海外法Legal Update

第3回 2025年3月に押さえておくべき海外法の最新動向

国際取引・海外進出
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)

目次

  1. 米国:米国財務省による対外投資規制の最終規則の公表
  2. EU
    1. EU:EUアクセシビリティ法が6月28日に施行予定
    2. EU:欧州議会が森林破壊防止デューデリジェンス規則の適用を延期する改正案を可決
    3. EU:強制労働規則の可決・発効
    4. ルクセンブルク:商業・企業登録手続の変更と個人識別番号の提出
    5. チェコ:組織再編規制における重要な法改正
    6. ベルギー:EU企業サステナビリティ報告指令の国内法制化
  3. 中国:法定退職年齢の段階的引き上げが決定
  4. 東南アジア
    1. ベトナム:サイバー空間におけるインターネットサービスおよび情報通信に関する規制
    2. ベトナム:2024年改正電力法を制定
    3. ベトナム:データ法の迅速な成立
    4. タイ:証券取引委員会が投資サービス提供に係る外国事業者向けガイドラインを公表
    5. カンボジア:カンボジア税関における知的財産権登録システム(IPRRS)が試行開始
    6. フィリピン:インターネット取引法への早急な対応を要求
    7. インドネシア:インドネシア・日本間の炭素取引に関する相互承認協定の締結
    8. シンガポール:SIAC規則2025の発表
    9. シンガポール:マネーロンダリング防止等に関する法律の可決・承認
    10. シンガポール:CSAによるAIセキュリティに関するガイドラインの正式発表
  5. オーストラリア
    1. 2024年マネーロンダリング防止およびテロ資金供与防止法改正法の承認
    2. 企業結合規制改正案の提出(ヘルスケア領域)
    3. 2024年企業買収改革法案の可決
    4. 新たなフランチャイズ法が4月1日に施行予定

 本稿では、2024年11⽉から2025年1⽉にかけて当事務所から紹介した、世界各国オフィスのクライアントアラートのうち、特に企業法務担当者のみなさまにおいて押さえておくべき重要なトピックについて、概要を取り上げます。
 各トピックの詳細についてはリンクから当事務所のクライアントアラートをご参照ください。なお、情報がアップデートされている可能性もありますので、最新の情報について確認されたい場合や、記事のリンクからアクセスすることができない場合には、当事務所までお問い合わせください(問い合わせ窓口はこちら)。

編集担当

吉田 武史弁護士、長谷川 匠弁護士、甲斐 悠子弁護士、桒原 里枝弁護士、山内 理恵子弁護士、金子 周悟弁護士、田中 和美弁護士、藤原 総一郎弁護士、河邉 美杉弁護士、村田 優果弁護士(以上、ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業))

米国:米国財務省による対外投資規制の最終規則の公表

 2024年10月28日、米国財務省は、対外投資規制に関する最終規則(最終規則)を公表しました。最終規則は、米国人によるまたは米国人の指示による、特定の技術(半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、AI)に関連する中国企業への投資に適用されます。

 最終規則の目的は、国家安全保障上重要な技術を含む特定のカテゴリーの中国関連取引を限定することにあり、M&Aやジョイント・ベンチャー取引の局面において、適切なデューデリジェンスやコンプライアンス措置を実施することが必要となります。米国人(米国市民または合法的永住者、米国法または米国内の管轄区域の法律に基づき設立されたあらゆる事業体(当該事業体の外国支店を含む)ならびに米国在住者をいう)を親会社とする日本法人は規制の対象となり、また、特定の技術を有する中国企業の日本子会社も規制投資先として影響を受ける可能性があります

 続けて、2024年12月13日、米国財務省は、最終規則に関する35個の新たな質問および回答(FAQ)を公表しました。FAQでは、用語の定義、対象となる取引の例、通知が必要な取引および禁止される取引など、最終規則の重要な要素について言及しています。また、FAQは、デューデリジェンス、例外取引および国益免除など、対外取引規則を遵守するために必要な、具体的な問題に関するガイダンスも提供しています。

 詳細は当事務所の2024年12⽉26⽇付けニューズレターおよび2025年1月30日付けニューズレターをご参照ください。

EU

EU:EUアクセシビリティ法が6月28日に施行予定

 欧州連合(EU)全域において、障害者のために製品およびサービスのアクセシビリティを改善することを目的としたEUアクセシビリティ法(EU指令2019/882)(EAA)の施行日が、2025年6月28日と目前に迫っています。EAAは、障害者がデジタルおよびリアルな環境にアクセスしやすくし、障害者の社会への受け入れと参加を促進するために、消費者に提供される幅広い製品およびサービスについて、共通のアクセシビリティ要件を企業に対して義務付けるものです。

