企業法務の地平線

第25回 事業部と一体となり、新規事業領域へチャレンジ – キリンホールディングス

法務部

シリーズ一覧全40件

  1. 第1回 花王株式会社 グローバル法務の根幹にある個人商店マインド 
  2. 第2回 「インハウス・ロイヤー」という選択肢 - 日本にとってCLOは必要なのか?
  3. 第3回 世界を股にかけた法務パーソン、国際ビジネスの現場で見えたもの
  4. 第4回 変わるワークスタイルと変わらぬ信念
  5. 第5回 会社の「誠実」を担う法務の姿 – 双日
  6. 第6回 300人体制を築くメガ法務の役目 - パナソニック
  7. 第7回 米国発のルールを日本に浸透させていく、アドビ法務・政府渉外本部の役割
  8. 第8回 マイクロソフトが実践するダイバーシティ戦略
  9. 第9回 法務畑を歩み続けたユニリーバ北島氏が考える、法務の役割と今後の課題
  10. 第10回 人と組織の成長を創造するプロアクティブな法務 - パーソルホールディングス
  11. 第11回 少数精鋭でチャレンジングな法務 - アサヒグループ
  12. 第12回 法律が追いつかないゲーム業界に求められるスピーディな体制構築術 - グリー
  13. 第13回 「1つの特許で生きるか死ぬか」、経営に直結する法務が見据えるグローバル化 - 田辺三菱製薬
  14. 第14回 たばこの概念を覆した「IQOS」で煙のない社会を目指す - フィリップ モリス
  15. 第15回 舞台はグローバル、事業に深くコミットする商社法務 - 三菱商事
  16. 第16回 懐深く、信頼して任せる風土 - 丸紅
  17. 第17回 経営の視点と専門性を持った法務人材を輩出する - キヤノン
  18. 第18回 「多様性」のある組織こそ、強みを生む - ソニー
  19. 第19回 一人ひとりが知財責任者としてのマインドを持つ - メルカリリーガルグループが実践する事業への関わり方
  20. 第20回 「使って初めて価値が出る」、ミッション・バリューを自らの言葉に「翻訳」して実践 - ユーザベース
  21. 第21回 「ポケモン」を支えるプロデューサーとしての法務 - 株式会社ポケモン
  22. 第22回 事業への情熱をもとに担当者をアサイン - DeNA
  23. 第23回 グローバルへと進化するために、働き方改革を推し進める法務組織 - 電通
  24. 第24回 プロジェクトチームの一員として、グローバルで多様なビジネスに並走する - アクセンチュア
  25. 第25回 事業部と一体となり、新規事業領域へチャレンジ – キリンホールディングス
  26. 第26回 合併を経て進化を続けるビジネスパートナーとしての法務 ―コカ・コーラ ボトラーズジャパン
  27. 第27回 活発なM&Aを支える法務組織とその柔軟な働き方 - 富士フイルム
  28. 第28回 契約書を作るだけではない、グローバルな成長に貢献するビジネスコンサルタントとしての法務 – 味の素
  29. 第29回 ウィズコロナ時代に問われる法務部門の組織運営 鍵はリーガルテックの積極活用 – 太陽誘電
  30. 第30回 テレワーク下の法務業務は「依頼者ファースト」のITツール活用で対応 - サイボウズ
  31. 第31回 アフターコロナになっても変わらない、法務のあるべき姿 - パーソルグループ
  32. 第32回 グローバル企業における法務業務とリーガルテック導入事例 勝機はスモールスタートにあり - 日揮グループ
  33. 第33回 急成長するベンチャーを支える「企業法務」の役割とは - GAテクノロジーズ
  34. 第34回 全ては事業の成長のために。ありのまま採用と価値観の共有化を通じて作り上げる熱い組織 - Visional
  35. 第35回 新規事業をサポートするインハウスロイヤーたち - あおぞら銀行のスタートアップサポートチームが生み出す価値とは
  36. 第36回 アクセンチュア法務が高い付加価値を生み出せる理由 オフショア化で契約業務を6割削減
  37. 第37回 大手法律事務所で専門性を極め「自分をアップデート」する環境を求めて – メドレー
  38. 第38回 「世界一幸せな法務」というビジョンを掲げ、事業を通じた社会課題の解決を目指す - LIFULL
  39. 第39回 強固な組織体制のもとで専門性の高いメンバーがイノベーションに貢献 - 日本アイ・ビー・エム
  40. 第40回 丸紅法務部の挑戦と変革 − 精鋭のメンバーがさらなる価値創出にコミットするために
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目次

