株主提案権が行使された場合、どのように議事進行を行うべきか

コーポレート・M&A

 当社では、今年の定時株主総会に向けて、ある株主より適法な株主提案がなされています。株主総会当日は、当該提案株主に提案理由を説明する機会を設けるべきでしょうか。
 また、質疑応答の場において、議場にいる一般株主から株主提案に関する質問があった場合、当社の取締役に回答する義務があるでしょうか。それとも提案株主に対して回答させるべきでしょうか。提案株主から回答するよう質問株主から回答者の指名があった場合はどうでしょうか。

 提案株主から補足説明をしたい旨の申し出があった場合には提案理由の補足説明の機会を与えるべきです。
 株主提案に関する質問があった場合には、その質問の内容が、平均的株主が当該株主提案に関する議決権行使のために合理的に必要なものであって会社が回答可能なものであれば会社側で回答するべきですが、提案株主でなければ回答できない内容の質問であれば会社側で回答する義務はありません。
 また、提案株主に回答させる義務もありません。仮に質問株主から提案株主による回答を求める旨の要望があったとしても、議長としては、議事が混乱することがないように適切に議事を整理するべきであり、必ずしも提案株主に回答させる必要はありません。

解説

目次

  1. 提案株主による提案理由の補足説明
    1. 補足説明の機会を与えるのが一般的
    2. 実務上の対応方法
  2. 株主提案に関する質問への対応方法
    1. 株主提案に対する質問について説明義務を負うのか?
    2. 誰が質問に答えるべきか?

提案株主による提案理由の補足説明

補足説明の機会を与えるのが一般的

 株主提案をした提案株主が議案を説明する権利・義務について、会社法に明文の規定はありませんが、議長は株主提案の提案者たる株主に対して提案理由を説明する機会を付与すべきとした裁判例もあり、提案株主から申し出があった場合には提案理由の補足説明の機会を与えるべきですし、申し出がなくとも補足説明の機会を与えることが一般的です。

実務上の対応方法

 もっとも、不必要に長い説明や趣旨不明な説明は議長が適切に整理して発言を制限するべきです。
 また、提案株主に株主総会への出席義務はないので、現実には、株主提案をした者が総会に出席していないこともあります。
 その場合には、議長から議場に対して、提案株主が出席しており提案理由の補足説明を希望するのであればその機会を与える旨を呼びかけ、提案株主がこれに応じるのであれば説明をさせるという扱いが、一般株主にとってわかりやすいと思われます。

 なお、事前質問については、株主総会当日に当該質問がされなければ説明義務は生じないので回答しなくとも問題がないのですが、適法な株主提案については、総会当日に提案株主が出席していなくとも、付議する必要があります

 提案株主が提案理由の補足説明をする場合、提案理由の補足とは離れた内容の演説を行ったり、長時間マイクを抱えて離さなかったりといったトラブルが発生しがちです。議長の議事整理権により、説明時間を制限し、それを超えた場合には説明を止めるよう求めるといった対応をとるべきでしょう。  

株主提案に関する質問への対応方法

株主提案に対する質問について説明義務を負うのか?

 会社の取締役等は、株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた場合には、必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。
 この「必要な説明」の範囲については、平均的な株主が、議決権行使の前提としての合理的な理解および判断に足りる程度の説明が必要と考えられており、これは株主提案についても異なるものではありません。
 したがって、株主提案に関する質問であっても、その質問の内容が当該株主提案を審議するうえで必要な会社情報に関する質問である場合には、会社の取締役等の説明義務の範囲内に含まれると考えるべきでしょう。

誰が質問に答えるべきか?

 これに対して、株主提案の提案理由に関する質問は、提案株主の事情であって会社の取締役等が回答することはそもそもできない質問ですので、説明義務の範囲には含まれないと考えられます。
 この場合、株主提案の提案株主に回答させるべきかどうかが問題になりますが、提案株主自身は説明義務(会社法314条)を負いませんので、議長としても提案株主本人に回答させる義務はないと考えられます。

 また、質問があった場合には、議長が提案株主の出欠について回答したり、議場に呼びかけて、提案株主が出席しており回答に応じる意思があるかを確認したりすることは考えられますが、本人が拒絶すれば回答させられません。議長の裁量で提案株主に回答させること自体は問題ありませんが、質問株主と提案株主が直接議論になって議事が混乱することがないように、適宜進行を整理するべきでしょう。

 質問株主が回答者として提案株主を指名した場合でも、誰に回答させるかは議長の議事整理権(会社法315条)に属する事項であり、議長としては、質問株主の意向を尊重することに問題はないものの、質問株主の意向に従う義務はありません。上記の通り、議事が混乱することがないように、回答者についても議長が適切に判断するべきでしょう。

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