株主総会を成功に導く運営ポイント
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目次
株主総会の運営実務は多岐にわたりますが、事前準備から事後処理まで一連の流れを正確に把握し、各段階で会社法や定款に則った適切な手続を行うことが不可欠です。ここでは、「BUSINESS LAWYERS」掲載の人気記事をもとに、株主総会に関する基礎知識、運営の流れやポイントなどを整理します。
なお、関連記事のタイトルは一部要約しています。より詳細な情報はリンク先の記事本文をご参照ください。
株主総会の基礎知識
株主総会とは
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。会社法上、株式会社においては必ず設置する必要があり、取締役や監査役の選任・解任、定款変更、重要な経営事項の決議などを行います。
株主総会には、原則として議決権を持つ株主が出席します。
株主総会の種類と開催時期・場所
(1)開催時期
株主総会には、年に1回必ず開催される「定時株主総会」と、必要に応じて随時開催される「臨時株主総会」の2種類があります。
定時株主総会は、毎事業年度終了後一定の時期に招集することが会社法で義務付けられています(会社法296条1項)。つまり、年1回の開催は義務付けられているものの、具体的な期限はありません。
会社法では、株主総会で議決権を行使できる株主を確定する「基準日」を定めており、基準日株主の権利行使は「基準日から3か月以内」とされています(会社法124条)。日本では多くの企業が3月末に事業年度を締め、基準日も3月末に設定しているため、結果として6月に定時株主総会が集中する傾向にあります。
例年、6月下旬、特に最終金曜日に定時株主総会を開催する企業が多く、2025年の最集中日は6月27日(金)1、2026年は6月26日(金)となる見込みです 2。
(2)開催場所
会社法上、株主総会の開催場所に特段の制限はありません。一定の要件を満たせば、株主総会のオンライン(バーチャル)開催や、リアルとオンラインのハイブリッド開催も可能です。
株主総会の決議事項と決議方法
株主総会において決定する事項を、決議事項といいます。
株主総会の決議事項は、会社の機関設計により異なりますが、会社の経営に関する事項や、役員等の選任・解任に関する事項、株主の利害に関する事項などが挙げられます。たとえば、取締役会設置会社では法令・定款で定められた事項のみが株主総会の決議事項となり、取締役会非設置会社ではより広範な事項が決議対象となります(会社法295条)。
決議する内容の重要性によって株主総会決議の要件(定足数、表決数)が異なり、普通決議、特別決議、特殊決議という大きく3つの方法に分けられます(会社法309条)。役員の任期や、議決権の取扱いなど、会社法の規定を正確に把握しておくことが重要です。
決議要件の構造

