NFTと法

第7回 NFTに関する税務上の取扱い

IT・情報セキュリティ

目次

  1. NFTに関する税務上の取扱いの現状
  2. NFTに関する税務上の取扱いに関する基本的な考え方
  3. NFT発行者(株式会社)に関する税務上の取扱い
    1. 法人税の課税対象となるか
    2. 消費税の課税対象となるか
  4. NFTを取得し、譲渡した取得者(個人・会社)における税務上の取扱い
    1. 取得者が個人の場合
    2. 取得者が会社の場合
  5. 国境をまたぐNFT取引における留意点
    1. NFT取得者が国外居住者等である場合の消費税における内外判定・輸出免税
    2. NFTを国外居住者等から取得する場合における源泉徴収

NFTに関する税務上の取扱いの現状

 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)に関する税務上の取扱いについては、現状、国税庁等が公表したものはなく、明確な指針が存在しない状況ですが、すでにNFTに関する相当数のビジネスが現実に展開されています。

 そこで、本稿においては、NFTに関わる法人である事業者およびNFTを購入する個人を念頭に、NFTに関する税務上の取扱いについて考えてみたいと思います。

 なお、本稿の記載は執筆者の私見であり、所属する法律事務所としての公式見解ではありませんので、念のため申し添えます。

NFTに関する税務上の取扱いに関する基本的な考え方

 すでに第1回【弁護士が解説】 NFTとは? 法規制と実務上の留意点において解説しているとおり、NFT自体は、ブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行されデータとして存在するにすぎず、単独では所有権が観念できません。また、NFTの発行および譲渡についても、これがただちにNFTの裏付けとなる資産または権利そのものの譲渡につながるわけではありません。

 したがって、NFTに関する税務上の取扱いを検討するうえでは、NFTの性質や背景にある資産または権利の取引関係、特に、NFTの取引を通じて、何に対して対価が支払われているのかという観点での検討が重要になります。第1回および第2回で整理したとおり、NFTが資金決済法上の暗号資産、前払式支払手段または金商法上の有価証券に該当する場合には、その法的性質に応じた税務上の処理を行うことになりますし、また、NFTの取引が一定の資産または権利の付与または移転と評価できる場合には、これを前提とした税務処理を行うことになります。

 この点に関連して、NFTにかかる課税関係は、ビットコイン(BTC)等の暗号資産にかかる課税に関する考え方がそのまま適用されるものではないことに注意が必要です。もちろん、問題となっているNFTが、その性質等に照らして法的に暗号資産に該当すると評価できる場合には、結果的に暗号資産にかかる課税関係が適用されることになりますが、少なくとも現時点においては、NFTが一般に暗号資産として整理されているわけではありません。

 以下においては、下記のような事例を前提に、①NFT発行者、および、②NFTを取得し、譲渡した取得者(法人・個人)における各税務上の取扱いをそれぞれ整理してみます。

【事例】

NFT発行者(株式会社)は、複数の著名絵画の所有権および著作権を保有しているが、この度、国内流通に限定して、以下のような内容のNFTを数量限定で有償発行するとともに、NFTについて自由な二次流通を認める予定である。
  • NFT取得(保有)者は、著名絵画そのものの所有権/共有持分を有しない
  • NFT取得(保有)者は、NFT発行者に事前に申請することにより、NFT発行者が保管する著名絵画を自由に見ることができるほか、商用および個人使用を問わず、著名絵画のデジタル版を自由に利用することができる。

NFT発行者(株式会社)に関する税務上の取扱い

法人税の課税対象となるか

 法人税は、大枠、資本取引以外の損益取引を広く益金(収益)および損金(費用)として把握したうえで、益金から損金を控除した差額を所得として課税する仕組みになっています。

 NFT発行者(株式会社)は、事業としてNFTを発行して、取得者から対価を取得する場合が多いと想定されるところ、この対価は、NFTがNFT発行者の株式等または前払式支払手段としての性質を有する場合を除き、損益取引に伴う経済的利益となり、益金として課税対象になる場合が多いものと想定されます。

 上記事例においては、NFTは著名絵画そのものの所有権とは紐づいておらず、全体としてみれば、著名絵画の著作権の利用権に絵画閲覧にかかる一定のサービスが賦課された利用権のようなものとして評価できます。これを前提とすると、NFTは、株式等発行としての性質を有せず資本取引としての性質を有せず、また貸借取引にも該当しませんので、有償発行の対価は、法人の益金(収益)として課税対象となるものと考えられます。

