法務初心者のための契約書作成・レビューのポイント
第7回 取引基本契約のレビュー 知的財産権と再委託に関連する条項のポイント
取引・契約・債権回収
シリーズ一覧全7件
売買取引の中で注意すべき知的財産権の取扱いについて、取引基本契約においてどのように規定すべきでしょうか。この記事では、改正民法による変更点も踏まえ、買主・売主それぞれの視点からわかりやすく解説します。
取引基本契約の全体像、概要についてはこちらの記事で解説しています。
部品・半製品メーカーのA社(非上場・資本金5億円)と、完成品メーカーのB社(上場)は、これまで注文書と注文請書で少量の売買取引をしていました。しかしこの度、取引量が増えることが予想されたため、取引基本契約を締結することになりました。
A社は多数の種類の部品〔・半製品〕を取り扱っており、かつ、部品〔・半製品〕の品質・精度について定評があります。B社はA社の扱っている部品〔・半製品〕を定期的に購入して、トレーニング(健康)器具の製造に用いて、量販店等に販売をすることを予定しています。
B社に新卒入社して法務部に配属されたCさんは、上司から、この取引基本契約の作成を依頼されました。
知的財産権の帰属
条項の意義
既製品をそのままの形で売買する場合ではなく、買主の仕様や要求事項に合わせるために、売主・買主間で情報共有をしつつ、既存の製品について一定の変更を加える場合には、その過程で新たに発明等が生じる場合も考えられます。
発明等が生じると、これに関わった者は法律上どのような立場となるでしょうか。たとえば、発明が生じた場合、発明者は発明に係る特許を受ける権利(簡単にいうと、特許出願して特許権を取得する権利)を取得します。発明者とは、当該発明(技術的思想)の創作行為に現実に関与した者を指し、一般的な助言・指導をしたにすぎない者、補助者、資金提供者等は含まれないとされています。
技術的思想の創作に現実に貢献した者と認められるか否かについては、経済的貢献の度合いとは一致しないうえ、発明者の基準も必ずしも明確なものとはいえません。そのため、当事者間で、誰が発明者となるか等に関し、認識にずれが生じる場合があります。
そこで、当該発明等に関する権利の帰属、利用、またはそれらの決め方に関する規定を取引基本契約に置いておくことで、後日の売主・買主間での争いを防止することも考えられます。
第◯条(知的財産権の帰属)
買主および売主は、本契約、個別契約、本件製品に関して、相手方から開示された資料、図面、データ等を含む一切の技術情報に基づいて新たに発明、考案、意匠の創作、著作物の創作、ノウハウの創出等(以下「発明等」という。)をなした場合には、相手方に対して速やかにその内容を通知し、当該発明等に関する知的財産権およびその他法律上保護される利益に係る権利の帰属、当該発明等の利用、ならびに、その他取扱いに関して、当該発明等に対する両者の貢献の内容・程度等を考慮しつつ両者誠実に協議のうえ定める。
条項例1は、相手方に新たに生じた発明等の内容を開示したうえで、当該発明等に対する両者の貢献の内容・程度等を考慮しつつ両者で協議のうえ、帰属や利用等を定めるといった、ごくシンプルなプロセスを記載した規定を紹介しています 1。
なお、実際に一定の期間当事者間において共同研究・共同開発が行われ、新たな知的財産が生じる可能性が高いような場合には、取引基本契約における上記のような条項に頼ることなく、別途、共同研究(開発)契約を締結し、当事者の役割、費用分担、成果の帰属・利用等に関して明確な定めを置くことを検討することが望ましい場合も考えられます。
修正の視点・検討
(1)秘密保持の視点
条項例1においては、新たに生じた発明等について、相手方に対してその内容を通知することになっていますが、新たに生じた発明等の内容が第三者に知られることが、当事者の不利益になりえます。
たとえば、発明について特許を取得しようとする場合、新規性の要件を満たしている必要があります。新規性とは、誤解をおそれず簡単にいうと、特許出願時に、不特定の人が公然と知りうる状態になっておらず(例:当該発明の内容が守秘義務等を負っていない者に知られていない)、かつ、公然と使用されていない新しいものであることを意味します。そのため、契約上、当該新規性を失わないような手当てをしておく必要があります。
そこで、通知する内容(発明等の内容)が、秘密保持条項等における秘密保持の対象となるように、条項の調整をしておくことも重要と考えられます 2。
(2)職務発明等に対する対応
条項例1に基づいて、新たに生じた発明等に関する知的財産権等の帰属に関して、当事者間で協議が整った場合でも、その協議内容の実現に支障が生じないかの確認・対応が必要になりえます。
たとえば、発明については、法律上、原則として発明者である自然人が、特許を受ける権利を取得することになっています。ただし、当該発明が、その自然人の職務としてなされたものである場合(職務発明の場合)、当該自然人に適用される勤務規則や契約等 3 においてあらかじめ使用者に特許を受ける権利を取得させる旨を定めておくと、使用者が当該特許を受ける権利を取得することができます 4(特許法35条3項)。