  1. グループ約100社を担当する「集中型」の法務
  2. 法務部員の努力が積み重なり、案件の早い段階から関わるように
  3. チャレンジングなリスク判断が求められる海外案件
  4. 多様なバックグラウンドを持つメンバーと事業部との距離の近さが魅力
  5. テクノロジーの進化は法務の仕事をどう変えるか
  6. 法務出身の人材が経営層を目指すために必要なこと

企業活動が複雑化するなか、法務部門に求められる役割にも変化が見られます。これからの時代に求められる法務部門のあるべき姿とはどのようなものなのでしょうか。各社の法務部へお話を伺い、その姿を探ります。

今回は、キリンホールディングス株式会社の法務部に所属する上野 正樹氏、齊藤 雅也氏、宮腰 和朗氏、栗山 典子氏、嶋田 佳奈氏を取材しました。

キリングループは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」とともに発表した2019年中計において「新たな成長を目指した、キリングループの基盤づくり」を打ち出しています。“世界のCSV先進企業”を目指して挑戦を続ける同社において、経営の中での法務部門の位置付けや、働く魅力について伺いました。

グループ約100社を担当する「集中型」の法務

法務部門の位置付けについて教えてください。

上野氏:
一般的な法務のあり方には、社内の1箇所に法務機能を集めて統括する「集中型」と、現場密着にする「分散型」、そして両者の中間型である「折衷型」があると思います。

当社はキリンホールディングスの法務部が国内グループ約150社の法務機能を一括して担当する集中型にしています。ただ、協和キリンは昔から法務部門があるので、私どもの担当ではありません。

集中型を選んだ理由はどこにありましたか。

上野氏:
分散型にも良さはあるのですが、案件対応や情報管理の一元化を考え、また部署内でローテーションしていろいろな仕事をする機会を設けるという、業務遂行の効率性と人材育成の観点から集中型にしています。

「ワイガヤ」的な情報交換やメンバー間の交流による気づきを得られることにも集中型のメリットを感じています。

法務部門の人数と男女比、新卒・中途の比率、有資格者の人数などを教えてください。

上野氏:
現在30名のメンバーがいます。男性が19名、女性が11名です。女性11名のうち、6名は子育て中です。

新卒採用の方は11名、経験者が19名ですね。

日本の弁護士資格保有者は5名いて、男性が2名、女性が3名です。他に、外国人弁護士(豪州、ニュージランド)が2名いて、いずれも男性です。

また、弁護士事務所に在籍されている、非常勤弁護士という方もいて、週2回会社に来ていただいてメンバーの相談に乗っていただいています。社外との交渉、トラブル解決の際に、会社のことをよく知った中立的な弁護士の方がいると問題解決がスムーズに進むという利点もあります。

キリンホールディングス株式会社 執行役員法務部長 上野 正樹氏

キリンホールディングス株式会社 執行役員法務部長 上野 正樹氏

法務部員の努力が積み重なり、案件の早い段階から関わるように

チーム編成について教えてください。

上野氏:
齊藤と嶋田が所属している国内法務チーム、宮腰が所属している海外法務チーム、栗山が所属している株式チームと、今日はメンバーが出席していないのですが、商標権を主に取り扱う商標チームの4つがあります。また、株主総会事務局もやっています。

コーポレートガバナンス、リスク管理、コンプライアンス関連業務は、経営企画部が担当しているのですが、常に連携する体制を組んでいます。

嶋田さんはどのような案件を担当されていますか。

嶋田氏:
私は主に国内案件を担当しています。2017年10月に当社に入社しましたが、入社後すぐに株式会社LeapsInという新会社の設立に関わることができました。

もともとは社内の事業創造支援プログラムに応募された事業で、当社のアクセラレータープログラムを通じて2018年7月に設立された会社です。

入社間もないこともあり、社内の意思決定のプロセスなど慣れない点も多かったのですが、上司や先輩方にアドバイスいただき、案件を進めることができました。

齊藤さんも国内法務を担当されているのですね。

齊藤氏:
各種契約書の検討・審査、法務コンサルティング、M&A・アライアンス等の国内法務業務に携わっています。会社全体としては、「医と食をつなぐ事業」への積極展開を進めており、関連する案件が増えていまして、直近で大きなところとしては、協和発酵バイオ 1、ファンケル 2 の株式取得に携わりました。