消費税の課税対象となるか

 消費税(消費税および地方消費税。以下同様。)は、大枠、国内において事業者が行う資産の譲渡等、すなわち、事業として対価を得て行われる資産の譲渡および貸付けならびに役務の提供(消費税法2条1項8号)に対して課税されます。

 NFT発行者(株式会社)は、NFTの発行を事業として行っているのが通常ですので、NFTの発行に関する消費税の取扱いは、当該発行が「資産の譲渡等」に該当するかどうかにより決せられることになります。消費税法は、暗号資産、前払式支払手段または有価証券の譲渡については一般に非課税資産として扱っていますので(消費税法6条1項・別表第一の二、四ハ、消費税法施行令9条1項1号・4号、11条)、これらの譲渡に該当する場合には原則として非課税となります。

 この点に関し、上記のとおり、NFTは、その背景の取引関係を見た場合、著名絵画の著作権の利用権に絵画閲覧にかかる一定のサービスが賦課された利用権のようなものとして、NFT発行者に対する一定の権利を観念できる場合が多いほか、NFTに関する枠組み全体を見た場合、こうした枠組みはNFT発行者が実施しているサービスであり、NFTの実質はこうしたサービスを受ける契約当事者たる地位と同視できる場合があります。このような場合、NFT発行の対価は、一定の権利の集合体である「資産の譲渡および貸付け」または「役務の提供」の対価として、「資産の譲渡等」に該当することになります。

 上記事例では、NFTの背景にある権利を著名絵画の著作権の利用権と見るか、より広くサービス利用権と見るかはともかく、これらは暗号資産、前払式支払手段または有価証券には該当せず、少なくとも資産の貸付けまたは役務提供と評価すべきものと想定されますので、消費税の課税対象となるものと考えられます。

NFTを取得し、譲渡した取得者(個人・会社)における税務上の取扱い

取得者が個人の場合

(1)所得税

 まず、個人がNFTを取得した時点では、特に課税は発生しないのが原則です。ただし、マーケットでNFTを取得する場合には、その決済手段がイーサ(ETH)等の暗号資産になるケースが多いところ、この場合には、当該暗号資産の譲渡にかかる課税として、当該暗号資産の取得原価と決済金額の差額が雑所得等として課税されることになりますので、注意が必要です。
 次に、個人であるNFTの取得者がさらにNFTを譲渡した場合、譲渡による所得については、所得税法上、どの所得区分になるかという問題があります。

 この点については、上記のとおり、NFTの譲渡が全体として「資産の譲渡」または「役務の提供」のいずれと判定されるか、さらには、取得者によるNFT関連取引の事業性の有無等により結論が異なってくることから個別判断となりますが、主に「事業所得」、「譲渡所得」または「雑所得」のいずれかに該当するケースが多いものと思われます。

 よって、上記事例においても、NFTを取得した個人の事業性の有無等によりその所得区分が決せられることになります。

 なお、NFTの性質いかんでは、個人への対価の支払いに際し、源泉所得税の納付を要する場合が想定されますので注意が必要です(所得税法204条)。上記事例では、NFTは著作権の利用権としての性質を有していますが、著作権またはその利用権の譲渡対価は所得税法204条1項1号の「著作権…の使用料」等には含まれませんので、買主側での源泉徴収は発生しません。

(2)消費税

 個人であるNFTの取得者の消費税の取扱いは、主に当該取得者が「事業者」と判定されるかどうかにより決せられるケースが多いものと想定されます。当該取得者が個人の趣味でNFTを取得し、その後販売するケースでは、一般に事業者としてNFTを取引するものではないケースが多いものと想定されますので、消費税は課税されません。また、仮に消費税の課税対象となる場合でも、前々年の消費税における課税売上高が1000万円以下の場合には、原則として消費税が免税になりますので(消費税法9条、9条の2)、その点においても、個人がNFTを譲渡する場合には消費税の申告等は不要となるケースが多いものと想定されます。

 なお、NFTの取引においては、買主の立場において、売主である個人が消費税の課税対象となる事業者かどうかは容易に判明しません。したがって、取引自体は消費税が課税される前提で価格を決めざるを得ない場合が想定されますので、注意が必要です。

