株主総会において株主提案が行使された場合の対応方法

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 当社は上場会社です。株主総会の準備をしていたところ、ある株主から「株主提案書」なる書面が送付されてきました。当社としては、どのような対応をすればよいのでしょうか。

 株主から株主提案権の行使を受けた場合、会社としては、その適法性をチェックし、適法であれば株主総会でこれを取り上げる必要があります。具体的には、公開会社においては、①提案株主の資格、②提案の方法、③提案の内容、④提案の数、⑤泡沫提案制限、の各項目をチェックする必要があります。

解説

目次

  1. 株主提案権とは
  2. 株主提案権の適法性チェック
  3. 提案株主の資格(チェック項目 1 )
  4. 提案の方法(チェック項目 2 )
  5. 提案の内容(チェック項目 3 )
  6. 提案の数(チェック項目 4 )
  7. 泡沫提案制限(チェック項目 5 )

株主提案権とは

 「株主提案権」とは、一定の株式数を一定期間有する株主が、取締役(会)の招集する株主総会において、議題ないし議案を提案する権利です。

 株主提案権は、議題提案権(会社法303条)議案提案権(会社法304条)および議案の通知請求(会社法305条)からなります。
 なお、議題と議案の違いですが、「定款一部変更の件」というのが議題であり、その具体的な内容である「定款○○条を、次のように変更する。」というのが議案です。

 なお、後述の通り、書面投票制度または電子投票制度を採用する会社については、議題とともに議案が提案されていることが必要です。

株主提案権の適法性チェック

 これらの株主提案権の行使を受けた場合、会社としては、その適法性をチェックし、適法であれば株主総会でこれを取り上げる必要があります。具体的には、公開会社においては、以下の項目をチェックする必要があります。

  1. 提案株主の資格:総株主の議決権の100分の1以上または300個以上を6か月前から引き続き有する株主であること(会社法303条2項・305条1項ただし書)
  2. 提案の方法:株主総会の日の8週間前までに請求することその他法令・規則に照らし適切な方法によっていること
  3. 提案の内容:議案の内容が法令・定款に違反するものでないこと(会社法305条6項)
  4. 提案の数:議案の数が10を超えていないこと(会社法305条4項)。
  5. 泡沫提案制限:実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していないこと(会社法305条6項)

提案株主の資格(チェック項目 1 )

 株主提案は、株主であれば誰でも行うことができるわけではなく、それができるのは、原則として、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主に限られています(会社法303条2項・305条1項ただし書)(ただし、定款でこれらを下回る要件を定めることもできます)。
 そこで、株主提案を受けた会社としては、当該提案株主がその要件に合致しているかどうかを確認する必要があります(なお、提案株主の要件についての確認方法については、「株主提案権が行使できる株主なのかどうかを確認する方法」をご参照ください)。

提案の方法(チェック項目 2 )

 株主提案は、定款で下回る期間を定めていない限り、株主総会の日の8週間前までに会社に請求する必要があるとされています(会社法303条2項・305条1項)。
 そこで、会社としては、株主提案書が株主総会の8週間前までに会社に到着しているかどうかを確認する必要があります。なお、株主提案権の行使日と株主総会の日を算入せず、その間に丸8週間が必要であるとされています。

株主提案権の行使日と株主総会の日を算入せず、その間に丸8週間が必要

 その他、会社の株式取扱規則等の規則において、株主提案は書面によるべきこと等を規定している場合には、その規則の定める方法に沿ったものであるかを確認する必要があります。

提案の内容(チェック項目 3 )

 株主総会は、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り、決議をすることができます(会社法295条2項)。したがって、株主提案により、株主総会の権限として会社法または定款で定められていない事項に関する議題の提案がなされた場合には、これを取り上げる必要はありません。

 また、書面投票制度または電子投票制度を採用する会社については、株主総会参考書類に議案の記載が義務付けられているため(会社法施行規則73条1項1号)、株主提案においても、議題とともに議案が提案されていることが必要です。

 そして、議案の内容が法令もしくは定款に違反する場合にもこれを取り上げる必要はありません(会社法305条6項)。

提案の数(チェック項目 4 )

 株主提案において、一株主が提案することができる議案の数は、10が上限とされており、会社は、10を超える議案については、株主総会において取り上げない扱いとすることができます(会社法305条4項・5項)。

 複数の役員の選任議案や複数の項目の定款変更議案など様々な場合における「一の議案」の数え方の取扱い、株主が単独での株主提案と他の株主との共同での株主提案を併用したり異なる複数のグループの株主提案に参画したりした場合の議案数制限の取扱い、10を超える議案のなかでどの議案を取り上げないかについて誰がどのように決定するのか、等の複雑な問題がありますが、この点は「株主提案を拒否した場合、どのようなリスクがあるか」をご参照ください。

泡沫提案制限(チェック項目 5 )

 提案された議案と実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合には、提案された議案を取り上げる必要はありません(会社法305条6項)。

 そこで、過去3年以内の株主総会における株主提案の議案の内容と照らし合わせて、実質的に同一の議案かどうかを確認する必要があります。もっとも、従前とは微妙に異なる内容の提案がなされることもあり、その判断が容易ではない場合もあります。どのような場合に「実質的に同一」といえるかについては、一律に考えることはできず、個別具体的な状況を含めて判断する必要があります。

 なお、「実質的に同一」であるとして上程しないことが可能と思われる場合であっても、上程を拒否した結果として当該提案株主から株主総会決議取消訴訟を提起される可能性がないわけではありませんので、その対応に追われるよりは、あえて株主総会に上程した上で再度否決するという選択肢も考えられます。

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