英文契約書の読み方・直し方 専門家による類型別の条項解説

第4回 英文販売店契約のポイント 条項サンプル付き

取引・契約・債権回収

目次

  1. 国外市場への進出と販売店契約
  2. 販売店契約の全体像
    1. 販売店契約と代理店契約の違いとレビューの視点
    2. 販売店契約の一般的な構造
  3. 販売店契約の主要条項とポイント
    1. 販売店の指定
    2. 販売権の内容
    3. 販売店の義務
    4. マーケティング・販促活動、情報提供等
  4. 現地法による制限
  5. 実務上の留意事項
前回は、英文契約書レビューの留意点を、クロスボーダーの企業間取引における英文契約書の基本的な類型ともいえる売買基本契約を題材に、英文契約書の基礎的な考え方である「明確性」「網羅性」「手続」の観点を踏まえつつ、ご紹介しました。
今回のテーマである販売店契約は、典型的には、企業が商品を国外の市場で展開しようとするときに登場する契約類型です。

国外市場への進出と販売店契約

 日本企業が、国外市場向けに商品を輸出しようとするとき、輸出先であるターゲットの市場に自社の現地法人や支店といった販売拠点を設けて、現地市場での商品のマーケティングや販売を自社で行おうとすると、販売拠点の設立やオペレーションのために少なくないコストがかかるうえ、現地市場での業績が想定どおりに伸びなかった等の理由により撤退を余儀なくされるといったビジネス上のリスクも生じます。
 そのため、日本企業が商品を国外で展開する方法として、現地の販売拠点を設けるほかに、現地の販売業者等を通じて商品を販売する方法があります。

 このように現地の販売業者等を通じて日本企業が商品を国外で販売する場合に、現地企業に対して商品を販売するという観点からは、前回解説した売買基本契約を採用することも可能です。しかしながら、日本企業が国外市場でのプレゼンスを高めるには、商品を売るだけでなく、現地の市場における企業や商品のブランディングや販促活動も欠かせません。
 したがって、日本企業が国外市場で商品を展開しようとするとき、(売買契約により)現地企業に商品を販売するだけでは十分ではなく、ターゲットとなる市場における現地の販売業者や商社等に商品の販売権限を付与し、自社の販売店として営業活動や販売活動を行わせるアプローチが考えられます。

 このように、国外市場において、日本企業が指定した現地の販売店(Distributor)に商品を販売させる場合に、日本企業と販売店との間で締結されるのが、販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)です。国外での商品の展開を狙う日本企業は、販売店契約を締結することにより、国外市場へ参入するためのコストやリスクの軽減を図りつつ、現地の販売店を通じた商品の販売や自社・商品のブランディングを行うことができます。

 もちろん、販売店契約は外国事業者が日本市場に参入する際に日本の販売店を指定する場合にも活用されますが、本稿では、日本企業が国外の市場に進出する場合を前提に解説したいと思います。

販売店契約の全体像

販売店契約と代理店契約の違いとレビューの視点

 販売店契約は、販売店(Distributor)が活動する市場向けに商品を輸出しようとするサプライヤー(Supplier)から、販売店が商品を買い取り、特定の地域において、サプライヤーの商号やブランドを使用し、販売店が自らの責任で当該商品を再販売することを目的とした契約です。したがって、サプライヤーが商品を再販売する第三者(=顧客)との間の売買契約において売主となるのは、(サプライヤーではなく)販売店自身 となります。

 日本企業が現地に販売拠点を置かずに商品を国外市場で展開する際に、代理店契約(Agency Agreement)が利用されることもあります。
 代理店契約は、代理店(Agent)が本人(Principal)である日本企業の代理として、特定の地域において、本人(=日本企業)のために商品の営業活動等を行い、本人と第三者(顧客)との間の売買取引の媒介をすることを目的とした契約です。国外市場への商品の展開を目的として、現地の企業に商品のマーケティングや販売を行わせるという機能は販売店契約と類似しています。しかし、販売店と異なり、代理店は商品が販売される顧客との間の売買契約の当事者とはならず、あくまで、顧客との売買契約において売主となるのは本人(=日本企業)です。

