法務初心者のための契約書作成・レビューのポイント
第4回 取引基本契約のレビュー 検査・契約不適合責任条項のポイント
取引・契約・債権回収
シリーズ一覧全7件
目次
売買取引基本契約の概要、全体像についてはこちらの記事で解説しています。
部品・半製品メーカーのA社(非上場・資本金5億円)と、完成品メーカーのB社(上場)は、これまで注文書と注文請書で少量の売買取引をしていました。しかしこの度、取引量が増えることが予想されたため、取引基本契約を締結することになりました。
A社は多数の種類の部品〔・半製品〕を取り扱っており、かつ、部品〔・半製品〕の品質・精度について定評があります。B社はA社の扱っている部品〔・半製品〕を定期的に購入して、トレーニング(健康)器具の製造に用いて、量販店等に販売をすることを予定しています。
B社に新卒入社して法務部に配属されたCさんは、上司から、この取引基本契約の作成を依頼されました。
検査条項の意義とレビューのポイント
企業間の売買契約においては、売主による対象製品の納入後、買主による製品の「検査」が予定されていることが多く見受けられます。
検査の具体的内容(基準)、検査を行う期限、契約不適合が見つかった場合の通知および売主に求めることができる対応・売主の責任等について、契約関係書類(取引基本契約、個別契約またはその他の書類)に記載しておくことが望ましいです。
条項例1
第◯条(検査)
1 買主は、売主による本製品の納入後、〔遅滞なく〕OR〔◯〕日以内に、〔◯◯で定めた〕OR〔買主売主間で協議して合意した〕方法に従って、本件製品の種類、品質および数量について、受入検査を行い、合格したものを検収する。
2 前項に定める検査の結果、本製品に種類、品質または数量に関して本契約の内容に適合しないものがあった場合には、買主は、〔◯〕日以内に〕OR〔合理的期間内に〕その内容を売主に通知するものとする。
3 前項の場合、買主は、何ら催告を要せず直ちに買主の選択に基づき、売主に対し、返品、商品交換、修補、追加納品、代替品の納入または商品の代金減額を求めることができる。
ただし、検査の具体的内容(基準)について、取引基本契約で定めるか、個別契約に譲るか、別途定めることとするか等は、製品の種類・性質、取引基本契約で複数の製品を扱うことが想定されているか等にもよります。たとえば、複数の性質の異なる種類の製品を扱うことが想定される場合で、かつ、取引基本契約にあらかじめ一律の内容を記載しにくい場合には、個別契約や取引関係資料にて記載することが考えられます。
契約不適合責任の概要
契約不適合責任条項の意義とレビューのポイント
検査不合格の場合に、買主が売主に対して条項例1のような対応を求めることができるのは、民法上、売主が「契約不適合責任」1 を負うと規定されているからです。
契約不適合責任とは、目的物が契約の内容に適合しないものである場合に、売主が、買主に対し、目的物の修補、代替物または不足分の引渡しによって、履行の追完(欠けているものを備えさせること)等を行う責任のことです(民法上の規定については2−2で詳しく説明します。)。
検査に関する規定と契約不適合責任に関する規定は相互に関係することから、別条項で定める場合には、両者の関係がどのようになっているか意識しておくことが望ましいです。
参考までに、以下の条項例2では、契約不適合責任で扱う責任が、比較的短期間で行われる検査時では発見できないものを扱うものであることがわかる記載を紹介しています。これについて、さまざまなアレンジがありえます。また、損害賠償請求に関する条項との整合性にも留意が必要になります(これについては、損害賠償に関する条項の解説回で説明します。)。
条項例2
第◯条(契約不適合責任)
買主に納入された本製品に、第◯条で定める検査において発見できない契約不適合 2 があった場合、当該製品の買主に対する納入から〔6か月〕OR〔1年〕以内に、買主が当該不適合を発見し、かつ、その内容を売主に対して発見後〔速やかに〕〔遅滞なく〕OR〔◯営業日以内に〕通知したときに限り、第◯条第◯項(検査)に準じて、売主は、買主の選択する方法に従い、返品、商品交換、修補、追加納品、代替品の納入または商品の代金減額の対応をするものとする。〔なお、本条の請求は、買主による損害賠償請求を妨げないものとし、これについて第◯条(損害賠償)に従うものとする。〕
契約不適合責任に関する民法および商法の規定は基本的には任意規定ですので、契約条項は、民法や商法の規定の内容と異なるものであっても、原則として、契約当事者間で自由に決めることができます 3。