すなわち、上記のような勤務規則や契約等における手当てがなされていない場合、条項例1に基づいて協議し、新たに生じた発明に関する特許を受ける権利の帰属先を売主または買主のどちらか(または共有)に定めても、そのとおりに帰属させることに支障が出る場合がありえます。
そこで、相手方が勤務規則や契約等において、職務発明等に関する整備をしていない場合に備え、たとえば、次のように、その整備を義務付ける旨を定める場合がありえます。なお、これに加えて、社内規程に基づいて適正に権利関係の処理(役職員等からの権利の取得、承継等)を、自己の費用と責任で行う旨を加筆することも考えられます。
第〇条(社内規程等の整備)
甲および乙は、第〇条第〇項に定める、発明等に関する知的財産権やその他の権利の帰属の協議・協議結果の実行に支障が生じないように、その役職員がなした発明等に係る権利の取得・承継について、社内規程〔・役職員との間の契約〕等を整備する。
(3)その他の留意事項
条項例1とは異なり、一定の分野・範囲の知的財産権等を、売主または買主のどちらかの帰属(または共有)とすること等を事前に定めることも考えられます 5。その際、自己の事業のコア部分に係るものや、売買契約の目的を達成するうえで不可欠なものが何かを考慮して線引きをすることが重要です。
なお、共有とする場合には、共有者の同意を得なければできない事項が生じることにも留意が必要です。たとえば、契約上別段の定めがない場合、特許発明については、自己実施(簡単にいうと発明を自ら利用すること)は共有者の同意なくできるものの、第三者への実施許諾(ライセンス)や持分の譲渡をするには、共有者の同意が必要になります。そこで、共有となった場合の利用条件等がどうなるかについても検討しておくことが望ましいです 6。
また、当事者間で新たに生じた発明等に関する知的財産権等の帰属主体について合意することが難しい場合、権利帰属については譲りつつ、新たに生じた発明等の利用に関して、自己のビジネス目的を達成できるような範囲・内容で実施・使用する権利を確保することを目指して交渉することも考えられます。
知的財産権侵害の場合の対応
第〇条(権利侵害への対応等)
1 売主は、〔本契約締結時および契約期間中において〕、本件製品に関し、第三者の保有する特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標権、その他の知的財産 7に関して法令により定められた権利または法律上保護される利益に係る権利(出願中のものも含み、以下、本契約において「第三者知的財産権」という)を侵害していないことを保証する。
2 本件製品に関して、第三者が、第三者知的財産権を侵害しているという主張をし〔買主または売主〕に対し請求、訴訟提起、その他法的手続の申立てがある場合は、相手方に対して、その内容を通知し、対応方針を協議する。
3 売主は、その費用と責任において、第2項の請求等に係る紛争を解決する。なお、買主が第三者からの請求等によって費用や損害を被った場合には、売主はこれを補償する。
条項の意義等
売買契約における対象製品の売買等が、第三者の特許権といった知的財産権等を侵害している場合、または、侵害していることを疑わせる場合に、第三者から、当該対象製品の売買・転売の差止め、廃棄、損害賠償請求や訴訟提起等を受ける可能性があり、その場合の対応を取引基本契約において定めておくことも重要です。
前提の説明になりますが、契約不適合責任の中に、第三者の知的財産権の非侵害が含まれるかという法的論点があります。つまり、本稿の想定事例でいうと、対象製品が第三者の知的財産権を侵害していた場合に、売主に対して、契約不適合責任(改正前民法における瑕疵担保責任)の追及ができるかという論点です。
学説では、肯定するほうが比較的多数とされているようですが 8、判例上必ずしも明確ではなく、2020年4月1日に施行された改正民法(平成29年法律第44号)によっても、上記状況について特段の変更はありませんでした。
取引基本契約においては、後日の紛争を防止するため、第三者の知的財産権に対する権利侵害が生じた場合に関する当事者の責任の有無、内容、違反の場合の効果について定めておくことが望ましいと考えられます。
修正の視点・検討
(1)表明保証の範囲、内容
一般論ですが、買主は、売買取引前に自ら対象製品に関し、第三者の保有する知的財産権の侵害可能性について、コストをかけて調べることは困難であることが多いと考えられます。
そこで、買主としては、対象製品の売買等の差止請求や損害賠償請求等を受けることで、対象製品を用いた事業に支障が出る場合の備えとして、対象製品の売買等が第三者の保有する知的財産権を侵害していない旨の保証を売主から取得し、その違反があった場合には十分な補償が受けられる規定を設けることが望ましいと考えられます。
たとえば、第三者の保有する知的財産権等への侵害が、契約締結時のみならずその他の期間も一切ない旨を保証するような、表明保証の範囲・内容にできるだけ制約がつかない規定を設けることが望ましいと考えられます。
