海外法Legal Update
第5回 2025年9月に押さえておくべき海外法の最新動向
国際取引・海外進出
シリーズ一覧全5件
本稿では、2025年5⽉から2025年7⽉にかけて当事務所から紹介した、世界各国オフィスのクライアントアラートのうち、特に企業法務担当者のみなさまにおいて押さえておくべき重要なトピックについて、概要を取り上げます。
各トピックの詳細についてはリンクから当事務所のクライアントアラートをご参照ください。なお、情報がアップデートされている可能性もありますので、最新の情報について確認されたい場合や、記事のリンクからアクセスすることができない場合には、当事務所までお問い合わせください(問い合わせ窓口はこちら)。
吉田 武史弁護士、長谷川 匠弁護士、桒原 里枝弁護士、山内 理恵子弁護士、金子 周悟弁護士、佃 浩介弁護士、藤原 総一郎弁護士、河邉 美杉弁護士、村田 優果弁護士、山内 真実弁護士(以上、ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業))
米国
トランプ大統領、医薬・ヘルスケア政策に関する大統領令および医薬品の最恵国価格への取組みを命じる大統領令を発出
トランプ大統領は、2025年4月15日に「再度の米国最優先対応による薬価引下げに関する大統領令」を発出し、米国の薬価引下げに向けた具体的な施策を命じました。また、同年5月5日には、「重要医薬品の国内製造を促進するための規制緩和に関する大統領令」に署名し、重要医薬品の国内製造を促進するために、関係省庁に対して、米国内の製造所に対する審査の合理化や外国製造所に対する査察強化を求めています。
さらに同年5月29日、トランプ大統領は、「米国の患者に最恵国価格の処方薬をもたらす」大統領令を発令し、米国の薬価の引き下げのため、処方薬およびバイオ製品に関する最恵国価格(米国の薬価が他の先進国の薬価と比較して最も低価格となるようにコントロールする仕組み)に向けた政策立案を発令しています。
詳細は当事務所の2025年5⽉15⽇付けニューズレターおよび2025年5⽉29⽇付けニューズレターをご参照ください。
カリフォルニア州データ保護当局によるCCPAに基づく最新執行事例-オプトアウトツールの継続的な管理の必要性を強調
2025年5月6日、カリフォルニア州プライバシー保護当局(CPPA)は、全米向けの衣料品小売り事業を展開する事業者に対して、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が定める「販売」または「共有」からのオプトアウト要件に違反したとして、約34万5,000ドル(約5,000万円)の制裁金を科し、オプトアウトツールの不適切な管理に対する是正措置を命じました。
本執行事例により、消費者などのユーザーからの同意管理については、外部ベンダーのツール導入だけでなく、継続的な監視と監査が求められることが明らかとなり、同意管理ツールの機能確認や本人確認手続の適正化など、対応体制の見直しが必要となります。
詳細は当事務所の2025年5月29日付けニューズレターをご参照ください。
司法省、企業犯罪に対する執行計画およびFCPA執行ガイドラインを公表
2025年5月12日、米国司法省(DOJ)は、刑事局の企業犯罪に対する執行計画を新たに公表し、トランプ政権下における企業犯罪に対する刑事執行に関する優先順位を明らかにしました。さらに同年6月9日、DOJは、2月10日にその執行を一時停止する大統領令が発令されていた海外腐敗行為防止法(FCPA)の捜査および執行に関するガイドラインを公表しました。
これらは、刑事局の企業犯罪に対する執行および自主申告ポリシー、モニター選定に関するポリシー、公益通報報奨金パイロットプログラム、FCPAを含む企業犯罪に対する執行全般に影響を及ぼすものです。
詳細は当事務所の2025年6月27日付けニューズレターをご参照ください。
EU
ドイツ:ストックオプションに関する最新判例
2025年3月、ドイツ連邦労働裁判所は、ストックオプションに関する重要な2つの判決を下しました。
3月19日の判決(事件番号:10 AZR 67/24)では、雇用契約に基づき付与された仮想ストックオプションについて、雇用関係終了時に即時失効する条項は労働者に不合理な不利益を与えるとして無効と判断しました。
