企業法務の地平線

第19回 一人ひとりが知財責任者としてのマインドを持つ - メルカリリーガルグループが実践する事業への関わり方

法務部

シリーズ一覧全40件

  1. 第1回 花王株式会社 グローバル法務の根幹にある個人商店マインド 
  2. 第2回 「インハウス・ロイヤー」という選択肢 - 日本にとってCLOは必要なのか?
  3. 第3回 世界を股にかけた法務パーソン、国際ビジネスの現場で見えたもの
  4. 第4回 変わるワークスタイルと変わらぬ信念
  5. 第5回 会社の「誠実」を担う法務の姿 – 双日
  6. 第6回 300人体制を築くメガ法務の役目 - パナソニック
  7. 第7回 米国発のルールを日本に浸透させていく、アドビ法務・政府渉外本部の役割
  8. 第8回 マイクロソフトが実践するダイバーシティ戦略
  9. 第9回 法務畑を歩み続けたユニリーバ北島氏が考える、法務の役割と今後の課題
  10. 第10回 人と組織の成長を創造するプロアクティブな法務 - パーソルホールディングス
  11. 第11回 少数精鋭でチャレンジングな法務 - アサヒグループ
  12. 第12回 法律が追いつかないゲーム業界に求められるスピーディな体制構築術 - グリー
  13. 第13回 「1つの特許で生きるか死ぬか」、経営に直結する法務が見据えるグローバル化 - 田辺三菱製薬
  14. 第14回 たばこの概念を覆した「IQOS」で煙のない社会を目指す - フィリップ モリス
  15. 第15回 舞台はグローバル、事業に深くコミットする商社法務 - 三菱商事
  16. 第16回 懐深く、信頼して任せる風土 - 丸紅
  17. 第17回 経営の視点と専門性を持った法務人材を輩出する - キヤノン
  18. 第18回 「多様性」のある組織こそ、強みを生む - ソニー
  19. 第19回 一人ひとりが知財責任者としてのマインドを持つ - メルカリリーガルグループが実践する事業への関わり方
  20. 第20回 「使って初めて価値が出る」、ミッション・バリューを自らの言葉に「翻訳」して実践 - ユーザベース
  21. 第21回 「ポケモン」を支えるプロデューサーとしての法務 - 株式会社ポケモン
  22. 第22回 事業への情熱をもとに担当者をアサイン - DeNA
  23. 第23回 グローバルへと進化するために、働き方改革を推し進める法務組織 - 電通
  24. 第24回 プロジェクトチームの一員として、グローバルで多様なビジネスに並走する - アクセンチュア
  25. 第25回 事業部と一体となり、新規事業領域へチャレンジ – キリンホールディングス
  26. 第26回 合併を経て進化を続けるビジネスパートナーとしての法務 ―コカ・コーラ ボトラーズジャパン
  27. 第27回 活発なM&Aを支える法務組織とその柔軟な働き方 - 富士フイルム
  28. 第28回 契約書を作るだけではない、グローバルな成長に貢献するビジネスコンサルタントとしての法務 – 味の素
  29. 第29回 ウィズコロナ時代に問われる法務部門の組織運営 鍵はリーガルテックの積極活用 – 太陽誘電
  30. 第30回 テレワーク下の法務業務は「依頼者ファースト」のITツール活用で対応 - サイボウズ
  31. 第31回 アフターコロナになっても変わらない、法務のあるべき姿 - パーソルグループ
  32. 第32回 グローバル企業における法務業務とリーガルテック導入事例 勝機はスモールスタートにあり - 日揮グループ
  33. 第33回 急成長するベンチャーを支える「企業法務」の役割とは - GAテクノロジーズ
  34. 第34回 全ては事業の成長のために。ありのまま採用と価値観の共有化を通じて作り上げる熱い組織 - Visional
  35. 第35回 新規事業をサポートするインハウスロイヤーたち - あおぞら銀行のスタートアップサポートチームが生み出す価値とは
  36. 第36回 アクセンチュア法務が高い付加価値を生み出せる理由 オフショア化で契約業務を6割削減
  37. 第37回 大手法律事務所で専門性を極め「自分をアップデート」する環境を求めて – メドレー
  38. 第38回 「世界一幸せな法務」というビジョンを掲げ、事業を通じた社会課題の解決を目指す - LIFULL
  39. 第39回 強固な組織体制のもとで専門性の高いメンバーがイノベーションに貢献 - 日本アイ・ビー・エム
  40. 第40回 丸紅法務部の挑戦と変革 − 精鋭のメンバーがさらなる価値創出にコミットするために
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近年、ITの進化を背景として、フリマアプリや民泊支援サービスなど、個人間で物品の売買や貸借が行えるサービスが登場してきている。こうしたサービスは高い利便性をもつ一方、前例のない問題を生む可能性もはらんでいる。

