英文契約書の読み方・直し方 専門家による類型別の条項解説

第3回 英文売買基本契約のポイント 条項サンプル付き

取引・契約・債権回収

目次

  1. 企業間取引における売買「基本」契約とは
  2. 売買基本契約の全体像
    1. 売買基本契約と当事者の視点
    2. 売買基本契約の一般的な構造
  3. 売買基本契約の主要条項とポイント
    1. クロスボーダー取引の代金支払いと信用状取引
    2. クロスボーダー取引と引渡し
    3. 所有権と危険負担
    4. 保証と救済
    5. 契約期間と解約・解除
  4. 実務上の留意事項
本稿からは、秘密保持契約(NDA)に続き、さまざまな取引類型における英文契約書のポイントをご紹介していきたいと思います。まずは売買基本契約を取り上げます。

企業間取引における売買「基本」契約とは

 本稿のテーマは物品・製品の売買に関する契約(=売買基本契約)です。
 売買は企業の事業活動において欠かすことのできない基本的な取引行為であることから、売買基本契約は企業活動における契約の基本類型といっても過言ではなく、本稿でご紹介する条項はいずれも読者の皆様にとっては珍しくないものかもしれません。もっとも、英文の売買基本契約では、クロスボーダー取引の特徴も踏まえた注意と手当てが必要になります。

 企業間の売買に関する契約書としては、実務上、売買の基本的な条件を定めた基本契約と個別取引ごとの売買契約(個別契約(“individual agreement”))が区別されるのが一般的です

 一般消費者による売買と異なり、原材料や部品の仕入れ、卸売業者や販売店への商品の販売といった企業間の売買は、多くの場合は反復継続して行われます。個々の売買のたびに契約条件の交渉を行っていると、タイムリーな商品の供給に支障を来しかねません。
 そこで、ある期間に反復継続して行われることが予定されている売買の契約条件を事前に「売買基本契約」で合意し、実際に売買を行う際には、売買される製品の種類や数など受発注に必要な最小限の内容のみをその都度注文書(purchase order)請書(acceptance letter)の交換等で確認して、個々の売買につき契約をする方法(=個別契約の成立)が、実務上確立しています 1

 企業間の売買取引について基本契約と個別契約が締結される場合、個別の売買取引には2つの契約書に定められたルールが適用されることになります。このため、トラブルの原因とならないよう、2つの契約におけるルールが矛盾抵触した場合にどちらのルールを優先させるかが明確になっているかどうか、注意をする必要があります。

売買基本契約の全体像

売買基本契約と当事者の視点

 一般論として、契約は当事者間の合意により成立するため、契約の内容を書面で合意することは必ずしも売買取引のために必要ではありません 2。実際、一般消費者が日常生活で売買をする場合には契約書が作成されないことのほうが多いかと思いますが、企業間の売買の場合には、売主と買主の権利義務関係を事前に書面で明確にしておくことが(特に、当事者の商慣習が必ずしも同じではないクロスボーダー取引では)将来のトラブルを防止する観点から極めて重要です

(1)売主の視点

 売主としては、「確実な代金回収」と「商品・製品に関する過度な責任の回避」が重要な視点となります

 企業間の売買では取引数量や金額が一般消費者の売買と比較して格段に大きくなるため、確実な代金回収のためには、代金の支払請求ができるタイミングがいつか、買主に信用不安が生じた際に代金を回収する方法が確保されているかといった点が、検討ポイントとなります(たとえば、製造費用が高額である場合には代金の一部前払いを要求する場合もあるでしょう)。

 一方で、買主に対するコミットメントや責任の程度は商業上合理的な範囲に収めておきたいと売主は考えるでしょう。すなわち、売主としては、引渡しをする売買目的物の仕様や技術水準等が明確になっていないと、思わぬ債務不履行責任を買主から問われるリスクがありますし、納入時期や費用負担の割合などが、要求される製品・商品の仕様を踏まえたものとなっているかも確認しておくべきでしょう。
 たとえば、販売数量のコミットメントや専属的な供給義務の有無、原材料や運送費等のコストが当初の想定よりも跳ね上がった場合の負担割合、製品の品質や性能等に関する保証の有無・内容などは、契約交渉において頻繁に登場する論点です。

