株主総会招集通知の間違いを訂正する方法と記載例を弁護士が解説

コーポレート・M&A 更新

 株主総会招集通知の発送後に、招集通知の記載内容に修正すべき事項を発見した場合、どのように対応したらよいでしょうか。

 修正内容が単なる誤字脱字や記載ミス等の形式的レベルにとどまる場合には、WEB修正を利用することが一般的です。具体的には、訂正文や正誤表を作成して、自社のウェブサイト上に掲載することにより対応が可能です。

 これに対して、議題の追加や議案の変更等に当たる実質的な修正の場合には、発送期限内に再度招集通知の発送手続をやり直す必要があります。
 ただし、招集通知発送後に生じた新たな事情による修正の場合には、株主にその旨を周知すれば足り、また、場合によって株主総会当日に修正動議を行うという対応も考えられます。

解説

目次

  1. 株主総会招集通知とは
    1. 招集通知の意義
    2. 招集通知の発送時期
  2. 電子提供制度(2022年9月からスタート)の下での招集通知
    1. 電子提供制度とは
    2. 電子提供制度の下での運用の実情・具体例
  3. 誤記や形式的な点を訂正する場合
    1. WEB修正を利用する
    2. 訂正文・正誤表を送付(または当日配付)する
  4. 実質的な内容の変更を行うことになる場合
    1. 発送期限内に招集通知を再発送する
    2. WEB修正等による周知や、総会当日に説明を行う(事後的に生じたやむを得ない事情による場合)
    3. 総会当日に修正動議を行う(議案の変更に当たる場合)
    4. 監査自体をやり直す

株主総会招集通知とは

招集通知の意義

 株式会社が株主総会を開催する場合、株主に対して事前に株主総会の日時・場所や議題などが記載・記録された招集通知(会社法299条)を発送する必要があります(いわゆる狭義の招集通知)。この招集通知は、通常、株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類、監査報告等が添付された形で株主に発送されます(添付書類まで含めたものを広義の招集通知といいます)。
 このように、招集通知は、株主に対して予定された株主総会の内容を通知することにより、株主に株主総会の出席の機会を与え、また、各株主が株主総会に向けて十分な準備・検討を行うことを可能にするという重要な意義を有するものです。

招集通知の発送時期

 上場会社の場合、原則として開催日の2週間前までに、株主に対して招集通知を発送する必要があります(会社法299条1項)。

 ただし、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)によれば、上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるように、招集通知については上述の法定期限(2週間前まで)よりも早期の発送に努めるべきであるとされ、さらに招集通知に記載する情報については、招集通知発送までの間にTDnetや自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきであるとされています(CGコード補充原則1-2②)。
 ここでいう「早期の発送」の目安は、法定期限より3営業日以上前に発送する場合とされていますが、「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2023」によれば、そのような早期発送を行っている会社は東京証券取引所上場会社全体の76.8%に上ります。また、CGコード補充原則1-2②のコンプライ率については90%以上であることから 、かなり多くの上場会社が招集通知の早期発送や早期WEB開示を行っている状況にあるといえます。

 上場会社における招集通知の発送について、詳細は「株主総会招集通知の重要性と発送手続について」をご参照ください。また、招集通知の早期WEB開示については「株主総会招集通知の早期WEB開示とWEB修正をする時に知っておきたいポイント」をご参照ください。

電子提供制度(2022年9月からスタート)の下での招集通知

電子提供制度とは

 株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し、当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知することによって、株主総会資料を提供すること(電子提供措置)ができる制度のことをいいます(詳細は「株主総会資料の電子提供制度のポイントと実務対応」をご参照ください)。2022年9月以降、上場会社において適用されています。
 ここでいう株主総会資料とは、株主総会の日時・場所・議題等のほか、株主総会参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類等に記載すべき事項に係る情報(資料)のことをいいます(会社法325条の3第1項各号)。

