法人株主の従業員が株主総会に来場した場合に代理人資格をどう確認すべきか

コーポレート・M&A

 株主総会の会場受付に、ある法人株主の従業員と名乗る者が来訪しました。法人株主の従業員であれば代理人としての出席を認めて構わないでしょうか。その場合の代理人資格の確認は、どのような方法で行うべきでしょうか。

 法人株主の従業員の代理人資格の確認方法については、特に法令上の決まりはなく、会社の判断として合理的な方法により行うことで問題ないと考えられます。具体的には、当該従業員から職務代行通知書または委任状を提出させる方法が最も確実といえますが、実務上は、議決権行使書用紙(または委任状用紙)や名刺・身分証明書等を提出させる方法により確認することが一般的です。

解説

目次

  1. はじめに
  2. 定款に「代理人を株主に限る」旨の規定がある場合について
  3. 従業員の代理人資格を確認する方法は

目次

  1. はじめに
  2. 定款に「代理人を株主に限る」旨の規定がある場合について
  3. 従業員の代理人資格を確認する方法は

はじめに

 株主総会に出席できるのは、議決権を有する株主本人か、またはその代理人に限られます。この点、法人株主の場合、本来的には当該法人の代表者が株主本人といえますから、株主総会に出席できるのは代表者のみであり、従業員は、原則として代表者から委任を受けた代理人でない限り、株主総会に出席することができません(当該従業員自身が個人として会社の株主であれば別です)。

 ところが、実際には法人株主の代表者本人が株主総会に出席することは稀であり、通常、総務部等の従業員が出席することが多いと思われます。そのため、株主総会の受付においては、来訪した者が法人株主の従業員を名乗る場合、その者が法人株主の代理人としての資格を有するかどうかを確認する必要があります

定款に「代理人を株主に限る」旨の規定がある場合について

 多くの上場会社では、定款に「代理人を株主に限る」旨の規定を置いていますが、このような規定は一般に適法とされています。
 しかし、この規定の本来の趣旨からすれば、法人株主の従業員の場合には、特段の事情のない限り、これを厳格に適用すべきでないと考えられており、株主でない従業員であっても、法人株主から代理権が授与されてさえいれば、代理人としての資格を認めてよいとされています(「株主総会における議決権行使の代理人資格を株主に限定することは認められるか」についてもご参照ください)。

従業員の代理人資格を確認する方法は

 それでは、法人株主の従業員が代理人としての資格を有するかどうかを確認するには、どうすればよいのでしょうか。この点、法令上には特に明文の定めはなく、会社があらかじめ代理人の資格についての証明方法を定めている場合には(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条5号)、その方法にしたがって証明がなされているかどうかを確認することになります。実際には、多数の来場者について円滑に入場資格を確認する必要があることを踏まえ、会社の判断として合理的な方法であれば問題ないと考えられます。
 2015年の株主総会白書によれば、上場会社では、実務上、法人株主の従業員について代理人資格を確認するために、以下の方法が行われています。

確認方法 実施割合(※)
議決権行使書用紙(または委任状用紙)を提出させる方法 76.1%
名刺・身分証明書等を提出させる方法 54.2%
職務代行通知書を提出させる方法 25.4%
代表者からの委任状を提出させる方法 3.1%

(※)複数回答を含むため、合計100%を超えています。

 なお、職務代行通知書とは、法人が従業員に対して職務上の代理権を授与するときに用いる書面のことで、一般的な委任状と区別する趣旨でこのように呼ばれていますが、実質的に委任状と変わるところはありません
 本来は、法人からの代理権付与の事実を直接証明する書面は、法人の代表者名義で作成された委任状や職務代行通知書であることから、従業員の代理人資格を確認するためには、当該従業員からそのような委任状や職務代行通知書を提出させる方法が最も確実ということができます。
 しかし、上記のデータが示すように、実務上はそこまでは要求せず、当該従業員から、会社が法人株主に送付した議決権行使書用紙(または委任状用紙)を提出させる方法や、同人が法人株主の所属であることを示す名刺や身分証明書等を提出させる方法により、代理人資格を確認するという対応が一般的となっています。

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