株主総会議事録の記載例(ストック・オプション)

コーポレート・M&A
山口 敏寛弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 取締役に対しストック・オプションを付与する場合、株主総会決議は必要になりますか。また、役員ではない従業員に対して付与する場合はどうですか。

 取締役に対するストック・オプションの付与は「報酬等」の支払いに該当しますので、定款に特別の定めがない限り、具体的内容等を株主総会決議により定める必要があります(会社法361条1項)。
 また、付与する相手が取締役であるか従業員であるかを問わず、ストック・オプションの付与は新株予約権の発行に該当しますので、非公開会社である場合や、公開会社であっても有利発行に該当する場合などには、株主総会決議を得る必要があります(会社法238条2項、239条1項、240条1項、244条の2第5項)。

解説

目次

  1. ストック・オプションの概要
    1. ストック・オプションとは
    2. ストック・オプションの付与に関する規制
  2. 取締役に対してストック・オプションを付与する場合の株主総会決議
    1. 株主総会決議の方法
    2. 株主総会議事録の記載方法
    3. 登記手続との関係

ストック・オプションの概要

ストック・オプションとは

 業績連動型報酬として、取締役や従業員に新株予約権が付与される場合、その新株予約権はストック・オプションと呼ばれます。ストック・オプションを付与された者は、当初定められた行使価格で新株予約権を行使して株式を取得することができますので、会社の株価が上昇するほど多くの利益を得ることができます。したがって、ストック・オプションを付与された者には、会社の業績を向上させて株価を上昇させるインセンティブが与えられることになります。

 また、いわゆるベンチャー企業など、手元資金が不足し現金流出を避けたい会社においては、現金での報酬または賃金の代わりにストック・オプションを付与することで、現金流出を抑えつつ人材を確保することが可能となります。  

ストック・オプションの付与に関する規制

(1) 「報酬等」としての規制

 ストック・オプションの付与は、付与日現在における公正な評価額が、「報酬等のうち額が確定しているもの」でかつ「金銭でない」報酬等(会社法361条1項1号・3号)の支払いに該当します。そのため、取締役にストック・オプションを付与する場合には、定款に特別の定めがない限り、その額または算定方法および具体的内容を、株主総会の普通決議により定める必要があります(会社法361条1項)。  

 もっとも、すでに株主総会で承認されている報酬等の上限額の範囲内でストック・オプションを付与する場合には、その具体的内容のみを追加で定めれば足りると考えられます。

(2) 新株予約権の発行としての規制

 また、ストック・オプションの付与は新株予約権の発行に該当します。そのため、非公開会社である場合や、公開会社であっても有利発行に該当する場合には、株主総会の特別決議により、ストック・オプションとして付与される新株予約権の募集事項を定めるか、募集事項の決定を取締役(会)に委任する必要があります(会社法238条2項、239条1項、240条1項、309条2項6号)。
 さらに、公開会社において、新株予約権の割当により支配株主の異動が生じうる場合で、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主からの反対があったときは、その会社は、原則として、株主総会の普通決議により、新株予約権の割当についての承認を得る必要があります(会社法244条の2第1項、5項)。

 なお、募集事項として定めるべき「新株予約権の内容」は、会社法236条1項各号に定められています。また、同項各号の中には含まれていませんが、新株予約権の行使条件も、「新株予約権の内容」の1つとして定めることができます。

取締役に対してストック・オプションを付与する場合の株主総会決議

株主総会決議の方法

 取締役に対してストック・オプションを付与する場合、報酬等に関する決議と新株予約権発行に関する決議は、別々に行うことも併せて行うことも可能です。また、取締役に対してストック・オプションを付与する場合は、通常は有利発行に当たらないものと考えられていますので、有利発行としての特別決議は不要であり、普通決議で足ります(従業員や子会社役職員に対する付与については議論があります。また、非公開会社の場合等の別の見地から特別決議が必要になる場合はあります)。

 なお、ストック・オプションの付与に関する議案を提出した取締役は、株主総会において、その内容を相当とする理由を説明する必要があります(会社法361条4項)。

株主総会議事録の記載方法

 取締役に対してストック・オプションを付与する場合の議事録の記載例は、以下のとおりです。なお、以下の記載例は、非公開会社においてストック・オプションを付与する場合で、かつ報酬等に関する決議と新株予約権の発行に関する決議を併せて行う場合を想定したものになります。

株主総会議事録記載例
第●号議案 当社取締役に対するストック・オプション付与の件
 議長より、当社取締役の業績に対する意欲や士気を一層高めることにより、当社の企業価値の向上を図るため、当社取締役に対し、平成●年●月●日開催の当社株主総会において承認された年額●万円の報酬等の額の範囲内において、ストック・オプションとして、以下の内容の新株予約権を無償で付与することとしたい旨、およびその他の募集事項の決定は当社取締役会に委任することとしたい旨が説明された。

1. 新株予約権の数の上限
 ●個を上限とする。

2. 新株予約権と引換えに金銭を払い込むことの要否
 新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする。

3. 新株予約権の内容

(1) 新株予約権の目的となる株式の種類および数
 当社普通株式を目的とする。また、新株予約権1個につき目的となる普通株式の数は100株とする。 なお、当社が合併、会社分割、募集株式の発行、株式分割または株式併合を行う場合等、上記株式数の調整を必要とするときは、当社は必要と認める調整を行う。 


(2) 新株予約権の行使に際して出資される財産の価額
 新株予約権1個あたりの行使に際して出資される財産の価額は、1円に上記(1)に定める新株予約権1個につき目的となる普通株式の数を乗じた金額とする。

(3) 新株予約権を行使することができる期間
 平成●年●月●日から平成●年●月●日まで


(4) 新株予約権の行使の条件

① 権利行使時において、当社の取締役または従業員であることを要する。ただし、取締役が任期満了により退任した場合、もしくは従業員が定年により退職した場合、または当社取締役会が正当な理由があると認めた場合はこの限りではない。

② 新株予約権者が死亡した場合には、新株予約権の相続は認められない。


(5) 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金および資本準備金に関する事項

① 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金の額は、会社計算規則第17条第1項に従い算出される資本金等増加限度額の2分の1の金額とする。計算の結果1円未満の端数が生じたときは、その端数を切り上げるものとする。

② 新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本準備金の額は、上記①記載の資本金等増加限度額から、上記①に定める増加する資本金の額を減じた額とする。


(6) 新株予約権の譲渡制限
 譲渡による新株予約権の取得については、当社取締役会の承認を要する。


(7) 新株予約権の取得条項
 新株予約権者が上記(4)①の条件を満たさなくなった場合、その他理由のいかんを問わず権利を行使することができなくなった場合、当該新株予約権については、当社はこれを無償で取得することができる。


(8) 新株予約権を行使した場合に1株に満たない端数が生じた場合の処理
 新株予約権を行使した者に対して交付する株式の数に、1株に満たない端数が生じた場合には、これを切り捨てるものとする。

 続いて、議長より、本議案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって、原案どおり承認可決された。

登記手続との関係

 新株予約権を発行した場合、その内容等を登記する必要があります(会社法915条1項、911条3項12号)。そして、新株予約権の発行に株主総会決議が必要となる場合には、登記手続の際に、その決議を行った株主総会の議事録を添付する必要があります(商業登記法46条2項)。

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