NFTと法

第6回 【弁護士が解説】 NFTを活用したブロックチェーンゲームと法規制

IT・情報セキュリティ

目次

  1. ブロックチェーンゲームとは
  2. ブロックチェーンゲームに関する法的論点① NFTと取引対象の権利
  3. ブロックチェーンゲームに関する法的論点② NFTと暗号資産該当性
  4. ブロックチェーンゲームに関する法的論点③ ガチャと賭博罪該当性
  5. ブロックチェーンゲームに関する法的論点④ キャンペーンと景品表示法

ブロックチェーンゲームとは

 第1回で解説したとおり、NFTは、ブロックチェーン技術を利用し、唯一無二のユニークなデータの作成を可能にします。この性質を利用して、特定物や特定のデジタルアセットをNFTに表章させて、ブロックチェーン上で取引できるようにすることができます。

 ブロックチェーンゲームは、この唯一無二のデータを作成できるというNFTの性質を利用して、ゲームアイテムやゲームキャラクター(「ゲームアイテム等」)をNFTに表章したゲームをいいます。ブロックチェーンゲームでは、従来のゲームと異なり、個性を持ったゲームアイテム等をユーザー自身がNFTとして保有・管理し、当該NFTをゲーム外も含めてブロックチェーン上で自由に譲渡・売却できるといった特徴を有しています。

【ブロックチェーンゲームの特徴】

特徴 通常のゲーム ブロックチェーンゲーム
① ゲームアイテム等の帰属 運営会社が保有 ユーザーが保有
② ゲームアイテム等の自由な譲渡・売却 不可(運営会社による制限) 可(ユーザーが自由に処分可)
③ サービス終了とゲームアイテム等の存続 消滅 ブロックチェーンが
存在する限り存続

 通常のゲームであれば、ゲームアイテム等の帰属や、ユーザーによる譲渡や売却等をゲームの運営会社がコントロールする、いわば閉じられた世界にとどめられているのに対して、ブロックチェーンゲームでは、NFTを保有するユーザーにゲームアイテム等に関する権利を帰属させることにより、ゲーム運営会社の垣根を超えた、いわば開かれた世界での新たなゲーム体験を実現できる可能性があります。

 もっとも、NFTを保有するユーザーに対してゲームアイテム等に関する権利を帰属させるといっても、①NFT保有者が具体的にいかなる権利を取得するのかは別途検討が必要となります。また、②NFTはビットコインなどと同様にブロックチェーン上のトークンであることから、資金決済法上の暗号資産に該当するのではないかが問題となります。そして、③NFTの販売に際していわゆる「ガチャ」の仕組みを採用する場合などには刑法上の賭博罪に該当しないか、④新規ユーザーを獲得するために各種キャンペーンを実施する場合、景品表示法上の景品規制に抵触しないかなど、NFTの販売態様やキャンペーン等の態様に応じて個別具体的な分析が必要となります。

【ブロックチェーンゲームに関する法的論点】

ブロックチェーンゲームに関する法的論点

ブロックチェーンゲームに関する法的論点① NFTと取引対象の権利

 ブロックチェーンゲームにおいてユーザーがNFT化されたゲームアイテム等を購入する場合、当該ユーザーは法的には何を(どのような権利を)取得することになるのでしょうか。

 この点、第1回で解説したとおり、民法上、所有権の客体となる「物」(民法206条参照)とは、「有体物」をいいます(民法85条)。しかしながら、NFTはブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行されデータとして存在するにすぎず、有体性を欠くため民法上の「物」には該当しません。したがって、NFTについて所有権は観念できないと考えられます。

 また、現行の民法・著作権法上、「デジタル所有権」なる権利も法定されておらず、著作権の譲渡を受けるためには別途当事者間での合意が必要となります。

 そのため、NFT化されたゲームアイテム等を購入しても、ユーザーは当該ゲームアイテム等の所有権はもちろん、(利用規約等に別段の定めがない限り)著作権の譲渡を受けたことにもなりません

 以上のとおり、NFT化されたゲームアイテム等を購入することにより法的にどのような権利を取得することになるかは民法・著作権法等に法定されてはおらず、ブロックチェーンゲームの利用規約など、当事者間の合意(契約)によって定まるものと考えられます。

ブロックチェーンゲームに関する法的論点② NFTと暗号資産該当性

 NFTはビットコインなどと同様にブロックチェーン上のトークンであることから、資金決済法上の暗号資産に該当するのではないかが問題となります。
 この点、暗号資産とは、以下の( i )ないし( iii )の要件をすべて満たすもの(「1号暗号資産」)または、不特定の者との間で、1号暗号資産と相互に交換できるものであって、( ii )および( ii )の要件を満たすものをいいます(「2号暗号資産」)(資金決済法2条5項)。