 読者の皆様の中には、販売店契約と代理店契約のいずれを採用するか検討したことがある方がいらっしゃるかもしれませんが、このように販売店契約と代理店契約とでは、現地の顧客に商品を販売する際の売買契約において誰が売主になるかという、根本的な法的性質の違いがあり、両者の区別は非常に重要です

 販売店契約と代理店契約とでは、この法的性質の違いに起因して、商品を提供する日本企業と販売店・代理店それぞれとの関係にさまざまな差異が生じます。たとえば、販売店は自らの責任で商品をサプライヤーから仕入れて顧客に再販売しますので、再販売の際の価格等の販売条件は販売店が原則として自由に設定することができる一方 1、代理店は顧客との間の売買契約の当事者ではありませんので、代理店を通じて顧客に販売される商品の価格等の販売条件は基本的に本人である日本企業が決めることになります。
 また、販売店契約の場合には再販売に伴う損益やリスクは販売店に帰属するのが原則となる一方、代理店契約の場合には代理店の販売活動を通じて生じる損益やリスクは基本的に本人(=日本企業)に帰属します(代理店は売買の媒介や販促活動の対価として手数料を本人から受領することになります)。

販売店契約 代理店契約
顧客との売買契約における売主 販売店 本人(=日本企業)
商品の所有権 サプライヤー(=日本企業)→販売店→顧客と移転 本人(=日本企業)→顧客と移転
販売店・代理店が得る経済的利益 商品の再販売の収益 代理店活動に対する手数料
売買契約上の責任
(契約不適合責任など)
販売店が負う 本人(=日本企業)が負う

 このように、国外市場に進出しようとする日本企業にとっては似たような機能を持つ販売店契約と代理店契約ですが、その法的性質とそこから導かれる法的・経済的な機能は実は大きく異なりますので、これらの契約類型を目的に応じて使い分けることが重要です。

販売店契約の一般的な構造

 販売店契約は、サプライヤーである日本企業と現地の販売店との間における取引基本契約の性格を有します(この点、売買基本契約と販売店契約はいずれも特定の商品の販売を目的とした契約ですので、商品の継続的な取引に関する部分を中心に、これらの契約の内容は実務上も重なる部分が多いと思われます)。
 すなわち、販売店契約の有効期間中、サプライヤーと販売店は、サプライヤーから販売店へ商品が供給される都度、個別契約(individual agreement)である売買契約を結び、販売店は個別契約に基づいて購入した商品を第三者へ販売することとなります(売買基本契約と個別の売買契約との関係については「第3回 英文売買基本契約のポイント 条項サンプル付き」も参考にしてください)2

 販売店契約と売買基本契約の違いとしては、サプライヤーとしては単に商品を販売店に売るだけではなく、販売店がサプライヤーのブランドを使用して、商品を現地の市場でマーケティングし販売を拡大することがポイントとなります。また、販売店によるこれらのマーケティング・販売活動がサプライヤー自身の事業展開に支障を生じさせないようにすることが重要ですので、販売店が現地の市場で商品を販売する権利(=販売権)にさまざまな条件が付されることになります。
 このような販売店の権利・義務は、販売店契約において販売店に対してサプライヤーが付与する「販売権」の内容として個別具体的に合意されることになり、この販売権の内容こそが、販売店契約における契約交渉の肝となります

 英文販売店契約の一般的な構造は以下のとおりです。

  • 定義
  • 当事者
  • 販売店の指定
  • 販売権の内容
  • 販売店の義務(販売促進・情報提供等、最低購入数量、競合品の取扱い)
  • 個別契約
  • 一般条項

販売店契約の主要条項とポイント

販売店の指定

 上記 2–1のとおり、販売店と代理店の区別は非常に重要です。契約書レビューにおいても、特に「販売店」と「代理店」のように類似していながら法的性質が異なる重要な概念については、明確に区別して使用されているかのチェックが大切です。
 たとえば、販売店が現地で行った顧客との売買取引に関して、売買された商品に故障などの問題があった場合には、再販売を自らの責任で行っている販売店が、売買契約と契約法における責任を原則として負うことになりますが、代理店契約の場合には本人である日本企業がこれらの責任を負うのが基本となります。実務においては、現地ビジネスの業績が悪化した場合の不良在庫の取扱いや、現地の顧客に信用不安が生じた場合の売掛債権の回収などの場面でも、日本企業と販売店・代理店の責任の所在が争いになり得ます。