一方、売主としても、第三者の保有する知的財産権等に対する侵害可能性について調査を完全に尽くすことは必ずしも容易でない場合も多く、売主が、買主が求めるような完全な表明保証をすることに消極的なことが少なくありません。
売主としては、たとえば、第三者の保有する知的財産権等の非侵害を正面から表明保証する旨の文言を避け、第三者の保有する知的財産権等への侵害が生じないよう注意する義務を負う(一定の調査義務を負う)ことに留めることも考えられます。なお、その場合、注意義務を尽くす程度を示す表現をどのようにするかも交渉の対象となります 9。
また、たとえば、第三者の保有する知的財産権等の非侵害に関する表明保証をする場合でも、次のように、範囲・内容を限定する例も見受けられます。
- 第三者の保有する知的財産権等の非侵害について、「〇〇の知る限り」、「〇〇の知りうる限り」といった限定(ナレッジクオリファイヤーと呼ばれる)を付すこと。
- 表明保証の対象を、侵害の有無ではなく、侵害がある旨の通知を第三者から受け取っていないこと、第三者からの訴訟等の提起がないことに限定すること。
なお、「第4回 取引基本契約のレビュー 検査・契約不適合責任条項のポイント」の3-3(品質保証条項や表明保証条項との関連)で述べたように、買主としては、品質保証や表明保証等の条項において、合意内容(第三者の保有する知的財産権等の非侵害等)を明確化している場合や、その他の責任や損害賠償に関する条項に関連規定がある場合には、本稿の知的財産権に関する規定と矛盾・重複しないように調整する必要があります(次項(2)に関する規定も同様です)。
(2)表明保証違反の効果、補償の内容
契約実務においては、表明保証の内容を明確化するだけでなく、その違反が生じた場合の効果、すなわち、どのような補償が与えられるのかを、契約書上明確化しておくことが重要です。
買主としては、第三者の保有する知的財産権の侵害を理由に、対象製品の売買等の差止請求や損害賠償請求等を受けることで、対象製品を用いた事業に支障が出る場合、その影響は、事業実態に応じて、買主の社内のみならず、その取引先等にまで波及しえ、その対応のため、さまざまな損害・負担を負う可能性があります。
そこで、売主から十分な補償を得られるようにするため、補償の対象となる損害や費用の範囲・金額を限定されない条項とすることが望ましいです。また、取引先への対応費用や合理的な弁護士費用等といったものが対象となることを明記することが望ましいと考えられます。
一方、売主としては、補償の範囲、金額を限定する等の対応をとることや、補償をする場合の条件を厳格化するといった対応が見受けられます。
たとえば、逸失利益、間接損害など特定の事項を補償の対象から除くことや、補償金額の上限を設けるといった対応をとる例が見受けられます 10。また、第三者からの請求等について、買主側の帰責事由(故意等)がある場合に補償を制限する旨を定めることや、買主から対象製品の設計・仕様についての具体的な指示がありこれに起因して第三者の保有する知的財産権等の侵害が生じている場合には、補償を制限する旨を定める例も見受けられます。
なお、買主としては、対象製品やこれに関する知的財産権についての業界知見等を製造者である売主側が保有していること等を主張し、補償されない範囲を限定するための交渉を行うこともありえます。たとえば、売主が一定の調査をすれば侵害が容易に判明しうる場合には、上記の買主の指示にかかわらず補償がなされる旨の規定とすることが考えられます。
(3)解決に関する条件・規律等
第三者の保有する知的財産権等の侵害を理由として、第三者と紛争になった場合、製品の機能・構造・製造方法等についての情報を、買主よりも売主が多く保有していると考えられることから、買主だけでは十分な防御活動ができない可能性も考えられます。
そこで、買主としては、紛争解決に際して、売主の買主に対する情報提供やその他の協力義務や、協力する際の費用負担に関する条項を設けることも望ましいと考えられます。
一方で売主としても、買主から、対象製品の事業での使用状況(取引先への販売状況含む)等に関する情報提供やその他の協力を得ることも重要ですので、買主側のこれらに関する義務を定める条項を設けることもあります。
特に、売主の責任・費用で紛争を解決し、買主の費用・損害を売主が全面的に補償することとなっている場合には、買主の売主に対する紛争の内容・手続状況の報告義務を定めること、買主と第三者との間で安易な和解等がなされないように(買主が、売主に損害を転嫁すればよいという前提で考える可能性があるため)、紛争解決の方針(防御や和解等の方針)について実質的に売主が影響を及ぼせる(管理できる)ような建付けとすること等が望ましいと考えられます。
第◯条(権利侵害への対応等)
〇 (略)
…
〇 売主は、(次の条件が満たされる場合には)第三者知的財産権の侵害を理由に第三者からなされた請求や訴訟等を自己の責任と費用で防御し、当該請求や訴訟等の解決や買主に対する終局判決の内容に基づき支払いをなす。