株主総会のスケジュール例
6月開催の定時株主総会の一般的な運営スケジュールは、次のとおりです。
株主総会のスケジュール例(3月末決算の監査役会設置会社の場合)
| 時期 | 項目 | 期限など | |
|---|---|---|---|
| 3月末日 | ① | 事業年度末日、基準日※1 電子提供制度に係る書面交付請求の期限 |
|
| 4月上旬 | ② | 総株主通知の受領※2 | |
| 4月中旬 | ③ | 監査役・会計監査人に対し、事業報告・計算書類・それらの附属明細書・連結計算書類を提出(事業報告・その附属明細書は監査役のみに提出) | |
| 4月下旬 | ④ | 株主提案権の行使期限 | ⑫の8週間前まで |
| 5月上旬 | ⑤ | 会計監査人から特定取締役・特定監査役に対し、会計監査報告の内容を通知 | ③から4週間経過した日まで |
| 5月中旬 | ⑥ | 特定監査役から特定取締役・会計監査人に対し、監査役会監査報告の内容を通知(事業報告・その附属明細書についての監査報告は特定取締役のみに通知) | ⑤から1週間経過した日まで |
| ⑦ | 取締役会決議(計算書類・事業報告・それらの附属明細書・連結計算書類の承認、株主総会招集決定) | ||
| ⑧ | 決算発表 | ||
| 6月初旬頃 | ⑨ | 株主総会資料の電子提供措置の開始 | ⑫の3週間前の日まで |
| 6月上旬 | ⑩ | 招集通知の発送 | ⑪の2週間前まで |
| 6月下旬 | ⑪ | 書面投票・電子投票の期限 | ⑫の前日のある時点(午後5時など) |
| ⑫ | 株主総会の開催 | 通常は①から3か月以内 | |
| ⑬ | 取締役会の開催(代表取締役の選定など)、監査役会の開催(常勤監査役の選定など) | 通常は⑫と同日 | |
| ⑭ | 株主総会議事録の作成・備置 | 備置期間は、本店に10年間、支店に5年間 | |
| ⑮ | 議決権行使結果に関する臨時報告書の提出 | ⑫の後遅滞なく | |
| 7月上旬 | ⑯ | 商業登記の申請期限 | ⑫から2週間以内 |
※1 株式会社は、一定の日を「基準日」として、その日時点の株主名簿上の株主を、後日における権利行使ができる者と定めることができます(会社法124条1項)。
※2 総株主通知とは、証券保管振替機構から発行者(会社)に対して行われる、基準日などの時点における株主の氏名、住所、株式数などの通知をいいます(社債、株式等の振替に関する法律151条1項)。総株主通知により、会社は、基準日時点の株主を把握することができます。
出所:「株主総会の運営マニュアル – 事前準備、当日対応、終了後の実務まで」
以下では、事前準備、当日の運営、事後処理の各段階で必要な作業やポイントを説明していきます。
株主総会の事前準備
株主総会の成否は、事前準備にかかっているといっても過言ではありません。総会当日までに必要な準備事項としては、たとえば日時・場所の決定、招集通知の作成・発送、議案の検討・決定などが挙げられます。また、議事運営マニュアルや想定問答集の作成、会場設営や受付体制の整備も欠かせません。
招集通知の作成・発送
(1)招集通知とは
株主総会を開催する際、会社は株主に対して招集の通知を送る義務があります(会社法299条)。
狭義の招集通知:株主総会の日時・場所・目的事項(議題)など、招集の決定事項を記載した文書(会社法325条の4第2項、298条1項)
- 広義の招集通知:上記に加えて、それと一体になって発送される株主総会資料等の添付書類を含んだもの
(2)招集通知の3つの送付形態
会社法の改正(2022年9月施行)により、上場会社等には電子提供措置が義務化されました(会社法325条の2以下)。上場会社は原則として、招集通知の内容を自社ウェブサイト等に掲載し、株主には狭義の招集通知(いわゆる「アクセス通知」)のみを送付すれば足ります。これにより、紙資源の削減と郵送コストの圧縮が可能になりました。
この電子提供制度により、送付形態のあり方は大きく変わりました。現在、企業は「株主にどの程度の情報を紙で送るか」によって、以下の3つの選択肢が考えられます。
| 形態 | 送付する書類の内容 | 特徴とトレンド |
|---|---|---|
| アクセス通知 | 法定記載事項のみを記したハガキ1枚や数枚の書面を送付 | コスト重視。大幅な経費削減になるが、株主の関心低下や議決権行使率の減少が課題。 |
| サマリー資料 | アクセス通知 に加えて、 要点を抜粋・ビジュアル化した冊子を送付 | 現在の主流。コストを抑えつつ、業績や成長戦略をわかりやすく伝え、ウェブサイト等への誘導を図る。 |
| フルセット・デリバリー | 従来どおり、すべての資料を印刷して送付 | 丁寧な対応。ネット環境がない高齢株主への配慮を最優先する場合に選択される。 |
東京証券取引所(東証)が公表した「2026年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」によると、従来の「フルセット・デリバリー」から「アクセス通知のみ」あるいは「アクセス通知とサマリー資料」への移行が進んでおり、プライム市場ではその傾向が顕著です。

コーポレートガバナンス・コードでは、「特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである」(補充原則3-1② )としています。
この点に関して、上述の東証の公表資料では、プライム市場のうち、招集通知本文および株主総会参考書類の英訳を提供予定は97.3%、事業報告および計算書類含む招集通知のすべての英訳を提供予定は30.7%との見込みが示されています。
なお、上場会社は別途、東証に株主総会招集通知(アクセス通知)および株主総会資料を提出する必要があります 3。
有価証券報告書の総会前開示
2025年3月28日に金融担当大臣により「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」が公表されたこと等を背景に、株主総会前に有価証券報告書を開示する上場会社が急増しています。
金融庁の公表資料 4 によると、2025年3月期決算企業において、有価証券報告書を株主総会前に開示した企業は全体の57.7%となり、前期(1.8%)に比して著しく増加しました。市場別で見ると、プライム上場会社の69.6% が総会前に開示しています。
総会の数日前の開示がボリュームゾーンですが、1週間以上前に開示する企業も44社(前期11社)に増加しました。