また、3月27日の判決(事件番号:8 AZR 63/24)では、雇用終了後の競業避止義務に対する補償額の算定において、雇用中に行使されたストックオプションのみが考慮対象とされ、終了後に行使された分は含まれないとされました。これにより、補償額の算定基準が明確化されました。
これらの判決は、企業にとってストックオプション制度の設計や契約内容の見直しを促す重要な指針となります 。
詳細は当事務所の2025年5月29日付けニューズレターをご参照ください。
ドイツ:連邦租税裁判所、並行輸入の移転価格への影響について、税務当局寄りの重要な判決を下す
ドイツでは、国内の薬局に対して、並行輸入品である医薬品の販売を一定の条件の下で義務付ける特殊な規制があります。その規制を前提に、並行輸入品に関する事情が医薬品の移転価格に与える影響が、税務上の論点とされてきました。
本件では、外資系製薬会社のドイツ国内の販売子会社が、並行輸入品の売上増加に基づき従業員の報酬を増額していたところ、EU第三国から低価格で輸入された並行輸入品の販売によって、外資系製薬会社である親会社の利益が減ると考えて当該報酬増額分を子会社の負担とするのか、並行輸入品の販売が促進されることにより企業グループ全体に経済的利益をもたらすと考えて親会社側の負担とするのかが争点となり、ドイツ税務当局は後者の立場をとっていました。
地方租税裁判所はドイツ税務当局に不利な判断を示しましたが、連邦租税裁判所は、前述の規制との関係で必要となる並行輸入の促進の報酬について、ドイツ国内の販売子会社ではなく、輸入医薬品メーカー(親会社)が負担することを前提に、移転価格の調整をすることを求めて、事件を地方租税裁判所に差し戻しました。
今後、ドイツ税務当局が当該判断を前提にした課税を行うことが予想されるため、影響を受ける企業は当該判断を踏まえて取引手法の選択や関連文書の作成を行うことが望ましいといえます。
詳細は当事務所の2025年6⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。
ルクセンブルク:クロスボーダー企業再編における従業員保護を強化する新法を制定
2025年4月1日、ルクセンブルクでEUモビリティ指令(2019/2121)を国内法に取り入れた新法(法案第8225号)が施行されました。本法は、クロスボーダー合併・分割・組織再編における従業員保護を強化するもので、企業の移動性の向上と従業員の権利保護の両立を目的としています。
新法では、再編計画の公表後、経営陣は従業員代表や株主に対し、再編の影響に関する詳細な報告書を提供する義務を負います。報告書には、雇用条件や勤務地の変更、雇用維持策などが含まれ、株主総会の6週間前までに電子的に提供されなければなりません。また、従業員の意見提出権や経営参加権も拡大され、従来はクロスボーダー合併に限られていた参加権が、分割やその他の再編にも適用されるようになりました。
詳細は当事務所の2025年5月29日付けニューズレターをご参照ください。
欧州:欧州委員会、引抜禁止協定に対して初の制裁金賦課決定
2025年6月2日、欧州委員会は、引抜禁止協定を締結していた大手フードデリバリー会社2社に対して、計3億2,900万ユーロの制裁金を課す決定を発表しました。本決定は、引抜禁止協定に対する初めての制裁金賦課決定であること、および少数株式保有関係を通じてカルテルが助長されたことについての初めての制裁であることという2点において、注目すべき決定といえます。
実務的には、社内において競争法遵守研修を実施し、また、少数出資先との情報交換についての統制および交通整理を行うことが重要です。
詳細は当事務所の2025年7月30日付けニューズレターをご参照ください。
欧州:欧州議会、EU加盟国全体での外国投資審査プロセスの調和と拡大に関する提案を採択
2025年5月8日、欧州議会は、EU外国直接投資規則(規則(EU)2019/452)(以下「FDI規則」といいます)の改正に関する修正案を採択しました。FDI規則の改正は、全EU加盟国におけるFDI審査に大きな変化をもたらすものです。投資家においては、1つまたは複数のEU加盟国にわたる取引の計画初期段階で専門家の助言を求め、強固なFDI戦略を策定することが不可欠です。
主な改正提案は以下のとおりです。
- 全加盟国において、自国のFDI審査制度の導入義務化
- FDI規則の適用範囲を拡大し、加盟国のFDI審査制度に基づく間接投資の審査に明示的に適用
- 加盟国のFDI審査制度のもとで義務的届出および承認を必要とする重要な業種の範囲を調和させ、すべての制度において最低限の業種の審査を義務付け
