インターネットやビデオ等によって株主総会を公開する場合の留意点

コーポレート・M&A

 株主総会の議事をビデオカメラで撮影することに何か問題はありますでしょうか。また、撮影した株主総会の議事の様子をインターネットで中継したり公開したりすることはどうでしょうか。

 株主総会議事録を正確に作成するため、後の潜在的な訴訟の証拠とするため、株主総会に出席できない株主・潜在株主等に会社の事業内容を知ってもらうため等の正当な目的のために必要な範囲で、株主の肖像権・プライバシー権や心理的圧迫に配慮した撮影方法でビデオ撮影するのであれば、問題ありません。その撮影した映像をインターネットでライブ中継したり公開したりすることについては、より株主に配慮した慎重な対応が望ましいでしょう。

解説

目次

  1. 株主総会のビデオ撮影に問題はないか
    1. 記録としてのビデオ撮影の有用性
    2. 肖像権・プライバシー権等への配慮
    3. 実務上の留意点
  2. ビデオ撮影の中継・公開に問題はないか
    1. ビデオの中継・公開の現状と有用性
    2. 映像をライブ中継・公開する際に留意すべきポイント

株主総会のビデオ撮影に問題はないか

記録としてのビデオ撮影の有用性

 株主総会については議事録を作成する必要がありますので(会社法318条1項)、議事の様子をビデオカメラに収めておくことはこの議事録をより正確に作成するために有用です。また、株主総会の決議取消訴訟においては、取締役等による説明の内容や、株主からの動議に対する議長の対応が争点になることもありますので、このような潜在的な訴訟に備えて、議事の様子を証拠化しておくことには意味があります。

肖像権・プライバシー権等への配慮

 他方で、株主総会に出席している株主個人が撮影されることについては、株主の肖像権・プライバシー権や心理的圧迫に配慮する必要があります。

 裁判例においては、株主総会の会場において承諾なしにビデオ撮影されたことが株主の肖像権侵害に当たるとして株主が会社に対して損害賠償請求をした事案において、総会議事の正確な記録と将来の決議取消訴訟等における証拠保全の目的によるビデオ撮影を正当な目的と認め、発言株主をズームアップして撮影していることがあっても、発言者を特定するに必要な限度にとどめられていることに加えて後方からの撮影であることから撮影方法としても相当性を欠くものではないとして、ビデオ撮影の目的の相当性、撮影の必要性及び撮影方法の相当性のいずれも認めて違法ではないとしたものがあります(大阪地裁平成2年12月17日判決)。

実務上の留意点

 このように、株主個人を撮影することが絶対に許されないわけではありませんが、あくまで事案毎の個別的な判断であり、この裁判例をもとに後方からであれば株主個人の撮影に何の問題もないと断言することもできません。株主総会の議事の様子をビデオカメラで撮影するに際しては、株主の肖像権・プライバシー権や心理的圧迫に配慮する必要があることから、特に必要性がない限りは、あえて特定の株主個人を撮影することは慎むべきでしょう。

 現在、多くの上場会社がビデオカメラで総会の様子を撮影していますが、その方法としては、壇上の議長・取締役等のみを撮影するか、株主を含めて撮影するとしても会場の後方からの撮影のみとし、個々の出席株主を特定しない形での撮影にとどめていることが多いと思われます。また、株主からの質問の際には、モニターに姿を写してもよいかをあらかじめ質問株主に確認し、承諾した株主についてのみアップにして撮影した映像を会場のスクリーンに投影する等して、出席した一般株主にとってわかりやすい株主総会の運営と、質問株主の肖像権・プライバシーとのバランスを取っている会社もあります。

ビデオ撮影の中継・公開に問題はないか

ビデオの中継・公開の現状と有用性

 最近では、映像のライブ中継を実施している会社はまだごく少数であるものの、規模の大きな会社や個人株主の多い上場会社を中心に、上述のような肖像権・プライバシーの問題や株主への心理的圧迫に配慮したうえで、総会の様子を作成した映像の一部を会社のウェブサイト上で公開する会社が増えてきているようです。

 インターネットを利用して株主総会の議事をライブ中継したり会社のウェブサイトに株主総会の議事を撮影した映像をアップしたりすることは、株主総会に出席することができない株主や、将来的に会社の株主になろうかと考えている潜在的株主に対して、広く株主総会の様子を知ってもらうことができ、その結果株主・潜在株主による会社の事業内容への理解を促進する効果があり、このような目的によるビデオ撮影も正当であると考えられます。

映像をライブ中継・公開する際に留意すべきポイント

 もっとも、映像のライブ中継・公開については、よりいっそう、肖像権・プライバシーの問題や株主への心理的圧迫に配慮する必要があります。会社の事業内容の理解促進を目的とするのであれば、必ずしも議事の全てを映像で中継・公開する必要はなく、事業報告の部分に限定したり、映像は壇上の議長・役員等にとどめて株主の姿が撮影されている部分は中継・公開しないことにしたりする等の配慮を検討するべきでしょう
 また、株主総会招集通知の案内文書や総会会場における案内において、ライブ中継や後日の会社ウェブサイトにおいて映像の公開が予定されていることをあらかじめ株主に案内しておくことが、より親切であると思われます。

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