コロナ禍の株主総会 議事録作成のポイント - 実務の基本からバーチャル総会への対応まで

コーポレート・M&A

目次

  1. はじめに
  2. 株主総会議事録の記載事項
  3. 役員・株主がバーチャル参加した場合の議事録作成の留意点
  4. 継続会、延会となった場合の議事録作成の留意点
  5. 株主総会議事録への押印と株主総会議事録の保存、電子化への対応
  6. おわりに

はじめに

 昨年の定時株主総会に続き、本年の定時株主総会においても、株主総会を担当されている皆様は新型コロナウイルス感染症対策に配慮したイレギュラーな対応を余儀なくされていると思います。本稿では、上場企業と非上場企業の双方を対象に、コロナ禍のなかで開催される株主総会を想定して株主総会議事録作成のポイントについて解説します。

株主総会議事録の記載事項

 株主総会を開催した場合には、以下の事項を記載した株主総会議事録の作成が求められます(会社法318条1項、会社法施行規則72条)。

  1. 株主総会が開催された日時および場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人または株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む)
  2. 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  3. 意見陳述権に基づく意見または発言があるときは、その意見または発言の内容の概要
  4. 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  5. 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
  6. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

 上記②の「議事の経過」とは、株主総会の開始から終了するまでの間の審議プロセスのことをいい、具体的には次の事項が記載されることになります。

( i ) 株主総会の成立に関する事項
( ii )報告事項についての報告内容およびそれに関する質疑応答等の発言
( iii )決議事項についての審議の内容およびそれに関する質疑応答等の発言

 また、「議事の結果」とは、決議事項についての成否を意味し、可決された場合に「出席株主の議決権の過半数の賛成を得たので、本議案は原案どおり承認可決した」等といった記載をすることが求められます。

 議事の経過のうち、( i )株主総会の成立に関する事項としては、出席株主数(委任状・議決権行使書面・電子投票による出席数を含む)や定足数の確認に必要な情報、開会宣言などを記載します。また、( ii )報告事項についての報告内容およびそれに関する質疑応答等の発言としては、事業報告および計算書類の内容報告、連結計算書類の内容報告、監査の結果報告等を記載します。

 なお、新型コロナウイルス感染症対策として、株主総会の時間を短縮するために、事業報告や計算書類については、「お手元の招集通知に記載のとおりです」とだけ述べることが考えられます。その場合でも、事業報告や計算書類の報告を省略したわけではないため、株主総会議事録には、例年同様、「第〇期(2020年4月1日~2021年3月31日)における事業について、事業報告書に基づき詳細を報告した」といった記載をすべきであると考えられます。さらに、( iii )決議についての審議の内容およびそれに関する質疑応答等の発言としては、議題について提案された議案の内容、提案者名、提案についての趣旨説明および質疑応答を含む発言内容を記載することになります。

 議事の経過については「要領」の記載で足りるため、質疑応答について、質問者の氏名を記載する必要はなく、質問と回答の要旨を記載すれば足ります。また、議事に関係がなく、議事の進行に影響を及ぼさない事項については記載する必要はありません。

役員・株主がバーチャル参加した場合の議事録作成の留意点

 一部の役員や株主がテレビ会議システム等を用いて株主総会に出席した場合は、その出席方法を株主総会議事録に記載する必要があります(会社法施行規則72条3項1号)。

ハイブリッド型バーチャル株主総会の株主総会議事録における株主の出席方法の記載要否

ハイブリッド型バーチャル株主総会の株主総会議事録における株主の出席方法の記載要否

 近時は、物理的に株主総会を開催しつつ、株主がインターネット等の手段を用いて参加または出席する「ハイブリッド型バーチャル株主総会」が開催される事例も散見されますが、株主がインターネットなどの手段を用いて株主総会に「出席」し、審議に参加して決議にも加わる出席型」の場合は、当該株主の出席方法も株主総会議事録に記載する必要があります。これに対して、株主がインターネットなどの手段を用いて審議等を確認・傍聴することができるだけの「参加型」の場合、株主は株主総会に「出席」したとは扱われないため、当該株主の出席方法を株主総会議事録に記載する必要はありません

 また、役員や株主がテレビ会議システムなどを用いて株主総会に出席した場合でも、役員や株主の所在場所は株主総会議事録の記載事項とはされていないため、役員や株主の所在場所を株主総会議事録に記載する必要はありません。

 以前は出席の方法として、開催場所との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている状況を基礎づける事実の記載が必要であると解されていましたが 1、近時は、議長が自らまたは議長の指示を受けた事務局により、各システムが正常に稼働していることを確認した旨を記載しておけば足りるという見解 2 も現れています。後者の見解は傾聴に値しますが、この点は今後の登記実務等も踏まえる必要があり、本年の定時株主総会では念のため情報伝達の双方向性・即時性が確保されている状況を基礎づける事実まで記載することが考えられます。