- 加盟国間での取引審査のより良い調整を可能にするため、協力体制に係る手続を改善
詳細は当事務所の2025年7月30日付けニューズレターをご参照ください。
中国・香港
中国:反外国制裁法の実施規定を公布
2025年3月23日、中国は反外国制裁法の実施規定を公布しました。
この法律は、外国による中国を対象とした一方的な制裁に対抗するための措置を定めており、中国の主権や安全、発展の利益を脅かす行為に関与したと判断された企業や個人を対象に、入国拒否や国外追放、資産の差押えや凍結、中国企業や個人との取引制限、特定の商品や技術の輸出入制限といった対抗措置を行う可能性があります。対象者は法律に基づき是正措置を取り、影響を緩和させることで措置の停止を申請できます。
企業は自社の事業運営に影響を及ぼす可能性のある関連政府部門の動向を注視することが推奨されます。
詳細は当事務所の2025年4⽉2⽇付けニューズレターをご参照ください。
香港:初のサイバーセキュリティ条例が2026年1月1日に施行予定
香港では、2025年3月19日、重要インフラ(コンピュータシステム)の保護に関する条例が制定され、同月28日に公布されました。同条例は、2026年1月1日に施行される予定です。
同条例は、正常な社会機能維持のために重要な8つのセクター(エネルギー、情報技術、銀行・金融サービス、航空運輸、陸上運輸、海上運輸、医療サービス、通信・放送)のサービス提供事業者と、大規模スポーツイベントの運営などの香港における重要な社会・経済的活動を対象として、サイバーセキュリティ基準を強化することを目的としたものです。政府から重要インフラ事業者に指定された事業者には、セキュリティ管理部門を設置・維持する組織的義務、予防措置を講じる義務、インシデント報告義務が課せられます。
詳細は当事務所の2025年4⽉3⽇付けニューズレターをご参照ください。
香港:バイオテック・専門技術企業の上場促進のための新制度導入
2025年5月6日、香港証券先物委員会(SFC)と香港証券取引所(HKEX)は、バイオテック企業および専門技術企業の新規上場を支援するための新たな施策を発表しました。
主な取組みは2点あります。第1に、「TECH(Technology Enterprises Channel)」という専用チャネルを設け、上場準備段階での課題解決や規制対応を支援します。第2に、企業の独自技術の早期開示リスクに配慮し、非公開での上場申請を可能にしました。さらに、HKEXは上場ガイドを改訂し、これらの企業が加重投票権(WVR)構造での上場に必要な「革新性」および「外部検証」の要件を満たしているとみなす方針を示しました。
これにより、香港市場での上場がより柔軟かつ迅速に進められることが期待されます。
詳細は当事務所の2025年5⽉14⽇付けニューズレターをご参照ください。
東南アジア
ベトナム:知的財産法の重要最新情報
ベトナムでは、知的財産法制度を強化するために、知的財産専門裁判所の設立のための関連法規や制度の整備が進められており、現在、全国の主要都市(経済・金融センター)に所在する地方裁判所内に知的財産専門裁判所を設置することを目指しています。これと並行して、最高人民法院は、複雑な知的財産紛争を処理するために必要となる専門的な研修プログラム、ワークショップ、セミナーの導入も始めています。
知的財産専門裁判所の設立と知財能力開発に向けた取組みは、ベトナムにおける今後の知的財産権の保護強化における非常に重要な進展になるものと考えられています。
詳細は当事務所の2025年5⽉15⽇付けニューズレターをご参照ください。
フィリピン:競争委員会、M&Aの届出義務の基準値を引き上げ
2025年4月15日のプレスリリースで、フィリピン競争委員会(PCC)はM&Aの届出義務の基準値を引き上げ、当事者規模要件を78億フィリピンペソから85億フィリピンペソに、取引規模要件を32億フィリピンペソから35億フィリピンペソにそれぞれ変更したことを発表しました。
なお、新しい基準値は2025年3月1日に発効済みであり、同日以前の届出、進行中の審査および既にPCCによって決定された取引には影響しません。
詳細は当事務所の2025年4⽉21⽇付けニューズレターをご参照ください。
インドネシア:ネット上の子ども保護に関する規制の公表
インドネシア政府は2025年3月27日付で「子どもの保護における電子システムの運用に関する政府規則2025年第17号(GR 17)」を施行しました。
