監査役の選任はどのように行われるか

コーポレート・M&A

 当社は、監査役会設置会社であり、監査役は私を含めて3名です。この3名の監査役全員が今年の定時株主総会で任期が満了となりますが、取締役会は、監査役3名のうち1人も再任せずに、新たに別の3名を監査役に選任する議案を上程しようとしているようです。しかし、監査の継続性の観点からは、誰か1名は再任されるべきだと思います。監査役として、取締役が上程しようとしている議案に反対する方法はありますか。

 監査役は株主総会の選任決議を経て選任され、被選任者が就任を承諾することで選任の効力が生じますが、監査役会設置会社において、取締役が監査役の選任議案を株主総会に上程するためには、監査役会の同意が必要です。そのため、まずは、監査役会で取締役が作成した選任議案に同意しないことを決議することが考えられます。
 また、監査役は、株主総会において、監査役の選任について意見を述べることができますので、株主総会において意見を述べるということも考えられます。

解説

目次

  1. 監査役の選任議案への同意権
  2. 株主総会における決議と監査役の意見陳述権
  3. まとめ

監査役の選任議案への同意権

 会社法は、監査役の取締役からの独立性の強化を図る趣旨から、取締役が自分たちの都合で監査役の構成を勝手に変更できないようにしており、取締役監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が2人以上の場合はその過半数、監査役会設置会社である場合には監査役会)の同意を必要としています(会社法343条1項・3項)。
 また、監査役(監査役会設置会社である場合は監査役会)は、取締役に対して、監査役の増員のために監査役の選任を株主総会の目的とすることや、特定の人物の監査役選任議案を株主総会に付議するよう請求することもできます(会社法343条2項)。

 そして、監査役(監査役会設置会社である場合には監査役会)の同意を得ずに監査役の選任決議がなされた場合は、株主総会の決議取消事由になります(会社法831条1項1号)。
 そのため、監査役が新たな監査役の選任議案に反対の意見がある場合には、取締役から監査役の選任議案に同意を求められた際に、監査役会においてその選任議案に同意しないことを決議し、取締役に対して、監査役の選任議案の再考を促すということが考えられます。

株主総会における決議と監査役の意見陳述権

 監査役3名のうち1名のみが取締役が作成した監査役選任議案に反対し、他の監査役が取締役作成の監査役選任議案に賛成した結果、監査役会としては取締役が作成した監査役の選任議案に同意することになり、その監査役の選任議案が株主総会に上程されることになった場合でも、各監査役には株主総会において監査役の選任について意見を述べる権利が保障されています(会社法345条1項・4項)。

株主総会における決議と監査役の意見陳述権

 この意見陳述権については、述べる意見の内容に制限はないことから、自らの再任についてだけでなく、他の者の監査役としての選任についても意見を述べることができますし、さらには監査役の選任議案が上程されていない場合に、監査役を増員すべきであることについても意見を述べることができます。
 監査役にこのような意見陳述権が保障されているのは、監査役の選任議案に関する取締役会の決定に監査役の意向をより強く反映させることが目的です。

 そして、このような監査役の意見陳述権を取締役が不当に拒絶した場合は、株主総会の決議方法の法令違反として株主総会の決議取消事由になると解されています(会社法831条1項1号)。
 そのため、監査役選任議案に反対の監査役は、株主総会で意見を述べることができ、反対の意思表示を行うことで、株主に対して慎重な議決権行使を促すことができます。

まとめ

 以上のとおり、取締役が上程しようとしている監査役選任議案に反対の意見を持つ監査役が取り得る方法としては、取締役から監査役選任議案についての同意を求められた際に、監査役会において反対の決議をすることで選任議案に同意せずに、取締役に選任議案の再考を促すという方法が考えられます。
 また、他の監査役が選任議案に同意することに賛成したため、監査役会としては取締役会が作成した監査役選任議案に同意することになったとしても、これに反対する監査役は、当該監査役選任議案が上程された株主総会において、監査役の意見陳述権を行使して、当該監査役選任議案についての意見を述べるということも可能です。

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