法務の方は、M&A案件に対してどのようにコミットしますか。

齊藤氏:
案件の最初の方、具体的には秘密保持契約を締結する段階から関わることが多いです。そこから弁護士をアサインし、デューデリジェンスや契約内容の検討・交渉には一貫して関わっています。

そのようなスタイルは、以前から定着されているものなのでしょうか。

上野氏:
私が法務の仕事を始めたのは20年以上前ですが、現在ではほとんどの案件について、開始当初の段階から入るようになってきました。法務が早い段階から案件に関われば、プロジェクトの成功にも役立ちますし、最後に会社を守るのは契約という認識も広がっています。今まで頑張ってきた法務部員とOB・OGの汗と涙の結晶と言えますね。

皆様の経験が積み重なって、今につながっているのですね。

齊藤氏:
事業部門との距離が近いことも特徴の1つと思います。営業支社、研究・生産部門などを除いて、基本的には同じ場所で仕事をしていることもあり、規模の大きなビジネスだけではなく、小さな案件についても気軽に声をかけてもらえる関係が出来ていると思います。

距離の近さを保つために心がけていることや、工夫されていることはありますか。

齊藤氏:
打ち合わせのときは、電話やメールだけで済ませず、なるべく顔を合わせるようにしています。直接話を聞くことで案件の理解が深まりますし、真の問題・課題といったものをとらえるのに役立つこともありますね。以前はオフィスが分かれていたのですが、今は一緒になっているので、その利点を生かしています。

また、営業拠点や製造現場、研究部門など、本社から離れた拠点については、こちらから積極的に出向いて法務研修を実施することなどにより、少しでも距離を詰められるようにしています。

左からキリンホールディングス株式会社 法務部 嶋田 佳奈氏、法務部 主査 齊藤 雅也氏

左からキリンホールディングス株式会社 法務部 嶋田 佳奈氏、齊藤 雅也氏

チャレンジングなリスク判断が求められる海外案件

海外事業にはどのように関わっていますか。

宮腰氏:
私はベトナムやミャンマーなど東南アジアの案件を多く担当しています。東南アジアの一部の国では法律や規制そのものが存在していなかったり、解釈が不明確なことも多かったりして、リスクの判断が難しい案件もありました。ただそのような案件では、会社のポリシーも含めて意思決定に関われる点が面白いですね。

栗山氏:
入社してすぐに法務部に配属されてから海外チームに10年ほど在籍していました。海外事業にかかわる契約コンサルや、海外進出のM&A等を担当していました。海外チームに所属していたころに担当した案件の中では、昨年、米国のThorne Researchという、高機能サプリを扱うベンチャー企業に出資をした案件 3 が印象に残っています。

当社にとってこの分野は新規事業領域への出資と位置付けていましたので、馴染みのない法律に関わりました。また、ベンチャー企業ということで、出資先の会社のコンプライアンス体制についても、どこまでリスクの有無を調査する必要があるのか判断することは大変でしたが、やりがいがありましたね。

不確実な状況の中でのリスクに関するジャッジメントは、かなり難しいと思いますが、どのように進められましたか。

栗山氏:
関係する法律の全体像をつかむところから始め、ビジネスに当てはめたときに顕在化する可能性があるリスクを想像し、最終的にはそれらのリスクを低減するための方策や、許容できるリスクの程度に関する意見交換を経営企画部と行い、会社として最終決定しました。

意思決定には会社のポリシーも重要になると思いますが、明文化されているのでしょうか。

宮腰氏:
コンプライアンスポリシーのように明文化されているものもありますし、見えないところで共有している価値観、キリングループの社員が持っている一定の倫理観が根底にあるように思います。

明文化されていない価値観や倫理観を共有するために、心がけていることはありますか。

上野氏:
結果を出して事業部門の方に信頼をされることがすべての基礎です。具体的には、四半期ごとに「法務サービス満足度調査」を社内の各部門に対して実施して、PDCAを回しています。また、商品に対するこだわりや愛着に比例して、自分のモチベーションも上がるし、チームとしての達成感も得られると考えています。

会社としての業績向上と社会やコミュニティへの貢献を目指してインナーブランディング活動を実施し、企業フィロソフィーを醸成していますし、そういう姿勢に社員が共感し、結果が出てきているのかなと感じますね。