この規則は、18歳未満の子どもが電子システムを利用する際の安全確保を目的とし、電子システム運用者(ESO)に対し、年齢別の利用制限表示、本人確認、子どもの権利を侵害する可能性のある誤用報告機能の提供を義務付けています。また、リスクの自己評価の通信・情報省(Komdigi)への報告、保護者の同意取得、プライバシー設定の強化、デジタル環境の教育提供なども求められます。さらに、ESOによる子どもの位置情報の収集やプロファイリング等の一定の禁止事項も設けられています。KomdigiがGR 17の遵守状況を管理・監督しますが、一般市民も通報により子どもの保護に関与できます。
同規則は、今後2年間の移行期間を経て、完全に施行されるものと見込まれます。
詳細は当事務所の2025年5⽉1⽇付けニューズレターをご参照ください。
マレーシア:個人データの越境移転に関するガイドライン公表
2025年5月9日、マレーシアの個人情報保護委員会は、個人情報保護法2010(PDPA)の第129条の運用に関するガイドラインを公表しました。これは、2024年に行われた意見公募を経て策定されたものです。
本ガイドラインは、情報管理者が個人情報をマレーシア国外に移転する際の具体的な責任を定めています。これにより、情報の越境移転に関する運用が明確化され、個人情報保護の強化が図られることとなりました。情報管理者は、ガイドラインに従い、適切な措置を講じる必要があります。
本ガイドラインによれば、個人データの越境移転が許容される例外には、下記の場合が含まれます。
- 移転先国にPDPAと実質的に類似した法律があること
- 移転先国がPDPAと同等の保護水準を提供していること
- 移転についてデータ主体への通知が行われ、明示的なデータ主体からの同意の記録があること
- データの越境移転をすることが契約の履行に必要で、代替手段がないこと
詳細は当事務所の2025年5⽉9⽇付けニューズレターをご参照ください。
マレーシア:サバ州およびサラワク州における労働法改正
2025年5月1日、マレーシアのサバ州およびサラワク州の労働条例に関して重要な改正が施行されました。これらの改正は、サバ州およびサラワク州の労働条例を、半島マレーシアおよびラブアン島にのみ適用される雇用法の内容と整合させるものです。
同改正により、職種や賃金水準によって適用範囲が限定されていた労働条例は、すべての労働者に適用されることになります。改正には以下の内容が含まれ、サバ州およびサラワク州のすべての労働者が対象となります。
- 労働者保護施策
・産休日数の延長
・父親の育児休業
・週の上限労働時間の短縮
・セクシャルハラスメント対策
・雇用関係の推定 等 - 労働者保護施策の対象から一定の労働者を除外していた2005年の雇用免除令の廃止
- 子どもおよび若年者の一定業務への従事の禁止
- 労働条例違反に対する罰則の強化
詳細は当事務所の2025年5⽉14⽇付けニューズレターをご参照ください。
タイ:商標法の重要最新情報
最近のタイ商標実務では、商標出願・登録の実務において、顕著な変化が見られます。
従来、タイでは商標の識別力の審査が極端に厳格であるなど他国の審査実務と大きな違いがありました。しかし、最近、特に商標識別力や不使用に関する問題で、より多くの査定(審査官の決定)が審判や裁判などによって覆される傾向が見られます。また、形式審査の期間も従来の18か月から8〜16か月に短縮され、出願人の商標選択・採用の幅を広げるといった恩恵をよりもたらすものと期待されています。
詳細は当事務所の2025年6⽉16⽇付けニューズレターをご参照ください。
シンガポール:知的財産権の出願を加速させる新特許・商標プログラムを開始
2025年5月20日、シンガポール知的財産庁(IPOS)は、特許および商標出願において迅速なオフィスアクションを可能にする新たな加速プログラム「SG Patents Fast」と「SG Trade Marks Fast」を正式に開始しました。
特許出願では、選択した加速ペースに応じて、出願から4か月または8か月以内に最初のオフィスアクションを受けることができます。商標出願では、IPOSに直接出願し、出願時に早期審査を請求することで、3~6週間以内に審査報告書または異議申立ての通知を受け取ることが可能です。
これらの制度では、簡素化された適格基準、明確なタイムライン、新たな料金体系が導入されており、早期審査を利用するには、出願料とは別に追加料金が必要です。