契約不適合責任に関する条項が契約書に記載されていない場合には、法律の規定の適用が排除されていない限り、法律の規定どおりの権利義務が発生することになります。ただし、法律の規定どおりでよいということであっても、両当事者が契約書上でお互いの権利義務を把握できるようにしておくことが望ましいので、実務においては、その内容を一定程度契約書に明記しておくことが多いと思われます。
以下では、民法と商法において、契約不適合責任についてどのように定められているか、概要を解説します。「検査」「契約不適合責任」条項を検討する際の前提として必要な知識ですので、ぜひ理解しておいていただきたいと思います。
民法における規定
民法における契約不適合責任に関する定めについて、契約書レビューを行ううえで理解しておくべき基本的事項の例は、おおむね次のとおりです。
- 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる「履行の追完」を請求することができる(民法562条)。
- 売主は、買主に不相当な負担を課すものでなければ、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることができる(民法562条1項ただし書)。
- 買主が相当の期間を定めて履行の追完を求めたのに、売主がその期間内に追完しないときは、買主は、その不適合の程度に応じて、代金の減額を請求することができる(民法563条1項)。例外として、履行の追完を求めることなく減額請求ができる場合もある(民法563条2項)。
- 買主は、売主に対して、契約の解除や損害賠償を請求することもできる(契約不適合責任は債務不履行責任の一種であるため)。
- 契約不適合責任に関する請求期限は、買主がその不適合を知った時から1年以内 4 に不適合の内容を売主に通知することが必要(民法566条)。
- 目的物の引渡しの時点で、不適合があることについて売主が「悪意・重過失」である(知っていた、またはわずかな注意をはらえば容易に不適合を認識できたはずなのに見過ごしていた 5)場合には、上記の期間制限は適用されない(民法566条ただし書)。
商法における規定
民法が一般的なルールであるのに対して、商法は、「商人」6 間の行為等に特別に適用されるルールです。民法と商法の双方に規定がある場合には、民法よりも商法が優先されます 7。商法に規定がない事項については民法が適用されることになります。
商法における契約不適合責任に関する定めについて、契約書レビューを行ううえで理解しておくべき基本的事項の例は、おおむね次のとおりです。
- 商人間の売買において買主は、売買の目的物を受領したときは、その目的物を遅滞なく検査しなければならない(商法526条1項)。
- 買主が検査により、売買の目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、売主に対して直ちにその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができない(商法526条2項前段)。
- 買主が検査により、売買の目的物が種類または品質 8 に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見できない場合であっても、6か月以内に発見 9 して、②と同様に直ちに 10 通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができない(同項後段)。
- 上記の期間制限は、売買の目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が「悪意」であった(知っていた)場合には、適用しない(商法526条3項)。
民法と商法の比較
上記のとおり、民法上、商法上ともに、契約不適合責任の請求期間には制限があります(民法⑤、商法③)。
特に、商人間では、検査で不適合を知った場合には、不適合について売主に直ちに通知をしないと、救済が受けられなくなるとされています(商法②)。商人間の場合はさらに、検査で直ちに発見できない不適合でも、納品後6か月以内に発見し、不適合について直ちに通知をしないと、救済が受けられないとされています(商法③)。
以下では、これらの原則を踏まえて、買主・売主それぞれの視点からどのようなアレンジがありえるか、検討していきます。
買主が検査・契約不適合責任条項を修正する際のポイント
期間制限
買主としては、取引基本契約において、自社の利益を保護する観点から、たとえば、納品の際の検査(売主への通知期限)に必要な期間に余裕を持たせること(条項例1の第2項において通知期間を長めに設定する等)や、契約不適合責任を請求できる期間を法律の定めよりも延長すること等が考えられます。
請求期間を延長する記載とする場合等においては、以下の事項を明確にしておく必要があります。