取得者が会社の場合

(1)法人税

 まず、法人がNFTを取得した時点の課税関係については、上記4.1.1で述べた個人の場合と同様であり、課税は発生しないのが原則ですが、その決済手段がイーサ(ETH)等の暗号資産になるケースについては、当該暗号資産の譲渡にかかる課税が発生します。

 次に、法人におけるNFTの保有について、「活発な市場を有する」暗号資産については、市場価格に基づく価額をもってその仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとなっていますが(法人税法61条、法人税法施行令118条の7~118条の9)、NFTが暗号資産、とりわけ「活発な市場を有する」暗号資産に該当する場合は少ないと思われます。上記事例においても、NFTには「暗号資産」としての性質はないと考えられますので、期末毎の時価評価の処理は不要と解されます。

 次に、法人であるNFTの取得者がNFTを譲渡した場合、3.1で述べたとおり、法人税は、大枠、資本取引以外の損益取引を広く益金(収益)および損金(費用)として把握したうえで、益金から損金を控除した差額を所得として課税する仕組みになっていますので、ここでの譲渡対価についても益金として認識され、課税の対象になるものと想定されます。

 また、国内での法人に対する当該譲渡対価の支払いについては、買主側での源泉徴収は発生しません。

(2)消費税

 個人の場合と異なり、取得者が会社である場合には、事業者性が認められますので、NFTの譲渡は、一定の権利の集合体である「資産の譲渡」の対価として、消費税の課税対象になる場合が多いものと想定されます。

 なお、前々年の消費税における課税売上高が1000万円以下の場合には原則として消費税が免税になる点は、個人の場合と同様です(消費税法9条、9条の2)。

国境をまたぐNFT取引における留意点

 では上記事例において、NFTが国内だけでなく、国境を越えて取引されるケースはどのような課税関係になるのでしょうか。

 NFT取得者が国外居住者(税法上の非居住者)または外国法人(以下総称して「国外居住者等」といいます)である場合には、主に、以下の点について追加で検討する必要があります。

【検討のポイント】
  1. NFT取得者が国外居住者等である場合の消費税における内外判定・輸出免税の問題
  2. NFTを国外居住者等から取得する場合における源泉徴収の問題

NFT取得者が国外居住者等である場合の消費税における内外判定・輸出免税

 NFT発行者が国外居住者等にNFTを発行する場合やNFT取得者がNFTを国外居住者等に譲渡する場合について、当該取引が消費税の課税の要否を画する「国内における」資産の譲渡等に該当するのか(内外判定の問題)、および、非居住者に対する資産の譲渡等として輸出免税(消費税法7条)の対象になるかという問題を検討する必要があります。

 前者の内外判定の問題については、消費税法は、資産の譲渡等の取引の内容およびその対象ごとに取引が行われた場所の判定基準にかかる定め(消費税法4条3項、消費税法施行令6条)を設けていますので、これらの判定に従うことになります。上記事例についていえば、NFTの著作権の貸付けとしての性質および役務提供としての性質のいずれを考慮したとしても、前者であれば著作権等の貸付けを行う者の所在地(消費税法施行令6条1項7号)、後者であれば役務提供が行われた場所が明らかでない場合(役務提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で判定。消費税法施行令6条2項6号)として、いずれにしても国内取引と判定されるものと考えられます。

 一方、後者の輸出免税については、多くのNFTにおいては、消費税法7条1項5号の「資産の譲渡等に類するものとして政令に定めるもの」、具体的には同法施行令17条2項6号(非居住者に対する鉱業権等、特許権等、著作権等または営業権等の譲渡または貸付け)または7号(非居住者に対する役務提供のうち、国内において直接便益を享受するもの以外のもの)に該当するかどうかが問題になります。また、輸出免税の適用にあたっては、輸出取引等の証明(消費税法7条2項、消費税法施行規則5条)が必要であり、NFTの取引相手方の氏名および住所等を帳簿等に記録する必要があることに留意が必要です。

NFTを国外居住者等から取得する場合における源泉徴収

 日本国内の個人または法人がNFTを国外居住者等から取得する場合、NFTの性質いかんにより、支払時に源泉徴収が必要になる場合があります(所得税法212条)。特にNFTが国内所在の資産の譲渡等と紐づいている場合(所得税法212条1項、所得税法161条1項5号・7号等)には注意が必要です。

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