(1)狭義の招集通知

 電子提供制度の下においても、いわゆる狭義の招集通知については、実際に株主に対して発送する必要があります。この場合の招集通知(一般にアクセス通知と呼びます)には、株主総会の日時・場所・議題、電子提供措置をとっている旨、ウェブサイトのURL等について記載すべきものとされ、株主総会の日の2週間前までに発送する必要があります(会社法325条の4)。
 ただし、上場会社については、CGコード補充原則1-2②により早期発送が求められていることは1-2で述べたとおりです。

(2)株主総会資料

 他方、上述の株主総会資料については、電子提供制度の下では、原則として電子提供措置をとれば足り、株主から書面交付請求がなされない限りは、実際に株主に対して書面を発送することは求められません。その代わり、株主総会の日の3週間前の日または招集通知の発送日のいずれか早い日までに電子提供措置をとらなければならないとされています(会社法325条の3第1項)。
 ただし、これについても、東京証券取引所では、上場会社は、法定の期限よりも早期に提供するよう努力することが求められています(有価証券上場規程446条、有価証券上場規程施行規則437条3号)。

 なお、少なくとも電子提供制度の初年度である2023年の株主総会においては、上場会社が実際に株主に招集通知を発送するにあたっては、法令で最低限求められるアクセス通知のみを送付するのではなく、任意の対応として、従来どおり株主総会参考書類や事業報告等を添付して送付する(フルセットデリバリー)か、それらのサマリー資料を添付して送付するという対応を行ったケースがほとんどのようでした。

電子提供制度の下での運用の実情・具体例

 電子提供制度は2022年9月以降、上場会社において実際に適用されていますので、同制度下における招集通知の具体例は、各上場会社のウェブサイト等で数多く公表されています。ただし、実際には株主に対してアクセス通知のみを送付した会社でも、ウェブサイト上では、電子提供措置の一環として、フルセットデリバリーと同程度の招集通知が掲載されていることが通常と思われます。

 アクセス通知のみのパターンを含めた一般的なひな型としては、全国株懇連合会の招集通知モデル(2022年10月21日制定)や、経団連のひな型(2023年1月18日更新)などが参考になります。

誤記や形式的な点を訂正する場合

 招集通知の発送後に、単なる誤字脱字や記載ミス等の形式的な修正事項が見つかった場合の対応方法について説明します(早期WEB開示を行った段階など、招集通知の発送前に記載ミスが発見された場合の対応については「株主総会招集通知の早期WEB開示とWEB修正をする時に知っておきたいポイント」をご参照ください)。

WEB修正を利用する

(1)WEB修正とは

 近年では、招集通知に記載ミス等があった場合には、いわゆるWEB修正を利用することが一般的です。
 WEB修正とは、株主総会参考書類等に記載すべき事項について、招集通知を発した日から株主総会の前日までの間に修正をすべき事情が生じた場合に、インターネット上のウェブサイトに掲載することにより、修正後の事項を株主に周知するというものです。

 株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類に関しては、そのような修正事項の周知方法をどうするかについて、招集通知と併せて通知することができるとされています(会社法施行規則65条3項・133条6項、会社計算規則133条7項・134条7項)。その方法として、インターネット上のウェブサイトに掲載する方法を選択するのがWEB修正です。
 電子提供制度の下では、株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類等の株主総会資料については、通常、すべて自社や東京証券取引所等のウェブサイト上において電子提供措置を行うため、その修正についても電子提供措置をとらなければならないこととされており(会社法325条の3第1項7号)、同じウェブサイト上でのWEB修正の方法によって行うこととなります。

 WEB修正を利用する場合には、その旨を招集通知と併せて株主に通知することが必要となります。実務上は、以下のように、招集通知自体にその旨を記載するのが一般的です。

【電子提供制度の下での記載例】

なお、電子提供措置事項に修正が生じた場合は、修正後の事項を下記ウェブサイトに掲載いたしますので、ご了承願います。
当社ウェブサイト:https://www.◯◯◯◯

(2)WEB修正が利用できる範囲

 上述のとおり、修正事項の周知方法に関する規定は、株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類に関してのみ用意されていることから、WEB修正は、それらの文書についてのみ許容されているようにも思われます。