詳細は当事務所の2025年6⽉16⽇付けニューズレターをご参照ください。
オーストラリア
新たなフランチャイズ法(競争・消費者法)を施行
オーストラリアでは、2025年4月1日、新しいフランチャイズ法である競争・消費者法が施行されました。同法は、原則として、同年4月1日以降に締結されたり、更新されるなどしたすべてのフランチャイズ契約に適用されます。同日以降に締結されるフランチャイズ契約では、特に契約解除条項および契約終了後の競業避止義務に関する改正と整合性が取れていることを確認する必要があります。
もっとも、同法には経過措置が設けられており、一部の施行は2025年11月1日まで延期されています。
詳細は当事務所の2025年4⽉4⽇付けニューズレターをご参照ください。
KATY PERRY v. KATIE PERRY(Killer Queen, LLC v. Taylor [2024] FCAFC 149)
ファッションデザイナーKatie Perry(Taylor)氏と、歌手のKaty Perry(Hudson)氏が商標権侵害で争っています。この度、連邦裁判所合議法廷は、仮に先行商標を認識していた事実があったとしても、「誠実な商標の採用・使用」が認定される可能性があることを示す判決を出しました。
同判決では、「自己の名前」の抗弁(“own name” defense)が適用され、Hudson氏による芸名 “Katy Perry” の使用は善意による使用と認められました。そのうえで、Hudson氏がTaylor氏の商標 “Katie Perry” を知っていたにもかかわらずなお “Katy Perry” の商標を採用したのは、それがHudson氏の芸名であるからであって、かつ、Taylor氏が事業を始める前に、Hudson氏が海外で数年間芸名 “Katy Perry” を使用した事実から、Hudson氏の芸名 “Katy Perry” の使用は誠実なものであったと認めました。しかし、関連する時点では使用されていなかったため、誠実な同時使用者であるとのHudson氏の主張は認めませんでした。
詳細は当事務所の2025年5⽉15⽇付けニューズレターをご参照ください。
エジプト:新労働法による現代化、強化および整合
エジプトにおいて新たな労働法が2025年5月3日に官報で公表され、同年9月1日より施行されます。同法では大要以下のとおり定められています。
- 現代的な概念の導入
リモートワーク、ジョブシェアリング、柔軟な勤務形態、パートタイム雇用、女性の同一労働同一賃金、1日単位の父親の育児休暇、職場でのハラスメントやいじめからの保護、職場での電子システムの使用など - 雇用主と労働者の権利義務のバランスを改善
旧法の欠点に対処しつつ、確立された概念を大きく変えることなく、確実性と明確性をもたらす - 他の関連法との整合、一貫性の確保
年金・社会保険法(Pensions and Social Insurance Law)および児童法(Child Law)など
新たに導入された制度については、今後省令(Ministerial Decrees)が発出される予定です。また、新たな労働法には、企業の運営方法に影響を与える重要な変更点も含まれており、留意する必要があります。
詳細は当事務所の2025年6⽉27⽇付けニューズレターをご参照ください。
トルコ:新しい取消審判手続の運用開始
トルコ工業所有権法施行規則の改正規則が2025年3月15日付官報第32842号に掲載され、発効しました。これにより、今後のトルコ特許商標庁における取消審判手続の方向性の見通しが立つこととなりました。
2017年に制定された工業所有権法第6769号は、2024年1月10日をもって不使用取消の権限を裁判所からトルコ特許商標庁に移管しました。トルコ特許商標庁は2024年半ばに不使用取消審判の受理を開始しましたが、詳細な審判手続規則がなかったため、審理に遅れが生じていました。今回の規則改正により、取消審判審理を適切に処理するための明確な枠組みが確立されました。
改正規則では、たとえば、複数の商標登録の取消しを1つの取消請求書で請求することはできず、登録商標ごとに個別の取消請求書を提出しなければならないなどと規定されることとなりました(一商標登録一審判)。
詳細は当事務所の2025年6⽉16⽇付けニューズレターをご参照ください。
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