株主総会招集通知の重要性と発送手続について
コーポレート・M&A当社は上場会社ですが、株主総会の招集通知はいつまでに発送すればよいのでしょうか。また、株主名簿上の住所に発送しても毎年返送されてしまう株主がいるのですが、どうしたらよいでしょうか。
上場会社の場合、招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送する必要があります。ただし、近年では、法定の期限に関わらず早期に発送する等の努力が求められているといえます。
招集通知は、株主名簿上の住所に発送していれば、仮に届かなかったとしても会社法上の問題はありません。なお、5年間継続して返送された場合には、以降は発送を省略することが可能です。
解説
招集通知の意義
狭義の招集通知は、株主総会の日時・場所や目的事項等、株主総会招集の決定事項が記載又は記録され、株主に向けて発送される通知をいい(会社法299条)、広義の招集通知は、狭義の招集通知に加えて、それと一体となって発送される添付書類(株主総会参考書類等)を含んだものをいいます。
招集通知は、株主に対して事前に株主総会の内容を通知することにより、株主に株主総会の出席の機会を与え、また、各株主が株主総会に向けて十分な準備・検討を行うことを可能にするという重要な意義を有します。
招集通知の作成と発送
招集通知の発送時期
招集通知は、株主総会の日の2週間前までに株主に対して発送する必要があります(会社法299条1項)。ただし、非公開会社では書面投票又は電子投票を認める場合を除き、原則として1週間前までとされています(同項カッコ書)。
「2週間前までに」とは、総会の当日および発送日の間に2週間の期間が必要という意味です。もっとも、書面投票又は電子投票の議決権行使の期限を定めた場合、当該期限は招集通知の発送日から「2週間を経過した日以後の時」に限ります(会社法施行規則63条3号ロ・ハ)。
通常は、株主総会の前日のある時点を書面投票・電子投票の期限と定めますので、その場合には、招集通知の発送日との間に15日間を置かなければならないことに注意が必要です。
原則
書面投票・電子投票(期限:株主総会の前日(6月22日))の場合
招集通知の早期発送
特に3月や6月には、多数の上場会社の株主総会が集中します。そのため、機関投資家にとっては、短期間で多くの上場会社の株主総会の議決権行使についての判断を迫られることになりますので、できるだけ早期に招集通知の内容にアクセスしたいという要望があります。
また、海外投資家の場合には、それに加えて、発送から受領までに時間がかかる、自国語への翻訳が必要になる場合がある、といった事情もあります。かかる状況を踏まえ、平成27年に策定されたコーポレートガバナンス・コードにおいては、以下の原則が盛り込まれました。
上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう、招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつその早期発送に努めるべきであり、また、招集通知に記載する情報は、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送するまでの間に、TDnet や自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきである。
上場会社では、株主数が相当な数に上りますので、招集通知の印刷・封入にもかなりの日数(概ね2週間程度)を要するのが実情ですが、これを受けて、招集通知を法定の期限より早期に発送する努力をする会社や、招集通知の印刷・封入・発送の前に、WEBにて招集通知の内容を開示する会社が増えています。
招集通知が株主に届かない場合
会社が株主に対してする通知は、原則として株主名簿上の住所に宛てて発すれば足りるとされています(会社法126条1項)。そこで、株主総会の招集通知についても、会社としては株主名簿上の各住所に宛てて発送すればよく、それが実際に株主の元に届かなかったとしても、会社は免責されます。したがって、株主名簿上の住所に発送した招集通知が受取拒否や不在等により返送されたとしても、招集手続において特に法的な問題はありません。
仮に、株主名簿上の住所に発送しても返送されてしまう株主について、実際に居住している住所を知っていたとしても、招集通知をその住所だけに発送することは避けるべきです。なぜなら、仮にその住所に発送して受取拒否や不在等により返送されてしまった場合には、当該株主に対して招集通知を発する会社法上の義務を果たしたことにならず、招集手続に瑕疵が生じることになってしまうからです。
なお、株主名簿上の住所に送付しても5年間継続して返送された場合には、以降は発送を省略することができます(会社法196条1項)。

桃尾・松尾・難波法律事務所
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