(2)買主の視点

 買主としては「目的を実現できる商品・製品の確実な購入」および「十分な補償等の確保」が懸念点になると考えられます

 買主としては売買目的物が利用目的に合致しているかは重要であり、また、必要な数量の商品・製品が適時に納入されるか、製品に不良等の問題があった場合の補償請求が可能かという点が関心事となります。
 買主としては、具体的には、予定していた品質・性能や水準を満たす商品・製品が納入されているかを、納入後に十分な期間をもって確認し(=検収)、検収が完了した後に初めて代金の支払義務が生じる建付けを希望するのが一般的です(また、商品・製品が必要な場合のタイムリーな納入もポイントになりますので、引渡時期の合意と引渡しが間に合わなかった場合の補償や代替措置も論点となります。反対に、売主としても、どのようなプロセスをクリアすれば売買目的物の引渡しが完了し、代金の支払いが受けられるかは留意事項といえます)。
 製品の性質や性能等に問題があった場合における補償請求の可否も買主としては気になるところですが、特に商品の転売や加工品の販売を予定している場合には、販売先や最終消費者等の第三者からの性能不備等に起因する損害賠償請求に関する責任を売主に追及できるかも、過度の責任負担を回避したい売主との間での交渉事項となります。

 売買基本契約を検討する際には、案件の個別事情を踏まえる必要が高いため、これらの基本的な「視点」を踏まえつつ、事業部門等から取引の目的や性質、よくあるトラブル等の情報を収集して、実際に取引を行う際に発生し得るトラブルのシミュレーションをし、契約書へ反映することが重要になります

売主と買主それぞれの重要な視点

売主 買主
確実な代金回収 目的を実現できる商品・製品の確実な購入
商品・製品に関する過度な責任の回避 十分な補償等の確保

売買基本契約の一般的な構造

 売主にとっては「確実な代金回収」が、買主にとっては「目的を実現できる商品・製品の確実な購入」が重要な視点であることから、売買契約では、代金支払いと引渡しがその骨格となっています。売主の「商品・製品に関する過度な責任の回避」と買主の「十分な補償等の確保」については、売主と買主の利益が危険負担、保証、解除といった規定の中で調整されるのが一般的です。

 英文売買基本契約の一般的な構造は以下のとおりです。

  • 定義
  • 代金支払い
  • 引渡し
  • 危険の移転
  • 所有権の移転
  • 個別契約
  • 保証
  • 解除
  • 一般条項

 なお、動産の売買契約の場合には、当事者間の合意の内容にかかわらず、契約上で明示的に排除しない限り、ウィーン売買条約 3 が国内法に優先して適用される可能性があるため、不測の事態を避ける観点から、準拠法の指定をする場合に注意が必要です。

売買基本契約の主要条項とポイント

 ここからは、売買基本契約の主要条項について、上記の基本的な「視点」も踏まえつつ、英文契約とクロスボーダー取引における実務の観点からの留意点をご紹介しようと思います。

クロスボーダー取引の代金支払いと信用状取引

 売主としては、買主に信用不安が生じた場合も想定して、確実な代金回収のメカニズムを確保しておきたいと考えるでしょう。
 この点、クロスボーダーの売買は隔地者間の取引となるため、代金支払い・決済の手順についても、クロスボーダー取引の特徴を踏まえた方法を売買基本契約で明確にしておく必要があります
 最も簡便な方法は、送金小切手、郵便送金や電信送金ですが、これらの方法は買主に送金手続のイニシアチブがありますので、買主からの支払確保の確実性は必ずしも高いとはいえません(このため、グループ内取引や長期間の安定的な取引関係がある場合といった、売主と買主との間の信頼関係が確立されているケースでは用いられることもある方法といえます)。
 クロスボーダーの売買取引では、実務上、信用状(Letter of Credit、L/C)4 が広く用いられています。信用状を用いた売買取引(信用状取引)のメリットは、売主は(前払いよりは確実ではないものの)船積みと同時に代金相当額を回収することができ、買主は代金前払いのリスクを負わない点にあります。

