NFTと法

第1回 【弁護士が解説】 NFTとは? 法規制と実務上の留意点

IT・情報セキュリティ
片山 智晶弁護士 アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業 奥田 美希弁護士 アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業 鈴川 大路弁護士 アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業

目次

  1. NFTとは 市場の隆盛と法規制
  2. NFTの私法上の性質~所有権の有無
  3. NFTと金融規制
    1. デジタルトークンと金融規制上の法的分類
    2. NFTと暗号資産該当性
  4. NFTビジネスと実務上の留意点
    1. NFTアート
    2. NFTプラットフォーム
    3. ブロックチェーンゲーム

NFTとは 市場の隆盛と法規制

 NFT(Non-Fungible Token)とは、一般に代替可能性のないブロックチェーン上で発行されるデジタルトークン(証票)をいいます。法令上の定義は特にありません。典型的には、NFTは、イーサリアム上のERC-721やERC-1155などのトークン規格に基づいて発行されます。NFT自体は2017年頃から存在していましたが、近時、NFTで表現したデジタルアートやデジタルトレーディングカードが、数千万円、数億円、ときには数十億円で売買される事象が生じていることも相まって急速に注目が集まっています。

 本来、デジタルなデータは無料かつ容易にコピーできるものの、NFTはブロックチェーン技術を利用し、唯一無二のユニークなデータの作成を可能にすることが革新的であると考えられています。

 このように、NFTは、ユニークなデジタルデータという特性を有することから、しばしば「NFTはデータの所有を可能にする」、「NFT保有者はデジタルアートやデジタルキャラクターの所有権や著作権を取得する」、などとも言われることがあります。しかし、果たしてこれらの表現は法的に正しいのでしょうか。

 また、NFTもビットコインなどの「暗号資産」(仮想通貨)と同じくブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンですが、暗号資産を規律する資金決済法などの金融規制の対象とはならないのでしょうか。

 結論からいえば、これらの表現は法的には正確ではなく、また、「NFT」と呼称しさえすれば必ず暗号資産その他の金融規制の対象から外れるというわけでもありません

NFTに関して誤解を抱かないためのポイント
  • 日本法上、データのような無体物に所有権は認められないと考えられており、「デジタル所有権」という権利も法定されていない
  • NFTはあくまでブロックチェーン上で発行されたトークンにすぎず、NFTを移転したからといってブロックチェーン外で行われる権利の移転、すなわち当事者間の合意(契約)の成立を意味するものでもない
  • そもそも「NFTの売買」といっても、いったい何を(何に関する権利を)取引しているのかさえ明確ではないケースも少なくない

 このように、NFTを活用したビジネスは急速に発展しつつある一方、NFTの法的位置付けやNFTの取引にかかる法規制・権利関係の整理は十分に追いついておらず、NFTのハッキングやNFTアートの著作者と購入者間で権利関係を巡って紛争が生じるなど、ひとたび不測の事態が生じた場合、大きな混乱が生じることが予想されます。

 そこで、本連載では、NFTの私法および金融規制上の位置付けについて整理するとともに、NFTを活用した代表的なビジネスモデルを題材としてNFTの取引にかかる著作権法上の権利関係その他の法的論点や契約における注意点など、実務上の留意点について解説していくこととします。

NFTの私法上の性質~所有権の有無

 民法上、所有権の客体となる「物」(民法206条参照)とは、「有体物」をいうとされています(民法85条)。また、東京地裁平成27年8月5日判決は、ビットコインについて有体性を欠くため物権である所有権の客体とはならないと判示しています。

 NFTは、ビットコインなどの暗号資産と同様に、ブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行されデータとして存在するにすぎず、有体性を欠くため民法上の「物」には該当しません。したがって、NFTについて所有権は観念できないと考えられます。

 なお、NFTについて「デジタル所有権」なる権利が認められるような説明も見受けられますが、当事者間の契約上の取決めとしてはともかく、現行の民法・著作権法上、そのような権利は法定されていないことに注意が必要です。

