海外法Legal Update

第4回 2025年6月に押さえておくべき海外法の最新動向

国際取引・海外進出
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)

目次

  1. 北米
    1. 米国:D.C.巡回控訴裁判所、AIアートの著作権保護を拒絶
    2. 米国:米トランプ大統領、FCPAの執行停止に関する大統領令に署名
    3. 米国:米連邦取引委員会、25年ぶりにガン・ジャンピングに対する制裁金を科し過去最高額を更新
    4. カナダ:カナダ商標法および規則の改正
  2. 欧州
    1. 英国:ジェンダーおよび同性婚についてのフェイスブック投稿を理由とした解雇が差別であるとした控訴裁判所判決
    2. EU:コーポレート・サステナビリティ報告指令(CSRD)とコーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の最新動向
    3. EU:意匠制度の改正
  3. 中国
    1. 中国:商標法改正案の進捗状況
    2. 中国:国家市場規制当局、水平型企業結合審査ガイドラインを発表
    3. 中国:個人情報保護監査管理措置の施行
    4. 香港:会社条例の2025年改正
    5. 香港:SFC、香港仮想資産市場に関する規制ロードマップを発表
  4. 東南アジア
    1. ベトナム:改正2019年証券法の施行
    2. ベトナム:電子商取引商品に関する新しい税関手続草案を発表
    3. フィリピン:外国人の雇用に関する新規則の公表
    4. フィリピン:政府調達政策委員会、新政府調達法の実施細則を発表
    5. インドネシア:雇用に関する最新情報
    6. マレーシア:個人情報保護委員会、データ保護責任者およびデータ漏洩通知に関するガイドラインを発表
    7. シンガポール:情報通信メディア開発庁、クラウドサービスとデータセンターのレジリエンスとセキュリティを強化する新しいガイドラインを発表
    8. ミャンマー:2025年1月1日施行サイバーセキュリティ法
  5. オーストラリア・アフリカ
    1. オーストラリア:競争・消費者委員会、新たな義務的企業結合規制に関するガイドラインを公表
    2. 南アフリカ:会社法改正

 本稿では、2025年2⽉から2025年4⽉にかけて当事務所から紹介した、世界各国オフィスのクライアントアラートのうち、特に企業法務担当者のみなさまにおいて押さえておくべき重要なトピックについて、概要を取り上げます。

 各トピックの詳細についてはリンクから当事務所のクライアントアラートをご参照ください。なお、情報がアップデートされている可能性もありますので、最新の情報について確認されたい場合や、記事のリンクからアクセスすることができない場合には、当事務所までお問い合わせください(問い合わせ窓口はこちら)。

編集担当

吉田 武史弁護士、長谷川 匠弁護士、桒原 里枝弁護士、山内 理恵子弁護士、金子 周悟弁護士、佃 浩介弁護士、藤原 総一郎弁護士、河邉 美杉弁護士、村田 優果弁護士、山内 真実弁護士(以上、ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業))

北米

米国:D.C.巡回控訴裁判所、AIアートの著作権保護を拒絶

 2025年3月18日、コロンビア特別区(D.C.)巡回控訴裁判所は、人工知能(AI)は著作者として著作権法の保護を受けることはできないと判断しました。

 本件は、コンピュータ科学者であるStephen Thaler博士が、自身が作成した生成AIが生成した作品の著作権登録を申請したところ、人間による著作が必要であるとの理由で米国著作権局が当該申請を拒否したという事案です。Thaler博士はこの決定を不服としてD.C. 連邦地方裁判所に控訴しましたが、同裁判所も著作権局の決定を支持しました。また、D.C.巡回控訴裁判所も同様の判断を下しました。
 裁判所は、所有権および相続に関する条項や著作権の存続期間が「著作者の寿命」に基づいて規定されている点を指摘し、著作権法の文言全体から「著作者」は人間であることが前提とされていると判示しました。