 信用状取引は下図のように複数のステップを踏むことになります。

  1. 買主の依頼を受けて、銀行(開設銀行)により他の銀行(買取銀行)宛に信用状が発行される
  2. 売主は信用状の内容に従って商品を船積みをし、船会社から交付された所定の書類(Bill of Lading(「B/L」船荷証券)や為替手形等)を買取銀行に提示することで、買取銀行から代金相当額の立替払いを受けることができる
  3. 開設銀行は、買取銀行からの所定の書類(B/L等)の引渡しと引き換えに、代金相当額を買取銀行に支払う
  4. 買主は、為替手形の決済による開設銀行への代金相当額の支払いと引換えに、商品の受領に必要な書類(B/L等)を受領し、これらの書類を船会社に提示して商品を受け取る

信用状取引の流れ

信用状取引の流れ

 条項例①では、請書(acceptance letter)の交付により個別契約が成立し、注文内容の確認が行われた後(第1項)、所定の期日内に、買主側で信用状(letter of credit)の発行手続を銀行と行うとともに、売主側では売買対象物に関する税関手続と船荷証券(B/L)の発行を行うという手続を確認しています(第2項)。

条項例①:信用状を用いた支払い(Payment)

Section [A] Payment

1. Along with or immediately after sending an acceptance letter (the “Acceptance Letter”), the Seller shall issue (i) a packing list of the Products ordered by the Purchaser with the Purchase Order (the “Packing List”), and (ii) an invoice to the Purchaser for the aggregated prices provided in the same Acceptance Letter (the “Invoice”). The Purchaser shall confirm if the Packing List and Invoice are corresponding to the Purchase Order for which the same Packing List and Invoice are issued.

2. Upon confirmation of the Purchaser that the Packing List and Invoice are in order, within [X] days from such confirmation;

(a) The Purchaser shall open an irrevocable letter of credit in the amount of the aggregated prices provided in the Invoice in favor of the Seller with a schedule bank that is satisfactory to the Seller with the validity period of at least [Y] days after the last date of the month of the Delivery; and

(b) the Seller shall instruct a customs agent to (i) take forward the custom process for the Products ordered by the Purchase Order and (ii) issue a bill of lading for the same Products (the “B/L”).

クロスボーダー取引と引渡し

 クロスボーダーの売買基本契約を検討する際に、条項例②のような引渡し(Delivery)に関する条項をご覧になったことはないでしょうか。

条項例②:引渡し(Delivery)

Section [B] Delivery
Delivery of the Products shall be made at the Port on FOB basis (the “Delivery”) within [X] days from the date on which the Seller receives the aggregated prices provided in an Invoice by wire transfer. The trade term “FOB” shall be interpreted in accordance with INCOTERMS 2020 as amended.

 国内の売買取引における売買基本契約では、売買目的物の引渡しの時期、場所や方法、引渡しに要する費用の負担、危険の移転時期などは、具体的かつ明示的に契約書で規定されるのが一般的です。一方、クロスボーダー取引においては、引渡しに関する諸条件が上記のようにIncotermsを参照することが少なくありません
 Incotermsとは、国際商業会議所(International Chamber of Commerce、ICC)が定める、輸出入される商品の引渡しの方法・条件、費用(輸送料、保険料、通関費用、関税等)、危険の移転時期その他のリスク負担に関する条件等の貿易条件であり、11種類のパターンが“Incoterms 2020”として発表されています 5