- 契約不適合の発見までの期間を延ばしたのか
- 発見後の通知期限を延ばしたのか
- 具体的な請求の期限について定めたのか
条項例2の修正例1は①の形式で、不適合発見までの期限を引渡し後6か月以内よりも延ばす(たとえば引渡し後1年以内とする)場合の記載例です。
また、②の形式として、不適合発見後の通知期限について、余裕を持った設定を検討することも考えられます(条項例2の修正例1のように、通知期間を「遅滞なく」とする、または具体的な日数を長めに設定する等)。期間については、製品の性質(不適合が見つけやすいか等)、用途(第三者への損害の拡大の可能性等)、取引の相手方との関係(力関係等)等を考慮して定めます。
第◯条(契約不適合責任)
買主に納入された本製品に、第◯条で定める検査において発見できない契約不適合があった場合、当該製品の買主に対する納入から1年以内に、買主が当該不適合を発見し、かつ、その内容を売主に対して、発見後〔遅滞なく〕OR〔◯日営業日以内に〕通知したときに限り、第◯条第◯項(検査)に準じて、売主は、買主の選択する方法に従い、返品、商品交換、修補、追加納品、代替品の納入または商品の代金減額の対応をするものとする。〔なお、本条の請求は、買主による損害賠償請求を妨げないものとし、これについて損害賠償について定める第◯条に従うものとする。〕
なお、買主の視点からは、民法の規定のように、契約不適合責任の請求期間について(引渡しからの期間を基準とせず)たとえば条項例2の修正例2のように、「契約不適合が判明した日から1年以内に不適合の内容を通知する」といった条件のみを規定にすると有利です。しかし、責任の追及が長期間になり得る 11 こと等から、売主が受け入れることは困難な場合があります。
第◯条(契約不適合責任)
買主に納入された本製品に、第◯条で定める検査において発見できない契約不適合があった場合、契約不適合が判明した日から1年以内に通知したときに限り、第◯条(検査)に準じて、売主は、買主の選択する方法に従い、返品、商品交換、修補、追加納品、代替品の納入または商品の代金減額の対応をするものとする。〔なお、本条の請求は、買主による損害賠償請求を妨げないものとし、これについて損害賠償について定める第◯条に従うものとする。〕
また、その他にも、請求期間に関して、前述のとおり売主が契約不適合を知っていた場合には、期間制限が適用されない場合がありますので、次のように、その旨を契約に明記しておくことも考えられます。
第◯条(契約不適合責任)
(1 略)
2 売主が引渡し時にその契約不適合を知り、または、重過失により知らなかったときは、上記の期間制限にかかわらず、前項の規定に準じて、買主の選択する追完等の請求ができるものとする。
追完の方法の指定や催告の設定
上記2−1(民法②)で述べたとおり、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができるとされていますので、買主の視点からは、指定した方法と異なる方法での追完を認めないことを明記しておくことが考えられます(かかる趣旨を明確化するために、条項例2の「買主の選択する方法に従い」の部分をさらに修正し、買主に不相当な負担を課すものでないときでも買主の選択する方法に従う必要がある旨を明記することが考えられます。)。
また、上記2−1(民法③)で述べたとおり、買主が代金の減額を請求するには、相当の期間を定めて履行の追完を催告する(求める)ことが必要な場合がありますので、買主の視点からは、買主として催告なしで代金減額請求ができる旨を定めておくことも考えられます(条項例1の第3項)。
品質保証条項や表明保証条項との関連
買主としては、契約不適合となる場合を明確化しておくため、品質保証や表明保証等の条項を用いて、契約における合意内容(製品の性質、性能、安全性、法令遵守、第三者の権利への非侵害等)を明確化しておくことがあります。
以下はその「項目」の例です。実際の条項はもう少し詳細な記載をします。また、第三者の権利への非侵害や、安全性等について、単独の条項で記載する建付けもよく見受けられます。
- 関連する法令、ガイドライン等を遵守した製品であること
- 製品が、買主が売主に対して求めた仕様等が記載されている資料の内容に合致すること
- 買主による製品の使用目的へ適合すること
- 製品が、売主が提出した製品の仕様、規格等が記載された資料の内容に合致すること
- 製品に欠陥その他の安全上の問題がないこと
- 製品が第三者の知的財産権を侵害していないこと
なお、保証の期間や保証への違反についての効果を定める条項が、契約不適合責任や損害賠償責任に関する条項等との関係で問題がない書き方になっているかの確認をすることも重要です。
