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第5回 日本企業のためのオーストラリア現代奴隷法の対応ポイント 開示を中心に

国際取引・海外進出
木下 岳人弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

目次

  1. 豪州現代奴隷法とは何か
    1. 施行から3年後の動向
    2. 豪州現代奴隷法のポイント
  2. 報告書の開示対象となる企業(報告事業体)
    1. 金額要件
    2. 事業遂行要件
  3. 開示内容
    1. 豪州現代奴隷法における開示項目
    2. 現代奴隷に係るリスクの説明
    3. 現代奴隷に係るリスクの対処に関する説明
    4. 対処の有効性に関する評価プロセス
    5. 主要管理機関による承認と責任者の署名
  4. 開示方法
  5. グループ会社による開示(共同現代奴隷報告書)
    1. ケース①:日本法人が報告対象企業である場合
    2. ケース②:日本法人が報告対象企業ではない場合
    3. 取締役会の承認と代表取締役の署名
  6. 英国現代奴隷法との同時対応
  7. 罰則
  8. 近時の改正動向
    1. 現行法の見直し
    2. ニューサウスウェールズ州現代奴隷法の施行

豪州現代奴隷法とは何か

施行から3年後の動向

 2019年1月に施行されたオーストラリア現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018. 以下「豪州現代奴隷法」といいます)は、強制労働や児童労働といったサプライチェーン上の人権侵害を防ぐべく、義務的な情報開示を通じて企業の自主的な取組みを促進することを目的として制定された法律です。
 2022年には、施行から約3年が経過したことを契機として、豪州政府が同法の遵守・運用状況や改正の必要性等について報告書をまとめることを3月に公表したほか、ニューサウスウェールズ州では同年1月より州独自の現代奴隷法が施行されるなど、現代奴隷法を巡るオーストラリア国内の動きが活発化しています。

 サプライチェーン上の人権リスクに対して世界的に厳しい視線が向けられるなか、オーストラリアに進出している企業にとっても、こうした開示規制に適切な対応を行うことはきわめて重要な課題となっています。本稿では英国現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)との比較の視点も交えながら、豪州現代奴隷法に対する日本企業の実務対応について解説します。

豪州現代奴隷法のポイント

 豪州現代奴隷法のポイントは以下のとおりです。

  • 報告書による開示
    一定の要件を充足する企業を報告事業体(reporting entity)として定義し、報告事業体について法定の開示事項を記載した現代奴隷報告書(modern slavery statements. 以下「報告書」といいます)の開示を義務づける。
    法令上要求されている開示事項は英国現代奴隷法より詳細である。

  • 公衆縦覧
    開示事項は政府のプラットフォームにおいて公衆縦覧に供されるといった特徴があるため、慎重な開示対応が必要。

  • 域外適用
    豪州域外で設立された日本法人であっても、豪州域内で事業活動を行う場合、報告事業体に該当する可能性がある。

  • 報告書の提出
    報告書は報告事業体が自ら提出することも可能で、親会社が報告事業体に代わって提出することや、親会社自身の報告書と子会社の報告事業書をまとめ、統合報告書として提出することも可能。

報告書の開示対象となる企業(報告事業体)

 豪州現代奴隷法は、報告対象企業(報告事業体)について、①金額要件および②事業遂行要件の2つの要件を定めています 1日本国内の法人であっても、これらの要件を充足する場合は開示義務を負うこととなります。

  1. 金額要件
    報告対象期間に少なくとも1億豪ドルの連結収益(consolidated revenue)を有する企業であること

  2. 事業遂行要件
    当該事業体が報告対象期間において「豪州企業(Australian entity)」であるか、または「豪州で事業を遂行する(carries on business in Australia)企業」であること

金額要件

 報告対象期間とは当該企業の1会計年度を指し、当該期間の連結収益が1億豪ドル以上かどうかで金額要件の充足が判断されます。
 ここでいう連結収益とは、オーストラリア会計基準(Australian Accounting Standards)にしたがって計算されるものを指し、当該法人とその法人が支配している法人の収益が対象となります。したがって、日本法人について金額要件を判断する場合は、同法人の子会社を含む支配下の法人の収益も合計する必要がありますが、豪州国内の現地法人について金額要件を判断する場合は、当該現地法人の子会社および支配法人の収益のみが対象となり、親会社である日本法人や、兄弟会社の収益は計算に含まれません。