- 買主への請求、訴訟等の内容・状況について、買主は速やかに売主に通知すること
- 請求、訴訟等への防御、和解等のすべての交渉について売主の意思が実質的に反映されていること
- 買主が防御、和解等において、合理的な範囲で協力すること
一方で、買主としては、紛争の状況を把握しつつ、紛争解決の方針・内容が買主に不利な内容(買主の責任を認める等)とならないようにする必要が生じえます。
そこで、次のような条項を設け、紛争解決に買主の意向が反映される余地を残すことも考えられます。また、さらに進めて、解決方針(和解等)について、買主の同意を必要とするといった建付けが見られることもあります。
第◯条(権利侵害への対応等)
〇 (略)
…
〇 第三者からの請求や訴訟等の状況について買主の求めがある場合には、売主は速やかにこれを報告し、また、紛争解決の重要な方針については、売主は、買主に事前に説明をした上で、買主の意向を尊重しなければならない。
再委託
第◯条(再委託)
1 売主は、事前の買主の書面による承諾がない限り、本契約および個別契約の履行に係る業務を第三者に委託してはならないものとする。
2 売主は、前項の定める事前の買主の書面による承諾がある第三者への委託の場合においても、本契約で自己が負うのと同等の義務を当該第三者にも負わせ、これらの業務の実施に係る一切の行為に関して、売主がなしたものとして、買主に対して一切の責任を負うものとする。
条項の意義
買主は、売買契約の相手方である売主自身 11 の技術力・生産能力・信用力等を見込んで、取引先として選定している場合が比較的多くみられます。また、売主から第三者への再委託に際して、買主の営業秘密等の漏洩リスクが生じることを懸念することもあります。
そこで、買主としては、売主による再委託について、買主の同意を要するとの建付けを希望することが比較的多くみられます。
一方、売主としては、コスト管理、製造キャパシティの調整等のため、製造を第三者に委託する必要が生じます。実際、複雑な製品であればあるほど、委託先を利用せずに、売主のみで製造体制を成り立たせることが合理的でない場合も多く見受けられ、売主として、再委託をする自由を一定程度確保する必要が生じます。
かかる利害関係の調整のため、取引基本契約において、再委託を原則として許すのか否か、許す場合の条件はどうなるのか等を明確化しておくことが必要となります。
修正の視点・検討
(1)再委託に関する同意、通知関連の考慮事項
買主としては、売主が再委託をする場合には、売主に再委託先に関する情報を提供してもらい、買主による書面による同意がない限り、再委託ができないとする建付けを選択することが、買主の利益保護(秘密保持の観点を含む)の観点からは望ましい対応です。
一方で、売主としては、再委託先を行う場合に、逐一これを報告し、買主から書面の同意を取得することになると、場合によっては、スムーズな業務遂行に支障が生じえます。そこで、再委託が原則として自由にできる旨の規定を求めることを希望することがあります。
それが難しい場合には、買主の書面による同意が必要との建付けを維持しつつも、買主は合理的な理由がない限り同意を拒否しない旨を定めるといった対応がありえます。
また、それ以外のアレンジとして、買主が売主に期待する特に重要な技術分野に関する再委託については、買主の書面同意を求めるが、それ以外は、再委託を自由とする旨を定めるといった対応もありえます 12 。
(2)再委託先に課すべき義務
売主による再委託を自由に許す場合のみならず、買主の同意を必要とする場合であったとしても、再委託先に、売主・買主間における契約と同等の契約上の義務を負わせることは重要です。
特に、売主が契約上合意している対象製品の品質を確保することのみならず、売主が負っている秘密保持義務を負わせることが重要です。これは、再委託先を通じて、買主の重要な営業上や技術上の情報が、第三者に漏洩するといったトラブルが見受けられることを考慮してのものです。
なお、再委託先が原因で生じたトラブルに関し、売主に対する責任追及を容易にするために、売主が再委託先の義務履行に全面的に責任を持つこと、場合によっては、再委託先の義務違反は売主の義務違反と同視する旨を定めるといった対応も見受けられます。
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なお、本稿では、発明、考案、意匠、著作物、ノウハウ等を記載していますが、回路配置、植物の新品種の創作等を記載している例も見受けられます。 ↩︎
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なお、ノウハウが、不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるためには、一定の要件(有用性、非公知性、秘密管理性)を満たす必要があります。特に、秘密管理性(簡単にいうと、秘密として適正に管理されていること)を確保するための体制整備が必要になりえますので、条項例1における「その他取扱い」として、当事者間で適切な取り決めをしておく必要があります。 ↩︎
