株主総会に関する仮処分(株主総会出席禁止の仮処分)

コーポレート・M&A
和氣 礎弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 当社はすべての株式の譲渡に制限を付している非公開会社です。当社は過去に従業員に対し株式を付与していた時期がありました。ところが、最近ある従業員が亡くなり、その息子であるX氏が当社株式を相続しました。
 X氏は暴力団と関わりをもっているようであり、相続後、当社に対して当社株式を高値で買い取ることを度々要求しています。当社がこのような要求を拒否していたところ、X氏は、昨年の株主総会の直前に当社本店を訪れ「株主総会を粉砕する」などと連呼し、株主総会当日にも議題と関係のない発言を繰り返していました。本年においても、株主総会前に複数回当社本店を訪れており、「今年の株主総会は昨年以上のものとなるから覚悟しろ」等の株主総会の妨害をほのめかす言動を行っています。
 本年の株主総会実施に向けて、X氏のような株主に対する対応策としてはどのようなものが考えられますか。

 株主総会に出席しその議決権を行使することは、株主の基本的な権利です。もっとも、かかる権利について制限がないわけではなく、一定の場合には仮処分によって、出席禁止等とすることが可能です。そのため、X氏に対する対処としては、このような仮処分を申し立てることが考えられます。
 また、X氏の行為の具体的態様次第では警察に協力を要請することも考えられます。

解説

目次

  1. 問題株主への対処(総論)
  2. 株主総会出席禁止の仮処分
  3. 警察への協力要請

問題株主への対処(総論)

 株主総会に出席しその議決権を行使することは、株主の基本的な権利です(会社法105条1項3号)。そのため、問題のある株主であっても、無条件にこれらの権利を制約できるわけではありません。
 しかし、株主総会の議長には株主総会の議事を円滑に運営し終了させる秩序維持権があります(会社法315条1項)。株主総会当日に議事を乱す者がいた場合、かかる秩序維持権に基づき退場させることも可能です(会社法315条2項)。
 一方で、本件は、特定の株主が株主総会当日に問題行動を起こしたのではなく、株主総会以前の段階で、当日に問題行動を起こすことをほのめかしているという事案です。このような場合に、株主総会当日に秩序が乱されてから退場処分等で対応するのでは混乱が生じることを避けられないため、仮処分を利用し、事前に、そのような問題株主を出席禁止等とすることが対応策として考えられます

株主総会出席禁止の仮処分

 上記のとおり、会社法の明文上、株式会社の議長には秩序維持権が与えられています。これは、株主総会の開催中は、株式会社からの委託を受けた議長がその秩序維持を行うことになるからにほかならず、株主総会の議事を円滑に運営・終了させる権限は本来的には委任者たる株式会社に帰属するものと解されます(京都地裁平成12年6月28日決定・判時1739号138頁岡山地裁平成20年6月10日決定・金判1296号60頁参照)。そして、議長による措置が期待できない株主総会前においては、株式会社自身が措置を取ることが可能と考えられています。
 したがって、問題株主の過去の言動等から、問題株主が株主総会において株主としての正当な権利行使の範疇を超えた妨害行為に出て、株主総会の議事の円滑な運営・終了を妨害する蓋然性が高く、その蓋然性の回避には株主総会における個別具体的行為を禁止するだけでは足りず、株主総会への出席自体を禁止する必要性が高い場合、株式会社自身により、株式会社の権利を被保全権利として、その株主の株主総会出席禁止の仮処分が認められると考えられています(上記京都地裁決定参照)。

 本件においても、このような仮処分の申立てを実施することが対応策として考えられます。なお、実際の対応としては、仮処分命令が出たとしても、問題株主が会場で示威的行為に及びまたは入場を強行しようとする場合もあることから、そのような場合に備え、たとえば建造物侵入罪等により現行犯逮捕してもらうことができるよう、警察への協力要請を含めて準備しておくべきといえます。

警察への協力要請

 本件のように株主から株主総会の場において問題行為を行う可能性のある言動がなされている場合、警察に対して株主総会への臨場を要請することが考えられます。また、株主が単に議事の混乱をほのめかすことを超えて、それ自体が刑事罰の対象になりうる行為(たとえば、株式会社の事務所に押しかけ退去しない、害悪の告知を行う、暴力行為に及ぶ等)を行った場合、警察に対して通報し、その行為について刑事処分を求めることも考えられます。
 なお、警察に対して協力を求める場合(上記の仮処分の申立てを行う場合も同様ですが)、その問題株主によってどのような行為がなされたか、今後どのような行為がなされる蓋然性があるのか等をきちんと説明する必要があります。そのため、問題株主から事前の接触があった際には、その内容を記録し(録音・録画の実施、報告書の作成等)、証拠化しておくことが重要となります。

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