事業遂行要件

 「豪州企業」については、豪州で設立された現地法人であればこれに該当することから、判断に迷うことはありません。他方で、「豪州で事業を遂行する企業」については、豪州会社法(Corporations Act 2001)21条に定める "carrying on business in Australia" に該当すれば、豪州現代奴隷法上の「豪州で事業を遂行する企業」とみなされる旨規定されているところ 2、豪州会社法上における "carrying on business in Australia" について明確な基準は存在せず、これまでの判例法上もあらゆる事情を総合的に考慮した個別判断がなされています。

 豪州会社法における "carrying on business in Australia" の該当性について争われた裁判例を検討すると、たとえば以下のような要素が認定において斟酌されています。

  • 豪州内に多くの顧客を有し、多額の収益を得ていること
  • 豪州内に重要な動産を所有していること
  • 豪州市場における自社製品の開発・保護・管理に対して積極的に関与していること
  • 豪州内に製造工場を所有し、製品の製造・販売に主体的に関与していること

 このとおり、日本法人が「豪州で事業を遂行する企業」に該当するかどうかは、当該事案の具体的な事実関係を踏まえた個別的判断が必要となります 3。開示例としても、以下のようにさまざまな形式が存在し、各社が自社およびグループ会社の状況に応じて適切な開示手法を採用していることが見て取れます。

(1)日本法人のみを報告義務の主体としている事例

(2)親会社である日本法人は報告義務の主体とはせず、子会社の現地法人を報告義務の主体とする事例

(3)親会社である日本法人および子会社である現地法人ともに報告義務の主体とする事例

(4)報告義務の主体としない日本法人または現地法人についても任意開示 4 によって報告対象には含めている事例など

開示内容

豪州現代奴隷法における開示項目

 豪州現代奴隷法では、報告書に記載することが必要な開示項目として以下の内容を規定しています。

豪州現代奴隷法における開示項目 5

  1. 報告対象企業の特定
  2. 報告対象企業の構造、運営およびサプライチェーンについての説明
  3. 報告対象企業およびそれが所有または支配する企業について、運営およびサプライチェーンにおける現代奴隷行為に係るリスクの説明
  4. 報告対象企業およびそれが所有または支配する企業が当該リスクを評価し、これに対応するために講じている措置(デュー・ディリジェンスおよび改善プロセスを含む)の説明
  5. 報告対象企業が当該措置の有効性をどのように評価しているかの説明
  6. 次の者との協議のプロセスについての説明
    (ⅰ)報告対象企業が所有または支配する企業
    (ⅱ)共同現代奴隷報告書に記載される報告対象企業の場合、当該報告書を提出する企業
  7. 報告対象企業または報告書を提出する企業が関連すると考えるその他の情報
  8. 報告対象企業の主要管理機関(共同現代奴隷報告書の場合は関連する主要管理機関)による承認の詳細と責任者の署名

 英国現代奴隷法においては、法令レベルで記載が要求されているのは、あくまで①現代奴隷制等に対して講じている措置の内容または②措置を講じていないことのいずれかのみです。以下に記載する項目は、法令上記載が必須の事項ではなく、記載が可能とされているにとどまる 6 という点で、豪州現代奴隷法の方がより厳しい規制を設けていることになります。

 また、下記のとおり、英国現代奴隷法において記載が推奨されている項目の多くは、豪州現代奴隷法において記載が要求されている項目と重複しています。

英国現代奴隷法における開示項目

  1. 組織の構造、事業内容、サプライチェーン
  2. 奴隷制と人身売買に関する組織方針
  3. その事業とサプライチェーンにおける、奴隷と人身売買に関するデュー・ディリジェンスのプロセス
  4. 事業およびサプライチェーンにおいて、奴隷制や人身売買が行われるリスクのある部分およびそのリスクを評価し管理するために講じた措置
  5. その事業やサプライチェーンにおいて奴隷制や人身売買が行われていないことを確保するための有効性を、適切と思われるパフォーマンス指標に照らして測定したもの
  6. 従業員が利用できる奴隷制と人身売買に関する研修