 そのため、万が一、販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結するつもりで、代理店契約(Agency Agreement)を締結してしまっていた場合には、日本企業としては想定していなかったトラブルに直面することになりかねません。このため、日本企業としては、将来生じ得るトラブルも意識して、契約上の権利と義務・責任が明確になるよう慎重に契約書の内容を確認することが重要です(ここでも、自分の常識が相手の常識とは限らないため、契約書が「明確」であるかが基本的なレビューのポイントです)。

 販売店と代理店の区別の方法としては、典型的には用語による区別(販売店(Distributor)または代理店(Agent))がありますが、下記の条項例のように機能や授権の範囲で区別することもあります。
 条項例①では、選任の目的が、販売店は商品の販売(=the sale of the Products)である一方、条項例②では、代理店は商品を販売するためのマーケティングおよび販売促進(=the marketing and the promotion of the sale of the Products to customers)、顧客からの製品の引合い・注文の誘引(=the soliciting from such customers to the Principal of quotations or orders for the Products for the sale)と具体的に記載されているという違いがあります 3

条項例①:販売店の指定

The Supplier hereby appoints the Distributor a distributor for the sale of the Products in the Territory, and the Distributor shall accept such grant.

条項例②:代理店の指定(締約代理)

The Principal hereby appoints the Agent to be an agent of the Principal in the Territory for the marketing and the promotion of the sale of the Products to customers in the Territory and for the soliciting from such customers to the Principal of quotations or orders for the Products for the sale in the Territory.

 しかしながら、実務においては、「販売店」と「代理店」の区別が契約上あいまいで明確にされておらず、その解釈をめぐってトラブルが生じるケースも珍しくありません
 たとえば、「販売店」または「代理店」のいずれであるかはっきりしない名称として、「販売代理店」や「系列店」、「特約店」、「輸入総代理店」などがあります。これらの概念は業界等の違いによってもさまざまな使い方がされるため、トラブルのもととなりやすいので、法務アドバイザーにも相談しつつ、契約当事者間での理解が共通になっているかを慎重に確認すべきでしょう。

販売権の内容

(1)対象商品の範囲・販売地域、販売権の有効期間等

 販売権の内容を定めるにあたっては、販売店がサプライヤーの商品をどのような範囲で販売できるかがスタートポイントとなります。具体的には、販売店が販売できるサプライヤーの商品は何か(対象商品の範囲)、販売店が当該商品を販売できる地域(販売地域)と期間(販売権の有効期間)が、販売権の基礎的な要素となります。

 販売店としては、多くの商品ラインナップを広い地域で長期間販売する権利を得られれば、営業活動・販売活動の裁量が広がることになります。一方で、サプライヤーとしては、収益が全体的に高くなるように、販売店の特性も踏まえて地域ごとや商品ごとに異なる販売店に販売権を付与したり、ある販売店の業績が不振であった場合に他の販売店への切替えが容易になるように販売権の有効期間を限定的にしたりするなど、商品の国外展開における最適解を考えることとなります。

  • 対象商品("Products")
     サプライヤーが販売する全商品について販売店に販売権を与える場合は比較的シンプルですが、対象商品をサプライヤーが販売する商品の一部に限定する場合には、どの商品を対象商品とするかが明確に定義されているか、注意してレビューする必要があります(場合によっては、対象商品の品番等をリスト化して明示することもあり得ます)。
  • 販売地域("Territory")
     特定の国が指定される場合もありますが、ある一定の地域を指定する場合には、その地域の範囲について契約当事者間の理解が共通になっているかに留意が必要です(場合によっては、具体的な国名をリストで列記し、“the Territory” などと定義することが明確性の観点から望ましいこともあります)4
  • 販売権の有効期間
     終了のタイミングや更新の条件に疑義がないようにするのが肝要です

 このほか、販売権の範囲については、二次販売店の起用にはサプライヤーの承諾を要求すべきかといった細かな条件を、個別具体的な案件の目的・特性も踏まえて、ケース・バイ・ケースで検討する必要があります

(2)独占性の有無

 販売権の内容でもうひとつ重要な要素が独占性の有無です。
 ある商品の特定の地域における販売について、サプライヤーが販売店に対して独占的販売権(“exclusivity”)を付与した場合、当該地域における当該商品の販売は販売店しかできない(サプライヤー自身も販売することはできない)こととなります。