キリンホールディングス株式会社 法務部 宮腰 和朗氏、栗山 典子氏

キリンホールディングス株式会社 法務部 宮腰 和朗氏、栗山 典子氏

多様なバックグラウンドを持つメンバーと事業部との距離の近さが魅力

最近の採用における特色があれば教えてください。

上野氏:
以前は食品、飲料系出身の方が多かったのですが、最近はまったく違う業種から入社される方も増えています。会社のビジネスも多角化、多様化するなか、法務の領域も広がっているため、いろいろな領域に対応できる人材を採用しています。

具体的にはどのような人材を求めているのでしょうか。

上野氏:
法務知識・経験を含め、高い専門能力を持っている方。周りに良い意味で刺激を与え、自分で学んで成長していただける方に来てほしいです。

現状に満足することなく好奇心と向上心をもって、しっかり勉強できないと法務の仕事は難しいですね。社内には色々なクライアントがいるので、コミュニケーション能力も重要です。

これは法務に限りませんが、案件をどういう段取りで進めるのが効率的かを考え、プレイヤーの心裡状態を読みながら、物事が進む道筋を想像する力を持っていること。案件の筋を読みながら的確に対応していくバランス感覚も求められます。

さらにあげるとしたら、事業部に対して言うべきときは言う。超えてはいけない一線を自分の中で意識して、ぶれずに向き合う気持ちの強さがほしいですね。

専門性とビジネスパーソンとしての素養が求められるのですね。働く中で魅力に感じる点について伺えますか。

栗山氏:
他の会社の法務部の方とお話をすることもあるのですが、比較しても事業部に近いなと思います。色々な事業部の方々と関わり、自分も一緒に事業を成功させたい、成功させるためにはどういったアドバイスができるかと考えながら仕事に取り組めるので、ビジネスを身近に感じられてすごく楽しいです。

宮腰氏:
働く魅力はたくさんありすぎて(笑)。法務のメンバーも他部署の人もそうですけど、一緒に働いていて気持ち良い人が多いですね。

法務部の中にはさまざまなバックグラウンドを持った人たちがいるので、いろいろな意見を聞けます。また、オープンに色々相談しやすい環境にあるので1つのチームとして働ける魅力があります。

嶋田氏:
法務部のメンバーが同じ場所で執務しているため、部内で案件・知識の共有を図れる点はとても良いと思います。法務部では複数のチームに担当が分かれていますが、希望によって複数のチームの仕事を担当することもでき、幅広い業務に携われる点も魅力的です。

齊藤氏:
事業部の方から相談されやすい環境ができているんですよね。頼りにしてもらっている印象があります。部門の中では任せてもらえる雰囲気があり、責任は重いですが自分で考えることもでき、すごくやりやすいです。

それから、商品が身近に存在するので、担当した案件がマスメディアを含めて、広く世に出て注目を浴びることはやりがいを感じますし、面白味があります。

キリンホールディングス株式会社の商品

テクノロジーの進化は法務の仕事をどう変えるか

働き方改革が求められ、リーガルテックサービスも次々と登場していますが、法務部門の業務効率化についてはどのような取り組みをされていますか。

上野氏:
若い世代を中心にテクノロジーに関する検討チームを設けていて、今日のメンバーの中では宮腰に入ってもらっています。

宮腰氏:
現時点ではいろいろなサービスのトライアルを行っている段階です。色々なサービスを検討していると、機械的な作業、単純業務が置き換わっていく流れが進むような印象を受けますね。

テクノロジー活用によるナレッジの共有や属人化の防止にも注目が集まっています。

宮腰氏:
正直、そこは我々にとっても課題ととらえています。部内のチーム間で比べてもナレッジの共有等の程度にバラツキがあります。リーガルテックのアプローチは解決に役立ちそうですね。

齊藤氏:
契約書のひな型集や案件対応のマニュアルは揃えていますが、各自が取り組んだことの情報共有については、なかなか難しいと感じています。

チーム内では定期的にミーティングを行い、個々の案件について担当者から苦労した点、注意点などを共有しあうようにしています。テクノロジーとリアルなコミュニケーションのそれぞれの利点をうまく結び付けていけると良いのかなと思います。

キリンホールディングス株式会社 法務部 インタビューの様子

法務出身の人材が経営層を目指すために必要なこと

経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」で検討が進められるなど、経営における法務の役割は転換期にあるといえます。御社では変化を感じますか。