現代奴隷に係るリスクの説明

 豪州現代奴隷法は、「現代奴隷」につき、オーストラリア刑法やILO条約を参照する形で、①人身売買、②奴隷、③隷属、④強制結婚、⑤強制労働、⑥債務による束縛、⑦労働のための詐欺的募集および⑧最悪の形態の児童労働といった深刻な搾取を含むものと定義しています 7
 具体的には、労働者が実質的な強制や脅迫、欺罔等により労働を拒否する自由がない状態、労働者の個人の自由が十分に保障されていない状態などが「現代奴隷」にあたるものと理解されています。他方で、低賃金や賃金の不払い、超過労働といった劣悪な労働条件や危険な労働環境が存在するというだけでただちに「現代奴隷」に該当するというわけではありません 8。もっとも、劣悪な労働条件・労働環境は現代奴隷に繋がる危険を孕むものであり、また両者を明確に線引きして区別することは困難です。

 したがって、特定の事象が「現代奴隷」に該当するかどうかは本質的な問題ではなく、これに繋がりうるリスクを幅広に想定することが必要となってきます。

 説明の対象となるリスクは、報告対象企業が認識している全ての現代奴隷に関するリスクが含まれますが、とりわけ報告対象企業の事業やサプライチェーンにつき、関連する産業、製品・サービスおよび地理的な観点に基づく特有のリスクが存在する場合は、かかる点に関する記載を行うことが推奨されています 9

 なお、豪州現代奴隷法はリスクの具体的な特定を求めているものの、個別の人権侵害の事例や申立てについて記載することまでを求めるものではありません 10。また、報告企業が特定の企業に対して投資を行っている場合であっても、当該投資先を支配・管理していない場合においては、個々の投資先の事業やサプライチェーンの人権リスクについてまで個別に報告することまでは求められていません 11

現代奴隷に係るリスクの対処に関する説明

 現代奴隷リスクへの対処方法の1つとして人権デュー・ディリジェンスの実施が推奨されているところ、その内容としては、国連の指導原則に基づき、事業活動およびサプライチェーンにおいて、顕在化しているまたは潜在的に存在している人権への悪影響を特定し、その予防および軽減を図る事業上の継続的な取組みが該当します 12
 あくまで例ですが、具体的な手法としては下記のようなものがあげられます。

  1. 現代奴隷に関する社内研修の実施(業務遂行の過程で現代奴隷リスクを探知した際における報告プロセスの確認を含む)
  2. 現代奴隷リスクに対する社内ポリシーおよび行動指針の策定および公表
  3. 外部からの苦情処理制度やホットラインの整備

 より踏み込んだ手法としては、サプライヤーに対する聴き取り調査や監査を実施することなどもあげられますが、実務上ハードルが高いことは否めないところ、上記の①~③の手法は、いずれも比較的短期間に自社内で完結できる措置であり、導入のためのコストも相対的に小さいと考えられます。実際にこのような手法をリスクへの対処方法の1つとして取り入れ、その旨を開示している開示例は多数存在します。

対処の有効性に関する評価プロセス

 現代奴隷リスクへの対処の有効性を評価することは困難が伴いますが、ガイダンスではKey Performance Indicator(KPI)の導入により定量的な評価を行うことを推奨しています。
 具体的には、①現代奴隷に関する研修を受けた人数、②現代奴隷リスクに関する条項を盛り込んだ契約の数、③苦情処理制度において受け付けた件数および解決済み案件の件数およびその割合等を指標とすることが考えられます。もちろん、現代奴隷リスクへの対処措置の有効性に関する評価は必ずしも定量的なものでなければならないというわけではなく、定性的な評価軸も踏まえ、報告対象企業がどのようなプロセスで対処措置の有効性の評価を試みているかが理解できるような内容であれば問題ありません。

主要管理機関による承認と責任者の署名

 報告書に記載された内容は、企業の主要管理機関による承認を受けなければならず、承認を受けたこと自体を報告書にも記載する必要があります。ここでいう主要管理機関とは、法人のガバナンスに対して責任を負う機関を意味するとされているところ 13日本法人であればほとんどの場合において取締役会がこれに該当することになると考えられ、そのような開示例も多く見られます。また、報告書は責任者によって署名がなされることが求められているところ、責任者とは法人の意思決定者を意味し、当該法人の主要な統治機関がある場合はその責任者が該当することになるとされています 14。したがって、通常であれば代表取締役が該当することになり、多くの開示例においても同様の内容となっています。

開示方法

 豪州現代奴隷法では、報告対象期間の末日から6か月以内に、所定の方式で報告書を豪州政府に提出することが求められており、提出された報告書はデータベース 15 に登録され、誰でも自由にアクセスして閲覧することができるようになります。

