取締役会の招集・決議・報告を簡略化する方法

コーポレート・M&A

 取締役会を招集し、開催するのが手間に思うのですが、簡単に済ませる方法はありませんか。

 株主総会の簡略化の場合と同様、①取締役会招集手続の省略(会社法368条2項)、②取締役会決議の省略(みなし決議)(会社法370条)、③報告の省略(会社法372条1項)という手段があります。 もっとも、3か月に1回は、実際の取締役会を開催して、代表取締役・業務執行取締役により職務執行状況の報告がなされなくてはなりません(会社法372条2項、363条2項)。

 「株主総会手続を簡略化したい場合にどうすればよいか」もあわせてご覧ください。

解説

目次

  1. 取締役会招集手続 ~原則と例外(簡略化)~
    1. 原則
    2. 招集手続の省略
    3. 全員出席取締役会
  2. 取締役会決議・報告 ~原則と例外(簡略化)~
    1. 原則
    2. 例外

目次

  1. 取締役会招集手続 ~原則と例外(簡略化)~
    1. 原則
    2. 招集手続の省略
    3. 全員出席取締役会
  2. 取締役会決議・報告 ~原則と例外(簡略化)~
    1. 原則
    2. 例外

取締役会招集手続 ~原則と例外(簡略化)~

原則

招集通知の時期

 取締役会の日の1週間(これより短い期間を定款で定めた場合はその期間)前までに、各取締役(および監査役設置会社においては各監査役)に招集通知を発出しなければなりません(会社法368条1項)。

 実務上は、定款で、「会日の3日前まで」に招集通知を発するものとし、「緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。」とする例が多く見受けられます。

 このように招集期間を短縮することは可能ですが、この「緊急の必要があるとき」であっても、原則として招集通知を省略することはできません。取締役・監査役に出席の機会を確保させるためです。

招集通知の方法

 招集通知自体を省略しないとしても、通知の方法によっては作業をかなり簡略化することができます。

 招集通知の方法については、株主総会招集手続と異なり制限がなく、機関設計がどうであれ、口頭・電話・メールなどによる方法も認められます。つまり、電話で、「10日後の○日○時に○○で取締役会を行うので、来てください」と伝えるのでも、取締役会の招集通知として有効に認められます。

 書面で通知を行うことと比較すれば格段に作業が楽となるでしょう。

招集通知の内容

 招集通知の内容についても特に規制はありません。

 当然に、取締役会の開催日時と場所を通知する必要はありますが、議題を伝える必要はありませんし、説明資料等を交付する必要もありません。

 もっとも、何も議題を伝えずに当日を迎えた場合、各取締役、特に社外取締役は前提となる準備を十分に行えず、審議自体があまり意味のないものになってしまうおそれがあります。取締役会の審議の充実を図るため、事前に議題・議案を通知し、参考資料を配布するのが望ましいでしょう。

 「議題を定めずに取締役会招集通知を送ることができるか」もあわせてご覧ください。

招集権者

 取締役会は各取締役が招集できます(会社法366条1項本文)。

 もっとも、取締役社長(代表取締役)が取締役会を招集する旨、定款や取締役会規則に定める(会社法366条1項ただし書)のが実務上は一般的です。

招集通知の相手方

 各取締役に通知する必要があります。予定されている取締役会の目的事項が、例えば、利益相反取引の承認に関するもののみである場合であっても、特別利害関係を有する取締役に対しても招集通知を送らなければなりません。取締役会において、予定されていなかった事項についても、審議・決議することがあるからです。

 取締役が特別利害関係を有する場合については、「特別利害関係と取締役会決議」もご覧ください。

 監査役設置会社の場合、招集通知は監査役に対しても送らなければなりません(会社法368条1項)。ただし、監査役の監査の範囲が会計に限定されている場合、監査役に対して取締役会招集通知を出す必要がありません(会社法389条7項・383条1項)。家族経営の会社については、オーナー社長の配偶者(妻)が監査役に就任し、その監査の範囲が会計に限定されている例も多く見られます。そのような会社の監査役には取締役会招集通知を出す必要がないということです。

 また、取締役会設置会社の会計参与は、計算書類等、臨時計算書類、連結計算書類を承認する取締役会に出席し、必要があるときは、意見を述べなければなりません(会社法376条1項)。そのため、これらの取締役会の際には、会計参与に対しても、忘れずに取締役会招集通知を送る必要があります。