 以上を前提にすると、一部の役員や株主がテレビ会議システム等を用いて株主総会に出席した場合、株主総会議事録には、以下のような記載をすることになります。

役員の一部がWeb会議システムを利用して出席した場合の議事録の例



第〇期定時株主総会議事録

日時 2021年6月〇日(〇曜日) 午前10時
場所 東京都〇〇 当会社本店会議室
出席者 議決権を行使することができる株主数 〇名
    この議決権の数 〇個
    本日出席株主数(委任状・議決権行使書提出者を含む) 〇名
    この議決権の数 〇個
議長 代表取締役 〇〇〇〇
出席役員 取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇(Web会議システムを通じての出席)
     監査役△△△△(Web会議システムを通じての出席)

議事の経過の要領及びその結果
 定刻、代表取締役〇〇〇〇は定款の規定に基づき議長となり、開会を宣し、以上のとおり本日の出席株主数及びこの有する議決権の数を報告し、本総会の全議案を審議できる法令並びに定款上の定足数を充足している旨述べた。取締役〇〇〇〇及び監査役△△△△は、Web会議システムを利用しての出席であるが、議長は、審議に先立ち、出席者の姿及び音声が他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するときと同等に相互に円滑に意思の疎通ができることを確認した。

 報告事項
 〔省略〕
 決議事項
 〔省略〕

 議長は、Web会議システムが終始異常なく、これをもって本総会の目的事項のすべてを終了した旨を述べ、午前11時、閉会を宣した。
〔以下、省略〕


株主の一部がインターネットシステムを利用して出席した場合の議事録の例



第〇期定時株主総会議事録


日時 2021年6月〇日(〇曜日) 午前10時
場所 東京都〇〇 当会社本店会議室

   なお、事前に申込みのあった一部の株主は、当社所定のインターネットシステム(以下「本システム」という。)にログインし、会場の画像及び音声の配信を受け、本システムにより質問及び議決権行使を行う方法により本総会に出席した。

出席者 議決権を行使することができる株主数 〇名
    この議決権の数 〇個
    本日出席株主数(委任状・議決権行使書提出者・本システムを通じた出席者を含む) 〇名
    この議決権の数 〇個
議長 代表取締役 〇〇〇〇
出席役員 取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、監査役△△△△


議事の経過の要領及びその結果
 定刻、代表取締役〇〇〇〇は定款の規定に基づき議長となり、開会を宣した。議長は、審議に先立ち、本システムを通じて出席した株主には会場の画像及び音声が即時に伝わり、また、本システムにより質問及び議決権行使を行うことが可能になっていることが事前に確認されており、現在も本システムが特段の支障なく稼働していること、これにより、出席者が一堂に会するときと同等に相互に円滑に意思の疎通ができていることを確認した。以上のとおり本日の出席株主数及びこの有する議決権の数を報告し、本総会の全議案を審議できる法令並びに定款上の定足数を充足している旨述べた。

 報告事項
 〔省略〕
 決議事項
 〔省略〕

 議長は、本システムが終始異常なく、これをもって本総会の目的事項のすべてを終了した旨を述べ、午前11時、閉会を宣した。
〔以下、省略〕

継続会、延会となった場合の議事録作成の留意点

 株主総会は、その決議により延期または続行することができます(会社法317条)。この点、株主総会の成立後、議事に入らないで会日を後日に延期することを延期といい、延期の決議に基づいて後日開催される株主総会を「延会」といいます。また、議事に入った後で、審議未了のまま会議を一時中止して、後日に引き続いて再開することを続行といい、続行の決議に基づいて後日開かれる株主総会を「継続会」といいます。

 昨年の定時株主総会では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、決算や監査手続に遅れが生じたため、計算書類の承認や監査報告については継続会で行う一方、役員の選任や剰余金の配当等の事項については、当初の予定どおりに開催された株主総会で決議するという事例が散見されました。

 この点、延会・継続会についても、その議事の要領およびその結果については議事録を作成する必要があり、かつ、最初に開催された株主総会と同一性を有することを明らかにする必要があります。具体的には、以下の記載例のように、表題に延会または継続会であることを明記することで同一性を明らかにすることになります 3


継続会の議事録の例



第〇期定時株主総会議事録(第一会)


日時 2021年6月〇日(〇曜日) 午前10時
場所 東京都〇〇 当会社本店会議室
出席者 議決権を行使することができる株主数 〇名
    この議決権の数 〇個
    本日出席株主数(委任状・議決権行使書提出者を含む) 〇名
    この議決権の数 〇個
議長 代表取締役 〇〇〇〇
出席役員 取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、監査役△△△△

議事の経過の要領及びその結果
 定刻、代表取締役〇〇〇〇は定款の規定に基づき議長となり、開会を宣し、以上のとおり本日の出席株主数及びこの有する議決権の数を報告し、本総会の全議案を審議できる法令並びに定款上の定足数を充足している旨述べた。
 〔省略〕