 この判例は、AIが著作権法の下で著作者として認められるかどうかという重要な問題を提起し、著作権法は人間による著作を必要としていることを明らかにしました。他方で、AIが補助的な役割を果たした場合の著作権保護が本質的に禁止されているとは判示しておらず、今後の裁判所の判断が注目されます。

 詳細は当事務所の2025年4月15日付けニューズレターをご参照ください。

米国:米トランプ大統領、FCPAの執行停止に関する大統領令に署名

 2025年2月10日、米国のドナルド・トランプ大統領は、司法長官に海外腐敗行為防止法(FCPA)の執行を 6か月間停止することを指示する大統領令に署名しました。この期間中、司法長官は、新たなFCPA事案の捜査を開始してはならず、現在実施されている捜査および執行措置を見直し、改訂された執行および外交の方針に基づいて判断する必要があります。

 当該FCPA 執行停止命令は、外交問題に取り組み国家安全保障を実現するための大統領の権限に基づいていることから、最終的な執行方針(および中長期的な企業への影響)を予測することは困難な状況ですが、企業としては、引き続き贈収賄防止のためのコンプライアンス体制を維持すべきであり、FCPAの執行停止を受けてコンプライアンス体制の変更をする際には、慎重を期す必要があります

 詳細は当事務所の2025年2⽉17⽇付けニューズレターをご参照ください。

米国:米連邦取引委員会、25年ぶりにガン・ジャンピングに対する制裁金を科し過去最高額を更新

 米連邦取引委員会(FTC)は、25年ぶりにガン・ジャンピングに対する法的措置を提起し、米国におけるガン・ジャンピング違反に対する制裁金として過去最高額となる560万ドルの民事罰(civil penalty)を科しました。

 ガン・ジャンピング違反は、取引の当事者が、ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法(HSR法)に基づく待機期間を遵守せず、待機期間が経過する前に取引を実行した場合等に発生します。今回のケースでは、HSR法に基づく審査手続が完了する前に、買い手企業が、売り手企業の施設や価格に関する重要な経営判断をコントロールしたとされています。

 ガン・ジャンピング違反については、直近の事例として、米国司法省(DOJ)によって350万ドルの制裁金が科された事案も発生しています。これらの制裁金は、FTCやDOJが、HSR法違反や取引の審査を妨げる行為に注目していることを示すものです。

 詳細は当事務所の2025年2⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。

カナダ:カナダ商標法および規則の改正

 2025年4月1日、カナダ商標法および商標規則が改正されました。主な変更点は以下のとおりです。

費用裁定請求 悪意のある商標出願などに対して、商標異議審判部(TMOB)において費用請求をすることが可能に
秘密保持請求 秘匿性の高い証拠の公開を防ぐため、当事者が秘密保持命令の請求をすることが可能に
使用証拠の提出 カナダ連邦裁判所において、登録から3年未満の商標について商標侵害訴訟を提起する場合、商標の使用の証明が必要
追加証拠の提出制限 TMOBまたは登録官の決定を不服としてカナダ連邦裁判所へ上訴する際、追加証拠の提出には連邦裁判所の許可が必要
公的標章制度の改正 政府機関が存在しなくなった場合や政府機関が公的標章(official mark)の使用をやめた場合などに、登録官が自己の裁量または第三者の申立てにより、政府機関に対して与えられていた排他的な保護の停止を公告できる

 詳細は当事務所の2025年4⽉15⽇付けニューズレターをご参照ください。

欧州

英国:ジェンダーおよび同性婚についてのフェイスブック投稿を理由とした解雇が差別であるとした控訴裁判所判決

 2025年2月12日、英国の控訴裁判所は、保護されるべき信条に関する差別法の適用について新たな指針を示しました。

 中学校で約6年、管理者兼職業経験マネージャーとして勤務していたヒッグス氏は、個人のフェイスブックページに、学校での性教育に関する投稿を共有し、保護者からの苦情を受けて解雇されました。しかし、学校側はヒッグス氏の行動によって学校に生じた実際の損害の証拠を示せませんでした。