 Incotermsを利用する場合には、いずれの条件を採用するかが当事者間で交渉されることとなりますが、上記の参考例では、Incotermsのうち、比較的中間的なFOB(Free on Board)を参照しています。FOBでは、売主の引渡義務は売買目的物を船上に置いた時に完了したものとして危険が買主に移転し、また費用は売主が輸出通関まで負担することになります 6
 もちろん、Incotermsを用いずに、下記の条項例③のように、売主と買主の間で個別具体的に引渡しに関する条件を合意することも可能です。その場合、危険の移転時期などは契約書内で別途定める必要がある点には留意が必要です(なお、引渡しの具体的な場所や日時は個別契約において規定することも少なくありません)。

条項例③:引渡し(Delivery)

Section [B] Delivery
Seller shall, at its own responsibility and cost, deliver a prescribed quantity of the Products to the place designated by Purchaser on the date specified in an Individual Agreement.

所有権と危険負担

 法的には、代金の支払いや引渡しのタイミングと、所有権や危険(売買目的物が不可抗力で毀損・滅失した場合のリスク負担)が移転する時期は必ずしも一致しません。たとえば、契約上特別の合意がない場合、日本の民法上は、所有権は契約の成立時(中古車や骨董品などの特定物の場合)または目的物の特定時(不特定物の場合)に移転し、危険は引渡時に移転するのが原則とされています。

 このため、所有権や危険の移転時期は、売主と買主との間で契約交渉において利害対立が顕在化する点の1つです。
 売主としては、商品が滅失した場合のリスクをできる限り負わないよう危険の移転は早めにし、所有権の移転は代金支払い時に可能な限り近くしたいと考えるでしょう(たとえば、引渡しをしても所有権移転を留保できれば、代金回収できない場合に商品の返還を請求できるため、所有権留保が代金回収のための一種の担保的機能を果たします)。
 一方で、買主としては、売主とは逆に危険の移転時期は可能な限り引渡しの時点に近づけたいと考えつつ、所有権はより早い時期に移転することを望むでしょう(所有権が移転すれば代金支払いの前であっても商品の引渡しを請求できるためです)。

 このような売主と買主の立場からみて、折衷的なのが、条項例④のような、商品の引渡時に所有権と危険負担が移転するというルールです。なお、危険の移転時期はIncoterms 2020において規定されている一方、所有権の移転時期に関する規定はないため、具体的に契約書で合意しておく必要があることには注意が必要です。

条項例④:所有権および危険負担(Title and Risk)

The title to and risk of the Products delivered by the Seller to the Purchaser shall pass from the Seller to the Purchaser at the time such Products are delivered pursuant to Section [B] (“Delivery”).

保証と救済

 買主としては、売買目的物が目的に照らして期待に沿う品質・性能を有しているかが重要です。このため、買主としては売買目的物の品質・性能に不備があった場合には売主に対して取替えや金銭補償を要求したいと考える一方、売主としては過度に厳しい保証をするのは避けたいといえます。

 この点、クロスボーダー取引においては、適用される現地法において、(売買契約で明示的に合意がされていない場合でも)デフォルト・ルールとして売買目的物の品質・性能等に関する一定の表明保証を売主が求められる場合がある点に注意が必要です。したがって、想定していない法令上の保証が適用されないよう、売主としては、保証の対象(商品の数、型番、仕様、品質・性能の水準等)と内容(交換や代金減額、補償、解除などをどこまで認めるか等)については、契約書で明確にしておく必要があります

 また、製品の品質や性能等の不備があった場合の損害賠償の範囲に関するデフォルト・ルールが国ごとに異なる点にも留意すべきといえます。クロスボーダー取引においては、各当事者が前提としている商慣習や一般的なマーケットの水準が異なり得るので、自らの「常識」が相手方と共有されていないことを考慮に入れつつ、契約条件を検討する必要があります。