 英国現代奴隷法における開示は、声明文へのリンクを自社ウェブサイトに掲載することで足りるため、各社の開示内容を横断的に比較検討することが困難でしたが、豪州現代奴隷法の場合は上記データベースにより、①売上規模、②本店所在国、③産業分野、④他国の開示規制法(カリフォルニア州サプライチェーン透明法等)への対応の有無等によりソートをかけて横断的な検索ができるようになっています。英国現代奴隷法と比べ、投資家およびステークホルダーにとっては利便性が格段に高い開示システムになっていますが、開示企業側としては競合他社の開示状況やその内容も意識せざるを得ません。

 豪州現代奴隷法に基づく開示は英文の報告書をデータベースに登録する形で行われますが、報告書を自社ウェブページにも掲載したり、これに加えて「(仮訳)」と題する和文の報告書もあわせて掲載する日本企業も多く存在します。改訂後のコーポレートガバナンス・コードでは企業に対して人権尊重が求められていることをはじめ、企業の人権尊重に対する社会的な関心の高まりも考慮すると、特に上場企業においては投資家・市場とのエンゲージメントの一環として、和文による開示を行うことも十分検討に値するものと考えられます。

グループ会社による開示(共同現代奴隷報告書)

 豪州現代奴隷法は、報告対象企業自らが報告書を提出することを原則としていますが、(1)報告対象企業が他の報告対象企業とあわせて報告書を提出したり、(2)報告対象企業ではない企業がグループ内の他の報告対象企業についても記載された共同現代奴隷報告書(Joint Modern Slavery Statements. 以下「共同報告書」といいます)を提出することを許容しています 16

 具体的な事例として、豪州に2つの子会社を持つ日本法人を想定し、以下の2つのケースに分けて、グループ会社において選択し得る開示パターンの具体例を説明します。

ケース①:日本法人が報告対象企業である場合

日本法人が報告対象企業である場合

 上記の場合、親会社であるA社と子会社であるB社はいずれも報告対象企業としての要件を満たすという前提ですので、本来はそれぞれが単独で自社の対応状況を記載した報告書を提出することとなります。もっとも、報告書にA社およびB社のそれぞれに関する法定記載事項を記載したうえで、A社のみが共同報告書を提出することによってもA社およびB社の報告義務は満たされます。

 なお、子会社であるC社は報告対象企業ではないため、C社については報告対象企業としての記載事項(上記4参照)を共同報告書中に記載する必要はありません。もっともC社は報告対象企業であるA社の支配する法人に該当するため、報告対象企業であるA社の報告事項として、「報告対象企業が支配する企業の運営およびサプライチェーンにおける現代奴隷行為に係るリスクの説明」(上記4−1の開示項目③)の対象には含まれるという点には留意が必要です。

ケース②:日本法人が報告対象企業ではない場合

日本法人が報告対象企業ではない場合

 上記の場合、日本法人であるA社は報告対象企業ではありません。しかし豪州現代奴隷法は報告対象企業でなくても報告書の提出者となることが可能ですので、B社およびC社について法定の報告事項(上記4−1参照)を記載したうえで、A社のみが共同報告書を提出するという方法も可能です。

取締役会の承認と代表取締役の署名

 報告対象企業が自ら単独で報告書を提出する場合、報告書の内容に対する取締役会の承認は当該報告対象企業のもののみで足りますが、共同報告書を提出する場合は報告対象企業のみならず、当該企業を支配する企業(上位企業)の取締役会の承認も必要となります。したがって、上記のケース②の場合は、報告対象企業としてB社およびC社の取締役会の承認が、B社およびC社を支配する上位企業としてA社の取締役会の承認がそれぞれ必要となります。同様に代表者による署名も各報告企業(B社およびC社)ならびに上位事業体(A社)について必要です。

英国現代奴隷法との同時対応

 上記のとおり、英国現代奴隷法がガイドラインにおいて要求している開示事項と、豪州現代奴隷法が法令レベルで要求している開示事項は、その多くが重複しています。したがって、英国および豪州それぞれに適用対象となる現地子会社を有している場合や、親会社(日本法人)がいずれの現代奴隷法の適用も受けるような場合は、1つの報告書にまとめることで、英国・豪州双方の法令に同時に対応した開示を行うという事例も多くみられます。