 判決では、学校が、ジェンダー流動性と同性婚に対する批判的な信条を表明したソーシャルメディアへの投稿を理由に従業員を解雇したことは不相応に過剰であり、差別的であると判断されました。判決は、従業員が宗教的または哲学的信条を表明する権利を持つという基本原則を確認し、保護されるべき信条を表明することは、限られた例外を除いて、それだけで懲戒処分を正当化するものではないとしています。雇用主が、自身の信条と相反する信条を従業員が表明することについて懸念を持ち、問題を調査することは適切であったものの、解雇は正当化されないと判断されました。

 詳細は当事務所の2025年3⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

EU:コーポレート・サステナビリティ報告指令(CSRD)とコーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の最新動向

 2025年2月26日、欧州委員会により、サステナビリティ規制の簡素化に向けた「オムニバス法案I&II」が発表されました。これには、CSRD、サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)およびEUタクソノミー規制(EUの環境目標に基づき持続可能な経済活動を分類する規制の枠組み)の改正案が含まれています。

 同年4月17日、オムニバス法案Iは既に採択のうえ発効しており、これにより、2026年および2027年に報告期限を迎える企業についてCSRDのすべての報告要件の適用が2年間延期され、CSDDDの国内法化期限および開始適用時期が1年延期されています。

 本年度末にも採択が想定されているオムニバス法案IIにおいては、CSRDおよびCSDDDにおける、適用対象企業および義務の範囲等が縮小される見込みです。すなわち、オムニバス法案IIにおけるCSRDの改正案では、報告要件の適用延期、適用対象となるEU企業の範囲縮小、EU域外企業の適用基準の引き上げ、EU報告サステナビリティ基準の設定、セクター別報告基準の削除、合理的保証基準の削除等が予定されています。

 一方、オムニバス法案IIにおけるCSDDDの改正案では、デューデリジェンス措置の緩和、対象企業による要求可能な情報の制限、民事責任の削除、気候変動緩和の移行計画要件のCSRDとの整合等について変更が提案されています。また、タクソノミー規制の改正案では、適用範囲の限定やデータポイント(具体的に開示すべき情報の単位)の削減等により企業の管理負担を軽減する方針が提案されています。

 詳細は当事務所の2025年3⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

EU:意匠制度の改正

 EUでは、約10年にわたる検討を経て、意匠制度の大幅な改正が行われ、2024年12月に、共同体意匠に関する改正規則第2024/2822号(「EU意匠規則」)および意匠第2024/2823号の法的保護に関する改正指令(「EU意匠指令」)が公布されました。EU意匠規則は2025年5月1日に発効済み、EU意匠指令は2026年7月1日に発効する予定で、EU加盟国は2027年12月9日までに国内法を整備する必要があります。

 本改正は、デジタル技術の進展や偽造品対策を反映したものです。主な改正点として、「意匠」や「製品」の定義が拡大されました。具体的には、「意匠」は「それらの機能の動き、遷移、またはその他の種類のアニメーション」を含むようになり、「製品」はデジタルデザイン、グラフィカルユーザーインターフェース等を含むよう修正されました。その他、3D印刷による製造物や視認性を欠く場合の意匠の保護も導入されました。また、EU加盟国は、文化遺産の要素を含む意匠の登録を拒否できることが規定されました。さらに、意匠権者は輸送中の偽造品の差押えが可能となり、スペアパーツ(must-match部品)の取扱いについて明確化されました。

 手続面では、出願が欧州連合知的財産庁(EUIPO)に一元化され、出願日確定のために出願料金の支払いが必要となりました。一括で最大50件までの意匠の出願が可能となり、手続の簡素化が図られています。

 詳細は当事務所の2025年2⽉17⽇付けニューズレターをご参照ください。

中国

中国:商標法改正案の進捗状況

 中国国家知識産権局(CNIPA)が2023年に公表した商標法改正案はかなり大規模なものであるため、多くの日本企業にも注目されています。主な改正点としては、「同一商標の繰り返しの出願の禁止」(21条)および「登録後5年ごとの使用状況の説明義務」(61条)の導入があります。

