監査役と取締役の報酬等の決定手続の違い

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 監査役会設置会社における監査役の報酬等の決定手続と取締役の報酬等の決定手続に違いはありますか。

 監査役の報酬等は、定款または株主総会決議での決定を要する点は取締役の報酬等と同じですが、監査役が複数いる場合に、各監査役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、監査役の協議によって決定する必要がある点は取締役の報酬等と異なります。
 また、監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができる点も取締役とは異なります。

解説

目次

  1. 定款または株主総会決議による決定
  2. 監査役が複数の場合の各監査役の報酬等の決定
  3. 業績連動報酬・ストックオプション
  4. まとめ

定款または株主総会決議による決定

 監査役の報酬等は、定款においてその額を定めていないときは、株主総会の普通決議によって決定されます(会社法387条1項、309条1項)。この「報酬等」には、月額報酬だけでなく、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益すべてが含まれますので(会社法361条1項参照)、賞与、退職慰労金等についても、すべて定款または株主総会の決議によって定める必要があります。なお、株主総会では、監査役全員の報酬総額のみを定め、その範囲内で監査役の協議によって各監査役の報酬額を決定することも可能です(会社法387条2項参照)。

 これらの手続は、取締役の報酬等と同様ですが、その趣旨は取締役の報酬等の場合とは異なります。取締役の報酬等について、その額を定款で定めていない場合に株主総会の普通決議によって決定することとされている趣旨は、取締役がその報酬等を自ら決定することができるとすると、高額の報酬となって、株主の利益が害される危険があるため、このような危険を排除することにあります(いわゆる「お手盛り防止」)。これに対して、監査役の報酬等について定款または株主総会決議で決定することとされているのは、監査役の報酬等の決定を取締役ではなく株主総会で決定することで、監査役に対して適正な報酬を確保し、監査役の取締役からの独立性を保障するためです。
 このような趣旨の違いから、監査役の報酬等を株主総会で決議する場合には、監査役の報酬等を取締役の報酬等と一括して決議することは認められないと解されています。

 また、監査役の報酬等が不当に低く定められたり、据え置かれたりするのを防止するため、監査役には、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べる権利が認められています(会社法387条3項)。なお、この報酬等に対する監査役の意見陳述権は、監査役の報酬等に関する議案が提案されている株主総会だけでなく、監査役の報酬等に関する議案が提案されていない株主総会においても行使することが認められ、その株主総会において、監査役は、報酬の増額に関する議案が提案されるべきであるといった意見を陳述することができます。

取締役 監査役
決定手続 定款で定めるか、株主総会の普通決議で決定 定款で定めるか、株主総会の普通決議で決定
趣旨 お手盛り防止 取締役からの独立性を保障
意見陳述権 なし あり

監査役が複数の場合の各監査役の報酬等の決定

 監査役が1名の場合で、定款または株主総会で報酬等の限度額のみを定めた場合、当該監査役の報酬の最終決定権者は当該監査役であり、当該監査役が自ら報酬額を定めることになります(ただし、監査役が主体性をもつ限り、事実上取締役会の意見を聞くことは差し支えないと考えられています)。

 これに対して、監査役が複数いる場合において、各監査役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、監査役の協議によって各監査役の報酬等を決定します(会社法387条2項)。この「監査役の協議」とは、監査役全員一致の決定をいうと解されていますが、監査役の協議により報酬額の配分を特定の監査役に一任することはできると解されています。各監査役の報酬額は監査役の協議によって決定することとされている趣旨は、各監査役の報酬額の決定を取締役に委ねることで、特定の監査役の報酬等が不当に低く定められるようなことを防止して、監査役の取締役からの独立性を確保するためです。このような趣旨から、各監査役の報酬額の決定を代表取締役等の特定の取締役の決定に一任することはできません

 この点、取締役の報酬等については、各取締役の報酬について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、各取締役に対する配分額の決定は、取締役会で決定し、取締役会が特定の取締役に配分の決定を一任することができると解されている点とは異なります。

業績連動報酬・ストックオプション

 監査役の報酬等は「」を定めることとされており(会社法387条1項)、取締役の報酬等のように報酬等の「算定方法」の定めに関する規定がありませんが、株主総会で定めた上限額の範囲内で、あるいは取締役の報酬に関する規定である会社法361条1項2号を類推適用して定款または株主総会で具体的な算定方法を定めることで、業績連動報酬を支給することは可能と解されています。
 また、ストックオプション(新株予約権の付与)についても、株主総会で定めた上限額の範囲内で、または会社法361条1項を類推適用して非金銭報酬として定款または株主総会で決議することで、監査役に支給することも可能と解されています。
 もっとも、監査役の独立性重視の観点や、監査役は業務執行により会社の利益に貢献するわけではないため、監査役の報酬を業績連動報酬とすることや、監査役にストックオプションを付与することには合理性がないという考えもあります。

まとめ

 監査役の報酬等は、定款または株主総会決議で決定を要する点は取締役の報酬等と同じですが、監査役が複数いる場合に、各監査役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、監査役の協議によって決定する必要がある点は取締役の場合と異なります。
 また、監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができる点も取締役とは異なります。

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