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当該自然人との間の雇用契約等においてあらかじめ定めておくこともできます(特許法35条3項)。 ↩︎
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職務発明に該当するための要件は、①その企業、法人等に属する従業者等がなした発明であること、②使用者等の業務範囲に属する発明であること、③発明に至った行為が現在または過去の職務に属することです。一方で、職務発明に該当しないものを使用者に事前に帰属させる契約等は、無効とされています(特許法35条2項)。 ↩︎
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公正取引委員会が作成・開示している「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(平成29年6月16日改定が現時点での最新)においては、共同研究開発の成果である改良発明等を他の参加者へ譲渡する義務を課すことまたは他の参加者へ独占的に実施許諾する義務を課すことは、不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項とされており、これに反するような条項内容・取引実態等となっていないか等についても留意が必要ですが、本稿での詳細な説明は割愛させていただきます。 ↩︎
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なお、著作権については、著作物について、第三者への使用許諾をする場合のみならず共有者自身による利用についても、共有者の同意が必要になります(著作権法65条2項)。ただし、共有者は正当な理由なく、同意を拒んではならないとされています(著作権法65条3項)。 ↩︎
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不正競争防止法上の営業秘密や限定提供データ等を想定しています。 ↩︎
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嶋末和秀「ライセンス製品が第三者の特許権を侵害する場合におけるライセンサーの責任」山上和則先生還暦記念論文集『判例ライセンス法』183-185頁(発明協会、2000)は、「我が国の判例は、古くから、売買の目的物に特殊の法律上の制限がある結果買主の購入目的の実現が法律上不可能または著しく困難な場合には、民法570条にいう物の瑕疵にあたるとしている」とし、当該判例の流れをあてはめると、「売買の目的物が第三者の特許権その他の知的財産権を侵害するとの理由で差止や損害賠償の対象となるような場合には、民法570条の物の瑕疵として、売主の担保責任が肯定されることになるものと考えられる」と肯定説を採用しています。大阪弁護士会知的財産法実務研究会編『知的財産契約の理論と実務』383-384頁(商事法務、2007)は、ライセンス契約に基づく特許発明の実施が第三者の権利侵害となる場合に担保責任について、契約で特に定めなかった場合、特許権に関する法的瑕疵として、特許権者に担保責任を認めるのが多数説としています。 ↩︎
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一例にすぎませんが、「最大限の」、「合理的な」、「商業的に合理的な」等の表現をとることや、調査内容を定める事例がみられることもあります。 ↩︎
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なお、売主としては、法令で定められた責任よりも限定した内容の補償とする場合等には、契約書で定められた救済方法を超えて法令上の責任が適用されないように、これを排除する旨が明確になるような記載をしておくことも重要です。 ↩︎
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なお、メーカーから直接ではなく、商社から商品を購入することもあります。当該メーカーに比べ商社のほうが、財務状況が良好な場合、損害賠償等のトラブルの際の直接の相手方が商社となることで、賠償の財源が確保しやすくなるというメリットもありえます。ただし、責任追及を可能とする契約内容になっているか等にもよります。 ↩︎
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なお、上記以外の考慮要素として、再委託先に関する通知について、売主として、自己の取引先を買主に秘密にしておく必要がある場合もありえ、その場合、買主の同意取得義務や買主への通知義務を定めることが不都合となる場合もありえます。 ↩︎
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