そういった新規事業や新サービスを提供するにあたって、法務・知財部門の果たす役割は大きい。法制度の調査・遵守はもちろん、知的財産の管理、紛争や訴訟への対応など、幅広い業務を事業のスピードに合わせて行う必要があるだろう。

本稿では、2018年7月に法務部門の体制変更を行った株式会社メルカリを訪問。同社 IPリーガルグループ マネージャーである上村 篤氏、同グループ所属で弁理士の多湖 真琴氏、同じく弁理士の上野 英和氏、大山 奈津美氏、株式会社メルペイ リーガルグループの有定 裕晶氏に、法務部門の体制変更の意図や業務への取り組み方について伺いつつ、同社の働く環境や求める人材像についてもお話しいただいた。

※組織名/肩書は取材当時のものを記載しています。

ビジネスの拡大に合わせ、専門性と多様性を備えた組織に

2018年7月から法務部門の体制が変わられたそうですが、いまの組織体制と変更のねらいについて教えてください。

上村氏:
契約書や利用規約、事業部門からの法律相談に対応する「サービスリーガル」、株主総会やM&Aを担当する「コーポレートリーガル」、知的財産関係を担う「IPリーガル」、そして渉外を行う「公共政策」の4つに分けました。

元々は人数が少なくすべての業務を一緒にやっていましたが、ビジネスが拡大していく中で法務部門としてより専門的な業務を行っていくために、コーポレートに強い方や知財に強い方といった、専門性をもった方の採用を見据えて体制を変更しました。たとえば知財を専門としてきた方であれば、法務部門の一機能として特許担当がいるよりも独立した知財の組織に入るほうが、専門的な業務ができるという安心感があるのではないかと思っています。

各チームの人数構成を教えていただけますか。

上村氏:
現在、サービスリーガルは2名おり、法務部長がマネジャーを兼務しています。コーポレートリーガルは、マネジャーを含めて3名、IPリーガルは5名です。公共政策もマネジャーを法務部長が兼務しており、現場のメンバーが3名います。今日同席しているのは、全員IPリーガルを担当しているメンバーです。

みなさんのこれまでのキャリアと現在の担当職務を教えてください。

上村氏:
私はずっとインターネット業界で働いており、知財部署の立ち上げやマネジメントをやってきました。当社では知財だけでなく、利用規約に違反する出品物の対処、行政や権利者とのコミュニケーションなどを担当しています。

有定氏:
新卒で半導体企業の知財部に勤務し、アメリカ企業との特許ライセンス交渉や特許権侵害訴訟を担当していました。2社目ではインターネット企業の知財部署で特許出願、特許係争対応をメインに、海外の子会社の知財の体制を立ち上げたり、デューデリジェンスを担当したりしました。現在は金融事業を扱うメルペイというメルカリの子会社のリーガルグループに所属し、知財体制の立ち上げと特許をメインとして、商標やドメインなど全般的に担当しています。

多湖氏:
私は元々、メーカーでSEをしていたのですが、発明者として明細書などを書いているうちに弁理士という職業に興味を持ち、資格を取って法律事務所へ転職しました。法律事務所でメルカリと仕事をするようになり、会社に魅力を感じたことが入社のきっかけです。いまは主にR4Dという研究開発部門、子会社のソウゾウやメルペイの知財関連の案件に携わっています。

上野氏:
私は新卒入社した当初から、企業の知財を担当しています。最初が電機メーカーで、その後はゲームメーカー、そして現在のメルカリです。数年間、特許の権利化を担当していましたが、その後はほとんど特許関係の交渉と係争を担当してきました。当社では特許出願や権利化に加え、管理システムの導入や商標などを担当しています。部署としては、R4D以外のメルカリ事業と、海外拠点です。

大山氏:
私は他の方と比べるとイレギュラーな経歴なのですが、前職まで旅行業やテレビ番組のコーディネート業を南米で行っていました。その後日本に帰ってきてメルカリに入社し、最初はカスタマーサービス(CS)を担当しました。現在はリーガルグループにて、権利者とコミュニケーションを取りながら模倣品出品対策を行っています。具体的には企業からの相談に対応したり、模倣品の監視担当者向けに社内勉強会を開催したりしています。