上野氏:
自分たちで評価をすると自己満足にもなりかねないのですが、私が法務の仕事を始めた20年前に比べると、経営と法務の距離は確実に近づいていると言えます。

日本でもCLOやジェネラルカウンセルは増えていくと思いますか。

上野氏:
アメリカと日本の歴史や法制度、企業文化の違いなどもあり、一気に変化することはないでしょう。どういう道筋で進むべきかは、日本の企業法務部門、法務業界にわたる課題と認識しています。

経営の中で法務出身の方が活躍されていくには、何が必要なのでしょう。

上野氏:
法務部門はいわば新興部門として、同じ間接部門である人事や経理などと比べてどうしても人材のプールが少ないです。20年前には10名程度だった当社法務部門の人材も、ようやく30名になり、営業、経営企画、人事、IR、広報、経理、調達などの他部門にも法務部から異動した人材が社内に増えはじめています。

他部署で法務出身者が活躍し、法務の存在感が会社の中で認知されていけば、やがてはジェネラルカウンセル制の導入につながるかもしれません。

法務のキャリアパスはどのように描けると考えますか。

上野氏:
法務部員のキャリアパスはこのように整理していて、左下からスタートし、縦が経験年数で、横が実力を発揮する領域とします。

法務部員のキャリアパス

個人の志向もいろいろあって、法務の仕事を突き詰めていきたい方は左側の領域でステップアップしていく。

一方、事業をやりたい、経営の素養を伸ばしたい方の場合、右側の領域で実力を発揮し、役員や社長を目指すことになります。この間にある三角形のエリアで法務人材が連帯しながら活躍していくことが、法務部門の地位向上や存在感を示すことにつながるでしょう。

最後に、法務部門の今後の展望について教えてください。

上野氏:
法務業務のいいところは、その自由性にあると思っています。法務は案件に応じて自分で調べたり、人に聞いたり、弁護士事務所を使ったり工夫ができる面白い仕事です。興味を持ってくれる方が増えてほしいですよね。

仕事を通じて自分のありたい姿を追求していくこともできます。自分の職業生活の原体験となるような苦労や達成感、また、ある意味修羅場のようなものを部員それぞれが経験していただければと思います。

ただ、自由にしすぎて無秩序になってはいけません。多様性を部門としてさらにひとつの力にすることが、これからの課題です。

会社の中に閉じこもらず、弁護士事務所、他社の法務部門、官公庁などのネットワークを作って、皆さんと協力しながら法務部門の役割と存在感を拡大していきたいですね。

会社概要
キリンホールディングス株式会社
本社所在地:東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス
設立:1907年2月23日 ※2007年7月1日持株会社化に伴い「麒麟麦酒株式会社」より商号変更
資本金:1,020億4,579万円
代表取締役社長:磯崎 功典
従業員数:30,464人(キリンホールディングス連結従業員数、2018年12月31日現在)


プロフィール
上野 正樹(うえの・まさき)
キリンホールディングス株式会社
執行役員法務部長
金融機関を経て1998年入社。法務全般を担当し、2012年より現職。

齊藤 雅也(さいとう・まさや)
キリンホールディングス株式会社
法務部 主査
化学メーカーを経て2006年入社。主に国内法務全般を担当し、2015年より現職。

宮腰 和朗(みやこし・かずあき)
キリンホールディングス株式会社
法務部 主務 弁護士
2009年入社。主に海外法務全般を担当。シンガポール国立大学留学、ベーカー&マッケンジーシンガポールオフィスへの出向を経て2017年より現職。

栗山 典子(くりやま・のりこ)
キリンホールディングス株式会社
法務部 アソシエイト
2009年入社。主に海外M&Aを担当し、2019年より現職。

嶋田 佳奈(しまだ・かな)
キリンホールディングス株式会社
法務部
電機メーカーを経て2017年入社。主に国内法務を担当。

(取材・構成・写真撮影:BUSINESS LAWYERS編集部)


  1. キリンホールディングス株式会社「協和発酵バイオ株式会社の株式の取得に関するお知らせ」(2019年2月5日) ↩︎

  2. キリンホールディングス株式会社「キリンホールディングス株式会社および株式会社ファンケルによる資本業務提携契約の締結に関するお知らせ
    (2019年8月6日) ↩︎