 この場合、報告書の冒頭に、同報告書が英国現代奴隷法および豪州現代奴隷法の要請に基づき作成されたものであることを明記することが一般的であり、また、同報告書中には、各国の現代奴隷法の適用対象となった法人を具体的に特定して記載する必要があります。

罰則

 報告対象となる企業が豪州現代奴隷法を遵守していない場合(不提出や記載が不十分な場合も含む)、大臣は当該企業に対して当該不遵守に係る説明を行うことや、是正措置を講じることを書面で要求することができます 17。そして当該企業がその要求に従わなかった場合、大臣はかかる事実を企業名とともに公表することが可能となっています。

 現時点(2022年7月)ではほかに民事上・刑事上の罰則は規定されていません。もっとも、上記のとおり開示内容は豪州政府プラットフォームを通じて公衆縦覧に供されることから、特定の企業の開示の有無および開示事項を第三者が容易に閲覧することができます。また、人権リスクに対する投資家の関心の高まりを背景に、株主総会やエンゲージメントの場において、関連する法規制への対応状況について投資家から厳しい指摘を受ける事案も増加しているところ、報告対象企業においては、罰則の有無にかかわらず、法令を遵守し適切な開示を行うことが望まれます。

近時の改正動向

現行法の見直し

 2022年3月、オーストラリア政府は、同法の遵守状況や運用状況、改正の必要性等のレビューを含む報告書を作成する予定であることを発表しました。現行法の施行から3年経過後を目途にレビューを行うことは施行当初より予定されており、今後政府は改正の要否も含めて検討を行うこととなります。具体的には、2022年中には現行法とその見直しに関する文書を発表し、公開協議を行うものと見られています。

 改正の具体的な可能性や項目について、現時点(2022年7月)で豪州政府から公式な声明は発表されていませんが、過去には非政府組織から、報告対象企業の1億豪ドルという金額要件の引下げや法令違反に対する罰則規定の新設を提言するパブリックコメントが出されたこともあります。同様の論点が英国現代奴隷法の改正案として議論されていることを踏まえると、豪州現代奴隷法においても今後の主要な検討課題になるものと考えられます。

ニューサウスウェールズ州現代奴隷法の施行

 2022年1月より、ニューサウスウェールズ州で同州独自の現代奴隷法(以下「NSW奴隷法」といいます)が施行されました。法案が成立した当初は、連結収益が5,000万豪ドルを超える事業体に罰則付きの報告義務を課す厳しい内容でしたが、連邦法を超える厳格な負担を課すことに反対の声も強く、法案施行前に法改正が実施されました。
 その結果、NSW奴隷法の適用対象は公的機関のみに限定され、営利企業に対しては適用されないこととなっています。したがって、現時点においては、同州において設立された現地子会社や同州域内で活動する日本法人に対し、豪州現代奴隷法とは異なる追加的な開示義務が課されることはありません。


  1. 豪州現代奴隷法5条1項(a) ↩︎

  2. 豪州現代奴隷法5条2項(a) ↩︎

  3. 外国企業が "carrying on business in Australia" に該当する場合、豪州証券投資委員会(Australian Securities & Investments Commission)への登録義務を負うことになるため注意が必要です。 ↩︎

  4. 豪州現代奴隷法6条 ↩︎

  5. 豪州現代奴隷法16条1項・2項 ↩︎

  6. 英国現代奴隷法43条4項・5項。ただし内務省の発行するTransparency in Supply Chains etc. A practical guide(5.1および5.2)によれば、これらの項目の記載を含めることが推奨されています。 ↩︎

  7. 豪州現代奴隷法4条 ↩︎

  8. 豪州政府が公表しているGuidance for Reporting Entities(以下「ガイダンス」)8頁 ↩︎

  9. ガイダンス44頁では、高リスク産業として採掘業、繊維・ファッション等のアパレルおよび農業等が、高リスク製品としてレンガ、コバルト、綿花およびゴム等が例示されています。 ↩︎

  10. ガイダンス41頁 ↩︎

  11. ガイダンス34頁 ↩︎

  12. ガイダンス47頁 ↩︎

  13. ガイダンス66頁 ↩︎

  14. ガイダンス66頁 ↩︎

  15. Online Register for Modern Slavery Statements ↩︎

  16. 豪州現代奴隷法14条 ↩︎

  17. 豪州現代奴隷法16-A条 ↩︎

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