また、上記に加え、買主として、製品の品質確保を十全なものとするために、たとえば、次のような条項を設けることも検討する場合があります。
- 売主に品質管理体制の整備や維持を課す条項
- 製品に品質上の問題が発生した場合の、売主の調査・報告義務を定める条項
- 品質管理体制への買主の調査・監査権(生産現場の確認、生産関係資料の確認、人員への聴き取り調査)を定める条項
- 売主が本製品の品質に影響を及ぼしうる原材料、製造法等について重要な変更を行う場合の、買主への通知義務等を定める条項
売主が検査・契約不適合責任条項を修正する際のポイント
期間制限
売主としては、納品の際の検査について、検査期間や通知までの期間を比較的短くすることや、(検査合格後も一定の場合には契約不適合責任を請求できる建付けでも)契約不適合発見に関する通知期間を製品の引渡し後を起点とし短い期間に制限することが考えられます。
これらに加えて、次の第2項のように、買主が検査実施および結果の通知を怠っていた場合には、検査合格とみなす旨の規定を設けることを検討することも考えられます。
条項例1の修正例1
第◯条(検査)
1 買主は、売主による本製品の納入後、〔遅滞なく〕OR〔◯〕日以内に、〔◯◯で定めた〕OR〔買主売主間で協議して合意した〕方法に従って、本件製品の種類、品質および数量について、受入検査を行い、合格したものを検収する。
2 前項に定める検査の結果、本製品に種類、品質または数量に関して本契約の内容に適合しないものがあった場合には、買主は、〔◯〕日以内に〕OR〔合理的期間内に〕その内容を売主に通知するものとする。前項の検査について、前項の定める期間内に、本項の通知をしない場合には、当該製品は、買主の検査に合格したものとみなす。
3 本契約の内容に適合しない旨の通知を、前項に従って行った場合、買主は、何等催告を要せず直ちに買主の選択に基づき、売主に対し、返品、商品交換、修補、追加納品、代替品の納入または商品の代金減額を求めることができる。
追完の方法の指定や催告の設定
検査の結果、不合格品が確認されたとしても、(複数納入された)対象製品の大部分が契約の内容に適合(合格)していた場合には、合格した範囲について適正な履行があったものとみなし、不合格部分についてのみ代金の減額の対応をするという扱いを検討することも考えられます。
条項例1の修正例2
第◯条(検査)
(1〜3 略)
4 検査の結果不合格になった製品があった場合でも、合格した製品の割合が、当該個別契約に係る取引のうち、〔◯〕割を超える場合には、当該合格した範囲において、適正な納品がなされたものとみなし、〔買主は、〕OR〔買主と売主は協議し合意のうえ、〕不足分について代金の減額の措置をとるものとする。
さらに、売主としては、検査不合格の場合への対応内容を限定することも考えられます。たとえば、数量不足への対応、不良品の交換のみを行う等に限定することや(条項例1の修正例3)、追完方法の選択権を売主が持つ旨を定めることを検討することも考えられます。
加えて、条項例1の修正例3では、検査不合格への対応完了をもって、これ以上契約不適合責任を負わないとのアレンジをする場合の一例も示しています。ただしこれは、一般的には、買主が受け入れるにはハードルが高い内容と考えられます。
条項例1の修正例3
第◯条(検査)
(1および2 略)
3 前項において検査不合格の通知が買主から売主になされた場合、売主の対応は、数量不足の場合は不足分の納品、その他契約不適合品がある場合はその製品の無償交換に限られるものとし、売主はかかる対応の完了によって、その他一切の契約不適合責任を含む債務不履行責任を免れるものとする。
次回は、「所有権の移転」「危険負担」条項について、意義とレビューのポイント、修正例を解説します。
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なお、現行民法の施行前(2020年3月まで)は、契約不適合責任ではなく瑕疵担保責任の定めがありました。瑕疵担保責任の下では、瑕疵の範囲は、契約締結までの隠れた瑕疵(すなわち買主が瑕疵について善意・無過失であること)・原始的(製品にもともと存在していたという意味)瑕疵が想定されていました。しかし、現行法における契約不適合責任は必ずしも買主の善意・無過失は必要ではなく、かつ、引渡しまでの不適合の存在へと変更されました。
また、瑕疵担保責任においては、信頼利益(簡単にいうと、瑕疵を知らなかったことによって買主が受けた損害)の賠償でしたが、契約不適合責任においては債務不履行責任の一種なので、履行利益(簡単にいうと、本来履行されていれば得られていたと予想される利益まで含む)の賠償も含まれます。 ↩︎ -