 違反に対する制裁は加盟国によって異なり、一部の国では拘禁刑に処される場合もあります。また、措置命令や罰金が科される可能性があるほか、これらが科された場合のレピュテーションリスクも存在します。

 詳細は当事務所の2025年1⽉15⽇付けニューズレターをご参照ください。

EU:欧州議会が森林破壊防止デューデリジェンス規則の適用を延期する改正案を可決

 2021年11月、欧州委員会は、森林破壊防止デューデリジェンス規則(EUDR)を初めて提案し、2023年6月29日に施行されました。EUDRは、EUの欧州グリーン・ディールの一環として、牛肉、ココア、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材などの主要商品やそれらの派生商品が森林に破壊的な影響を及ぼすことの阻止を目的としています。企業は、製品が、森林破壊による産物となっておらず、生産国の関連法令を遵守していることを確認するためのデューデリジェンスを実施し、デューデリジェンス・ステートメント(DDS)を提出することが求められます。

 当初、EUDRは、2024年12月30日からの各企業への適用を予定していましたが、ガイダンスの発表遅延や関係者からの延期要請を踏まえて延期のための改正案が提案され、2024年11月14日に可決されました。欧州委員会は、この延期について、EUDRの適切かつ効果的な実施を確保するための「段階的導入期間」を設けるためと説明しています。この改正案の可決によって、EUDRの適用は、大企業には2025年12月30日から、中小企業には2026年6月30日からにそれぞれ延期されました。

 また、欧州委員会は、新たなガイダンスの発表やFAQの更新を行い、企業や執行当局に対する説明を進めています。このような「段階的導入期間」に、各企業においても適用開始に備えた準備をすることが求められています。

 詳細は当事務所の2024年11⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

EU:強制労働規則の可決・発効

 2024年11月19日、EU強制労働規則が可決され、12月13日に発効しました。この規則は、強制労働を用いて製造された製品のEU市場での販売や輸出を禁止する内容となっており、2027年12月14日から適用が開始される予定です。

 各企業は、強制労働リスクに対処するためのコンプライアンス・プロセスを導入するなどの対応が求められます。なお、欧州委員会は2026年6月14日までにガイドラインを公表する予定です。

 詳細は当事務所の2025年1月30日付けニューズレターをご参照ください。

ルクセンブルク:商業・企業登録手続の変更と個人識別番号の提出

 2024年11月12日、ルクセンブルク企業登録所(LBR)は、ルクセンブルク商業・企業登録手続(RCS)を変更しました。
 変更点は複数ありますが、特に留意が必要なのは、RCSに登録されているまたは登録される予定のルクセンブルクまたは国外に居住する自然人に対し、ルクセンブルクの国家識別番号(LNIN)の提供が義務付けられたこと(例外として、自然人がルクセンブルクに支店を開設した外国法準拠法人の代理人である場合は、そのLNINの提供を要しません)、およびRCSに登録された法人は、関係するすべての自然人のLNINの提出が義務付けられたことです。

 詳細は当事務所の2024年11⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

チェコ:組織再編規制における重要な法改正

 2024年7月19日以降、チェコ共和国で事業を営む企業は、合併、スピンオフ、その他の組織再編を行う際の法的義務が大幅に変更されることになりました。改正法は、クロスボーダーの組織再編、合併および分割に関するEU指令に従い、組織再編プロセスを合理化し、行政コストおよび官僚の負担を軽減することを目的としています。

 たとえば、新たに導入された「分離による会社分割」(division by separation)は、分割会社の資産および負債の一部を、分割の結果として、その会社の直接の子会社となる1つまたは複数の会社に分割するものです。これは、チェコ共和国において、組織再編を計画する際の効果的な手段となる可能性があります。また、債権者保護について、開示要件に関する大きな改正がなされました。特に、一定の条件下では、組織再編に関する債権者への通知を商業官報に掲載する必要がなくなりました。

 詳細は当事務所の2024年12⽉26⽇付けニューズレターをご参照ください。

ベルギー:EU企業サステナビリティ報告指令の国内法制化

 2024年11月28日、ベルギーの国会はEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の国内法制化のための法案を可決しました。国内法制化は同年7月6日が期限とされていましたが遅延し、欧州委員会から、ベルギーと他の16のEU加盟国に対して、EU加盟国全体で企業のサステナビリティの透明性を高めるためにCSRD上の義務を果たすよう求める正式通知がありました。この法案は、その通知を踏まえたものです。