同一商標の繰り返しの出願の禁止
 出願人は原則として、①同一の商品または役務について同一の出願人によって登録または出願された先行商標、または②過去1年間に取り消されまたは無効と宣言された先行商標と同一の商標出願を行ってはならない。

登録後5年ごとの使用状況の説明義務
 商標権者は、登録後5年ごとに、指定商品・役務について登録商標が使用されていることを説明するか、使用していない正当な理由を示す声明を提出しなければならない(場合によっては商標登録の取消しにつながる)。

 改正案公表後、国務院は、2024年5月9日に2024年立法作業計画を発表し、商標法改正案を全国人民代表大会常務委員会(NPCSC)に提出して審査を受ける準備をしていることを示しました。しかし、国務院はいまだNPCSCに改正案を提出しておらず、現時点では具体的な立法スケジュールの目途は立っていない状況です。

 詳細は当事務所の2025年2⽉17⽇付けニューズレターをご参照ください。

中国:国家市場規制当局、水平型企業結合審査ガイドラインを発表

 2024年12月20日、中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は、水平的事業者集中審査ガイドライン(「ガイドライン」)の最終版を正式に発表し、ガイドラインは同日に施行されました。ガイドラインは、以下の点を含め中国の企業結合審査制度の下における取引の評価指針を明確化しています。

  1. 市場シェアと市場集中度に関する閾値を明示的に定め、これにより推定される競争制限効果を示している
  2. 関連市場の画定に関して従来よりも柔軟なアプローチが採用されており、一定の条件の下、関連市場の厳密な画定がされなくても許容される場面が想定されている
  3. 水平合併に関連する単辺効果(合併により、当事者が競合他社との調整を要することなく一方的に価格を引き上げたり、生産量等を削減したりすることを可能とする効果)と協調効果(合併により関連市場における企業間で行動を調整する能力やインセンティブが創出または強化され、共謀やカルテル行為につながる可能性を高める効果)という2つのマイナス効果を扱っている
  4. 水平合併から生じる潜在的な競争制限効果を緩和する可能性のある議論(合併に伴う効率性の向上(製品の品質向上やコスト削減等)や市場への参入/拡大障壁が低いこと等)が示されている
  5. 業界の規制当局や業界団体等から収集された外部証拠に加え、当事者が作成した内部文書もSAMRの審査において重要視される。ガイドラインでは、競争上の懸念を招く可能性がある取引において、SAMRが内部のコミュニケーションを詳細に審査できることを強調している

 詳細は当事務所の2025年2⽉14⽇付けニューズレターをご参照ください。

中国:個人情報保護監査管理措置の施行

 2025年2月12日、中国の国家インターネット情報弁公室(CAC)は「個人情報保護コンプライアンス監査管理弁法」(「監査管理弁法」)を公布し、同法は同年5月1日から施行されました。監査管理弁法の草案は2023年8月3日に初めて公表された後、意見の募集が行われており、CACは草案の最終化に1年半を要しました。

 個人情報保護にかかるコンプライアンス監査において要求される事項は、「中華人民共和国個人情報保護法」および「ネットワークデータセキュリティ管理条例」(2025年1月1日施行)に規定されており、監査管理弁法は、その履行に関する詳細な規則等を定めています。最終版の監査管理弁法では、草案と比較していくつかの重要な変更が加えられており、データ保護規制に対するCACの発展的でより柔軟な姿勢が反映されています。

 詳細は当事務所の2025年2⽉25⽇付けニューズレターをご参照ください。

香港:会社条例の2025年改正

 2025年1月8日、香港立法会で改正会社条例が可決され、同年4月17日に施行されました。改正会社条例は、以下の内容を含みます。

  • 香港で設立された上場企業が、取得した自己株式を消却せずに保有し、再販売することが可能となった
  • 香港で設立された上場企業および非上場企業は、ウェブサイトを通じて情報を発信する旨の規定を定款に設けることで、株主および社債権者に、特定の事項(ウェブサイトのアドレス、電子形式または紙形式での情報開示を請求する権利など)を記載した通知を個別に一度だけ送付すれば、以降それらの者から個別の同意を得る必要がなくなった