なお、民法においては、数量が不足していることは外見上明らかなので、数量に関して契約に適合しない場合は、民法566条の期間制限の対象となっていません(筒井健夫=村松秀樹『一問一答民法(債権関係)改正』(商事法務、2018)284頁)。契約書においては、明確化のため、数量不足に関する契約不適合について期間制限にかからない旨を明記することもあります。一方で、契約書において、数量不足について検査時に判明した場合のみ請求できる旨(検査合格後は請求できない旨)を記載することも選択できます。 ↩︎
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ただし例外もあり、たとえば、民法572条においては、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実等については、その責任を逃れられない旨が規定されていることに留意が必要です。なお、宅地建物取引業法、消費者契約法、住宅の品質確保と促進等に関する法律において、担保責任を強制される場合もありますが、本稿では直接関連しないことから、これら3つの法律の説明は割愛させていただきます。 ↩︎
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前述のとおり数量不足には期間制限は課されていません。 ↩︎
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正確さよりわかりやすさを優先し、あえて簡略化して記載しています。重過失の定義は複数あります。 ↩︎
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自己の名をもって商行為をすることを業とする者(商法4条)を指します。 ↩︎
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商法のみに規定があるものもあります。 ↩︎
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数量に関しては、商法526条2項後段において触れられていません。弥永真生『リーガルマインド商法総則・商行為法〔第3版〕』(有斐閣、2019)105頁は、数量に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合は、6か月以内に発見して直ちに通知すれば権利を失わないとしています。また、大塚英明=川島いづみ=中東正文=石川真衣『商法総則・商行為法〔第3版〕』(有斐閣、2019)224頁は、通説は、受取時に検査しても発見できない数量不足について526条後段を適用しているようであるとしています(ただし、かかる解釈は文言の範囲を超えているとし、526条2項前段をゆるやかな形で類推適用するべきと述べています。)。
一方、青竹正一『商法総則・商行為法』(信山社、2019)223頁では、商法526条2項後段について、「数量について契約不適合がある場合を除外している。数量不足は、不足分の引渡しにより善後策を講ずることは容易であり、迅速結了の要請に応じて売主の保護を図る必要はあまりないからである。」と述べています。 ↩︎ -
6か月以内に契約不適合を発見できなかったときは、買主は救済を受ける権利を失うというのが、通説とされています(前掲注10)大塚ほか223頁)。 ↩︎
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発見が6か月以内でかつ「直ちに」であれば、通知の発信自体は6か月を過ぎていてもよいと解されています(田邊光政『商法総則商行為〔第4版〕』(新世社、2016)230頁、弥永真生『リーガルマインド商法総則・商行為法〔第3版〕』(有斐閣、2019)105頁等)。なお、「直ちに」とは、即座にという意味ではなく、可及的速やかにとの意味であり、発見と通知との間に多少の日時の間隔があってもよいとされています(弥永106頁、田邊232頁)。 ↩︎
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すなわち、適正な通知によって保存された権利は、消滅時効(簡単にいうと、債権が長期間行使されない場合に、その事実状態を尊重し、債権を消滅させる制度)にかからない限り請求ができます。物の種類・品質における不適合を理由とする権利は引渡しから10年、または、不適合を知ったときから5年という、二重の時効期間の適用があるとされており(潮見佳男=千葉惠美子=片山直也=山野目章夫編『詳解 改正民法』(商事法務、2018)435頁)、その間は処理が確定しないことになります。 ↩︎
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