株主総会決議の瑕疵(不存在、無効、取消)を争う訴訟の原告適格

コーポレート・M&A
山口 敏寛弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 先月、私が投資している会社の株主総会が開催されたのですが、その総会について、一部の株主に対する招集通知が発送されていなかったことが判明しました。それにも関わらず、同社は株主総会をやり直そうとしません。そこで、私は、同社の今後の株主総会の運営を正すため、株主総会決議取消しの訴えを提起したいと考えています。

 私自身はその招集通知を受け取ったのですが、このような場合でも、私が株主総会決議取消しの訴えを提起することは可能でしょうか。

 会社法上、株主は、株主総会決議取消しの訴えを提起することができるとものとされています。また、判例上、株主は、他の株主に対する招集手続に瑕疵がある場合には、自分自身が適法に招集通知を受け取った場合であっても、自ら原告となって株主総会決議取消しの訴えを提起することができると解されています。

解説

目次

  1. 株主総会決議の瑕疵を争う訴訟
    1. 株主総会決議取消しの訴え
    2. 株主総会決議無効確認の訴え
    3. 株主総会決議不存在確認の訴え
  2. 株主総会決議の瑕疵を争う訴訟の原告適格
    1. 原告適格とは
    2. 取消しの訴えの原告適格について
    3. 無効確認の訴え・不存在確認の訴えの原告適格について

株主総会決議の瑕疵を争う訴訟

株主総会決議取消しの訴え

 株主総会の手続や内容に以下の1~3の瑕疵がある場合、決議の日から3か月以内に、会社を被告として、株主総会決議取消しの訴え(以下「取消しの訴え」といいます)を提起し、その決議の取消しを求めることができます(会社法831条1項、834条17号)。

  1. 招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なとき
  2. 決議の内容が定款に違反するとき
  3. 決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき

 これらの場合、その決議について他に無効事由または不存在事由が存しない限り、取消しの訴え以外の方法で決議の効力を否定することはできません。また、上記1~3のいずれかに該当する場合であっても、その違反する事実が重大ではなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認められるときは、裁判所の裁量により、取消しの訴えが棄却される可能性があります(会社法831条2項)。

 なお、民事訴訟における判決の効力は訴訟当事者に対してのみ及ぶのが原則ですが、取消しの訴えを認容する判決の場合、その効力は第三者に対しても及びます(会社法838条)。

株主総会決議無効確認の訴え

 株主総会決議の内容が法令に違反する場合、会社を被告として、株主総会決議無効確認の訴え(以下「無効確認の訴え」といいます)を提起し、その無効の確認を求めることができます(会社法830条2項、834条16号)。たとえば、取締役の欠格事由(同法331条1項)に該当する者を取締役に選任する決議が行われた場合が、これに該当します。

 株主総会決議が法令に違反する場合には、訴訟中の抗弁として無効を主張するなど、無効確認の訴え以外の方法でその決議の無効を主張することもできます
 もっとも、通常の確認の訴えの場合とは異なり、無効確認の訴えを認容する判決の効力は第三者に対しても及びますので(会社法838条)、第三者との関係でも決議の無効を明確にするためには、無効確認の訴えを提起することが必要となります。

株主総会決議不存在確認の訴え

 株主総会決議が存在しない場合には、会社を被告として、株主総会決議不存在確認の訴え(以下「不存在確認の訴え」といいます)を提起し、その不存在の確認を求めることができます(会社法830条1項、834条16号)。「株主総会決議が存在しない場合」とは、以下のような場合を意味します。

  1. 決議が物理的に不存在である場合
  2. 何らかの決議があっても、それが法的に株主総会決議と評価できない場合

 そして、この2には、以下のような場合が含まれます。

  • 取締役会決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役が株主総会を招集した場合(最高裁昭和45年8月20日判決・集民100号373頁
  • 代表取締役がその実子である2人の株主に対してのみ口頭で招集通知を行い、他の6人の株主に対しては招集通知を全く行わなかった場合(最高裁昭和33年10月3日判決・民集12巻14号3053頁