( i )物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用でき、かつ不特定の者との間で購入・売却をすることができること

( ii )電子的に記録された財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができること

( iii )本邦通貨、外国通貨および通貨建資産に該当しないこと

 NFT自体に決済手段性がないと判断できる場合には、( i )物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用できるものではないことから、1号暗号資産には該当しません。
 また、NFTが不特定の者との間でビットコイン、イーサその他の1号暗号資産と相互に交換可能である場合、2号暗号資産の定義には該当するようにも思われます。もっとも、トレーディングカードやゲーム内アイテムなどのように1号暗号資産のような決済手段等の経済的機能を有していないのであれば、2号暗号資産には該当しないと考えられます。

 したがって、NFT化されたゲームアイテム等についても、決済手段性が認められないのであれば、1号暗号資産・2号暗号資産いずれにも該当しないと考えられます。

 NFTの暗号資産該当性の詳細については、第1回「3−2 NFTと暗号資産該当性」をご参照ください。

ブロックチェーンゲームに関する法的論点③ ガチャと賭博罪該当性

 従来のソーシャルゲームなどと同様、ブロックチェーンゲームにおいても、ゲーム内通貨等の対価を支払い、ランダムで希少性のあるゲームアイテム等が入手できる仕組みである、いわゆる「ガチャ」が採用される場合があります。このようなガチャの仕組みを用いてNFTを販売する場合、賭博罪(刑法185条)に該当しないかが問題となります。

 この点、「賭博」とは、①偶然の勝敗により②財物の③得喪を争う行為をいうものと考えられています。そして、①「偶然」とは、当事者において確実に予見できず、または自由に支配し得ない状態をいい、主観的に不確定であることが必要とされています。また、②財物とは、有体物または管理可能物に限らず、広く財産上の利益であれば足りることとされています。そして、③「得喪を争う」とは、勝者が財物を得て、敗者がこれを失うことを意味し、当事者の一方がこれを失うことがない場合は、「得喪を争う」ものには該当しないと解されています。

 NFTは、代替性がなくそれぞれが個性を有するトークンであり、ガチャの仕組みによりランダムで市場価値の高いNFTや低いNFTを購入することとなる場合、①「偶然」の要件を充足すると考えられます。また、NFTには財産的な価値が認められるため、②「財物」にも該当します。さらに、ガチャの仕組みにより、支払った対価よりも価値の高いNFTを入手できたユーザーは当該対価と当該価値の差額を得る一方で、支払った対価よりも価値の低いNFTを入手するユーザーは当該差額を失うことになるため、③「得喪」の要件も充足するものと考えられます。

 したがって、ブロックチェーンゲームにおいてガチャの仕組みを用いてNFT化されたゲームアイテム等を販売する場合、賭博罪に該当しないか、慎重な検討が必要となります。

ブロックチェーンゲームに関する法的論点④ キャンペーンと景品表示法

 従来のソーシャルゲームなどと同様、ブロックチェーンゲームにおいても、新規ユーザーを獲得するために、一定の条件を満たしたユーザーに対してNFT化されたゲームアイテム等を無料で配布するなどのキャンペーンを実施する場合があります。このようなキャンペーンを実施する場合、景品類の提供に関するルールを規定する景品表示法に抵触しないかを検討する必要があります。

 まず、景品表示法による規制対象となる「景品類」とは、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、③物品、金銭その他の経済上の利益をいい(同法2条3項)、「景品類」に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。

【景品表示法上の「景品類」の定義 1

景品表示法上の「景品類」の定義

 新規ユーザー獲得のためにNFT化されたゲームアイテム等を無料で配布するなどのキャンペーンを実施する場合、①顧客を誘引するための手段として、②一定の取引を条件とするなど取引に付随して、③財産的価値のある当該NFTを配布することは「経済上の利益」の提供に該当し、「景品類」の提供に該当すると考えられます。

 そして、景品表示法は、過大な景品類の提供を禁止しており、景品類の提供の態様によって、提供できる景品類の最高額や総額がそれぞれ規制されています。その概要は以下のとおりです。

【景品類の提供に係る景品類限度額】

提供方法 景品類限度額
最高額 総額
一般懸賞 商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること(「懸賞」)

(例:店舗での抽選)
取引価額が
5,000円未満
取引価額の20倍 売上予定総額の2%
取引価額が
5,000円以上
10万円
総付景品 懸賞によらず、商品・サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供すること

(例:購入者全員にプレゼント)
取引価格が
1,000円未満
200円
取引価格が
1,000円以上
取引価額の10分の2

 以上のとおり、ブロックチェーンゲームにおいてキャンペーンを実施する場合、景品表示法における過大な景品類の提供に該当しないか、個別具体的な検討が必要となることに注意するべきです。


  1. (出典)消費者庁「景品規制の概要」 ↩︎

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