1)株主資格・代理人資格の確認

 株主総会に出席できるのは、議決権を有する株主本人か、またはその代理人に限られます。
 そのため、会場の受付において、来場者1人ひとりについて出席資格の確認を行う必要があります。一般的には、来場者が株主本人であることは、議決権行使書面の提示によって確認します。また、来場者が株主の代理人である場合には、代理権を証する委任状によってその代理人資格を確認します。

 詳細は、以下の関連記事をご参照ください。

(2)入場制限

 株主が株主総会に出席して議決権や質問権を行使することは株主の重要な権利ですので、株主の入場を制限することは、原則として違法であり、株主総会決議の取消原因になると考えられます。

 この点、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に変更される前は、例外的に、感染拡大防止に必要な対応をとるためにやむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲において入場できる株主の人数を制限することも可能であり(経済産業省・法務省「株主総会運営に係るQ&A」のQ2)、また、新型コロナウイルスの罹患が疑われる株主の入場を制限することも可能であると考えられていました(同Q4)。
 もっとも、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に変更された現在においては、上記の一般的な考え方自体は否定されないものの、具体的には、関係者の健康や安全の確保および株主の権利にも十分に留意しつつ、事案ごとに個別的に判断されることになると考えられていますので(同Q6)、実際の対応にあたっては慎重な判断が必要です。

株主総会当日の流れとシナリオ

(1)個別上程方式と一括上程方式

 株主総会の議事の進め方には、大きく分けて、以下の2通りがあります。

  • 個別上程方式:個々の議案ごとに上程して審議・採決する
  • 一括上程方式:すべての議案を一括して上程し、審議したうえで、最後に順に議案の採決を行う

 詳細は、以下の関連記事をご参照ください。

(2)株主総会のシナリオ例

 以下では、取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社の定時株主総会において一括上程方式を採用する場合のシナリオ例をもとに株主総会の流れをご紹介します。

株主総会のシナリオ例:取締役会設置会社かつ会計監査人設置会社で一括上程方式を採用する場合

担当 議事内容 備考
事務局 定刻となった旨のアナウンス
議長 挨拶、
議長就任宣言、
開会宣言

※議長が誰になるかは定款で定められていることが一般的。

※議長は、総会の秩序維持権・議事整理権・退場命令権を有する(会社法315条。その詳細については、下記の関連記事を参照)。

議長 議事進行法の説明(株主からの質問は決議事項の上程の後にまとめて受けることも説明)

※冒頭で、目標終了時刻を事前告知することも考えられる。

議長 定足数報告(出席株主数および議決権数の報告、議案の審議に必要な定足数を充足していることの宣言)

※詳細は述べず、定足数を充足する旨の報告だけでも可。

※⑦の後に報告する場合もある。
議長または監査役 議長自ら、または議長の指示を受けた監査役が、㋐監査報告(会社法384条)および㋑連結計算書類にかかる監査結果の報告(会社法444条7項)を行う

※㋐監査役は、議案、書類などに法令・定款違反や著しく不当な事項があると認めたときは、株主総会に報告しなければならないが(会社法384条)、これに該当しない場合でも、「議案、書類などには何ら法令・定款に違反する点はなく、著しく不当な事項もない」との監査報告が行われることが一般的。

※㋑連結計算書類の監査結果報告について、会社法384条の監査報告とあわせて監査役により行われることも少なくない。

議長 事業報告・計算書類・連結計算書類の内容の報告(会社法438条3項、439条、444条7項)、その他の報告事項の報告

※会社法439条に該当しない場合には、原則どおり、計算書類について定時株主総会の承認を受けなければならない(会社法438条1項・2項)。

議長 決議事項の上程、
各議案の内容の説明
議長 質疑応答の後に各議案の採決を行うことの説明、質問の際のルールの説明(議長の指名を待って発言すること、質問前に氏名・出席票番号を述べることなど)
議長
株主
担当役員
質疑応答
議長 質疑終了、
議案の採決を行う旨の説明