 不存在確認の訴えを認容する判決の効力が第三者にも及ぶこと(会社法838条)、および不存在確認の訴え以外の方法でも決議の不存在を主張できることは、無効確認の訴えの場合と同様です。

訴えを提起することができる場合 特徴
株主総会決議取消しの訴え
  1. 招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なとき
  2. 決議の内容が定款に違反するとき
  3. 決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき
  • その決議について他に無効事由または不存在事由が存しない限り、取消しの訴え以外の方法で決議の効力を否定することはできない
  • 取消しの訴えを認容する判決の効力は第三者に対しても及ぶ
株主総会決議無効確認の訴え 株主総会決議の内容が法令に違反する場合
  • 無効確認の訴え以外の方法でも決議の無効を主張できる
  • 無効確認の訴えを認容する判決の効力は第三者に対しても及ぶ
株主総会決議不存在確認の訴え 株主総会決議が存在しない場合

  1. 決議が物理的に不存在である場合
  2. 何らかの決議があっても、それが法的に株主総会決議と評価できない場合
  • 不存在確認の訴え以外の方法でも決議の不存在を主張できる
  • 不存在確認の訴えを認容する判決の効力は第三者に対しても及ぶ

株主総会決議の瑕疵を争う訴訟の原告適格

原告適格とは

 原告適格とは、特定の請求について原告として訴訟を追行し、本案判決を求めることのできる資格のことをいいます。上記の各訴訟に限らず、民事訴訟を提起するためには、提起しようとする者に原告適格が認められる必要があります。

取消しの訴えの原告適格について

 会社法上、取消しの訴えは、以下の者が提起できるとされています(会社法831条1項柱書前段、828条2項1号)。

  1. 株主
  2. 取締役
  3. 監査役(監査役設置会社の場合)
  4. 執行役(指名委員会等設置会社の場合)
  5. 清算人

 また、この1~5に加え、効力を争う対象となる株主総会決議を取り消すことによって株主、取締役、監査役または清算人としての地位を回復することができる者も、取消しの訴えを提起することができます(会社法831条1項柱書後段)。たとえば、株主総会決議によってその地位を解任された取締役、監査役または清算人がこれにあたります。

 さらに、その株主総会決議を取り消すことによって取締役、監査役または清算人としての権利義務を有する状態となる者についても、同様に取消しの訴えを提起することができるとされています(会社法831条1項柱書後段カッコ書)。たとえば、株主総会の取締役選任決議が取り消されると取締役の数が所定の人数を下回る状態となる場合には、その株主総会の終結をもって取締役としての任期を満了して退任した者についても、同決議の取消しによってその後は(新たに選任された取締役が就任するまでは)取締役としての権利義務を有する状態となりますので(会社法346条1項)、取消しの訴えを提起することができることになります。

 なお、株主は、自らに対する招集手続に瑕疵がなくても、他のいずれかの株主に対する招集手続に瑕疵がある場合には原告適格を有し、自ら原告となって取消しの訴えを提起することができます最高裁昭和42年9月28日判決・民集21巻7号1970頁)。したがって、設問のように、自らは招集通知を受け取っており、他の一部の株主に対してのみ招集通知が発送されていなかった場合であっても、自ら原告となって取消しの訴えを提起することができます。

無効確認の訴え・不存在確認の訴えの原告適格について

 無効確認の訴え・不存在確認の訴えの原告適格について、会社法上の制約はありません。そのため、一般原則に従い、確認の利益が認められる限り、株主や取締役など以外の第三者であっても訴えを提起することが認められます。

 この場合の「確認の利益」は、おおむね、株主総会決議の存否を確定することが、現在の権利関係をめぐる紛争の抜本的解決のために必要である場合に認められます。詳細は、「株主総会決議の瑕疵(不存在、無効、取消)を争う訴訟の訴えの利益」を参照ください。

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