変わった内容の株主提案がなされた場合にどう対応するか

コーポレート・M&A

 当社の株主から株主提案書が送付されてきました。しかし、その提案内容は、当社の定款変更議案の体裁がとられてはいますが、提案されている定款変更案は、当社がある事業に進出することを定款で禁止する内容です。
 また、その提案理由の箇所には提案株主の政治的主張が羅列されており、そもそも、一部の記載は何を伝えたいのかよくわかりません。このような場合でも、当社はこれを有効な株主提案として採り上げ、株主総会参考書類に記載しなければならないのでしょうか。

 株主提案の議案の内容が法令または定款に違反する場合には会社はこれを採り上げる必要はありません(会社法305条4項)。しかし、一応は定款変更議案の体裁になっている場合、その定款変更の内容自体が法令・定款違反であれば別ですが、そうでなければ、基本的には適法な株主提案として扱わざるを得ません。
 もっとも、権利濫用と認められるような場合には適法な株主提案として取り扱わないことも考えられますし、株主提案としては適法と扱うとしても、議案の提案理由については、株主総会参考書類に記載するにあたって会社において一定の修正をすることができます。

解説

目次

  1. 株主提案の多様化
  2. 本問のような株主提案の取扱い
  3. 株主提案の場合における株主総会参考書類の記載
  4. まとめ

株主提案の多様化

 近年では、株主提案の内容は多様化しており、会社の経営方針を巡る考え方の違いから取締役の選解任議案を提出したり配当議案を提出したりする場合に加えて、定款変更議案の体裁をとって政治的・社会運動的な内容を多くの株主や一般社会に伝えようとしたり、提案株主個人の宣伝や特定個人を非難する内容を広く伝播しようとしたり、極端な事例では、数十個に及ぶ株主提案をしたり、単なる悪ふざけと思われるような定款変更を提案する事例も実際に散見されます。

本問のような株主提案の取扱い

 株主提案権は、少数株主が会社や他の株主に対してコミュニケーションをとる手段として重要な権利であると考えられています。したがって、本問のように提案理由に政治的主張が羅列されており、そもそも可決を目的としていないように思われる株主提案や、社会運動目的のような株主提案であっても、それが原因でただちに不適法となるものではありません。

 株主提案の数や内容によっては、会社や他の株主に著しい損害を与える権利行使として、権利濫用と認められる可能性もありますが、実際に権利濫用と認められるかについて、株主提案書を受領した段階で会社側が見極めるのは困難であり、一見適法な定款変更議案の体裁を満たしている場合には、適法な提案として扱わざるを得ないのが現実です(一例として、平成24年6月27日開催の野村ホールディングス株式会社の第108回定時株主総会においては、1名の株主から100個の株主提案があり、うち18個の定款変更議案が適法な株主提案として採り上げられています)。

株主提案の場合における株主総会参考書類の記載

 会社は、適法な株主提案については、株主総会参考書類に法定の事項を記載して株主に通知する必要があります(会社法施行規則93条1項)。しかし、議案の提案理由が明らかに虚偽である場合や専ら人の名誉を侵害し、または侮辱するような内容であると認められる場合には、会社はその内容を株主総会参考書類に記載する必要はありません(会社法施行規則93条1項3号カッコ書)

 また、明らかな虚偽・名誉毀損とまでは認められないような記載であっても、議案の提案理由が株主総会参考書類にその全部を記載することが適切でない程度の多数の文字、記号その他のものをもって構成されている場合には、それをそのまま参考書類に記載する必要はなく、概要を記載すれば足ります(会社法施行規則93条1項柱書カッコ書)

 どの程度であれば全部を記載することが適切でない程度に多数であるのかの判断は一概には言えませんが、そのような場合を想定して、あらかじめ会社において字数の上限を規則で定めておくこともできます(会社法施行規則93条1項柱書カッコ書)。

まとめ

 実際には、このような問題ある株主提案がなされた場合、内容が意味不明であるが故に、会社としてはその「概要」を要約することが困難である場合が少なくありません。また、会社としては「概要」を記載したつもりでも、当該提案株主にとっては重要な箇所が省略されてしまった結果、強い不満を持つことも考えられます。

 しかし、他の一般株主から見て不快な内容になっていないかにも留意する必要があります。適法な記載内容を会社が一方的に削除することはできませんし、適法性に疑義があるとしても、当該提案株主との今後の関係にも留意する必要がありますので、会社は難しい判断を迫られることになりますが、株主総会参考書類は、あくまで株主が議決権行使の判断の参考にするための書面であり、提案株主が提案議案の内容と無関係の個人的なメッセージを伝達する道具ではありません。

 会社としては、具体的内容に応じて、不相応な記載内容については削除したり概要を記載したりするに留める勇気も必要であるように思います。

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