 CSRDは、欧州委員会が採択した欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に沿ってESGに関する情報を要求するものであり、企業に対してより広範なサステナビリティ報告義務を課しています。これにより、CSRDは、企業が一貫性、比較可能性、信頼性のあるサステナビリティ情報を提供することを目的としています。

 ベルギーによる国内法制化は、EU全体の透明性と投資家の意思決定に重要な、標準化され比較可能なESG開示を含めるために、従前の非財務報告の枠組みを拡張するものであり、国内法上の義務をCSRD上の義務に整合させるものです。

 詳細は当事務所の2024年12⽉26⽇付けニューズレターをご参照ください。

中国:法定退職年齢の段階的引き上げが決定

 2024年9月13日、中国の全国人民代表大会常務委員会は、法定退職年齢の段階的延長に関する決定を発表しました。また同日、国務院は新たな法定退職年齢の政策実施について詳述した法定退職年齢の段階的延長に関する弁法を公布しました。

 現在の中国における法定退職年齢は、男性が60歳、幹部(管理職および上級技術職を指す)の女性が55歳、通常の女性労働者が50歳とされており、高齢化が急速に進む中国において、年金制度が資金不足に陥っていることなどを背景として法定退職年齢の引き上げが議論されてきました。「法定退職年齢の段階的延長に関する決定」によって、法定退職年齢は、15年間にわたり段階的に引き上げられることとなりました。最終的には、法定退職年齢は、それぞれ、男性が63歳、幹部の女性が58歳、女性労働者が55歳まで引き上げられることとなります。

 詳細は当事務所の2024年11⽉28⽇付けニューズレターをご参照ください。

東南アジア

ベトナム:サイバー空間におけるインターネットサービスおよび情報通信に関する規制

 2024年11月9日、ベトナム政府は、インターネットサービスおよびサイバースペースにおける情報の管理、提供、使用に関するDecree No. 147/2024/ND-CP(指令第147号)を公布し、2024年12月25日に施行されました。

 指令第147号は、データセンターのスペースを賃貸するか、ベトナムから6か月連続で月間10万人以上に利用されるクロスボーダーサービス提供者(規制クロスボーダーサービス)に対して、ベトナム情報通信省への連絡窓口の届出、違法コンテンツやサービスの検査、監視、削除、ベトナムの報道機関とのコンテンツ協力契約の締結、ユーザー情報の保存および当局への提供、児童を保護するための対策、コンテンツ検索ツールの提供、定期報告といった複数の義務を課しています。

 また、海外のソーシャルネットワークおよびアプリストアサービスも規制クロスボーダーサービスの対象となり、上記義務に加え、さらなる義務が課せられます。ベトナムでは依然としてオンラインゲームの海外からの提供は禁止されており、ベトナムにおける提供にはベトナム国内での会社設立が必要となります。

 指令第147号はベトナムで提供されるさまざまなクロスボーダーサービスに大きな影響を与えるため、企業はリスクおよびコンプライアンスギャップを評価し、法的分析を行うことが強く推奨されます。

 詳細は当事務所の2024年11⽉12⽇付けニューズレターをご参照ください。

ベトナム:2024年改正電力法を制定

 2024年11月30日、ベトナムの国会は改正電力法を可決し、同法は2025年2月1日に施行されました。改正電力法は、ベトナムの電力・エネルギーセクターにおける包括的な法改正を内容とするもので、国内のガスやLNGプロジェクト、再生可能エネルギー、配送電、エネルギー貯蔵、カーボンキャプチャー、グリーン水素やグリーンアンモニアなどの新エネルギーに関する規制を強化します。

 これにより、これらの開発プロジェクトやファイナンス、マスタープランニング、現地調査、入札、投資、収益契約等の実務に影響が生じることが予想されます。

 詳細は当事務所の2024年12⽉2⽇付けニューズレターをご参照ください。

ベトナム:データ法の迅速な成立

 2024年11月30日、ベトナムの国会はデータ法を可決し、同法は2025年7月1日に施行されます。同法は通常よりも迅速な手続で制定されたため、多くの点は今後の政令等に委ねられています。

 データ法は、デジタルデータ、国家データセンター、国家総合データベースなどを規律するほか、国家安全保障上の脅威が存在する際のデータ提供義務などを規律しています。また、「重要データ」と「コアデータ」の概念を導入し、これらのデータを処理するデータ管理者においては定期的なリスク評価が必要となります。

