動議の種類と議長が取るべき対応は

コーポレート・M&A

 総会中において提出される動議には、どのような種類がありますか。また、議長は、そのような動議に対して、どのように対応するべきでしょうか。

 議案の修正に関する実質的な動議(修正動議)については必ず審議する必要がありますが、採決に際しては原案先議とすることでも差し支えありません。総会の運営や議事進行に関する手続的な動議(手続的動議)については、議長の裁量で判断できる動議と、原則として議場に諮らなければならない動議があります。

解説

目次

  1. 動議とは
  2. 修正動議(実質的動議)とは
  3. 議事進行上の動議(手続的動議)
  4. 動議への対応

目次

  1. 動議とは
  2. 修正動議(実質的動議)とは
  3. 議事進行上の動議(手続的動議)
  4. 動議への対応

動議とは

 「動議」とは、会議体においてその構成員から提出され、会議で討論・採決に付される提案のことをいいます
 総会において提出される動議はさまざまなものがありますが、大きくわけて、①議案の修正に関する実質的な動議修正動議)と、②総会の運営や議事進行に関する手続的な動議手続的動議)とがあります。

修正動議(実質的動議)とは

 会社法上、株主は一定の場合を除き、株主総会において株主総会の目的事項について議案を提出することができると定められています(会社法304条)。これは、株主に総会当日における議案に関する修正動議の提出権を認めたものです。
 議案に関する修正動議とは、たとえば、「取締役1名選任の件」という議題について、「候補者Aを取締役に選任する」という議案が参考書類に記載されている場合に、「(候補者Aに代えて)候補者Bを取締役に選任する」という議案を提出する場合がこれに当たります。

 株主が総会当日、会場において会社提案議案に対する修正提案を出した場合、それが適法になされたものである限り、議長は当該議案をそのまま議場に諮って審議しなければならないとされています。

採決の方法

 もっとも、採決の順序については、議長は先に会社提案(原案)から採決し(原案先議)、会社提案が可決されたことをもって、これと論理的に両立しない修正動議については否決されたものと扱うことができます。
 より慎重を期する意味では、原案を先に採決することについて、議長から議場に諮って承認を得ておくことも考えられます。

 具体的には、修正提案がなされたのち、議長から原案先議について議場の承認を得て、審議を継続します。

シナリオ例
「ただいま株主様から、修正動議として、『候補者Bを取締役に選任する』という提案がなされました。この修正提案につきましては、後ほど原案とあわせて採決させていただくことといたします。ご賛同いただける株主の方は、拍手をお願いいたします。<拍手>ありがとうございます。議場の議決権の半数以上の株主様のご賛同を頂きましたので、後ほど、原案から先に採決させていただきます。」

 そして、採決の際に原案可決、修正動議否決とするシナリオが考えられます。

シナリオ例
「修正提案が提出されておりますが、先ほどご承認いただきました通り、原案から先に採決させていただきます。原案の「候補者Aを取締役に選任する」という提案について、賛成の株主様は、拍手をお願いいたします。<拍手>ありがとうございました。事前に提出いただいた議決権行使書を含めまして過半数の株主様の賛成を頂きましたので、原案は可決されました。従いまして、先ほどの株主様からの修正提案は、否決されたものとして取り扱うこととさせていただきます。」

原案先議の流れ

原案先議の流れ

議事進行上の動議(手続的動議)

 議長は、株主総会の議事整理権を有しており(会社法315条)、議事進行方法は広く議長の合理的な裁量に委ねられています。したがって、株主から提出された議事進行上の動議をどのように取り扱うか、議場に諮るか否かを決するのも、原則として、議長の裁量に委ねられています。

 もっとも、以下の動議については、①~③は会社法上株主総会の決議を経ることが求められているとの理由により、④については議長自身のことなので裁量の範囲外であるとの理由により、議長は必ず議場に諮る必要があります

  1. 総会提出資料等の調査者の選任を求める動議(会社法316条1項)
  2. 総会の延期・続行を求める動議(会社法317条)
  3. 会計監査人の出席を求める動議(会社法398条2項)
  4. 議長の不信任を求める動議

 その他、実務的に株主からしばしば提出される議事進行上の動議としては、休憩を求める動議(休憩動議)、議案の一括審議を求める動議、議題審議の順序変更を求める動議、質疑の打切りまたは続行を求める動議などがあります。
 動議の種類によっては、議事を円滑に進める目的で念のため議場に諮ることも考えられますが、議場に諮ることなく議長の裁量により判断することでも差し支えありません。

シナリオ例
「株主様から休憩を求める動議が出ておりますが、議長である私としましては、このまま審議を続行させていただきたいと思います。ご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。」

動議への対応

 総会の議論が紛糾している場合、複数の株主が「動議!」と叫ぶ光景がしばしば見られます。このような株主は、本当に動議を提出することもありますが、単に議長から指名されることを求めて「動議!」と叫んでいたにすぎず、マイクを渡されると動議とは無関係の自己の主張や会社への意見を延々と述べる株主もいないわけではありません。
 議長は、原則として、可能な限り株主に発言の機会(動議提出の機会)を与えるべきですが、株主が動議を濫発して総会の正常な進行を著しく阻害しようとする場合、このような行為は他の多数の株主の権利行使を妨害するものであり、権利の濫用に当たること等を理由として、これを取り上げないことも許されると思います。

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