 販売店としては、自らの責任とリスクでサプライヤーの商品を現地市場でマーケティングし、ブランドや商品の認知度を高めるために経営資源を費やすことになりますので、その成果を他の販売店などから横取りされることがないよう、対象商品の販売地域における独占的販売権を確保したいところです。
 一方、サプライヤーとしては、サプライヤー自身も当該地域で対象商品を並行して販売する可能性があるかも踏まえて、独占的販売権の付与については慎重に検討する必要があり、仮に独占性のない販売権を付与する場合には、契約書上明確にするべきといえます。

 サプライヤーが販売店に対して独占的販売権を与える場合、サプライヤーとしては当該地域における販売ルートが販売店に限定されることとなるため、販売店が対象商品の当該地域における販売活動に注力するよう、最低購入義務といった契約上のコミットメントを求めることもあります。

 仮に販売店が期待どおりの実績を上げられなかった場合に他の販売店への切替えも視野に入れられるようにするため、独占的販売権の内容、範囲、期間などを丁寧に設計する必要があります。また、すでにサプライヤーが直接販売を行っている地域について販売店に独占的販売権を付与する場合には、サプライヤーの既存顧客についてはサプライヤーが継続して販売することを可能とするといったアレンジもあり得ます。このほか、ある商品について、販売店に一部の地域では独占的販売権を与えつつ、他の地域では非独占的な販売のみを認めるケースもあります(条項例③)。

条項例③:一部の地域には独占権を与え、一部の地域には与えない場合

The Distributor's right set forth above shall be granted on an exclusive basis for [Territory A] (the “Exclusive Territory”) and a non-exclusive basis for [Territory B] (the “Non-exclusive Territory”).

販売店の義務

 独占的販売権は、販売権の付与に関するサプライヤーの行為に対する制限ですが、販売権の付与にあたっては、最低購入義務(上記 3-2(2))のようにサプライヤーが販売店側に義務を課すことがあります。

マーケティング・販促活動、情報提供等

 サプライヤーとしては、販売店に販売権を付与した地域における対象商品の売上増加のみならず、自社ブランドの知名度とレピュテーションが高まることも重要な目的のひとつといえます。このため、販売店が対象地域でどのようなマーケティング・販促活動を行うかにつき、サプライヤーのコントロールが及ぶように、たとえば、サプライヤーが自社で準備した販促資料等を販売店に使用させたり、販促活動の計画についてサプライヤーによる事前の承諾を要請したりすることがあります 5
 一方で、販売店としては、(特に最低購入義務(下記(1)参照)が販売店契約で定められている場合など)販売店自身のイニシアティブで販促活動を行いたい場合や、販促活動に関して逐一サプライヤーの承諾を得るのはビジネスの実情になじまない場合もあり、販促活動の費用は販売店の負担としつつ、販促活動について一定の裁量を販売店が要請することもあります。

 効果的なマーケティング・販促活動の決め方は、個別のビジネスや当事者の関係ごとに当然異なってくるため、折衷的な案として、サプライヤーと販売店との協議により販促活動の計画を決定することとする場合もあります。その場合には、「絵に描いた餅」にならないよう、協議を行うスケジュールや協議の対象、協議しても合意できない場合の対処等の「手続」を具体的に合意しておくことがポイントとなります。

 また、ブランドやレピュテーションの管理という観点からは、サプライヤーとしては、特に販売店が遠隔地にいることも踏まえて、販売店の事業活動や財務状況につきモニタリングする権利を確保しておくことも重要です(たとえば、定期的な財務諸表や販売店契約の履行状況に関する報告の提出、連絡協議会の設置など)。
 一方、販売店としては、過度な情報提供義務や報告義務を課されると、かえって事業活動の支障にもなり得るため、販売店からはモニタリングの権利に制限を求められることもあります。

(1)最低購入義務

 ターゲットとした国外市場において販売の拡大ができるかは販売店のパフォーマンス次第であるため、サプライヤーとしては、販売店には対象商品のマーケティング・販促活動に最大限のコミットメントをしてもらいたいと考えるでしょう。特に、独占的販売権を付与している場合には、サプライヤー自身が対象商品の取扱いを当該市場で行うことも契約上制限されますので、仮に販売店が十分な経営資源や労力を割かなかったような場合のリスクヘッジも検討に値します。