 詳細は当事務所の2025年2⽉3⽇付けニューズレターをご参照ください。

香港:SFC、香港仮想資産市場に関する規制ロードマップを発表

 香港証券先物委員会(SFC)は、2025年2月19日、香港の仮想資産市場の規制ロードマップとなる「A-S-P-I-Re' Roadmap for a Resilient Virtual Asset Ecosystem」を発表しました。

 仮装通貨分野で新たに発生する優先課題に対応するための戦略的な行動計画として定められたこの規制ロードマップは、以下の5つの柱で構成されています。

  1. Access(規制の明確化による市場参入の合理化)
  2. Safeguards(セキュリティを損なうことのないコンプライアンス負担の最適化)
  3. Products(投資家の分類に基づく提供製品・サービスの拡大)
  4. Infrastructure(報告、監視および機関間連携の現代化)
  5. Relationships(教育、エンゲージメントおよび透明化を通じた投資家および業界への支援)

 詳細は当事務所の2025年3⽉24⽇付けニューズレターをご参照ください。

東南アジア

ベトナム:改正2019年証券法の施行

 ベトナム証券市場における新たな課題に対応し、国際的なベストプラクティスに適合させることにより、透明性、ガバナンスおよび投資家の保護を強化することを目的として、2019年証券法が改正され、2025年1月1日に改正法が施行されました(一部規定は2026年1月1日から施行予定)。主な改正点は以下のとおりです。

職業証券投資家(PSI) 外国人投資家もPSIとみなされるようになり、PSIである個人が社債市場に関与する際の保護措置が厳格化された
証券発行 適格投資家の追加要件、停止・取消しに関する新ルールなど、私募・公募による証券発行に関する新たな条件が設けられた
公開会社 公開会社資格要件の追加、株式償還ルールの緩和および消却事由が厳格化された
市場監視 以下の改正によって市場監視の強化が図られた
  • 証券市場操作の定義の明確化
  • 証券書類に関与する個人および組織の責任拡大
証券市場のグレードアップ クリアリング(決済の事前準備)に関連して証券市場のグレードアップを図る改正が行われた

 詳細は当事務所の2025年1⽉2⽇付けニューズレターをご参照ください。

ベトナム:電子商取引商品に関する新しい税関手続草案を発表

 ベトナム財務省(MOF)は、電子商取引を用いて輸出入される商品に関する新しい税関手続草案を発表しました。

 この草案は、税関申告、リスク管理、データ処理、輸入許可免除、輸入関税、関税評価および税関手続などを含む、越境電子商取引に関する様々な問題に対応するものです。越境電子商取引サービスを提供するウェブサイトやアプリケーションのオーナー、運輸関連企業、通関業者、保税倉庫業者、郵便事業者、金融機関などが本草案の適用対象となります。

 本草案は2025年中に施行される予定です。詳細は当事務所の2025年2⽉24⽇付けニューズレターをご参照ください。

フィリピン:外国人の雇用に関する新規則の公表

 2025年1月21日、フィリピン労働雇用省(DOLE)は、フィリピンにおける外国人の雇用に関する新規則を公表しました。
 改正点には主に以下の内容が含まれます。

  • 外国人雇用許可証(AEP)の申請期間は、雇用契約の締結日または雇用通知書の発行から15営業日
  • 雇用主の募集職種および雇用主の名称の掲載先の変更
  • AEPの取得を免除される外国人による免除証明書の申請の義務化
  • AEPの申請に対する拒絶事由となる行為をはじめとする禁止行為の内容の変更
  • 公表義務を免除される会社役員の範囲に関する定めの追加
  • AEPの発行と雇用契約の効力発生の関係に関する定めの追加
  • 技能開発および研修プログラムに関する定めの追加
  • など