 議長は、これをもって本日の審議は一旦終了し、本総会の目的事項である事業報告及び計算書類の報告については、所要の手続が未了であることから、会社法第317条の規定に基づき、後日、本総会の継続会を行いたい旨並びに継続会の日時、場所については議長に一任する旨を議場に諮ったところ、会場に存する出席株主の議決権の過半数の賛成を得たので、本総会を休会する旨を述べ、午前10時30分に散会した
〔以下、省略〕



第〇期定時株主総会議事録(継続会)


日時 2021年7月〇日(〇曜日) 午前10時
場所 東京都〇〇 当会社本店会議室
出席者 議決権を行使することができる株主数 〇名
    この議決権の数 〇個
    本日出席株主数(委任状・議決権行使書提出者を含む) 〇名
    この議決権の数 〇個
議長 代表取締役 〇〇〇〇
出席役員 取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、取締役〇〇〇〇、監査役△△△△

議事の経過の要領及びその結果
 議長は、午前10時に2021年6月〇日開催の定時株主総会にかかる会社法第317条の規定に基づく継続会の開会を宣し、以上のとおり本日の出席株主数及びこの有する議決権の数を報告し、本総会の全議案を審議できる法令並びに定款上の定足数を充足している旨述べた。
 〔省略〕

 議長は、これをもって本総会の目的事項の全てを終了したことにより、本総会の継続会を終了した旨を述べ、午前11時、閉会を宣した。
〔以下、省略〕

株主総会議事録への押印と株主総会議事録の保存、電子化への対応

 会社法では、株主総会議事録について署名押印を求めていないため、原則として株主総会議事録に署名押印する必要はありません 4。しかし、多くの会社では定款において、議長または出席した取締役および監査役が署名もしくは記名押印し、または電子署名をする旨の定めを置いており、このような定款の定めのある会社では、定款の規定に従った署名もしくは記名押印または電子書面が必要となります。

 また、株主総会議事録を登記申請の添付書類とする場合、署名押印のない株主総会議事録も添付書面として有効です。しかし、署名押印がない場合で、誤字脱字などがあった際には、訂正印による処理ができず、差替えとなります。そのため、定款に上記のような定めがない場合でも、議事録作成者が押印することが一般的です 5

 加えて、登記申請書の添付書類は原則として電磁的記録で作成することが可能であり(商業登記法19条の2)、登記申請の添付書類として使用するための株主総会議事録を電磁的記録で作成することも可能です。もっとも、この場合には作成者による電子署名が必要とされており(商業登記規則36条3項)、また、作成者によって電子署名がされたことを確認するため、次のいずれかの電子証明書を記録する必要があります(商業登記規則36条4項)。

  1. 電子認証登記所の登記官発行の電子証明書
  2. 地方公共団体情報システム機構が発行する公的個人認証サービスの電子証明書
  3. 指定公証人の電子証明書
  4. 法務大臣の指定する電子証明書 6

 このように、商業登記規則では、利用できる電子証明書が限定されており、これ以外の電子証明書は認められません。そのため、上記の電子証明書を用いた電子署名ができない場合、登記申請の添付書類として使用する株主総会議事録については電磁的記録で作成することができない点には留意が必要です。

 なお、登記申請の添付書類として使用しない株主総会議事録は、上記の電子証明書を付す必要なく、たとえば、電磁的記録のフロッピー・ディスクやUSBメモリー、CR-ROMのような磁気的、電子的または光学的方法により記録できる媒体に電子ファイルを記録する方法でも作成することが可能です(会社法施行規則72条2項、同16条2項、同224条)。

おわりに

 株主総会を担当されている方にとっては、本年も新型コロナウイルス感染症に配慮した対応を余儀なくされ、ご苦労が多いと思われますが、本稿が少しでもお役に立てば幸いです。


  1. 相澤哲=葉玉匡美=群谷大輔編著『論点解説 新・会社法―千問の道標』472頁(商事法務、2006) ↩︎

  2. 澤口実編著『バーチャル株主総会の実務』79頁(商事法務、2020) ↩︎

  3. 継続会を開催するためには、①株主総会においてその続行を決議することと、②継続会の開催日時・場所を決議する必要があると解されていますが、開催日時・場所については、その具体的な決定を議長に一任する決議を行うことも許容されると解されており(江頭憲治郎=中村直人編著『論点体系 会社法2 株式会社II』524頁(第一法規、2012)、この記載例は、議長に一任する決議を行った場合の記載例です。 ↩︎

  4. ただし、取締役会非設置会社が株主総会で代表取締役を選定した場合には、登記申請の添付書類として議長および出席取締役が記名押印した株主総会議事録と、議長および出席取締役の印鑑証明書を添付する必要があります(商業登記規則61条6項1号)。 ↩︎

  5. 神﨑満治郎=金子登志雄=鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コンメンタール』138頁(きんざい、2017) ↩︎

  6. 法務省ウェブサイトの「3 電子署名に使用できる電子証明書」参照。 ↩︎

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