 たとえば、販促活動等の義務を十分に果たさなかったこと等の契約上の義務違反を原因とした解除によって販売店契約を終了させ、他の販売店に切り替える(またはサプライヤー自らが当該市場に進出する)といった方法があり得ます(ただし、販売店契約の解除には現地法上の制限(下記 4.参照)が存在する場合もあるので注意が必要です)。

 この点、販売店が一定期間のうちにサプライヤーから購入すべき商品の最低数量(最低購入数量)を定めるというリスクヘッジの方法も実務上利用されています。すなわち、最低購入数量の定めがあることで、在庫リスクを負担する販売店としては、一定期間における販売数量が最低購入数量以上となるように販促活動を行うインセンティブとなります。
 一方、サプライヤーとしては仮に販売店のパフォーマンスが芳しくなく、最低購入数量分の商品の購入が達成されなかった場合には、契約上の義務違反として、①(独占的販売権が付与されている場合には)販売権を独占的なものから非独占的なものに変更する(=サプライヤー自身または他の販売店が対象商品を販売できるようにする)、②不足分の購入額相当額を損害賠償請求する、③販売店契約自体を解除する、といったオプションを販売店契約の中で設けておくこととなります 6

条項例④:最低購入数量が未達成の場合のサプライヤーへの解除権の付与

1. For each one (1) year period commencing on the date hereof during this Agreement, the Distributor shall purchase from the Supplier not less than a minimum quantity of the Products as set forth below (the “Minimum Purchase Quantity”):

1) The annual minimum quantity for the first year:________

2) The annual minimum quantity for the subsequent year: ________

2. In case the Distributor shall fail to purchase the Minimum Purchase Quantity for any one-year period, the Supplier may terminate this Agreement with immediate effect by sending a written notice to the Distributor within thirty (30) days after the expiry of the relevant period.

条項例⑤:最低購入数量が未達成の場合のサプライヤーへの解除権または販売権変更権の付与

In the event the Distributor fails to attain the purchase of the Minimum Purchase Quantity, the Supplier at its sole discretion, may, by giving written notice to the Distributor:

(a) terminate this Agreement;

(b) convert the exclusive distributorship granted hereunder to a non-exclusive distributorship;

(c) remove certain part of the Territory granted hereunder; and/or

(d) remove certain items of the Products from the subject of this Agreement.

(2)競合品の取扱い

 契約上、競合品の取扱いに関する規定がなければ、販売店は対象商品と競合する商品であっても制限なく取り扱うことができます。サプライヤーとしては、現地市場における自社の商品やブランドの認知度を高め、販売の拡大をするために販売店に販売権を付与しますので、販売店が自社の商品と競合する商品の取扱いをしては、かかる目的が想定どおりに達成されない懸念があります。一方で、効果的なマーケティングのためには、対象商品と類似・同種商品の取扱いの経験があり、市場の状況・情勢に精通している販売店を選ぶこともビジネス上の重要なファクターと思われます。

 そこで、サプライヤーとしては、条項例⑥のように、販売店による対象商品の競合品の取扱いを原則として禁止しつつ、販売店契約の開始時に現に販売店が取り扱っている商品については例外的に取扱いの継続を許容するなど、販売店の従来の事業活動にも配慮するアプローチがあり得ます。
 この場合、「競合品」の範囲は紛争の火種とならないようできる限り明確にしておくことが望ましく、①具体的に競合品を特定して列記する方法(限定列挙)や、②競合品を定性的に定義したうえでいくつか具体例を挙げる方法(非限定列挙)などがあります。

条項例⑥:競合品の取扱いの禁止

1. The Distributor is prohibited from purchasing or selling products that are competitive with the Products in the Territory which include but are not limited to [Product X].

2. Regardless of the preceding sub-clause, the Distributor may purchase and sell [Product Y] the Distributor has actually purchased and sold as of the execution of this Agreement.

