株主総会議事録の注意点と記載例(会計監査人の選任・解任・不再任)

コーポレート・M&A
和氣 礎弁護士 桃尾・松尾・難波法律事務所

 当社は非上場株式会社ですが、直近期の負債総額が200億円を超えました。負債総額が200億円を超える場合、会計監査人の設置が必要と聞きましたが、会計監査人とはどのような機関なのでしょうか。また、会計監査人の選任等に関する株主総会の議事録について注意すべき点はありますか。

 会計監査人は株式会社の計算関係書類の適正さを監査する機関です。会計監査人を設置するかどうかは原則として任意ですが、大会社等に該当する会社では設置が義務付けられます。
 会計監査人の選任・解任・不再任は株主総会の普通決議によってなされますが、会計監査人が株主総会において意見を述べた場合、その概要を議事録に記載する必要があります。

 また、会計監査人の選任・解任・不再任議案の内容については、監査役(もしくは監査役会または他の監査機関)が決定権を有するため、同議案が監査役等によって決定されたものであることも記載しておくべきと考えられます。
 なお、解任の場合、株主総会議事録には、解任の理由についても明記しておくことが望ましいといえます。

解説

目次

  1. 会計監査人とは
  2. 会計監査人の選任・解任・不再任
    1. 会計監査人の選任・解任・不再任(総論)
    2. 就任承諾書
    3. 会計監査人の解任に関する注意点

会計監査人とは

 会計監査人株式会社の計算関係書類の適正さを監査する機関であり、公認会計士または監査法人である必要があります(会社法337条1項)。以下の会社では、会計監査人の設置が義務付けられます(会社法328条1項・2項、327条5項)。

A) 大会社(最終事業年度における資本金額が500億円以上または負債額が200億円以上の会社)
B) 監査等委員会設置会社
C) 指名委員会等設置会社


 上記のうち、「大会社」には会社の意向と関係なく該当してしまうことがあるため、負債の多い会社では注意が必要です。

 会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法338条1項)ですが、取締役や監査役の場合と異なり、再任の決議は原則不要であり、別段の決議がなされない限り自動的に再任されたものとみなされます(会社法338条2項)。

 なお、会計監査人の就任に関する登記手続には、①株主総会議事録(商業登記法46条2項)、②選任された会計監査人が「就任を承諾したことを証する書面」(以下「就任承諾書」といいます。商業登記法54条1項)および③株主リスト(商業登記規則61条3項)(詳細は「株主リストを添付書面とする商業登記規則の改正内容とは?」を参照ください)が必要となるほか、会計監査人が法人である場合には、原則として、法人の登記事項証明書も必要となります(商業登記法46条1項、54条2項各号、商業登記規則61条3項)。

会計監査人の就任に関する登記手続

会計監査人の選任・解任・不再任

会計監査人の選任・解任・不再任(総論)

 会計監査人の選任・解任・不再任は株主総会の普通決議によってなされます(会社法329条1項、338条2項、339条1項)。また、会計監査人が株主総会において意見を述べた場合、それを議事録に記載する義務があります(会社法345条1項・5項、会社法施行規則72条3項3号ニ)。
 なお、会計監査人の選任・解任・不再任の議案は監査役の過半数(もしくは監査役会または他の監査機関)によって決定されます(会社法344条1項~3項等)。そのため、議事録にはその旨も記載すべきと考えられます。

株主総会議事録記載例
第●号議案 会計監査人選任の件
 議長は、当社が大会社に該当することとなったところ新たに会計監査人を選任する必要があり本議案を提出すること、及び、本議案の内容は監査役会により決定されたものであることを説明した。
 議長が本議案を諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり可決された。

就任承諾書

 会計監査人(法人である場合はその代表者)が株主総会においてその就任を承諾した場合、その旨を株主総会議事録に記載することにより、同議事録を就任承諾書(上記②)として利用することも可能です。もっとも、会計監査人が就任承諾書の雛形を有している場合も多く、一般的には、会計監査人より就任承諾書を提出してもらうことが多いようです。

【就任承諾書の例】

会計監査人が株主総会においてその就任を承諾した場合の就任承諾書の例

会計監査人の解任に関する注意点

 会計監査人を正当な理由なく解任した場合、その株式会社は、解任によって会計監査人に生じた損害の賠償をする義務を負います(会社法339条2項)。そのため、事後的に解任の正当性が争われる場合に備え、株主総会議事録にどのような理由で解任するのかを明記しておくことが望ましいといえます。
 もっとも、上記のとおり会計監査人の任期は1年であるところ、任期途中で解任せざるを得ない場合を除き、1年の任期満了を待って、「現任会計監査人を再任せずに、新任会計監査人を選任する」という形式をとることが多いと考えられます。なお、会計監査人の解任は、法定事由が存在する場合、監査役の全員の同意によって行うことも可能です(会社法340条1項柱書・2項)。

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