NFTと金融規制

デジタルトークンと金融規制上の法的分類

 NFTに限らず、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンについては、明確な定義が法律で定まっているものではなく、その金融規制上の法的分類は個別のデジタルトークンの機能等によって異なりますが、主に以下の5つに分類することが可能です。

【デジタルトークンの金融規制上の法的分類(※)】

デジタルトークンの金融規制上の法的位置付け

(※)本図表は一般的な事例における分類を整理したものにとどまり、また、景品表示法などの消費者保護法制などについては記載しておりません。


 デジタルトークンの金融規制上の分類に関する視点および各分類に適用される規制の内容については第2回で解説することとし、ここでは、NFTが、同じくブロックチェーン上で発行されるビットコインやイーサなどの暗号資産に該当しないか、に焦点を絞って検討することとします。

NFTと暗号資産該当性

 暗号資産とは、以下の( i )ないし( iii )の要件をすべて満たすもの(「1号暗号資産」)または、不特定の者との間で、1号暗号資産と相互に交換できるものであって、( ii )および( iii )の要件を満たすものをいいます(「2号暗号資産」)。

( i )物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用でき、かつ不特定の者との間で購入・売却をすることができること

( ii )電子的に記録された財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができること

( iii )本邦通貨、外国通貨および通貨建資産に該当しないこと

 NFT自体に決済手段性がないと判断できる場合には、( i )物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用できるものではないことから、1号暗号資産には該当しません

 これに対して、NFTは不特定の者と間でビットコイン、イーサその他の1号暗号資産と相互に交換可能であることから、2号暗号資産の定義には該当するようにも思われます。

 しかし、資金決済法の目的は「資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、・・・資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資すること」(同法1条)にあり、決済機能を有する支払手段を規制することが前提とされています。

 また、金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(16 暗号資産交換業者関係)I−1−1③によれば、2号暗号資産該当性の判断要素の1つとして、「1号暗号資産を用いて購入又は売却できる商品・権利等にとどまらず、当該暗号資産と同等の経済的機能を有するか」という点があげられています。これらの規定に鑑みると、個性があり代替性のない、いわばデジタルな「モノ」としての性質を有するNFTについては、1号暗号資産と同等の経済的機能を有しないものとして、2号暗号資産には該当しないと考えられます。

 なお、令和元年9月3日金融庁「『事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)』の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について-コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(「2019年9月3日パブコメ回答」)によれば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等については 1号仮想通貨(現行法下での暗号資産。以下同様。)と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられるため2号仮想通貨には該当しないとの解釈が示されている一方、NFTの仮想通貨該当性については実態に即して個別具体的に判断されるべき、との解釈が示されていることに注意が必要です。

NFT トレーディングカード
ゲーム内アイテム
暗号資産ガイドライン
I−1−1③
「1号暗号資産を用いて購入又は売却できる商品・権利等にとどまらず、当該暗号資産と同等の経済的機能を有するか」
2019年9月3日パブコメ回答

No.1

Q:いわゆるDappsがERC721形式でゲーム内での固有トークンを発行することに対して、何か法的な規制はあるか。国内外の事業者がDappsを開発し、日本国内でサービスを展開するにあたり、法整備を進めて頂きたい。

A:資金決済法第2条第5項に規定する仮想通貨の該当性については、法令に基づき、実態に即して個別具体的に判断されるべきものと考えております。ご指摘のトークンが仮想通貨に該当し、その売買等を業として行う場合には、仮想通貨交換業者としての登録を要し、法令に基づく必要な規制を遵守する必要があります。

No.4

Q:2号仮想通貨について1号仮想通貨と「同等の経済的機能を有するか」との基準を設けるべきではない。同等の経済的機能とならないような制限を加えることで、資金決済法に基づく規制の対象外になりかねない。

A:物品等の購入に直接利用できない又は法定通貨との交換ができないものであっても、1号仮想通貨と相互に交換できるもので、1号仮想通貨を介することにより決済手段等の経済的機能を有するものについては、1号仮想通貨と同様に決済手段等としての規制が必要と考えられるため、2号仮想通貨として資金決済法上の仮想通貨の範囲に含めて考えられたものです。したがって、例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。
2号暗号資産該当性 個別具体的な判断が必要 基本的には該当しない

