株主総会の決議方法の種類について
コーポレート・M&A 公開 更新株主総会にはどのような決議方法があるのでしょうか。
大きく分けて、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類があります。
解説
株主総会決議の種類
株主総会は、株式会社の最高の意思決定機関であり、株式会社である以上は少なくとも1年に1回は開催されます(会社法295条1項、296条1項参照)。
この株主総会の決議方法については、株主総会が成立するに足りる最低限度の株式または株主の割合である「定足数」と、賛否を決する株式の割合である「表決数」により、普通決議、特別決議、特殊決議という3つに大きく分けられます。
株主総会決議事項は多数存在するため、法律はその重要度合いによって必要な決議の要件に差を設けているのです。
普通決議
決議方法に特段の指定がない限り、原則として、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数を必要とする普通決議によって決議されます(会社法309条1項)。
特別決議・特殊決議
一定の重要事項を決議する場合、会社法は、普通決議よりも厳格な要件を課しており、これを特別決議、特殊決議といいます。
特別決議は、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の2/3以上による多数の賛成を必要とします(会社法309条2項)。
特殊決議は、議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の2/3以上にあたる多数の賛成を必要とします(会社法309条3項)。
以下の表に、定足数・表決数をまとめています。
【株主総会の定足数・表決数】
特則普通決議・特別特殊決議
さらに、特則普通決議、特別特殊決議と呼ばれるものがあります。
特則普通決議とは、通常の普通決議が定款により定足数を排除することも可能であるのに対し、定款によっても、定足数を1/3未満にはできない普通決議をいいます1 (会社法341条)。
特別特殊決議とは、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めることも可)(頭数要件)、かつ、総株主の議決権の3/4以上(これを上回る割合を定款で定めることも可)の多数により決議するものをいいます(会社法309条4項)。
株主全員の同意
さらには、株主全員の同意が必要な決議事項もあります。
各種決議の決議事項
決議要件と決議事項については、下表をご覧ください。
上記のとおり、決議事項の重要度合いによって、決議要件が段階的に定められています。
株主総会決議事項が多いので全てを覚えることは難しいですが、株主総会を開催するのに手間も費用もかかります。あらかじめ、株主総会決議が必要な事項、その中でも特別決議が必要な事項のうち基本的なものについては押さえておくとよいでしょう。
なお、役員(取締役、会計参与、監査役)の選解任については、基本的には特則普通決議ですが、監査役の解任は特別決議を要する点には留意する必要があります。
決議要件 | 決議事項 |
---|---|
普通決議 (309条1項) |
|
特則普通決議 (341条) |
|
特別決議 (309条2項) |
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特殊決議 (309条3項) |
|
特別特殊決議 (309条4項) |
非公開会社における株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の定め(109条2項)についての定款変更(当該定款の定めを廃止するものを除く) |
株主全員の同意 |
|
(参考:相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』263頁(商事法務、平成18年))
※表中、カッコ内は会社法の条番号
※太字は留意事項
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2017年12月1日:1.株主総会決議の種類の<株主総会の定足数・表決数>のうち、特殊決議の表決数の原則の記載を修正いたしました。
2021年3月1日:「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)の施行にあわせ、記事を通して加筆・改訂いたしました。
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定款において、普通決議の定足数を排除している会社は多数に上りますが、特則普通決議を行うべき役員の選解任について別段の定めを設けていない会社もあります。このような会社については、役員の選解任決議に関する限り、定足数を1/3にまで軽減したものと解釈されます(上柳克郎ほか『新版 注釈会社法(6)』43頁〔今井潔〕(有斐閣、昭和62年)、酒巻俊雄ほか『逐条解説会社法 第4巻 機関・1』337頁〔奥島孝康〕(中央経済社、平成20年))。したがって、普通決議の定足数を排除する旨の定款の定めのある会社であっても、役員の選解任決議につき、1/3という定足数に満たなかったときは、当該決議が取り消される可能性があります(会社法831条1項1号)。 ↩︎

弁護士法人プラム綜合法律事務所
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