 この点、日本企業にとって参考になるのは、日本の民法上の契約不適合責任のルールです。具体的には以下のとおりです。

  1. 売買目的物が契約の内容(種類、品質または数量)に適合しないものである場合、買主は修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる
  2. 買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告し、その期間内に売主が履行の追完をしない時は、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる
  3. 代金の減額に代えて損害賠償請求や契約の解除も可能

 条項例⑤では、商品の型や仕様が個別契約に違反する場合には代替物の交換を行うこと、また、数量に不足がある場合は追加で商品を提供する旨が規定されており、日本の民法上認められている範囲内の救済手段といえます。

条項例⑤:保証(Warranty)

1. The Seller represents and warrants to the Purchaser that the Products to be sold under this Agreement shall conform to the models, numbers and specifications as provided in the Individual Agreement for the same Products.

2. Other than provided in the preceding sub-section, the Seller shall not make any representations and warranties for the Products.

3. If the models or specifications of Products delivered by the Seller to the Purchaser does not conform to the ones provided in the Individual Agreement, the Purchaser shall promptly replace those Products with the conforming Products. If the number of Products delivered by the Seller to the Purchaser does not conform to the ones provided in the Individual Agreement, the Purchaser shall promptly deliver the number of Products in short to the Purchaser.

 買主としては、売買目的物の引渡しを受けた後に品質・性能等が仕様に適合しているかをチェックする機会を確保するため、チェックの完了(=検収の完了)まで売主による引渡義務等の履行は完了していないようにしたいと考えるのが通常です。一方で、たとえば日本の商法のように、買主が商品の受領後遅滞なく検査をし、契約に適合しないことを直ちに売主に通知しなければ救済措置(商品の追完等)を受けられないことがデフォルト・ルールとされている場合もあります。

 この点、条項例⑤では、保証に違反がある場合の主張期間が定められておらず、他の条項でもこれが具体的に定められていないと、デフォルト・ルール(日本法が準拠法であれば契約不適合の発見後直ちに通知が必要)が適用され得ることになります。そのため、検収のプロセスと救済措置の関係も、注意すべきレビューのポイントといえます

契約期間と解約・解除

 売買基本契約は、反復継続することが想定されている売買取引を目的とするため、売主または買主のいずれか一方は取引を継続することを希望しているものの、もう一方が契約を終了したいと考えた場合には、両者の利害が対立し、場合によっては紛争に発展する可能性もあります。このため、いずれの当事者が、どのような場合に契約を解約・解除できるかを明確にしておくことは、将来の紛争防止の観点から重要なポイントといえます

 この点、日本では、売買基本契約のように契約関係が長期間継続し得る契約については、契約書で合意された解除事由が発生したことや契約期間が満了したことだけでは、契約の解除や更新の拒絶(解約)が認められないとする判例の考え方(いわゆる「継続的契約の法理」)があります。もっとも、継続的契約の法理のような考え方が見られる法域は限られており、多数の法域では、契約書で合意された条件が充足すれば原則として解約・解除が可能と考えられています

 このため、解約・解除を制限する法理が適用される準拠法であるかの確認もさることながら、契約当事者間で「契約書に定めた条件が充足すれば契約は解約・解除できる」という認識が共有されているかにも注意を払わなければ、将来思わぬトラブルに直面してしまうかもしれません。

 また、対象となる売買取引を終了させる場合には、売買基本契約のほかに個別契約も売買取引に適用される点を忘れてはいけません。すなわち、①売買基本契約の解約・解除の理由に個別契約の違反が含まれるか、②売買基本が終了した場合に個別契約は終了するか、といった、売買基本契約と個別契約のリンクを整理しておく必要があります
 たとえば、条項例⑥では、買主による基本契約または個別契約の違反を原因として基本契約と個別契約のいずれも解除が可能とされており(第1項(ⅰ))、基本契約が解除された場合には個別契約に関して期限の利益が喪失することとされています(第2項)。