 新規則は、官報または新聞への掲載から15日後に発効する予定です。詳細は当事務所の2025年1⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。

フィリピン:政府調達政策委員会、新政府調達法の実施細則を発表

 フィリピン政府調達政策委員会(GPPB)によって承認された、共和国法第12009号新政府調達法(NGPA)の実施細則(IRR)が、2025年2月25日に施行されました。この新しい実施細則は、政府調達プロセスの透明性、公平な競争、効率性、比例性、説明責任、持続可能性、専門性の促進向上を目的としています。

 主な規定には以下の内容が含まれます。

  • 調達機関がプロジェクトのニーズに応じた戦略的調達計画を採用する
  • フィリピン政府電子調達システム(PhilGEPS)を利用した標準化と効率化
  • 競争対話や入札のマッチングなどの新しい調達方法の導入
  • 環境に配慮した持続可能な公共調達の推奨
  • 国内製品やサービスの優先調達
  • 利益相反の防止策の強化

 これにより、フィリピンの政府調達プロセスの近代化と効率化が図られ、透明性と公正性が向上することが期待されています。今後、NGPAの実施に向けた詳細なガイドラインが策定され、さらなる改善が進められる予定です。

 詳細は当事務所の2025年3⽉7⽇付けニューズレターをご参照ください。

インドネシア:雇用に関する最新情報

 2024年に、インドネシアにおける雇用法について、雇用主に影響を与える複数の法令の制定がありました。
 そのうち重要なものとしては、「生後1000日間の母子の福祉に関する法律」(母子福祉法)の制定や、2023年憲法裁判所決定第168/PUU XXI/2023号(決定第168号)の発出があります。

 母子福祉法は、新たに、雇用主に対し、就労中の親に福利厚生や施設を提供する義務を規定しています。また、決定第168号は、賃金、外国人労働者の使用、有期雇用契約、外部委託、解雇等に関する2003年労働法第13号の複数の条項について、解釈を明確化しています。

 詳細は当事務所の2025年2⽉21⽇付けニューズレターをご参照ください。

マレーシア:個人情報保護委員会、データ保護責任者およびデータ漏洩通知に関するガイドラインを発表

 マレーシアの個人情報保護委員会は、データ保護責任者(DPO)に関するガイドラインおよびデータ侵害通知(DBN)に関するガイドラインを発表しました。これらのガイドラインは、2010年個人情報保護法(PDPA)の12A条および12B条を補完し、明確化するものであり、企業等がDPOおよびDBNの定める法的義務を遵守することの支援を目的としています。これらのガイドラインは、2025年6月1日から施行されます。

 詳細は当事務所の2025年2⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。

シンガポール:情報通信メディア開発庁、クラウドサービスとデータセンターのレジリエンスとセキュリティを強化する新しいガイドラインを発表

 シンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA)は、クラウドサービスとデータセンターのレジリエンスとセキュリティを強化するための新しいガイドラインを発表しました。このガイドラインは、シンガポールのデジタルインフラ戦略の一環として策定されたもので、2024年サイバーセキュリティ法改正を補完し、将来的な立法の前兆となる可能性があります。

 このガイドラインの採用は義務ではありませんが、データセンター運営者(DCO)とクラウドサービスプロバイダー(CSP)に対して強く採用が推奨されています。ガイドラインは、サイバー攻撃、ハードウェアの故障、火災、設定ミスなどの障害を防止、軽減、回復するための具体的な対策を推奨しており、ISO 22301やISO 27001などの国際規格に準拠しています。

