株主総会議事録の記載例(取締役の選任・解任)

コーポレート・M&A
和氣 礎弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 当社は創業者一族を中心とした株式会社(取締役会設置会社)であり、10年ほど新規の取締役が選任されていませんでしたが、創業者の引退に伴い新任の取締役を選任することとなりました。取締役の選任に関する株主総会議事録を作成する際の注意点はありますか。
 また、取締役の解任の場合についても教えて下さい。

 取締役の選任・解任を行った株主総会の議事録は、登記手続において必要となります。
 取締役の選任の場合、その登記手続において、株主総会議事録を取締役が「就任を承諾したことを証する書面」として用いる場合には、株主総会議事録に取締役の住所の記載が必要となる場合があることに注意が必要です。
 取締役の解任の場合、株主総会議事録には、解任の理由について明記しておくのが望ましいといえます。

解説

目次

  1. 取締役の選任
    1. 登記手続に必要な添付書類
    2. 株主総会議事録の記載例
    3. 就任承諾書の記載例
  2. 取締役の解任に関する注意点と議事録の記載例

目次

  1. 取締役の選任
    1. 登記手続に必要な添付書類
    2. 株主総会議事録の記載例
    3. 就任承諾書の記載例
  2. 取締役の解任に関する注意点と議事録の記載例

取締役の選任

登記手続に必要な添付書類

 取締役の選任については登記する必要があり、かかる登記申請の添付書類として、①株主総会議事録(商業登記法46条2項)、②選任された取締役が「就任を承諾したことを証する書面」(以下「就任承諾書」といいます。商業登記法54条1項)および③株主リスト(商業登記規則61条3項)(詳細は「株主リストを添付書面とする商業登記規則の改正内容とは?」を参照ください)の3点の提出が最低限必要となります。

取締役の選任において登記手続に必要な添付書類

 なお、取締役会設置会社においては取締役会による代表取締役の選定に関する登記も同時に行われることが通常であり、代表取締役の選定に関する登記申請には上記以外の書面(取締役会議事録等)も必要となりますので注意してください。  

株主総会議事録の記載例

 取締役の選任決議に関する株主総会議事録の記載例は以下のとおりです。なお、取締役の選任は株主総会の普通決議によってなされます(会社法329条1項)。

株主総会議事録記載例
第●号議案 取締役4名選任の件
 議長から、取締役4名全員は本総会終結時をもって任期満了となるところ、別添株主総会参考書類記載のとおり取締役4名(うち再任はA1、A2及びA3の3名、新任はA4の1名。)の選任を願いたい旨を説明した。
 議長が本議案を諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり可決され、選任された取締役4名はいずれもその場で就任を承諾した。

 上記記載例では、選任された取締役4名がいずれも就任を承諾した旨を記載していますが、下記1-3のとおり本議事録を新任のA4の就任承諾書として用いるには、議事録の中にA4の住所を記載する必要があります。この場合、上記の「新任はA4の1名」の部分を「新任はA4(住所:東京都●●区●●町●丁目●番●号)の1名」とすることが考えられます。

就任承諾書の記載例

 就任承諾書の典型例は下記例のような書面ですが、株主総会にて取締役が就任を承諾していた場合、その旨を株主総会の議事録に記載することにより、この議事録(①)を就任承諾書(②)として用いることもできます(上記株主総会議事録記載例参照)。

就任承諾書の例

就任承諾書の記載例

 なお、選任された取締役が再任の場合、就任承諾書からは住所の記載を省略することが可能と考えられています。
 しかしながら、選任された取締役が新任の場合、原則として、上記に加えて、就任承諾書「に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている」本人確認書類(具体的には「住民票の写し」・「戸籍の附票」等)が必要となります(商業登記規則61条7項本文)。

 この場合、「就任承諾書に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている本人確認書類」という表現から分かるように、就任承諾書自体にも新任取締役の住所の記載が必要となります(ただし、就任承諾書に押印されている取締役の印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付が必要となる場合(商業登記規則61条4項・5項)、本人確認書類は不要となります(商業登記規則61条7項ただし書き)。なお、同ただし書きに該当する場合であっても、登記実務上、就任承諾書から住所の記載を省略することはできないと考えられていますので注意してください)。株主総会議事録に取締役の住所を記載することは取締役が好まないことも多いため、新任取締役については、株主総会議事録を就任承諾書として用いることが避けられる傾向にあります。  

取締役の解任に関する注意点と議事録の記載例

 取締役の解任は、株主総会の普通決議によってなされます(会社法339条1項)。取締役を正当な理由なく解任した場合、その株式会社は、解任によって取締役に生じた損害の賠償をする義務を負います(会社法339条2項。その範囲は解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額と考えられています。ただし、かかる範囲を2年間分の報酬に限定した裁判例もあります(東京地裁平成27年6月29日判決・判時2274号113頁))。そのため、事後的に解任の正当性が争われる場合に備え、株主総会議事録にもどのような理由で解任するのかを明記しておくことが望ましいといえます。
 取締役の解任についても登記を行う必要があり、その登記申請では、添付書類として解任にかかる株主総会議事録および株主リストが必要となります。

記載例
第●号議案 取締役1名解任の件
 議長は、取締役A1が平成●年●月●日以降当社に出社せず、取締役として求められる職責を果たしていないため、A1を取締役から解任したい旨説明した。
 議長が本議案を諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり可決された。

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