 特に、売買基本契約が終了した場合の個別契約の効力については、売買基本契約が終了すると共に個別契約もすべて終了とする場合もある一方、売買基本契約の終了時点で既に締結されていた個別契約については効力が継続するとする場合も少なくありません(たとえば、個別契約も自動的に終了すると既に発送されてしまった商品の扱い等が問題となり得ます)。
 売買取引の性質や当事者の立場等にも鑑みて交渉がされるポイントですが、いずれにしても事後的に紛争の火種とならないよう十分な検討が必要となります。

条項例⑥:解除(Termination)

Section [C] Termination

1. Upon the occurrence of any of the following events in respect of the Purchaser, the Seller may immediately terminate, without any notice or demand, all or any portion of this Agreement, any Individual Agreement or any other agreement related to the sales transactions contemplated herein:

(i) If the Purchaser breaches any provision of this Agreement, any Individual Agreement or any other agreement related to the sales transactions contemplated herein;

(ii) If the Purchaser is subjected to a revocation or suspension of its business license by the competent authorities;

(iii) If the Purchaser becomes insolvent; or

(iv) If a petition is filed against the Purchaser for declaration of bankruptcy or commencement of civil rehabilitation proceedings;


2. In the event of termination under the preceding sub-section, all the Purchaser's obligations to the Seller under this Agreement, the Individual Agreements and any other agreement related to the sales transactions contemplated herein shall become due and payable immediately, and the Seller shall be entitled to claim indemnification from the Purchaser for damages caused to the Seller by the termination.

実務上の留意事項

 売買契約は企業間取引では頻繁に登場する典型的な契約類型ですが、本稿でご紹介したものだけでなく、個別具体的な売買取引ごとに、検討の際にはさまざまな論点や要検討事項が出てきます。
 特に、クロスボーダーの売買取引での英文契約書を検討する際には、代金の決済方法やIncotermsの利用といったクロスボーダー取引特有の前提も踏まえつつ、契約締結後に継続していく当該売買取引のオペレーションの中で想定されるトラブルもシミュレーションしたうえで、英文契約書の基本的な視点(「明確性」「網羅性」「手続」)も忘れずに検討することが、スムーズな取引と将来の紛争防止に役立つと考えられます。


  1. なお、「約款」も売買基本契約と同様に、約款で規定された内容が個別の取引に適用されます。もっとも、約款は、不特定多数の相手方を対象とした、個別の相手方に応じた交渉・修正を想定しない画一的な条件(保険会社や金融機関が用いることが一般的です)である点で、個別具体的な取引ごとに売主と買主との交渉を経て合意される売買基本契約とは異なります。 ↩︎

  2. たとえば、書面で締結しなければ無効となる日本の保証契約(民法446条2項)のように例外はあります。 ↩︎

  3. ウィーン売買条約は、国際連合国際商取引法委員会(United Nations Commission on International Trade Law)が起草した、国境を越えて行われる物品の売買に関して、契約や当事者の権利義務の基本的な原則を定めた国際条約です。 ↩︎

  4. 法的には手形の一種と整理できると考えられています。 ↩︎

  5. 最新版のIncoterms 2020(2020年1月1日より発効)では、最も売主に有利なEXWから最も買主に有利なDDPまで11種類の貿易条件(EXW、FCA、FAS、FOB、CFR、CIF、CPT、CIP、DAT、DAP、DDP)が用意されています。各貿易条件の内容についてはICCが解説を各国語で出していますので、レビューの際には参照することが有用です。なお、過去の売買基本契約書を検討する際には、Incoterms 2020改訂前の条件が前提とされている可能性がある点に注意が必要です。 ↩︎

  6. なお、CIF(Cost, Insurance and Freight)も同様に中間的なIncotermsです。CIFでは、売主の引渡義務はFOBと同様に売買目的物を船上に置いた時に履行されたこととなりますが、売主は指定仕向港への運送等の費用まで負担する必要があります。 ↩︎

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