 詳細は当事務所の2024年12⽉19⽇付けニューズレターをご参照ください。

タイ:証券取引委員会が投資サービス提供に係る外国事業者向けガイドラインを公表

 2024年9月18日、タイの証券取引委員会は、タイの投資家に投資サービスを提供する外国事業者向けの公的ガイドライン(ガイドライン)を初めて発表しました。ガイドラインは、タイでの事業に関する手続を簡略化することで、タイを金融ハブにするという政府の目標を達成するための1つの手法として策定されました。

 外国事業者が、タイ国内において証券・デリバティブ事業を行うためには、タイ法に基づきライセンスを取得する必要があるところ、証券取引委員会は、ライセンス取得のための迅速な手続を導入する予定であることを明らかにしました。さらに、証券取引委員会は、どのような事業活動が証券・デリバティブ事業に該当するか具体的に例示し、ライセンスを保持していない外国事業者が証券・デリバティブ事業を行うことのないように注意喚起しています。

 詳細は当事務所の2024年10⽉11⽇付けニューズレターをご参照ください。

カンボジア:カンボジア税関における知的財産権登録システム(IPRRS)が試行開始

 2024年9月1日、カンボジア税関総局は、知的財産権登録システム(IPRRS)の試行を開始しました。知的財産権の権利者が商品の特徴をオンラインで記録し、税関当局に提供することで、真正品と模倣品の識別が容易になり、職権による水際での取締りが強化されます。

 現在、IPRRSに登録可能な知的財産権は、商標、地理的表示、著作権の3種類です。登録はポータルサイト「Trader Portal」より行うことが可能です。
 この新システムの導入により、カンボジアにおける知的財産権の保護がいっそう強化されることが期待されます。知的財産権を有する企業の皆様は、ぜひこの機会にIPRRSへの登録をご検討ください。

 詳細は当事務所の2025年1⽉15⽇付けニューズレターをご参照ください。

フィリピン:インターネット取引法への早急な対応を要求

 フィリピンのインターネット取引法(ITA:Internet Transactions Act)は、2023年12月5日に成立し、電子商取引に関する明確な規制を設け、消費者の権利保護やデータプライバシーの確保、競争の促進、インターネット取引の安全性を規律しています。ITAへの準拠が求められるのは、デジタルプラットフォーム事業者、インターネットマーケットプレイス事業者、インターネット小売事業等です。

 経過措置として、2025年6月20日までの移行期間を設けているものの、貿易産業省(DTI)は、企業に対し早急にITAの要件に対応するよう促しています。この対応には、消費者保護、データプライバシー、紛争解決に重点を置いた内部ポリシーやシステムの更新等が含まれます。また、企業は、業務機能の分類やギャップ分析を行い、早期にコンプライアンス対策を開始することが推奨されています。

 詳細は当事務所の2024年11月27日付けニューズレターをご参照ください。

インドネシア:インドネシア・日本間の炭素取引に関する相互承認協定の締結

 インドネシアと日本は、2024年10月18日に二国間炭素取引に関する相互承認協定(MRA)に署名し、この協定は10月28日に発効しました。MRAは、両国の気候変動対策の取組みを支援し、炭素市場への投資を促進することを目的としています。

 MRAにより、インドネシアの炭素クレジットは日本の炭素クレジットと同等とみなされるため、日本から資金提供を受ける緩和行動プロジェクトは、インドネシアの規制に従う必要があります。生成された炭素クレジットは、両国の合意に基づいて割り当てられます。この相互承認スキームにより、炭素プロジェクトの開発と取引が容易になり、日本の投資家からの関心も高まると予想されています。

 詳細は当事務所の2024年11月25日付けニューズレターをご参照ください。

シンガポール:SIAC規則2025の発表

 シンガポール国際仲裁センター(SIAC)はこのほど、2025年1月1日に発効するシンガポール国際仲裁センター仲裁規則第7版(SIAC規則2025)を発表しました。新規則は、仲裁手続の効率性を高めることを目的としており、「合理化手続」や「調整手続」といった革新的な手続を導入しています。さらに、同規則は、「簡易手続」や「緊急仲裁人」などの既存の仕組みを強化し、予備的決定や保護的予備命令を行う仲裁廷の権限を明確にしています。

 詳細は当事務所の2024年12月26日付けニューズレターをご参照ください。

シンガポール:マネーロンダリング防止等に関する法律の可決・承認

 シンガポールのマネーロンダリング防止等に関する法律は、2024年8月6日に可決され、8月26日に大統領によって承認されました。この法律は、シンガポールのマネーロンダリング防止体制を強化し、法執行機関の追跡・起訴能力を向上させることを目的としています。