多様な経験をお持ちの方を入れることでチームを強くしていこうという思いがあるのでしょうか。

上村氏:
似たような経験のある人だけを採用すると、立ち上げのフェーズは意識が合って良いのですが、徐々に考え方が似てきてしまい、新しいものが生まれなくなることがあります。そのため、中期的に多様な経験を持つ人材を揃えることは組織を発展させてゆくのに重要であると捉えています。たとえば大山は偽ブランド品が出品されることを防ぐために、外部の権利者やステークホルダーとのコミュニケーションをとる役割を果たしていますが、そこではCSや旅行のコーディネートといったいままでの経験が活きています。

株式会社メルカリ IPリーガルグループ マネージャー 上村 篤氏

株式会社メルカリ IPリーガルグループ マネージャー 上村 篤氏

カスタマーサービスのメンバーも訪問し、権利者と良好な関係を構築

模倣品の対策について、具体的にはどのように取り組んでいますか。

上村氏:
仙台・福岡・東京にCSのセンターがあり、不正商品や不正行為の監視をしています。ブランド品に特化して監視を行っているチームも設け、通報や権利者からの削除申し立て、また特定のキーワード等をもとに、模倣品など当社の利用規約に違反する商品を監視して発見次第削除しています。

それに加え当社では積極的に権利者の方々とお会いして、ブランドの歴史や、どういった模倣品が流通しているかといったお話を伺うことで、監視の対応に活かしています。こうした取り組みがうまく機能すれば、当社のCSで自発的に模倣品を発見することが可能になり、権利者の方々も毎日メルカリの出品物を監視する必要がなくなるため、お互いにメリットを生むことができます。

権利者の方とは具体的にどのようなコミュニケーションを取っているのですか。

上村氏:
権利者の方々が模倣品対策の活動として行っているものの一つに、税関での差し止めがあります。税関で商標権や使用権などを登録し、真贋のポイントなどを税関の職員に教育するのですが、当社でもそれと同じようなことを一部の権利者の方に行っていただいています。

また権利者の方とよい関係がつくれていれば、これは見たことがないなとか、おかしいなと当社のCSで感知したときに、その権利者の方に連絡し「こういうものが出品されていますが、これは本物ですか」などと問い合わせることができます。そのためにも良好な関係をつくり、より高精度に監視することを重視しています。

監視をしている方々は、日々、メルカリの中をチェックして、模倣品を確認しているのでしょうか。

上村氏:
そうです。画像を見ることもありますが、取引の中で「スーパーコピー」などと謳っているものも監視し、リアルタイムに見つけて不正な取引を停止しています。また不正出品を防止するためには、人力に加えてテクノロジーも活用しています。いままでこういった行動をした人が出品するものが怪しかった、といった情報をどんどん機械学習して、怪しいと判断した出品物をシステムで検知し、最終的に人の目で判断しています。

侵害対策では、他部門との連携も非常に重要なポイントかと思いますが、意識的に取り組まれていることはありますか。

上村氏:
法務とCSは社内だと一見遠い関係ですが、そこをしっかり近づけるようにしています。他社では法務や渉外の担当者が権利者の方と会ってそれをCSに伝えるというのが主流ですが、当社では監視を担当するCSのメンバーも一緒に権利者の方の元に訪問し、その場でできることを解決するようにしています。

侵害対策を行う中で、明らかに模倣や権利侵害をしているものは削除などの対策が取れると思いますが、法的にグレーな出品物についてはどのように対応していますか。

上村氏:
最近、会社の中に禁止出品物と禁止行為の基準を策定する委員会をつくりました。そこには経営陣や各部門の代表者が参加し、実際に起こった案件や判断に迷う案件一つひとつについて具体的な問題点や対策を議論して決めています。その委員会はCSのメンバーが事務局を務め、禁止出品物を監視して削除するところまで、一気通貫でできるようにしています。

法的にグレーな出品物について、出品可否の基準はあるのでしょうか。

上村氏:
人命に関わるものや、犯罪に関係するもの、また未成年が被害に遭う可能性があるようなものといった判断の軸があります。たとえば昨年はビットコインを収納するためのデジタルウォレットというものが出品されましたが、ウイルスが含まれているとビットコインが盗まれる可能性があると判断し、自発的に禁止出品物に追加しました。