  3. キリンホールディングス株式会社「米国・Thorne Research社への三井物産との共同出資」(2018年7月9日) ↩︎

シリーズ一覧全40件

  1. 第1回 花王株式会社 グローバル法務の根幹にある個人商店マインド 
  2. 第2回 「インハウス・ロイヤー」という選択肢 - 日本にとってCLOは必要なのか?
  3. 第3回 世界を股にかけた法務パーソン、国際ビジネスの現場で見えたもの
  4. 第4回 変わるワークスタイルと変わらぬ信念
  5. 第5回 会社の「誠実」を担う法務の姿 – 双日
  6. 第6回 300人体制を築くメガ法務の役目 - パナソニック
  7. 第7回 米国発のルールを日本に浸透させていく、アドビ法務・政府渉外本部の役割
  8. 第8回 マイクロソフトが実践するダイバーシティ戦略
  9. 第9回 法務畑を歩み続けたユニリーバ北島氏が考える、法務の役割と今後の課題
  10. 第10回 人と組織の成長を創造するプロアクティブな法務 - パーソルホールディングス
  11. 第11回 少数精鋭でチャレンジングな法務 - アサヒグループ
  12. 第12回 法律が追いつかないゲーム業界に求められるスピーディな体制構築術 - グリー
  13. 第13回 「1つの特許で生きるか死ぬか」、経営に直結する法務が見据えるグローバル化 - 田辺三菱製薬
  14. 第14回 たばこの概念を覆した「IQOS」で煙のない社会を目指す - フィリップ モリス
  15. 第15回 舞台はグローバル、事業に深くコミットする商社法務 - 三菱商事
  16. 第16回 懐深く、信頼して任せる風土 - 丸紅
  17. 第17回 経営の視点と専門性を持った法務人材を輩出する - キヤノン
  18. 第18回 「多様性」のある組織こそ、強みを生む - ソニー
  19. 第19回 一人ひとりが知財責任者としてのマインドを持つ - メルカリリーガルグループが実践する事業への関わり方
  20. 第20回 「使って初めて価値が出る」、ミッション・バリューを自らの言葉に「翻訳」して実践 - ユーザベース
  21. 第21回 「ポケモン」を支えるプロデューサーとしての法務 - 株式会社ポケモン
  22. 第22回 事業への情熱をもとに担当者をアサイン - DeNA
  23. 第23回 グローバルへと進化するために、働き方改革を推し進める法務組織 - 電通
  24. 第24回 プロジェクトチームの一員として、グローバルで多様なビジネスに並走する - アクセンチュア
  25. 第25回 事業部と一体となり、新規事業領域へチャレンジ – キリンホールディングス
  26. 第26回 合併を経て進化を続けるビジネスパートナーとしての法務 ―コカ・コーラ ボトラーズジャパン
  27. 第27回 活発なM&Aを支える法務組織とその柔軟な働き方 - 富士フイルム
  28. 第28回 契約書を作るだけではない、グローバルな成長に貢献するビジネスコンサルタントとしての法務 – 味の素
  29. 第29回 ウィズコロナ時代に問われる法務部門の組織運営 鍵はリーガルテックの積極活用 – 太陽誘電
  30. 第30回 テレワーク下の法務業務は「依頼者ファースト」のITツール活用で対応 - サイボウズ
  31. 第31回 アフターコロナになっても変わらない、法務のあるべき姿 - パーソルグループ
  32. 第32回 グローバル企業における法務業務とリーガルテック導入事例 勝機はスモールスタートにあり - 日揮グループ
  33. 第33回 急成長するベンチャーを支える「企業法務」の役割とは - GAテクノロジーズ
  34. 第34回 全ては事業の成長のために。ありのまま採用と価値観の共有化を通じて作り上げる熱い組織 - Visional
  35. 第35回 新規事業をサポートするインハウスロイヤーたち - あおぞら銀行のスタートアップサポートチームが生み出す価値とは
  36. 第36回 アクセンチュア法務が高い付加価値を生み出せる理由 オフショア化で契約業務を6割削減
  37. 第37回 大手法律事務所で専門性を極め「自分をアップデート」する環境を求めて – メドレー
  38. 第38回 「世界一幸せな法務」というビジョンを掲げ、事業を通じた社会課題の解決を目指す - LIFULL
  39. 第39回 強固な組織体制のもとで専門性の高いメンバーがイノベーションに貢献 - 日本アイ・ビー・エム
  40. 第40回 丸紅法務部の挑戦と変革 − 精鋭のメンバーがさらなる価値創出にコミットするために
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