招集手続の省略

 取締役(・監査役設置会社の監査役)が全員同意したときは、招集手続を省略することができます(会社法368条2項)。この同意の方法に制限はありませんので、書面で同意を得る必要はありませんし、明示のみならず、黙示の場合でも認められます。

 もっとも、抽象的に、「取締役会の招集手続を省略することに同意します」といった同意は認められません。この同意として認められるには、原則として個々の取締役会に対してのものであることが必要です。

 定例取締役会(「毎月○日(祝祭日の場合は翌営業日)○時に○で開催する」といった具合にあらかじめ取締役会規則で定められている取締役会)の場合は、取締役会規則の規定を設ける際に取締役全員の同意があり、また、監査役の(少なくとも黙示の)同意があると考えることができますし、具体的な取締役会に対する招集手続の省略に同意していると考えて、個別の招集通知は不要と考えることができるでしょう。 また、取締役・監査役が交代した場合には、新たな役員に対してその規定について周知すれば、少なくとも黙示の招集手続省略同意があったと考えてもよいと思われます。

 ただ、定例取締役会であっても、招集通知は送るのが望ましいでしょう。

全員出席取締役会

 関係者全員がたまたま集まっているとき、招集手続なしに取締役会を開催することが解釈上認められています(最高裁昭和31年6月29日判決)。

取締役会決議・報告 ~原則と例外(簡略化)~

原則

 議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって取締役会決議を行い、また、報告事項を報告します(会社法369条1項)。

 会社法の条文上、定足数については取締役会決議の場合にしか規定されていませんが(会社法369条1項)、報告事項しかない取締役会においても、取締役の過半数が出席していなければ、取締役会に対して有効に報告したとは認められないと考えられます。

例外

決議の省略

 取締役が取締役会決議の目的事項について提案した場合において、当該提案につき、議決に加わることができる取締役全員が書面または電磁的記録により同意したとき(監査役設置会社の監査役が異議を述べた場合を除きます)は、当該提案を可決する旨の取締役会決議があったものとみなすことができます。もっとも、定款で定めておくことが必要です(会社法370条)。

 株主総会のみなし決議の場合は、定款で定める必要はありませんが(会社法319条1項)、取締役会のみなし決議については定款で定めなければなりません。株主が会社経営を任せた取締役らが慎重に協議して重要事項を決定するということに対する例外なので、定款に定めるという形で株主の承認を得るのです。

定款の規定例
(取締役会の決議の省略)
第○条 当会社は、会社法第370条の要件を充たしたときは、取締役会の決議があったものとみなす。

 会社法370条に従った場合、取締役会決議があったものとみなされるのであって、取締役会決議がないものとされるわけではありません。そのため、取締役会議事録を作成する必要があります(会社法369条3項、会社法施行規則101条4項1号)。また、みなし決議についての同意書は、議事録と同様、10年間、その本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。

 取締役会議事録の記載事項については、「取締役会議事録には何を記載すればよいか」もあわせてご覧ください。

報告の省略

 会社法370条のみなし決議は、あくまで取締役会決議の省略ですので、取締役会に報告すべき事項があれば、その報告のための取締役会を開催する必要があります。

 もっとも、取締役、会計参与、監査役または会計監査人が取締役(・監査役設置会社の監査役)全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、報告を省略することも可能です(会社法372条)。

 この報告事項を受けて、その内容を協議等する必要があるときは、取締役(・監査役)は、招集権者に対して、取締役会を招集するよう請求すればいいので(会社法366条2項、382条2項)、取締役(・監査役)の事前の同意は、報告の省略に当たって必要とされていません。また、定款で定めておく必要もありません。

 ただし、3か月に1回以上の代表取締役・業務執行取締役による職務執行状況の報告については省略が認められていないので(会社法372条2項、363条2項)、少なくとも3か月に1回は、現実に取締役会を開催しなければならないということになります

 この職務執行状況の報告を毎月行うという会社であっても、3か月に1回は現実に取締役会を開催し、2か月(2回)は、書面による報告で済ませるということは可能です。

 実際に報告が省略されるその他の場面としては、取締役による競業取引・利益相反取引後の重要事実の報告(会社法365条2項)や、監査役による取締役の不正行為等の報告(会社法382条)などが考えられますが、これら以外の報告事項も広く報告省略の対象です。

 なお、報告を省略した場合も、取締役会議事録の作成は必要です(会社法施行規則101条4項2号参照)。

会社法369条1項・2項

1  取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2  前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

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