想定問答の作成、リハーサル
想定問答とは、株主から提起され得る質問とその回答案をあらかじめ書面化したものをいいます。
会社法314条は取締役等に株主からの質問に対する説明義務を課しており、合理的な範囲で誠実かつ的確に回答することが求められます。質問内容を事前に予測しきれないまま当日を迎えれば、回答が曖昧になったり、説明義務違反を問われたり、ひいては決議取消事由を争われるリスクすら生じかねません。
業績・財務状況や経営戦略のほか、株主還元やガバナンス・サステナビリティ関連の論点など、株主の関心が集まりそうな領域を網羅的に洗い出し、関係部署と連携しながら想定問答を作成しておくことは重要です。
さらに、株主総会当日の円滑な議事運営のためには、リハーサルの実施も有益です。議長や役員が回答を自分の言葉で述べられるか、想定外の質問が出た場合に誰がどう補助するか、マイクの受け渡しや採決の動線、議事の打切りや動議への対処など、運営フロー全体を通しで確認するとよいでしょう。
株主提案やアクティビストへの対応
株主提案とは、一定の要件を満たす株主が、株式会社に対し、株主総会で議題や議案を提案できる会社法上の権利(共益権)の1つです(会社法303条)。
株主総会の開催に先立って株主から株主提案権の行使を受けた場合、会社としては、その適法性をチェックし、適法であれば株主総会でこれを取り上げる必要があります。
特に近年、国内外のアクティビスト(物言う株主)が、日本企業に対して株主提案やガバナンス改革を促すケースが増えており、上場会社にとって重要な経営課題となっています。

株主総会当日の運営
株主総会当日は、会場設営や受付、議事進行、トラブル対応など、臨機応変かつ円滑な対応が求められます。
当日の流れとシナリオ
株主総会当日の流れとシナリオの一例は以下のとおりです。

議長の適切な権限行使、事務局との連携
株主総会における議長には、議場の秩序を維持し、議事を整理する権限や、秩序を乱す者を退場させる権限が付与されています(会社法315条)。
株主総会の当日の運営において、議長の適切な権限行使と事務局の緊密な連携は、議事の適法性と円滑な進行を担保するための「車の両輪」といえます。
特に、想定外のタイミングで株主から提出される動議(議事進行に関する修正案や提案)への対応には、この両者のコンビネーションが不可欠です。
以下は、株主総会当日の議場の設定例、議長と事務局の連携体制の一例です。

出所:「事務局が知っておくべき株主総会の基本 近年の傾向、準備、当日運営など」
不足の事態への備え
災害などの不測の事態に備えた開催・運営についても、前もって検討しておくとよいでしょう。
株主総会後の実務
株主総会議事録の作成
株主総会議事録は、株主総会における決定事項や議事の経過を記録化したものであり、その運営の適切性を確保する役割を果たすとともに、ステークホルダーへの情報提供という機能も有します。株主総会議事録の記載例や、作成・備置等にあたっての実務ポイントは、次の記事をご参照ください。
登記手続などその他の実務
株主総会終了後は、株主総会議事録の作成以外にも、登記手続や開示対応など多くの業務があります。決議事項によっては、法定の公告や官報掲載が必要な場合もあります。また、登記事項に変更が生じた場合は、変更が生じた日から2週間以内に変更登記を行わないと過料の対象となります。
株主総会に関する最新動向
株主総会実務を進めるうえでは、アクティビスト対応や人的資本開示など、新しいトピックのキャッチアップも欠かせません。以下では、トレンドや最近の事例に関する記事を紹介します。
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日本取引所グループ「2025年3月期決算会社の定時株主総会開催日の集計結果について」(2025年6月6日)参照。なお、最集中日の集中率は低下傾向にあり、2025 年は集計開始以来最も低い水準でした。 ↩︎
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日本取引所グループ「2026年3月期決算会社の定時株主総会開催日の動向について」(2026年4月28日)3頁参照。 ↩︎
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ここでいう株主総会資料とは、電子提供措置が必要な事項(会社法325条の3第1項各号に規定される事項)を記載した資料を指します。したがって企業は、自社サイト等において電子提供措置をとる資料をすべて東証へ提出する必要があります(日本取引所グループのFAQ参照)。 ↩︎
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金融庁「2025年3月期に係る総会前開示の状況」参照。 ↩︎
弁護士ドットコム株式会社

