株主名簿の閲覧・謄写請求にはどのような対応ができるか

コーポレート・M&A
和氣 礎弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

  当社は全ての株式の譲渡について当社取締役会の承認を要するとしている非上場の株式会社です。この度、株主の一人が亡くなり、新たな株主となった相続人から、株主名簿の閲覧を求める内容の書面を受領しました。当社は株主名簿を株主に見せなければならないのでしょうか。また、このような請求にはどのように対処したらよいのでしょうか。

 株主には、株主名簿の閲覧・謄写を請求する権利があります。もっとも、その請求においては、株主が「請求の理由」を明らかにする必要があり、株主が目的を明らかにしない場合または目的が不当な場合には、請求を受けた会社はその請求を拒否することも可能です。
 そのため、まず株主に対して「請求の理由」を明らかにするよう求め、目的を明らかにしない場合または目的が不当である場合には、かかる請求を拒否するという対処をすることとなります。

解説

目次

  1. 株主名簿とは
  2. 株主名簿記載事項を記載した書面の交付請求
  3. 株主名簿の閲覧・謄写請求とその拒絶
    1. 株主名簿の閲覧・謄写請求
    2. 株主名簿の閲覧・謄写の拒絶

株主名簿とは

 株主名簿とは、株式会社に作成が義務づけられた帳簿であり、具体的には株主に関する以下の各事項を記載するものとされています(会社法121条各号)。

A) 各株主の氏名または名称および住所
B) 各株主の有する株式の数(種類株式発行会社では株式の種類および種類ごとの数)
C) 各株主が株式を取得した日
D) 株券発行会社では、各株式にかかる株券の番号

 株主名簿には、①株式会社が株主に対して行う通知・催告は株主名簿に記載・記録された株主の住所に発すれば足りる旨の株式会社を免責する効果(会社法126条1項)、②株主名簿の名義書換が株式譲渡の対抗要件となる効果(会社法130条1項)があります。

株主名簿記載事項を記載した書面の交付請求

 株主が株式を売却したい場合自らが株主であると(潜在的)買主に証明する必要が生じることがあります。かかる証明を可能とするため、株主は、株式会社に対し、自らについて株主名簿に記載された内容を記載した書面の交付を請求することが認められています(会社法122条1項)。

株主名簿の閲覧・謄写請求とその拒絶

株主名簿の閲覧・謄写請求

 株式会社は、株主名簿を本店に備え置く義務があり、株主および債権者は閲覧・謄写の請求をすることができます(会社法125条1項および2項柱書)。たとえば、株主総会において現経営陣提案にかかる議案に反対したい株主が委任状勧誘を行おうとする場合、他の株主の氏名・住所等の連絡先を知る必要があります。このような場合のために、閲覧・謄写の権利が認められています。

株主名簿の閲覧・謄写の拒絶

 株主から株主名簿の閲覧・謄写請求がなされた場合株式会社は一定の例外を除いてこれに応じる義務があります(会社法125条3項柱書)。

 請求を拒否できる場合としては、以下の内容が定められています(会社法125条3項各号)。

A) 請求者がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
B) 請求者がその株式会社の業務の遂行を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
C) 請求者が株主名簿の閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
D) 請求者が、過去2年以内において、株主名簿の閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。


 請求を受けた株式会社としては、請求者が「請求の理由」(会社法125条2項柱書後段)を明らかにしない場合または請求者が上記A~Dのいずれかに該当する場合、請求を拒否できることとなります(A~Dに該当するかどうかは、請求者が主張する「請求の理由」や客観的な事実関係を踏まえて検討することとなります)。

無料会員にご登録いただくことで、続きをお読みいただけます。

1分で登録完了

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する