株式会社メルカリ IPリーガルグループ、弁理士 上野 英和氏

株式会社メルカリ IPリーガルグループ、弁理士 上野 英和氏

知財のメンバーはエンジニアとの距離を近くして特許の出願を促進する

模倣品対策に加えて、IPリーガルグループとして注力していることはありますか。

上村氏:
最近は特許取得にも力を入れています。特にメルペイで新しい事業を立ち上げるにあたって他社の動向を見ると、金融サービスをやっている会社はグローバルに多数あり、特許もたくさん取得されているため、当社でも特許取得を強化しています。

有定氏:
メルペイでは、全社を巻き込んだ勉強会を毎月行っています。それとは別にチームごとに発明のブレーンストーミングや、他社の特許に関する分析結果のシェアなども頻繁に行っています。他社と大きく違うと思う点は、エンジニアをはじめとして、従業員が知財に強い興味を持っているところです。当社の経営陣が知財に強い関心を持っているので、それが浸透しているのかなと思います。

多湖氏:
当社では、知財のメンバーは法務部門の区画ではなくてエンジニアの区画に席があります。発明者となるエンジニアと会話がしやすい環境にあるのも、特許の出願が増えている一因ではないかと思います。

特許出願の件数はKPIとして据えているのでしょうか。

上村氏:
いまは立ち上げの段階のため、KPIというよりも目安に近いですが、目標を定めています。

他にも部署の垣根を越えたコミュニケーションによる効果などはありますか。

上野氏:
エンジニアに加えて企画の担当者にもかなり協力してもらっており、プログラムを作る前の企画の段階から、発明になるもののアイデア提案を受けています。当社の特徴だと思いますが、すごいスピードで新規機能や新規事業が企画されるのをチェックして、そこから発明を特定することに取り組んでいます。

他の部署との連携について、今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

上村氏:
会社が大きくなり新しいメンバーが次々に入社する中で、いまある良い関係をしっかり維持していきたいです。他の部署から異動してくるのはもちろん、法務で経験を積んで元の部署に戻ったりする異動があってもよいと思っています。そうした交流をしっかり続けていくことが重要だと考えています。

株式会社メルペイ 知的財産担当 有定 裕晶氏

株式会社メルペイ 知的財産担当 有定 裕晶氏

各自が担当分野の知財責任者として働く

いま、会社が急成長されているフェーズかと思いますが、そうした環境で働くことの魅力や課題があれば教えてください。

上村氏:
前例がないサービスを提供する中で、サービスをつくり上げるプロセスに参加できることが魅力だと思います。業務や組織をはじめ、大体のことをゼロベースで考えながらつくっていくことができます。

多湖氏:
いまは立ち上げ時期ということもあり、フローやマニュアルを整備している段階のため、それに対して自分で提案できるところが魅力的かなと思います。

大山氏:
全社的に情報がオープンになっており、自分で手に入れようと思えばいくらでも得られ、何をやっているのかがわかるのはすごく魅力的だと思います。

貴社ではミッションを「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」、バリューを「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」と定めていますが、採用時にはそれらへの共感をどのように評価、判断していますか。

上村氏:
採用時には、これまでのキャリアで、メルカリのバリューに合うような取り組みや成果をお聞きしています。また当社は採用のときだけでなく、評価の場面でもミッションの達成やバリューをどう実践してきたかを重視しています。いまは事業をどんどん立ち上げていくフェーズなので、みんなが同じ気持ちでサービスの開発にフォーカスできることが重要だと思っています。

有定氏:
採用の基準としてもミッションとバリューを重要視しており、面接では熱意も判断基準にしています。みんながモチベーション高く働けたほうが良いので、「何がやりたい」という熱意やバリューへの共感がないと、ミスマッチが出てきてしまうかなと思います。

上村氏:
IPリーガルグループのメンバーには、各自が担当する分野の知財の責任者というマインドで動いてほしいと思っています。特許を専門にやってきていますが、新サービスの名前が決まった時に「商標も調べて登録しておきます」という風にきちんと受け止めて、実行できるような組織にしたいです。

大企業では調査だけ、特許の権利化だけ、という役割分担のところが多いですが、当社ではそれだけだと足りません。特許の権利化と、ライセンシングや係争など幅広く業務をやってきたメンバーを採用しています。

総合的にこなせる人のほうが、業務は円滑に進みやすいものなのでしょうか。

上村氏:
はい。得た権利を実際に使う場面に遭遇しないと、どういう権利が強いのか、権利取得時に何をするべきなのか、何をしてはいけないのかというのが感覚として分かりません。それをしっかり把握した上で特許を取得することが理想的だと思っています。