現地法による制限

 販売店契約の条件については、再販売価格の決定や最低購入数量への制限といった、取引が行われる現地法上の規制が及ぶ可能性に留意する必要があります。
 このような現地法上の規制の中でも特に注意が必要なのが、いわゆる代理店保護規制です。代理店保護規制とは、当該国・地域において販売店・代理店を選任した場合には、現地法上、他の取引契約と比べて高い解除・解約のハードルが設定されている(たとえば、他の契約類型と比べて長い事前通知期間が設けられている、解除・解約の際に販売店・代理店に対して一定の補償を行う必要がある)など、販売店・代理店を優遇する法制をいいます(なお、「代理店保護規制」といっても、実際には販売店契約と代理店契約の双方について同様の規制を適用する国も多く存在します)7

 また、アラブ中東諸国や中南米などにおいては、当該国・地域において販売店・代理店を選任する場合には、その販売店・代理店を現地当局に対して登録することが求められる場合もあります。このような登録制度を有する国においては、販売店・代理店契約の中で定める必要がある法定記載事項が欠けていると販売店・代理店の登録が現地当局に拒絶される可能性があったり、(販売店・代理店に不都合なタイミングで販売店・代理店を切り替えようとしたときに)販売店・代理店から新たな販売店・代理店の登録の差止めが請求されたり、といった法的なリスクがないとはいえません。

 代理店保護規制は地域によって一定程度の特色が見られるものの、やはり国によってその内容が異なることから、想定していたタイミングで解除・解約ができなかったといった事態を可能な限り避けるため、販売店・代理店を選任する場合には、適用される法令等を調査し、想定されるリスク・シナリオを検討しておくことが重要です。

実務上の留意事項

 販売店契約は日本企業の国外進出の際に頻出の契約類型ですが、代理店契約との区別がきちんとされているか、販売権の内容や販売店の義務については明確かつ網羅的に記載されているかといった、英文契約書の基本的なレビューの視点に立ち返った検討を忘れないことがポイントといえます。
 また、競争法や代理店保護規制といった、ターゲットとしている国外市場の現地規制を踏まえた契約内容となっているかなど、個別事案によって多様な法的論点やチェック項目のある契約類型ともいえますので、法務アドバイザーとの緊密なコミュニケーションをとりながら検討するのが望ましいでしょう。


  1. 販売店契約においては、サプライヤーとしては、自社の商品を廉価で再販売されないようにしたいところではあります。しかし、顧客への再販売価格は販売店が自らの裁量で決定することが基本であり、再販売価格の決定に対するサプライヤーからの制約は競争法に抵触する可能性があります。一般論としては実質的に再販売価格に対する制約があるか(実質基準)により判断されるところ、各国において規制の内容も異なることが多いため、仮に再販売価格に関する条件を販売店契約に入れる際は、現地の競争法の専門家も交えた検討をするのが望ましいといえます。 ↩︎

  2. 動産の売買を目的にした販売店契約の場合、動産の売買契約としてウィーン売買条約の適用の可能性がある点には留意が必要です。 ↩︎

  3. 代理店契約の場合には、代理店の行為および権限の範囲により、媒介代理(取引の媒介や取次を行い、契約の締結権限を持たない代理)と締約代理(本人に代わって顧客との間の契約を締結する権限を持つ代理)も区別されます。 ↩︎

  4. 特別行政区等の特殊な地域(香港、マカオ、台湾など)が販売地域に含まれているかについても、契約当事者間で理解に齟齬が生じ得る落とし穴と思われます。 ↩︎

  5. 販促活動に際して、サプライヤーが販売店に対して、自社の商標や販促資料を使用させる場合には、当該商標や販促資料等の知的財産権の取扱いも具体的に合意しておく必要があります。 ↩︎

  6. ただし、最低購入義務の設定に関しては、国・地域によっては競争法上の制限があり得るため、現地の競争法専門家にもアドバイスを求めつつ、適用される規制に照らした契約条項のチェックをするのが望ましいといえます。 ↩︎

  7. 代理店保護規制に関しては、販売店・代理店保護のための特別法が定められている場合だけでなく、民法や商法等の中で販売店・代理店保護の規律が置かれている国や、判例の集積により一定の販売店・代理店保護が図られている国などもあり、さまざまな態様が存在することにも注意が必要です。また、契約の準拠法を外国法(たとえば、日本法)にしたとしても、代理店保護規制が強行法規の場合にはその適用が免れられないこともある点にも留意すべきといえます。 ↩︎

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