※質疑打ち切りのタイミングについては注意。

議長 各議案の採決

※採決方法は法定されておらず、ほとんどの会社では拍手による。

議長 閉会宣言

(3)株主からの質問と説明義務

 取締役、監査役などの役員は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、その事項について必要な説明をしなければなりません(会社法314条本文)。法律上の説明義務の履行としては、広義の招集通知に記載された事実を敷衍(ふえん)する程度の説明を行えば足りるものと考えられています。

 また、説明義務を負う役員は、株主から質問があった事項が株主総会の目的である事項に関しない場合などには、説明を拒むことができます(会社法314条ただし書、会社法施行規則71条)。

 なお、令和元年会社法改正により、不確定額報酬および非金銭報酬のみではなく、確定額報酬(会社法361条1項1号)についても、取締役の報酬議案を上程する際には「相当とする理由」の説明を求められることになりましたので、注意が必要です(会社法361条4項)。

 説明義務についての詳細は、以下の関連記事もご参照ください。

(4)動議

 株主総会において提出される「動議」には、大きく分けて、議案の修正に関する実質的な動議(修正動議、会社法304条)と、株主総会の運営や議事進行に関する手続的な動議(手続的動議とがあります。

 動議の詳細については、以下の関連記事をご参照ください。

株主総会終了後の実務

株主総会議事録等の作成と備置

(1)議事録作成義務・備置義務

 会社は、株主総会終了後、開催の日時・場所、議事の経過の要領およびその結果などの法定記載事項(会社法318条1項、会社法施行規則72条3項各号)を記載した議事録を作成し、原本を本店に10年間、写しを支店に5年間、それぞれ備え置かなければなりません(会社法318条1項~3項)。

 株主総会議事録の詳細や記載例に関しては、以下の関連記事をご参照ください。

(2)その他の書類の備置義務

 書面投票または電子投票を採用した場合、議決権行使書面または電子投票にかかる電磁的記録を、株主総会の日から3か月間、本店に備え置かなければなりません(会社法311条3項、312条4項)。

 また、代理人による議決権行使が行われた場合には、その代理人が提出した委任状を、株主総会の日から3か月間、本店に備え置かなければなりません(会社法310条6項)。

(3)電子提供措置の継続

 株主総会資料の電子提供措置については、株主総会の日後3か月間を経過する日までの間、継続しなければなりません(会社法325条の3第1項)。

臨時報告書の提出

 上場会社などの有価証券報告書提出会社は、株主総会において決議事項が決議された後、遅滞なく、その決議事項の内容などを記載した臨時報告書を提出しなければなりません(金融商品取引法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)。

登記申請

 登記事項に変更が生じた場合には、2週間以内に、その変更を登記する必要があります(会社法915条1項)。したがって、株主総会において登記事項(役員、商号、本店所在地など)を変更する決議が行われた場合には、株主総会の日から2週間以内に、会社の営業所の所在地を管轄する登記所(法務局、その支局・出張所)に申請書を提出して、その変更の登記を申請しなければなりません(商業登記法1条の3、17条)。なお、オンラインによる登記申請も可能です。

 株主総会後の登記に関する詳細については、以下の関連記事もご参照ください。

おわりに(その他の関連記事)

 冒頭で触れた株主総会の電子化を始めとして、株主総会のあり方については時代とともに毎年のように変化しており、今後もさらに変化し続けることが予想されます。そのような中において、この記事が、株主総会の対応実務に携わる企業の担当者を中心とした読者の方々にとって、少しでも役に立つものとなれば幸いです。

 なお、以下は、この記事でとり上げなかったその他の関連記事となりますので、必要に応じてご参照ください。


  1. 商事法務研究会編「株主総会白書2023年版」旬刊商事法務No.2344(2023年12月5日)172~175頁 ↩︎

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