東京証券取引所「2025年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表
コーポレート・M&A
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.230」の「特集」の内容を元に編集したものです。
4月25日、東証は、上場会社の定時株主総会の開催日程等の動向をあらかじめ把握し、株主・投資者の議決権行使の環境整備を図ることを目的として実施した調査結果として、「2025年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」を公表しました。
調査内容は、①本年の開催日等について、②株主総会資料の電子提供の開始予定日の状況、③株主宛発送書類提供の状況、④英文招集通知の提供状況、⑤議決権の電子行使の状況、⑥バーチャル総会の開催予定からなり、東証内国上場会社のうち2025年3月期決算会社2,242社(プライム、スタンダードおよびグロース市場上場会社)を対象とし、うち1,764社から回答を得ているものです。
本稿では上記①~⑥の調査結果概要をお知らせするとともに、株主宛発送書類の状況およびバーチャル総会の開催状況につき、三菱UFJ信託銀行にて上場区分別や規模別に分析した結果についてもご紹介いたします。
調査結果概要
- 本年の開催日等について
- 本年の定時株主総会は、6月27日(金)に最も集中する見込み
- 最集中日の集中率は25.2%と、1983年の集計開始以来、最も低い水準となる見込み
- 株主総会資料の電子提供措置の開始予定日の状況
- 株主総会資料の電子提供措置の開始予定日は、全社(※東証調査への回答会社を指します。以下同じ)のうち、4週間前までが22.1%となる見込み
- 特にプライム市場において提供の早期化がみられ、4週間前までに電子提供措置の開始を予定する会社が、35.3%と3分の1を超える見込み
- 株主宛発送書類提供の状況
- 全社のうち、「アクセス通知のみ」が8.3%(昨年比+1.1pt)、「アクセス通知とサマリー資料」が39.2%(昨年比+6.9pt)、「フルセット・デリバリー」が52.5%(昨年比▲4.6pt)となる見込み
- プライム市場においては、「アクセス通知のみ」および「アクセス通知とサマリー資料」を合計した割合は6割を超え、「フルセット・デリバリー」から移行する傾向が顕著
- 英文招集通知の提供状況
- 招集通知本文および株主総会参考書類の英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、97.2%(昨年比+3.1pt)となる見込み
- 事業報告および計算書類を含む招集通知のすべての英訳を提供予定のプライム市場上場会社は、29.5%(昨年比+1.8pt)となる見込み
- 議決権の電子行使の状況
- 機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームを利用するプライム市場上場会社は97.6%(昨年比+0.9pt)、スタンダード市場上場会社、グロース市場上場会社においても増加の傾向
- 個人投資家向けにインターネットによる議決行使を可能とする上場会社は91.0%(昨年比+4.1pt)で増加見込み
- バーチャル総会の開催予定
- バーチャル総会の開催を予定している会社は、18.1%となる見込み
- バーチャル総会を開催予定の会社の大多数がハイブリッド参加型での開催を予定
時価総額別、株主数別等の分析
三菱UFJ信託銀行にて調査結果を時価総額別等で分析した内容を以下ご紹介いたします。なお、文中の表は三菱UFJ信託銀行にて作成したものです。
電子提供制度に伴う株主宛発送書類の状況
【表1】は、株主宛発送物の形態を時価総額別に表したものです。
時価総額が大きくなるにつれ、「フルセット」と回答した会社の割合が減少していることがみてとれます。また、すべての時価総額別の会社群で、「フルセット」と回答した会社の割合が昨年比で減少し、「サマリー」「アクセス通知のみ」と回答した割合が増加しています。本年6月総会では、電子提供制度施行後3年目を迎え、「フルセット」から「サマリー」「アクセス通知のみ」への移行が進んでいることが窺えます。
【表2】は、株主宛発送物の形態を株主数別に表したものです。
株主数に応じて傾向に差異がみられ、株主数が「5千人以下」、「5千人超-1万人」の会社では「フルセット」が過半数を占めていますが、「1万人超-5万人」の会社から「サマリー」および「アクセス通知のみ」の割合が「フルセット」を逆転し、「5万人超‐10万人」の会社では8割以上、「10万人超」の会社では9割以上という高い割合で「フルセット」以外の発送形態を選択しています。
バーチャル総会の開催予定
バーチャル総会の開催予定については、バーチャルオンリー型(以下「オンリー型」)、ハイブリッド出席型(以下「出席型」)、ハイブリッド参加型(以下「参加型」)の各形式について市場区分別、時価総額別、株主数別に分析しました。
まず【表3】市場区分別では、グロース市場は、スタンダート市場よりもバーチャル総会を開催予定とする割合が高く、「オンリー型」、「出席型」の割合についてはプライム市場と比べても高くなっています。プライム市場においては「参加型」を開催する予定の企業が3割弱となっています。
次に【表4】時価総額別では、時価総額が大きいほどバーチャル総会の開催予定の割合が高くなる傾向が窺えます。開催形式は、すべての時価総額の会社群で「参加型」が最も多くなっていますが、特に「5,000億円超 - 1兆円」の会社では5割の会社が、「1兆円超」の会社では約7割の会社が「参加型」で開催予定と回答しています。
また【表5】株主数別では、株主数の増加に応じ、バーチャル総会を開催すると回答した会社が増加しているのが見てとれます。株主数「5万人超-10万人」の会社では、約5割の会社が開催予定と回答しており、「10万人超」では約8割となっています。株主数が多い会社では比較的高い割合で実施を予定していることがわかります。
【表6】は、昨年のバーチャル総会の開催形式(実施しないと回答した会社を含む)に応じ、本年の開催予定について、各割合を算出したものとなります。昨年バーチャル総会を開催予定と回答した会社においては、その多くが引き続き本年もバーチャル総会の開催を予定していることが窺えます。
昨年「オンリー型」、「出席型」と回答した会社では、本年「参加型」に移行を予定する会社が見られたほか、昨年「参加型」と回答した会社では、本年「出席型」に移行を予定する会社も見られました。その他、アフターコロナ以降リアルでの対話機会を重視してか、本年は「実施しない」とする会社も各開催形式で見られ、各社が自社にとって適切と考えられる開催形式を検討していることが窺えます。
【表6】昨年の開催形式に応じた本年の開催予定
昨年の開催形式 | 本年の開催予定 | 社数 | 割合 |
---|---|---|---|
オンリー型 (9社) |
オンリー型 | 6社 | 66.7% |
出席型 | 0社 | ‐ | |
参加型 | 1社 | 11.1% | |
実施しない | 2社 | 22.2% | |
出席型 (13社) |
オンリー型 | 0社 | - |
出席型 | 9社 | 69.2% | |
参加型 | 2社 | 15.4% | |
実施しない | 2社 | 15.4% | |
参加型 (268社) |
オンリー型 | 0社 | - |
出席型 | 4社 | 1.5% | |
参加型 | 244社 | 91.0% | |
実施しない | 20社 | 7.5% | |
実施しない (1,198 社) |
オンリー型 | 3社 | 0.3% |
出席型 | 0社 | - | |
参加型 | 2社 | 0.2% | |
実施しない | 1,193社 | 99.6% |
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