ウィズコロナ、アフターコロナの法律事務所
第2回 先進的なITツールと対面コミュニケーションを併用、世界「最良」の法律事務所を目指す - TMI総合法律事務所
コーポレート・M&A
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各業界に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症。法律事務所も例外ではありません。TMI総合法律事務所は、いち早くWeb会議ツールなどのIT導入を行い、コロナ禍におけるクライアントのニーズを踏まえた対応を実施しました。
今回は、同事務所代表の田中克郎弁護士と、遠山友寛弁護士、大井哲也弁護士に、新型コロナウイルス感染症への具体的な対応策や、その背景となった考えなどを伺いました。
ITの活用推進や「アフターコロナ小冊子」の作成によりクライアントニーズへ迅速・柔軟に対応
新型コロナウイルス感染症により、働き方や案件対応へはどのような影響がありましたか。
田中弁護士:
緊急事態宣言下では、在宅勤務を原則としました。これは、TMIの30年の歴史のなかで初めてのことです。宣言が解除された6月からは、1週間単位で出勤日を1日ずつ増やし、1か月かけて通常勤務に戻していきました。第1週は1日、第2週は2日間、第3週は3日間、第4週は4日間出勤をするといった形です。ただ、持病のある家族など新型コロナウイルス感染症の重病化リスクが高いと考えられる方と同居をしている場合にはリモートワークも可能といったような個別対応もしました。
システムやITツールをいち早く整備されて、クライアントへのサービス提供を止めないよう対応されていたのが印象的です。
大井弁護士:
当事務所は、IT化で最先端を走る事務所というポリシーを早くから掲げてきました。IT化は、トップの強い意思と決断がなければなかなか進みません。当事務所では遠山弁護士がIT委員会のトップとなりIT導入を進めています。
遠山弁護士:
かねてから当事務所では、iPhoneやiPadなどの携帯端末を弁護士・弁理士に支給し、リモートワークができる体制を有していました。また今年はコロナ禍以前から、ファイアウォールの導入やVPNの整備も行っていましたので、セキュリティの観点からも在宅勤務への移行にはまったく問題がありませんでした。
さらに、いち早くTeamsやZoomなどのWeb会議システムを導入し、クライアントの希望に応じてWeb会議、リアルの面談での会議、その併用を選べる体制を整えたことで、円滑にクライアントとのコミュニケーションを取れる状態となりました。Web会議では、重要な書類や極秘の書類などを画面共有しないよう、機密情報の取り扱いについては徹底しています。
大井弁護士:
Web会議システムは機能をカスタマイズして導入しており、その点でもクライアントの機密情報管理に配慮しています。加えて、特に機密性の高い案件を取扱う案件や、クライアントのセキュリティポリシーによりWeb会議システムを利用できない案件などについてはリアル会議を設定することで対応しています。
そのほかITの活用については、案件情報の共有においてドキュメント管理システムを利用しており、類似案件やその契約書を一気通貫で検索できる体制を整備しています。
様々な法領域におけるビジネス面の変化への対応策をQ&A形式でまとめた「アフターコロナ小冊子」をクライアントへ無償配布されていると伺いました。
遠山弁護士:
この冊子は、発想から実行に至るまで、滝琢磨弁護士がリーダーとなって作成を進めました。ご覧になってわかるとおり、非常に親しみのあるデザインで、読みやすいものになっていると思います。
田中弁護士:
TMIでは非常に多岐にわたる案件に対応しており、それぞれの担当弁護士間でノウハウがシェアされています。小冊子では、これらの知見をまとめています。海外のローファームは、わりと早い時期から、新型コロナウイルスに関する諸々の法律問題について、積極的に発表していました。ただしそれらは、かなりのボリュームがあり、クライアントにとってはとっつきにくいものだったと思います。当事務所としては、それとは違う形で、読みやすく、かつクライアントのためになる情報をまとめたいと考えました。そうした意見は、皆から出てきましたね。
またこうした冊子は早く出すことに意味がありますので、スピーディに作成することも意識しました。
クライアントのニーズへ柔軟に対応していくという点では、昨年末に、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングを創業され、企業のIT化やデータ活用等もサポートなされていますね。
大井弁護士:
コロナ禍によって、契約や社内稟議の電子化が急速に進みました。ポストコロナ時代においては、DX化=企業の情報資産や業務のデジタル化がより大きな課題となることが予想されます。多くの企業はDX推進室として、会社・グループ横断で業務のIT化に取り組む部署を立ち上げていますが、まず、何から手をつけてよいかわからないというお問い合わせも増えています。TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングでは、法的観点でのアドバイスはもちろん、IT実装の側面からも企業のDX化をサポートする体制を構築しています。
当事務所は創立以来、新しいビジネスや法的課題に先進的に取り組むスタンスを貫いており、ドラスティックな変化を厭わない文化があります。クライアントに満足していただけるサービスを提供するためには何が必要かを考え、常に新しいチャレンジをするのが当事務所の特徴です。
ITを活用しながらも、対面のコミュニケーションを重視
検温器やアルコール消毒液の手配、アクリル板の整備など、感染予防策として物理的な環境整備も円滑に進められていました。
大井弁護士:
我々は、対面でのコミュニケーションの重要性も強く意識しており、ソーシャルディスタンスの確保はもちろん、会議室における物的環境の整備と、朝7:30から30分単位での、5段階の時差出勤体制といったコロナ感染防止対策を講じつつ、事務所での所内会議や勉強会も活発に開催しています。
田中弁護士:
法律事務所は、とにかくスピーディでなければいけないと思っています。弁護士業務は、何か問題が発生したら調べて解決するという、どちらかというと後追いの形が多いですが、我々は、少なくともクライアントと歩調を合わせて一緒に進んでいくことを第一に考えています。
東日本大震災のときにもいち早く被災地へ足を運び、クライアントにお願いして店舗の一角を借り、無料法律相談所を運営していました。今回、検温器やアクリル板などを迅速に手配できたのも、普段からのクライアントとのお付き合いがあったからこそです。クライアントが持っているノウハウを伺ったり、時には利用させていただいたりできる関係性も、変化に対してスピーディに対応できる要因であり、当事務所の強みだと考えています。
若手弁護士への教育などについてはどのように対応されましたか。
田中弁護士:
緊急事態宣言時は大部分をリモートで行っていましたが、現在は原則、対面で実施していますね。ただし、先のとおり、家庭の事情がある人たちはオンラインで参加できるようにしています。
遠山弁護士:
ただやはり、顔を合わせることの重要性も認識しています。オンラインでは、身振り手振り、目つきなどを詳細に把握することが難しく、会話のクオリティはどうしても落ちてしまいますし、対面でのディスカッションに比べて、反応も遅くなってしまいます。対面では10分で終わるような会話が、オンラインだと30分かかってしまうこともあります。
大井弁護士:
お客さまとの間でも、弁護士間でも、やり取りはリアルのほうがやはりスムーズですね。オンラインのデメリットは、論点やアジェンダ以外の余談がなくなってしまうことだと思います。お客さまとの距離は、議論の余白の部分でのコミュニケーションで縮めていけると考えていますが、それをオンラインで行うのは難しいですね。
田中弁護士:
私は企業の取締役会などにオンラインで出席していますが、そこでもわりと淡泊な議論になりがちです。しかし、我々弁護士の仕事の基本は、クライアントとお会いして「本当にそうなんですか?」と問い、真の要望は何なのか、もっと良いアイディアはないか考えることです。これが、オンラインではやりづらいところがあると思います。
リアルなコミュニケーションがとれないなかで、クライアントとの信頼関係を築き、ニーズや課題を引き出すために工夫されたことはありますか。
遠山弁護士:
オンラインでの会議を行う場合は、可能な限り事前にいろいろな資料をいただいて、説明を受けておきます。
大井弁護士:
オンラインでは、よりこまめに、密にお客さまとの接点を持たなければ共通認識ができないと感じていますので、会議数は増えましたね。
田中弁護士:
ウィズコロナ、ポストコロナの時代に、法律事務所の形態をどう変えていくべきかをずっと考えています。当事務所としては、基本的には対面でのコミュニケーションを守り続けたいですが、オンラインの良さも当然生かしていきたいと思っています。子育て中のメンバーなど、リモートワークのほうが活躍できる方もいますので、彼らが気兼ねなく、生き生きと仕事ができるような環境や組織をつくっていきたいですね。オンラインでできる業務のカテゴリを整理し、「オンライン事業部」のような組織を立ち上げることも構想しています。そうすることで、様々な働き方のメンバーが安心して業務に取り組めると思っています。
なぜ、世界「最良」の法律事務所を目指すのか?
TMI総合法律事務所では「世界最良」の法律事務所を目指すことを掲げられています。田中先生の考える「世界最良」とは何か、教えていただけますか。
田中弁護士:
まだまだ夢の話ですが、やはり欧米のトップローファームに並ばなければいけないと思っています。弁護士の数や事務所の規模だけを大きくしようと思えば、やり方によっては簡単にできます。だからこそ、「最良」を目指すのです。「最良」を目指すには、毎日、毎年、人間の格や品性、能力まで含めていろんな意味でレベルを上げていかなければならないですし、際限がありません。しかし、極限までいけば「最良」のものになるはずです。TMIという事務所には、「最良」を極められる環境が整っていると考えています。
遠山先生、大井先生はTMI総合法律事務所の今後のビジョンについてどのように考えていますか。
遠山弁護士:
コロナ禍を経験したことで、これからは人の繋がりがより重視される時代になっていくのではないかと感じています。だからこそ、コミュニケーションの価値が大事になりますし、それが今後数十年たってもかわらない事務所の強みになると考えています。
そして今後はやはり、グローバルな発想が必要です。今は、積極的に出張ができない状態ですが、マインドは常に外を向いていなければなりません。これからは「私は日本語と日本の法律しかできません」と言っていられる時代ではなくなると思います。お客さまのニーズがそうなってきていますからね。
大井弁護士:
TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング(https://tmiconsulting.co.jp)の事業を通じ、今まで法律事務所がきちんと向き合ってこなかった、ビジネスの企画段階という上流工程にも関わることで、上流から下流までサポートしていく戦略を考えています。特に、プライバシーとセキュリティの分野にフォーカスして、システム化・IT実装の段階にも関与していくことで、他のどの事務所にもないようなサービスを提供していきたいと思っています。
(文:周藤 瞳美、写真:弘田 充、取材・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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