定款変更が必要となる事項と株主総会議事録の記載例

コーポレート・M&A
和氣 礎弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 当社(株式会社)は、フィンテックに力を入れており、仮想通貨の売買・交換を取り次ぐ業務に進出したいと考えております。同業務には内閣総理大臣の登録を受ける必要があると聞いており、かかる登録の申請に先立ち、当社定款における「目的」を変更しておきたいと考えています。このような定款変更を決議した株主総会決議の議事録作成において、注意すべき事項はありますか。
 また、「目的」の変更の他に、定款変更が必要となる事項としては、どのような内容がありますか。

 定款変更には株主総会の決議が必要であり、この決議には議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上にあたる賛成(特別決議)が必要となります。議事録の作成においては、特別決議の要件を満たしていることが分かるように注意することの他、変更後の定款の内容を分かりやすく記載するようにすべきです。
 「目的」の変更以外に、定款変更が必要となる主な事項は以下のとおりです。

  • 商号(会社名)の変更
  • 本店の所在地の変更
  • 役員の員数の変更
  • 役員の任期の変更
  • 機関構成の変更
  • 発行可能株式総数の変更

解説

目次

  1. 定款変更に関する株主総会の議事録(総論)
  2. 株式会社の目的事項の変更
  3. 本店の所在地の変更
  4. 役員の任期の変更

定款変更に関する株主総会の議事録(総論)

 定款変更には、原則として株主総会決議(特別決議)が必要となります(会社法466条、309条2項11号)。この株主総会の議事録には変更にかかる定款の内容を記載する必要があるところ、その記載方法には、①変更前の定款の内容と変更後の定款の内容を併記し、変更(新設)部分に下線を引く方法(下記2および4の記載例)、②変更後の定款の内容のみを記載する方法(下記3の記載例)という2通りの方法があります。いずれの方法でなければならないということはありませんが、事後的に過去の定款内容を確認する必要が生じる場合がありますので、過去の内容を確認しやすい①の方法をおすすめします。

株式会社の目的事項の変更

 株式会社の定款には、事業の目的が記載されています(会社法27条1号)。株式会社の行為が定款記載の会社の目的の範囲外であるとして無効と判断される可能性はほぼ皆無と考えられていますが、許認可事業への新規進出を計画している場合、許認可申請に際して所轄監督官庁から定款の目的事項に当該事業が記載されていることを求められることがあります。許認可事業への新規進出を検討している場合、余裕をもって定款変更を行っておくべきといえます。

記載例
第●号議案 定款一部変更の件
 議長は、本議案についての概要を説明し、弊社のノウハウを活かし仮想通貨交換業に進出することを目的として、定款の規定を以下のとおり変更したい旨提案し、慎重に審議した結果、満場一致をもって、本議案は原案どおり可決された。
現行定款 定款変更案
第●条 当会社の目的は、次の事業を営むことを目的とする。

①販売促進活動に関するコンサルティング業務

②コンピューターソフトウエアの開発及び販売

③前各号に附帯する一切の業務

第●条 当会社の目的は、次の事業を営むことを目的とする。

①販売促進活動に関するコンサルティング業務

②コンピューターソフトウエアの開発及び販売

③仮想通貨交換業

前各号に附帯する一切の業務

本店の所在地の変更

 株式会社の定款には、株式会社の本店の所在地が記載されています(会社法27条3号)。定款に記載が必要となるのは、独立の最小行政区画である市町村(東京都の特別区を含み、政令指定都市にあっては市)までであり、それより詳細な住所(東京都●●区●●町1-2-3等)までは記載不要です(ただし、定款に詳細な住所を記載することも可能です)。

 そのため、本店の所在地の変更に際して定款変更が必要となるのは、原則として独立の最小行政区画外に本店の所在地を移す場合のみとなります。もっとも、定款に詳細な住所まで記載している場合、独立の最小行政区画内での本店の所在地の変更であっても、定款の変更が必要となるので注意してください。

記載例
第●号議案 定款一部変更の件
 議長は、本議案についての概要を説明し、定款の第●条の本店所在地に関する規定を以下のとおり変更したい旨提案し、慎重に審議した結果、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数の賛成をもって、本議案は原案どおり可決された。
定款第●条 当会社は、本店を東京都●●区に置く。

役員の任期の変更

 役員の任期は、定款に特段の定めがない場合、取締役は2年、監査役は4年となります(会社法332条1項本文、336条1項)。しかし、公開会社でない株式会社に限り、定款に定めを置くことで、10年に延長が可能です(会社法332条2項、336条2項)。役員の再任においては登記手続が必要となるところ、その手間および費用を削減するため、中小企業においては任期を10年にしていることが多いです。

 もっとも、任期を延ばすことにより、解任時の賠償義務の範囲が広がる可能性があるといったデメリットもあるため、注意が必要です。正当な理由なしに役員を解任した場合の損害賠償の範囲は、解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額と考えられています。ただし、かかる範囲を2年間分の報酬に限定した裁判例もあります(東京地裁平成27年6月29日判決・判時2274号113頁)。

 なお、役員の任期中に任期が変更された場合、かかる変更の効果は現任の役員にも及びます(会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)第3、3、(1)、ウ、(ウ) 平成18年3月31日付け法務省民商第782号)。  

記載例
第●号議案 定款一部変更の件
 議長は、本議案についての概要を説明し、定款に、取締役の任期に関する規定を以下のとおり新設し、規定の新設に伴い条数の変更を行いたい旨提案し、慎重に審議した結果、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数の賛成をもって、本議案は原案どおり可決された。
現行定款 定款変更案
(新設)
第●条 取締役の任期はその選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 任期満了前に退任した取締役の補欠として選任された取締役の任期は、前任者の任期の満了する時までとする。

条~第×条(条文省略) (●+1)条~第(×+1)
(現行どおり)

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