 しかしながら、当該規定は、直接的には周知方法を招集通知と併せて通知することができる旨を定める規定であり、WEB修正そのものを直接根拠付ける規定ではありません。招集通知にかかるその他の文書(狭義の招集通知、会計監査報告、監査役(会)の監査報告および委任状勧誘府令に基づく議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類)についても、明文の規定こそありませんが、単なる誤記や形式的修正の場合であれば、株主の議決権行使に影響を与えることがない以上、WEB修正と同様の方法を否定する理由はないと考えられます。

(3)WEB修正における修正事項の具体的な周知方法

 上述のとおり、WEB修正とは、修正後の事項をインターネット上のウェブサイトに掲載する方法により株主に周知することをいいますが、周知する際の修正事項の表示方法などに細かいルールはなく、適宜、各社の判断により対応することで足ります。
 実務上は、修正事項の内容や分量等に応じて、株主にとって分かりやすい形で訂正文や正誤表を作成して、それをウェブサイトに掲載することが通常です。


【訂正文の記載例】


2024年◯月◯日

株主各位

◯◯◯◯株式会社
代表者:代表取締役社長◯◯◯◯
問い合わせ先:◯◯◯◯


「第△回定時株主総会招集ご通知」の一部訂正について


 当社「第△回定時株主総会招集ご通知」の一部に訂正すべき事項がございましたので、ここにお詫び申し上げますとともに、下記のとおり訂正させていただきます(訂正箇所に下線を付しております)。
  なお、当社ウェブサイトに掲載の「第△回定時株主総会招集ご通知」は、下記の内容を反映しております。


訂正箇所:「第△回定時株主総会招集ご通知」◯ページ

【訂正前】
 ・・・(訂正前の記載内容を抜粋し、訂正箇所に下線を引く)

【訂正後】
 ・・・(訂正後の記載内容を抜粋し、訂正箇所に下線を引く)

 なお、上場会社の場合、WEB修正を行うウェブサイトとして自社のウェブサイトのみを指定していた場合であっても、このような修正後の事項(訂正文や正誤表)についてはTDnetを通じて東京証券取引所等にも提出する必要があります

訂正文・正誤表を送付(または当日配付)する

 電子提供制度を採用していない場合には、その他の修正方法として、訂正文や正誤表を印刷して株主に書面で送付するという方法もあります。誤記等が見つかったのが招集通知の発送前であれば、それらを招集通知の郵便物に同封することも考えられます。また、事前に送付せずに、株主総会の当日に配付するという方法もあります。

 また、事前にWEB修正を行った場合においても、ウェブサイトを見ていない株主のために、別途印刷したものを用意して株主総会の当日に配付することも考えられます。

実質的な内容の変更を行うことになる場合

 単なる誤記等の形式的修正ではなく、株主総会参考書類において議案の内容の追加・変更に当たる修正を行う等、招集通知の内容を実質的に変更することになる修正をする場合には、以下のような対応を検討すべきと考えられます。

発送期限内に招集通知を再発送する

 招集通知の内容を実質的に変更することになる修正をする場合は、株主に対する不意打ちとならないよう、日程的に可能である限り、発送期限内に招集通知の発送手続をもう一度やり直す必要があると考えられます。

WEB修正等による周知や、総会当日に説明を行う(事後的に生じたやむを得ない事情による場合)

 ただし、それが招集通知発送後に生じた新たな事情によるやむを得ない修正の場合には、WEB修正等の方法により株主にその旨を周知する(もしくは株主総会当日にその旨の説明を行う)ことで足りると考えられます。

総会当日に修正動議を行う(議案の変更に当たる場合)

 議案の内容の変更に当たるような事情が生じた場合(取締役選任候補者の死亡等)であれば、株主総会当日に修正動議を行うという対応も考えられます。

監査自体をやり直す

 事業報告等の記載事項の変更により監査報告・会計監査報告の内容に影響を及ぼす可能性がある場合については、監査役や会計監査人に報告のうえ、場合によっては監査自体をやり直すことも検討すべきだと考えます。

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