自律して動けるとか、責任を担えるという能力を入社後に育てていくような取り組みはなされていますか。

上村氏:
メンバーみんなが異なる経験を持っていますので、それをシェアして他のメンバーが学習したりしています。知財については、外部のセミナーをはじめ一流の専門家と交流する機会もいろいろあるので、そうしたものに積極的に参加して知識を得たり、コネクションをつくったりもしています。

経験や知識のシェアは具体的にはどのように行っているのでしょうか。

上村氏:
たとえば、私は前の会社でアメリカの訴訟をやっていたので、そのときに依頼していた弁護士がアメリカから日本に来るときにみんなに紹介し、いろいろな情報を仕入れてもらいました。また多湖は前に在籍していた法律事務所の先生からレクチャーしていただく機会をつくったりもしています。

キャリアパスという観点ではどのような魅力がありますか。

有定氏:
多湖がメルカリ所属でありながらメルペイの仕事もしているように、事業部間や親会社と子会社との間の垣根をまたいで働くことも出来ます。そういう意味では、自分が興味のある分野を担当できるので、特許の担当者としては嬉しいキャリアパスかなと思います。裁量がかなり大きく、自由度が高い働き方ができますが、求められる成果やスキルセットは高いです。

多湖さんは複数の部門を担当されていますが、どういうマインドで働いていますか。

多湖氏:
扱う技術分野が増えるため、勉強することが多いという意味では大変ですけれども、その分成長しますし、面白いです。入社したときに、メルカリのリーガルグループはサポートではなくて、プロジェクトをマネジメントするぐらいの気持ちで事業に関わっていかなければいけないと言われました。受け身で相談を待っているのではなく、プロジェクトの定例に出るなどして何が起きているかを把握し、コンサルのように提言してあげられることに魅力を感じています。

株式会社メルカリIPリーガルグループ、弁理士 多湖 真琴氏

株式会社メルカリIPリーガルグループ、弁理士 多湖 真琴氏

スタートアップが特許で事業を成功させる第一人者に

今後、IPリーガルのチームや個人としてどうなっていきたいかなど展望がありましたら教えてください。

上村氏:
チームとしてはみんなとても高いモチベーションで仕事をしていますので、そういったマインドや環境を維持して、事業の発展に貢献したいと思っています。

有定氏:
私は、メルペイで、特許の面からメルペイが成功するための最後の一押しをしたいです。またその事例をベースに、他のスタートアップや、市場的に後発の会社が特許を活用して事業を成功させるという文化をつくっていきたいとも思っています。そうしたケースの第一人者になりたいですね。

多湖氏:
私はメルカリ、メルペイ、ソウゾウの特許を見ているので、3社の知財について架け橋になりたいと思っています。

上野氏:
先ほど話にあったように担当する事業の知財責任者のように働き、事業を大きくするのに貢献していきたいです。

大山氏:
私はいままさに模倣品対策の勉強中ですが、CSやプロダクトチームをはじめいろいろなチームと垣根を越えて連携をして、一緒に勉強できればと思っています。まだまだ知識不足のところもあるので、もっと勉強してプロフェッショナルになっていきたいです。

株式会社メルカリ IPリーガルグループ 大山 奈津美氏

株式会社メルカリ IPリーガルグループ 大山 奈津美氏

みなさん、本日はありがとうございました。

会社概要
株式会社メルカリ、株式会社メルペイ、株式会社ソウゾウ
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー


プロフィール
上村 篤(かみむら・あつし)
株式会社メルカリ IPリーガルグループ マネージャー

有定 裕晶(ありさだ・ひろあき)
株式会社メルペイ リーガルグループ

多湖 真琴(たご・まこと)
株式会社メルカリ IPリーガルグループ、弁理士

上野 英和(かみの・ひでかず)
株式会社メルカリ IPリーガルグループ、弁理士

大山 奈津美(おおやま・なつみ)
株式会社メルカリ IPリーガルグループ

※組織名/肩書は取材当時のものを記載しています。

(構成:BUSINESS LAWYERS編集部)

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  25. 第25回 事業部と一体となり、新規事業領域へチャレンジ – キリンホールディングス
  26. 第26回 合併を経て進化を続けるビジネスパートナーとしての法務 ―コカ・コーラ ボトラーズジャパン
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