「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第30回)を開催

コーポレート・M&A

目次

  1. フォローアップにあたり新たに公表された資料
    1. 「スチュワードシップ活動の実態に関する調査」
    2. 「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」
  2. 今後の方向性の概要

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.231」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 6月2日、金融庁は「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第30回)(以下、「本会議」)を開催しました。

 本会議資料2「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024のフォローアップと今後の方向性について(案)」(以下「本会議資料2」)では、①稼ぐ力の向上、②情報開示の充実・投資家との対話促進、③取締役会等の機能強化、④市場環境上の課題の解決、⑤サステナビリティを意識した経営、の5つの観点から、コーポレートガバナンス改革の深化に向けたこれまでの取組みのフォローアップと今後の方向性がまとめられています。特に、今後の方向性ではコーポレートガバナンス・コードの見直しや有価証券報告書の記載事項の見直し等も提言されており、今後の動向が注目されます。

フォローアップにあたり新たに公表された資料

 本会議では、「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024」で示された今後の方向性を踏まえ、「スチュワードシップ活動の実態に関する調査」(前述②関連資料)、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」(前述③関連資料)が新たに公表されました。

「スチュワードシップ活動の実態に関する調査」

 本資料は、機関投資家のスチュワードシップ活動の実質化に向け、「アセットオーナー」「運用機関」「議決権行使助言会社」を中心に、スチュワードシップ活動の実務等についてヒアリングを行った結果を集約・分析したものです。エンゲージメントの実態については、コーポレートガバナンス改革に前向きに取組む企業18社に対してもヒアリングを行っており、投資家・企業双方の意見がまとめられています。
 結果概要は以下の通りです。

(出所)本会議資料4

「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」

 本資料は、コーポレートガバナンス改革に前向きに取組む企業18社に対し、取締役会の機能強化に向けた取組みをヒアリングし、その結果を集約・分析したものです。機能強化の取組みについて、主にアジェンダセッティング、環境整備、関係者間のコミュニケーションの深化の観点から具体的取組み事例が掲載されており、結果概要は以下の通りまとめられています。

(出所)本会議資料5

今後の方向性の概要

 本会議資料2では今後の方向性について、企業の担当者や様々な関係者が実務上の課題やそれへの対応を議論・共有する場の立ち上げに加え、「取締役会の実効的な監督や更なる開示の促進」や「有価証券報告書の総会前開示の取組促進」を目的としたコーポレートガバナンス・コードの見直しや、「人的資本への投資に関する開示の充実」等を目的とした有価証券報告書の記載事項の見直し等が提言されています。
なお、主にコード見直しについては賛成意見もあれば、形式主義の助長を懸念する意見もみられており、今後はこれらの意見を踏まえた検討が進められる見込みです。

① 稼ぐ力の向上
  • 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた企業の取組や、企業と投資家の対話促進を後押し
  • 持続的な成長の実現に向けた経営資源の最適な配分の実現のため、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識した取締役会の実効的な監督や更なる開示が促進されるよう、以下の点にも留意しつつ、コーポレートガバナンス・コードの見直し等を検討

    ・知的財産等の無形資産への投資については、コーポレートガバナンス・コードと整合的な取組の促進に向け、引き続き関係機関との連携や事例の共有を進める

    ・人的資本への投資に関する開示を充実させる観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記載事項を集約するとともに、新たに企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等の開示を求める

    ・経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding問題)の検証・説明責任の明確化を検討

② 情報開示の充実・投資家との対話促進
  • 建設的な対話の更なる促進のためのスチュワードシップ活動の質の向上や投資家との目線の合った情報開示の充実に向け、企業と投資家の議論の場を設け、「スチュワードシップ活動の実態に関する調査」で共有する事例を更に充実させる等、取組事例の収集・共有を継続
  • 総会前開示に係る要請を受けた企業の対応状況を有価証券報告書レビューによりフォローアップ、また上場企業の総会前開示の取組を更に促すべく、コーポレートガバナンス・コードの見直し等を検討
  • 企業による株主総会前の適切な情報提供の取組が容易となるよう、株主総会資料の書面交付の不要化・電子化を含めた株主総会に係る法制面の整理等の推進策について、関係省庁(法務省・経済産業省)との連携を進める
  • 投資判断への有用性と企業負担のバランスに配慮する観点から、有価証券報告書の記載事項の整理(スリム化含む)を検討
③ 取締役会等の機能強化
  • 企業の担当者や様々な関係者が実務上の課題やそれへの対応を議論・共有する場として、「コーポレートガバナンス実践コンソーシアム(仮)」を立ち上げ、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」で共有する事例を更に充実させる
④ 市場環境上の課題の解決
(1)政策保有株式
  • 引き続き、政策保有株式の開示(株式の保有目的変更を含む)に関する課題や開示例等を分析・公表
  • 政策保有株式を売らせないように圧力をかけている事例が見られることについては、有価証券報告書レビューの記載も踏まえ、引き続き、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に照らした実務となるよう、対応を検討
(2)大量保有報告制度
  • 違反行為への抑止力を高める観点から、大量保有報告制度違反の課徴金額の水準引上げを検討
  • 今般の内閣府令改正(大量保有報告書を適切に提出せずに公開買付を開始するような事例を防止すべく、公開買付届出書の記載事項を見直し、「大量保有報告書等の提出状況」の記載欄を新設)を踏まえ、引き続き必要な施策を検討・実施
(3)親子上場等
  • 東証において、グループ経営や少数株主保護に関する検討・開示を推進。上場子会社や持分法適用関連会社の独立社外取締役の独立性確保等、少数株主保護の観点から必要な上場制度の整備についても検討
⑤ サステナビリティを意識した経営
  • 「コーポレートガバナンス実践コンソーシアム(仮)」において、引き続き事例を収集し、関係者間で共有し底上げをはかる
  • 虚偽記載等の責任の範囲を明確化し、その責任を問われるリスクの低減を図ることは、企業の積極的な情報開示を促すことになるものと考えられるため、サステナビリティ情報を含む非財務情報の虚偽記載等に対する責任のあり方の検討(セーフハーバー・ルールの整備)を行う
  • サステナビリティ開示に関し、ISSBにおいて新たにリサーチプロジェクトが始まる人的資本の分野につき、投資家のニーズを充足した基準開発に貢献すべく、国内の関係者と連携しながら、国際的な議論への参画や意見発信等を進める
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務グループ
03-6747-0307(代表)

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