株主総会決議事項を取締役会で決議することができるか(会社の機関における権限の移譲について)

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 取締役会の権限を大きくして、迅速な経営に当たりたいと考えています。株主総会を開催するのは時間も費用もかかるので、本来は株主総会の決議事項であるものを取締役会の決議事項としたいのですが、可能でしょうか。

 会社法上、株主総会の決議事項とされているものについては、定款によっても、取締役会その他の株主総会以外の機関の決議事項とすることはできません。

解説

目次

  1. 機関の役割分担 − 所有と経営の分離
  2. 取締役会非設置会社における権限移譲
    1. 株主総会から他の機関への権限移譲
    2. 取締役から株主総会への権限移譲
  3. 取締役会設置会社における権限移譲
    1. 株主総会から他の機関への権限の移譲
    2. 他の機関から株主総会への権限移譲等
    3. 取締役会から代表取締役等への委任

目次

  1. 機関の役割分担 − 所有と経営の分離
  2. 取締役会非設置会社における権限移譲
    1. 株主総会から他の機関への権限移譲
    2. 取締役から株主総会への権限移譲
  3. 取締役会設置会社における権限移譲
    1. 株主総会から他の機関への権限の移譲
    2. 他の機関から株主総会への権限移譲等
    3. 取締役会から代表取締役等への委任

機関の役割分担 − 所有と経営の分離

 一般的に株式会社では、「所有と経営の分離」が図られていると言われています。すなわち、株式会社に対して出資を行い、会社所有権の持ち分である株式を有する株主と、株主から信任を得て、会社の経営を執行する取締役・取締役会とが分かれているというものです。

 この考え方に基づき、株主から構成される株主総会は、会社の最高意思決定機関として会社の経営に関する重要事項を決議し、取締役・取締役会は、会社の日々の業務執行について専門家として迅速かつ効率的に決定し、執行するように、会社法は規定されています。

 問題は、 会社法が予定しているのとは違う方法で、機関の役割分担を変更できるか ということです。以下では、取締役会の有無で分けて見ていきます。

取締役会非設置会社における権限移譲

株主総会から他の機関への権限移譲

 取締役会がない株式会社(取締役会非設置会社)の株主総会は、株式会社に関する一切の事項について決議することができます(会社法295条1項)。

 この点、取締役会非設置会社は非公開会社であり、株主数もそう多くはないのが通常なので、株主総会から取締役らへの権限移譲の要請はそれほど強くないようにも思いますが、それでも株主総会の招集手続などにはある程度の手間がかかるので、業務執行を行う取締役の決定権限を強めたいと思うかもしれません。

 しかし、株主総会は、株式会社の最高機関であり、会社法が株主総会の決議事項であると定めたものについては、定款によっても、当該決議の権限を他の機関に変更することはできません(会社法295条3項)。

取締役から株主総会への権限移譲

 取締役会非設置会社においては、株主総会の決議事項に制限はありませんので、定款の定めの有無にかかわらず、取締役の権限に属する事項についても、当然に株主総会において決定することができます(会社法295条1項)。

 そのため、あえて、定款や内部規則によって、取締役の決定権限を株主総会に移譲する必要はないと考えられます1

取締役会設置会社における権限移譲

株主総会から他の機関への権限の移譲

原則:株主総会の決定権は奪えない

 取締役会設置会社の場合、株主総会は一切の事項についての決定権限を有するわけではありませんが、重要事項の決定権限を依然として保持しています(会社法295条2項参照)。

 この点、株主総会を開催するには、招集通知の発送等、会社法上の手続のほか、会場の確保・設営、想定問答集の作成といった準備など、通常、時間も費用もかかりますので、できる限り開催したくないというのが会社側・経営者の本音なのではないかと思います(株主総会は、株主の声を直接聞くことができる貴重な機会だとポジティブに捉えることもできますが・・・)。

 株主総会の決議については、「株主総会の決議方法の種類について」もあわせてご覧ください。

 そこで、会社の根本的なルールである定款により、あらかじめ株式会社の決議事項を少なくし、取締役会に、当該事項の権限を移してしまえないか、と考えたりするかもしれません。

 しかし、取締役会非設置会社の箇所(上記2)でも説明したとおり、株主総会は、株式会社の最高機関であり、会社法が株主総会の決議事項であると定めたものについては、定款によっても、当該決議の権限を他の機関に変更することはできません(会社法295条3項)。

例外その1:自己株式の取得

 もっとも、取締役会設置会社の場合には、例外もあります。

 市場取引、公開買付けの方法で自己株式を取得することは本来、株主総会決議事項なのですが(会社法156条1項)、定款で定めることにより、取締役会決議により決議することができます(会社法165条2項)。

 これは、相対による取引と違って市場取引や公開買付けの方法で自己株式を取得する場合には、すべての株主に売却機会があり、取得価格も公正に形成されると考えられているためです。