 すなわち、NFTであっても、他のNFTとその性質がきわめて類似しており、社会通念上他と区別されないものが多数存在するような場合であって、かつ、1号暗号資産を通じて1号暗号資産と同等の支払・決済手段としての機能を果たす可能性があるものについては、暗号資産に該当する可能性は否定できないと考えられます。

 これに対して、代替可能なトークン(Fungible Token)であったとしても、トレーディングカードやゲーム内アイテムなどのように1号暗号資産のような決済手段等の経済的機能を有していないのであれば、2号暗号資産には該当しないと考えられます。

NFTビジネスと実務上の留意点

 NFTビジネスが実務に関係する場面も見られます。本連載の第3回以降、下記のテーマについて詳細を解説します。

第3回 NFTアート、NFTプラットフォーム
第4回 ブロックチェーンゲーム

NFTアート

 NFTアートとは、唯一無二のユニークなデータを作成できるNFTの特性を活かし、デジタルで表現したアート作品の保有者の履歴等をブロックチェーン上で記録したものをいいます。

 注意を要する点としては、NFTを活用したデジタルアートだからといって、アート作品・表現そのものが唯一無二というわけではなく、アート作品の画像データ自体は誰でも複製できることがあります。たとえば、2021年3月、クリスティーズのオークションにて約75億円で落札されたアーティストBeepleのNFTアート「Everydays – The First 5000 Days」についてみると、このアート作品の画像データは分散型ファイルシステムIPFS(Inter Planetary File System)に保存されているものの、クリスティーズ上の同作品紹介ページに掲載されているスマートコントラクトアドレスから一定の操作を行うことで、誰でもこのアート作品の画像データが保存されているURLにアクセスし、アート作品の画像データをダウンロードすることができます。

 このような現状での技術的特性を踏まえると、NFTのような無体物に所有権は認められず、また、「デジタル所有権」なる権利も法定されていない以上、NFTアートの売買において具体的にいったい何を(何に関する権利を)取引しているのか、慎重に検討する必要があります。

 NFTアートの著作権法上の取扱いや契約上の留意点等も含め、NFTアートにかかる法的論点および実務上の留意点については、紙など物理的媒体に表現したアート作品(「リアルアート」)と比較しつつ、第3回にて解説します。

NFTプラットフォーム

 NFTプラットフォームとは、NFTアートやNFTに表章されたゲームキャラクターやゲーム内アイテム等を売買する二次流通市場をいいます。
 NFTプラットフォームにおいては、取り扱われているNFTが金融規制に抵触しないかという観点だけでなく、当該プラットフォームの利用規約と取引されているNFTの著作権法上の取扱い等の権利関係についても検討する必要があります。

 NFTプラットフォームにかかる法的論点および実務上の留意点については第3回にて解説します。

ブロックチェーンゲーム

 ブロックチェーンゲームとは、唯一無二のトークンを作成できるというNFTの性質を利用して、ゲーム内アイテムやゲームキャラクターをNFTに表章してブロックチェーン上で移転できるゲームをいいます。ブロックチェーンゲームでは、従来のゲームと異なり、ユーザー自身が個性を持ったゲーム内アイテムやキャラクターをNFTとして保有・管理し、当該NFTをブロックチェーン上で自由に(言い換えれば当該ゲーム外でも)譲渡・売却できるといった特徴を有しています。

 ブロックチェーンゲームにおいては、NFTとして発行されたゲーム内アイテム等が暗号資産に該当するか、当該NFTの獲得に際していわゆる「ガチャ」の仕組みを採用する場合などには、賭博罪(刑法185条および186条)に該当しないか、新規顧客を獲得するためにログインボーナスや各種ランキングキャンペーンを実施する場合、景表法上の景品規制に抵触しないかなど、ゲームの内容やキャンペーン等の態様に応じて個別具体的な分析が必要となります。

 ブロックチェーンゲームにかかる法的論点および実務上の留意点については第4回で解説します。

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