 主な改正点として、政府機関同士のデータ共有の強化、押収財産の処理の簡素化、カジノ運営者規制を国際基準に合わせるための取引基準額の引き下げが含まれます。

 詳細は当事務所の2024年10月1日付けニューズレターをご参照ください。

シンガポール:CSAによるAIセキュリティに関するガイドラインの正式発表

 2024年10月15日、シンガポールのサイバーセキュリティ庁(CSA)は、AIシステムのセキュリティ確保に関するガイドラインを発表しました。このガイドラインは、AIシステムの設計段階から安全性を確保し、サイバーセキュリティ脅威を軽減し、システム所有者がAIライフサイクル全体でセキュリティ対策を実施するための原則を提供することを目的としています。

 さらに、システム所有者がAIシステムを採用する際に考慮すべき実践的な対策や業界のベストプラクティスを含むAIシステムのセキュリティ確保に関するコンパニオンガイドも発表され、ガイドラインとともに随時更新されます。

 詳細は当事務所の2024年10月29日付けニューズレターをご参照ください。

オーストラリア

2024年マネーロンダリング防止およびテロ資金供与防止法改正法の承認

 2024年12月10日、オーストラリアで、2024年マネーロンダリング防止およびテロ資金供与防止改正法(AML/CTF改正法)が王室の承認を受けました。同法は、金融活動作業部会(FATF)の定める国際基準への不適合が指摘されていた2006年マネーロンダリング防止およびテロ資金供与防止法(AML/CTF法)を改正するものです。

 具体的には、不動産業者、会計士や弁護士などのリスクが高いとされる業種へのAML/CTF法の適用範囲の拡大、AML/CTF制度を効果的なものとするための用語や概念の単純化、事業者が遵守すべき要件等の明確化、最新の産業構造・技術・不正な資金供与の手法を踏まえた改正などが含まれます。改正法の大部分は2026年3月以降に発効しますので、それまでに自社のコンプライアンスプログラムやポリシーを見直すことが重要となります。

 詳細は当事務所の2024年12月16日付けニューズレターをご参照ください。

企業結合規制改正案の提出(ヘルスケア領域)

 オーストラリアの企業結合規制改正案が2024年10月、連邦議会に提出されました。この改正案により、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC:Australian Competition and Consumer Commission)は、取引規模にかかわらず、企業結合等の取引についてACCCの承認が必要となる特定の分野を指定できるようになります。

 現在、ACCCは、病理学および腫瘍放射線学分野の市場集中に懸念を示しており、改正後の取引においては、特に当該分野における取引に関して企業の負担増大が予想されるため、留意する必要があります。

 詳細は当事務所の2024年11月7日付けニューズレターをご参照ください。

2024年企業買収改革法案の可決

 2024年11月28日、オーストラリア議会は2024年企業買収改革法案を可決しました。この法律は、2026年1月1日から施行され、企業結合規制は、現行の任意制度から大きく変更されます。

 新しい法律では、一定の基準を満たす買収は、ACCCに通知し、承認を得る必要があります。通知と承認を得ない取引は無効となり、重大な罰則が科される可能性があります。また、政府は、2024年10月に、新たな規制対象となる3つの代替的な金銭的基準を発表しました。これにより多くの取引が対象となり、特に、スーパー業界や燃料、酒類、病理学、放射線治療などの業界が影響を受ける可能性があります。さらに、ACCCは新しい分析ツールを開発し、競争が激しい業界を特定する予定です。

 企業は、これらの変更を考慮に入れ、買収戦略を再考する必要があります。政府とACCCは、新しい法律の実施に向けて準備を進めており、2025年初頭には詳細なガイドラインが発表される予定です。

 詳細は当事務所の2024年12月2日付けニューズレターをご参照ください。

新たなフランチャイズ法が4月1日に施行予定

 オーストラリアでは、2025年4月1日から少なくとも5年間適用されることとなる新しいフランチャイズ法が施行されます。新法は、現行法の適用期間が2025年3月31日に終了した直後に発効し、これに伴い、同年4月以降に新たに締結等されるフランチャイズ契約に適用されます。

 具体的には、開示文書や様式の変更に加え、フランチャイジーに対する投資リターン機会の確保等、多くの実務的な変更がもたらされ、特にフランチャイザー側において新たな対応が求められることとなります。実質的な義務違反に関しては、罰則の適用があります。

 詳細は当事務所の2024年12月13日付けニューズレターをご参照ください。

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する