 ガイドラインは、クラウドサービスに関するガイドライン(CSPAG)とデータセンターに関するガイドライン(DCOAG)に分かれ、内容は以下のとおりです。

クラウドガバナンス
  • インフラセキュリティ(安全な設定、監視、暗号化、定期的なセキュリティテスト)
  • 運用管理(変更管理、インシデント管理)
  • サービス管理(特権アカウントアクセスの制御)
  • 顧客アクセス(ユーザー認証とアクセス制御)
  • テナント分離(共有環境での顧客間の効果的な分離)
  • クラウドレジリエンス(物理的および環境保護、災害復旧、事業継続計画)
データセンター
  • インフラリスク(物理的および工学的問題)
  • ガバナンスリスク(運用監視の欠如、遅いインシデント対応、管理の不備)
  • サイバーセキュリティリスク(マルウェア、ランサムウェア、サプライチェーンの脆弱性)への対応

 詳細は当事務所の2025年3⽉31⽇付けニューズレターをご参照ください。

ミャンマー:2025年1月1日施行サイバーセキュリティ法

 2025年1月1日、ミャンマーのサイバーセキュリティ法が制定されました。同法は、サイバーセキュリティサービス、デジタルプラットフォームサービス(DPS)および仮想プライベートネットワーク(VPN)の使用を規制することを目的としています。サイバーセキュリティ法は、サイバーセキュリティサービス提供者、10万人以上のユーザーがいるデジタルプラットフォームサービス提供者、仮想プライベートネットワークサービス提供者に対して、それぞれ主に以下のように規制しています。

サイバーセキュリティサービス提供者 許可の取得を求められるほか、サイバーセキュリティ侵害に対する監視および対応をするための予防措置、国際基準に沿った技術の使用、サービス利用者の情報保護、インシデント発生時の当局への報告、許可条件の遵守など、各種の責任を負う
10万人以上のユーザーがいるデジタルプラットフォームサービス提供者 所管官庁における登録が必要であり、違法コンテンツへの対応等の責任を負う
仮想プライベートネットワークサービス提供者 所管官庁の承認を得る必要がある

 以上の許可、登録、承認等を得ずに上記の各サービスを提供した場合や、法律上の義務に違反した場合は、刑事罰が科される可能性があります。
 サイバーセキュリティ法は、ミャンマーの大統領が別途指定する日に施行される予定であり、関連する手続や猶予期間については今後の通知において明らかにされることが予想されます。

 詳細は当事務所の2025年3⽉5⽇付けニューズレターをご参照ください。

オーストラリア・アフリカ

オーストラリア:競争・消費者委員会、新たな義務的企業結合規制に関するガイドラインを公表

 2025年3月4日、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、2026年1月1日に施行される新たな義務的企業結合規制への移行に関するガイドラインを発表しました。本ガイドラインは、移行期間中にACCCがどのように企業結合審査を行うかについて、主要なタイムラインとプロセスの詳細を規定しています。

 ACCCが2025年12月31日までの期限内に現行制度に基づく審査を完了できない場合に、新制度の下での再届出が必要となる可能性を回避するために、ACCCは、同年7月以降は、新制度の下で任意に取引を届け出ることを事業者に推奨しています。事業者は、企業結合審査手続を再度行い、その結果、遅延や追加コストが発生するリスクを回避するために、移行期間に係る措置を踏まえて、取引のスケジュールやACCCの関与を慎重に検討する必要があります。

 詳細は当事務所の2025年3⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

南アフリカ:会社法改正

 南アフリカでは、2024年会社法改正法(Act No. 16 of 2024)および2024年会社法第2次改正法(Act No. 17 of 2024)の施行により、会社運営の透明性と効率性を高めることを目的として、コーポレートガバナンスおよび財務慣行に大幅な変更が導入されました。

 主な改正点は以下のとおりです。

  • 「証券」の定義を株式および債券に限定
  • 定款の改定手続の合理化
  • 一部払込株式に関する用語の更新
  • 子会社への経済的支援(financial assistance)について法定の要件は適用されない
  • 社会倫理委員会に関する新たなガイドラインの策定
  • 取締役の義務懈怠について申立期間を延長
  • 公共サービスに関する賃貸人支払は、事業再生手続において事業開始後の資金調達として扱われる

 詳細は当事務所の2025年2⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。

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