 ただし、このような定めを定款に設けても、株主総会決議で当該事項を決議する機会が完全に排除されるわけではありません。つまり、株主は、株主提案権を行使して、株主総会において当該事項を議題とすることを請求したり(会社法303条)、議案を提出したり(会社法304条)することができます。

例外その2:剰余金の配当等

 以下の条件を全て満たす場合には、剰余金の配当等について取締役会が定めることができる旨を定款で定めることができます(会社法459条1項)。

  • 会計監査人設置会社
  • 取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期が1年以内
  • 監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社のいずれか

 この剰余金の配当等に関しては、自己株式の取得の場合と異なり、定款で定めることで、株主総会からその決議権限を奪うこともできます(会社法460条1項)。

 ただし、このような権限移譲の定款の規定は、最終事業年度の計算書類が会社の財産・損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令2に定める要件を満たしていない限り、有効とは認められません(会社法459条2項、460条2項)。

 なお、この株主総会決議を排除する旨の規定については、剰余金の配当等という直接的な経済的利益に株主自ら関与する権利を株主から奪うものですので、とりわけ機関投資家からの評判はあまりよくないようです。そのため、この規定を新設する場合、定款変更の特別決議を通すのに苦労するかもしれません。

細部の決定の委任

 株主総会で必要な大綱を決定し、細部を他の機関に一任することは認められています。 具体的としては、取締役の報酬の決定があります。

他の機関から株主総会への権限移譲等

株主総会への権限移譲は原則としていかなるものでも可能

 取締役会設置会社であったとしても、株主総会は、会社法・定款で定められた事項についての決定権限があります(会社法295条2項)。そして、株主総会は会社の最高意思決定機関である以上、その定款の定めには制限がありません。つまり、定款に定めさえすれば、取締役会等が決定権限を有する事項についても、株主総会の決議事項とすることができます。

株主総会に権限を移譲した場合の実務上の留意点

 もっとも、定款により株主総会の決議事項とした場合であっても、当該事項について、取締役会等の権限が当然に排除されるわけではないので、会社法に特段の定めがない限り、本来の決議機関である取締役会等と株主総会とに、権限が併存することとなります。

 このように、権限が併存する事項について、取締役会が株主総会決議と反する決議を行った場合には、忠実義務(会社法355条)違反等の問題も生じ得るので、留意する必要があるでしょう。

代表取締役の選定・解職について

 また、よく問題となるのは、代表取締役の選定・解職権限の移譲です。取締役会設置会社における代表取締役の任免権は取締役会にありますが(会社法362条1項3号)、定款の定めにより、株主総会において、代表取締役を選定し、解職することができるのか、ということが問題とされます。

 これは、取締役会は、取締役の職務執行を監督する立場にあるところ(会社法362条1項2号)、職務執行者である代表取締役を任免する権限があってこそ、監督機能がより有効になるのではないかという考えに基づきます。

 この点については、かかる任免権が株主総会に属しても、それにより取締役会の監督権が直ちに奪われるわけではないし、取締役会は、代表取締役の解職を議題とする株主総会を招集して、その責任を問うことも依然として可能なので、あえて当該権限の移譲を定める定款を無効とする必要まではないだろう、と考えられています。

 現に、最高裁平成29年2月21日判決は、「取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である。」旨判示しました。

取締役会から代表取締役等への委任

 取締役会は招集手続を経て開催される非常置機関です。 そこで、迅速な経営を行うため、取締役会は、取締役会の定める規則や個別の決議により、代表取締役や業務執行取締役、常務会などに対して、日々の業務執行に関する事項の決定権限を委任することが認められています3

 もっとも、すべての事項について代表取締役らに任せてしまっては、取締役会は、業務執行者の職務執行を適切に監督することができなくなってしまいます。

 そこで、監督を適切に行うために、一定の事項については、代表取締役らへの委任が許されていません(会社法362条4項等)。

 具体的には、以下のような項目については、取締役会は代表取締役に委任することが認められないとされています。

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 募集社債の総額等
  • 内部統制システムの整備
  • 役員等の会社に対する損害賠償責任の一部免除
  • 公開会社における新株・新株予約権の募集事項の決定(会社法201条、202条、238条、240条、241条)
  • 株主総会の招集の決定(会社法298条4項)
  • 競業取引・利益相反取引の承認(会社法356条1項、365条1項)
  • 計算書類・事業報告・これらの附属明細書の承認(会社法436条3項)
<追記> 2017年7月6日:「3-2 代表取締役の選定・解職について」の記載内容に、平成29年2月21日判決を受けて一文加筆しました。

  1. 相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』262頁(商事法務、平成18年) ↩︎

  2. 会社法施行規則116条12号・13号、会社計算規則155条のことです。この要件を大まかに説明すると、最終事業年度に係る計算書類について会計監査人の無限定適性意見が付されていて、監査役会・監査等委員会・監査委員会が不相当という意見を出していないこと、です。 ↩︎

  3. 江頭憲治郎『株式会社法〔第6版〕』409頁(有斐閣、平成27年) ↩︎

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