株主総会の延期・続行をするための方法は

コーポレート・M&A

 株主総会の招集通知を発送した後、開催予定日当日に天災が発生した場合には、株主総会の決議を延期する方向で準備をしたいと考えています。どのような手続をとればそのような延期ができるのでしょうか。また、延期した総会の日はいつまで延ばすことができるでしょうか。

 株主総会の開会が物理的に可能なのであれば、あらためて招集決定(会社法298条)や招集通知発送(会社法299条)の手続を行うことなく、延期または続行をすることができます(会社法317条)。
 しかし、議長の一存で決定することはできず、必ず議場に諮って決議を得る必要があります。

 延期または続行の決議を行う際には、後日の総会の日時および場所を定めて決議することが必要です。開催すべき日時について、法令上特に定めはありませんが、当初の総会と一体をなすものですので、延会または継続会までの期間は、原則として長くても2週間以内とするべきでしょう。
 剰余金の配当議案がある場合には、延会または継続会による剰余金の配当決議の日が基準日から3か月を過ぎることとなるのであれば、改めて基準日を設定して公告する必要があります。

解説

目次

  1. 招集通知発送後に決議を先送りしたい事情が発生した場合
  2. 総会の延期または続行とは
  3. 延期または続行の判断権者は誰か
  4. 延会または継続会の開催はどう決定するか

招集通知発送後に決議を先送りしたい事情が発生した場合

 株主総会の招集通知の発送後に開催日や場所を変更する必要が生じた場合に取り得る方法としては、以下3つの方法が考えられます。

  1. 招集手続をやり直す
  2. 招集手続自体はやり直さないが、当初の開催予定日に開催することなく日時を変更する
  3. 当初の開催予定日に一旦開催した上で延期または続行とする

 1、2の方法については、取締役会決議や株主への通知が必要ですので、開催予定日当日に天災があった場合には間に合わないことになります。

総会の延期または続行とは

 株主総会は、延期または続行することができます(会社法317条)。総会の「延期」とは、株主総会の成立後に議事に入らずに会日を後日に変更することをいい、総会の「続行」とは、株主総会が成立して議事に入った後に審議未了となり、後日に再開して議事を継続することをいいます。

 法律上の用語ではありませんが、一般に、延期の決議に基づいて開催される株主総会は「延会」、続行の決議に基づいて開催される株主総会は「継続会」と呼ばれています。

 延会または継続会は、あくまで当初招集された株主総会と一体をなすものですから、あらためて招集決定(会社法298条)や招集通知発送(会社法299条)の手続を行う必要はありません(会社法317条)

 また、審議の対象は当初の総会と同一のものに限られますので、新たに議題を追加することはできず、延会または継続会に出席することができる株主は当初の株主総会で議決権を行使することができた株主に限られます。
 同様に、当初の総会における委任状・議決権行使書や電磁的方法による議決権の行使も、延会または継続会に効力が及ぶとされています。

延期または続行の判断権者は誰か

 総会の延期または続行の判断については、総会の決議によることが必要であり(会社法317条)、議長が議事運営に関する広汎な裁量を有しているといっても(会社法315条)、必ず議場に諮ったうえで決定する必要があります。
 天災時には会場にいる者の安全確保が最優先であることは言うまでもありませんが、会場の安全を確認して株主を誘導する案内の際に、議長は総会の延期または続行について、議場に諮って決議を得ておくべきだと考えます。

延会または継続会の開催はどう決定するか

 延期または続行の決議は、後日の総会の日時および場所を定めて決議することが必要です。ただし、日時および場所の決定を議長に一任するとの決議を行うことは可能とされています。そのような決議があった場合には、議長は決定した日時・場所を当初の総会に来場した株主に通知することになります。

 延会または継続会を開催すべき日時について、法令上特に定めはありませんが、当初の総会と一体をなすものですから、可能な限り、当初の総会から近接した日時で開催するべきでしょう

 仮に、延会または継続会までの期間が2週間を超える場合には、新たに招集手続を行うことが理論上可能になりますから、改めて招集手続を行わなければならないと解される可能性もありますので、天災による被害が継続していて早期の開催が難しいといった特段の事情がない限り、長くても2週間以内とすべきでしょう。

延会または継続会の開催

 なお、定時株主総会で剰余金の配当議案の決議が予定されていた場合には、注意が必要です。多くの会社において、剰余金の配当の基準日を事業年度末とする旨の定款の定めを置いていますが、その基準日の株主に配当をするには基準日から3か月以内に剰余金配当に関する株主総会決議を経る必要があります(会社法124条2項)。

 したがって、株主総会を延会または継続会にした結果、剰余金配当に関する株主総会決議の日が基準日から3か月を過ぎてしまう場合には、改めて基準日を設定し、その基準日の2週間前までに基準日設定公告をする必要があります(会社法124条3項)

剰余金の配当議案の決議が予定されていた場合

剰余金の配当議案の決議が予定されていた場合

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する