事業者の盲点となりやすい化学物質の製造・輸入・保管等の規制のポイント(PCB、トリクロロエチレン等の主要規制を例に)

資源・エネルギー

 メーカーである当社グループでは、油やシーリング材、洗浄液などにポリ塩化ビフェニル(PCB)やトリクロロエチレン、またこれらを含有する廃棄物を取り扱っています。これらを製造・輸入したり、保管、排出することがあるのですが、どのような法的規制があるのでしょうか。

 ポリ塩化ビフェニル(PCB)やトリクロロエチレンについては、化審法や化管法(PRTR制度)、PCB特別措置法、その他廃掃法、土壌汚染対策法など様々な規制があり、定期的な報告・届出を行う義務等も課されています。これらの義務に違反すると罰則が科される場合もあるほか、行政処分の対象にもなります。また、各都道府県・市区町村の条例において、化管法の上乗せ規制がなされている場合があるので、注意が必要です。

解説

目次

  1. はじめに(事業者に対する化学物質規制)
  2. 化審法による規制
    1. 法の概要
    2. 化学物質ごとの届出制度
    3. 行政処分等
    4. 罰則
  3. 化管法による規制(PRTR制度:2023年改正対応)
    1. 法の概要
    2. PRTR制度の対象事業者
    3. 化学物質の排出量等の算出・届出
    4. 罰則
    5. 条例の留意点
  4. PCB特措法による規制(2022年改正対応)
    1. 法の概要
    2. 各届出書の記入事項(主なもの)
    3. 罰則
    4. 条例・指導要綱の留意点

はじめに(事業者に対する化学物質規制)

 近時、脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現に向けた規制、その他環境有害物質・廃棄物・温室ガス等についての様々な法令・条例等が次々と制定・大幅改正されています。
 もっとも、環境関連法令だけでも40を超える法令が存在するほか、各自治体(都道府県のみならず市区町村も)の条例・指導要綱等による別途の規制が存在しており、それらの内容を網羅的に把握すること、頻繁に行われる改正に適時に対応することは極めて困難です 1
 以下では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)やトリクロロエチレンを例に、主要な法規制についてその概要を解説します。

化審法による規制

法の概要

 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」といいます)は、新規の化学物質の製造または輸入に際し事前にその化学物質の性状に関して審査する制度を設けるとともに、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行っています。
 化審法における対象化学物質は、以下のとおりです(なお、対象物質は適宜更新がなされていることから、留意してください)2

化学物質 概要
第一種特定化学物質
  • PCB(ポリ塩化ビフェニル)など34物質
  • ヒト等への長期毒性(難分解性・高蓄積性)を有する化学物質
第二種特定化学物質
  • トリクロロエチレンなど23物質
  • 人や環境等への毒性(難分解性でない物質含む)や残留性があり、リスクが高いとされる物質
監視化学物質
  • 酸化水銀 Ⅱ など41物質
  • 難分解性かつ高蓄積性であり、人または高次捕食動物に対する長期毒性が明らかでない物質
優先評価化学物質
  • 218物質 3
  • 人・生活環境動植物への長期毒性を有する可能性が否定できず、被害を生ずるおそれがあるかどうかについての評価(リスク評価)を優先的に行う必要があるとして指定された物質
一般化学物質
  • およそ2万8000物質
  • 第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、監視化学物質、優先評価化学物質、新規化学物質以外の化学物質
  • ・既存化学物質

    ・新規公示化学物質

  • 一般化学物質のうち、継続的に摂取される場合には人の健康を著しく損なうおそれ等があるものを特定一般化学物質といいます
新規化学物質
  • 官報で名称が公示されていない、もしくは政令で指定されていない化学物質

化学物質ごとの届出制度

 以下においては、各規制について規制物質ごとに説明します。なお、本稿では詳細を説明しませんが、第一種特定化学物質を製造・輸入する者は経済産業大臣の許可が必要となることから留意が必要です。

(1)第二種特定化学物質

 第二種特定化学物質の製造・輸入者および第二種特定化学物質使用製品の輸入者は、製造・輸入予定数量/実績数量等について、経済産業大臣への届出を行う必要があります。
 厚生労働大臣、経済産業大臣および環境大臣は、製造、輸入、使用の状況などからみて、環境汚染を通じて人の健康被害等を生ずることを防止するために必要があると認めるときには、届出に係る製造・輸入予定数量の変更を命じることができます。

(2)監視化学物質

 年間1kg以上の監視化学物質を製造・輸入した者は、毎年度、経済産業大臣に対して、製造・輸入数量や具体的用途等の届出を行う必要があります。

(3)優先評価化学物質

 年間1t 以上の優先評価化学物質を製造・輸入した者は、毎年度、経済産業大臣に対して、製造・輸入数量や具体的用途等の届出を行う必要があります。

(4)一般化学物質

 年間1t 以上の一般化学物質(新規化学物質の審査の判定結果を受けた物質も同様)を製造・輸入した者は、毎年度、経済産業大臣に対して、製造・輸入数量や具体的用途等の届出を行う必要があります。
 なお、届出不要物質(2022年3月1日公開)については、経済産業省のウェブサイトを参照してください 3

行政処分等

 主務大臣は必要があると認めるときは、取扱事業者に対して取扱方法に関し必要な指導および助言を行うことができるほか、各化学物質等の許可製造事業者、許可輸入者、取扱事業者等に対して、業務に関する報告徴収、立入検査を行うことができます。

罰則

 次の事業者が届出をせず、または虚偽の届出をした場合には、罰則として30万円以下の罰金が科されます(両罰規定あり)。

  • 第二種特定化学物質を製造・輸入した者または第二種特定化学物質使用製品を輸入した者
  • 優先評価化学物質を製造・輸入した者
  • 監視化学物質を製造・輸入した者

 一般化学物質を製造・輸入した事業者が届出をせず、または虚偽の届出をした場合には、罰則として20万円以下の過料が科されます。

化管法による規制(PRTR制度:2023年改正対応)

法の概要

 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」といいます)は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的として規制を行う法律です。
 化管法は、以下の2つがその柱となります。

  1. 人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量・廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が自ら把握、届出をする制度(PRTR制度

  2. 指定された化学物質・含有製品を他の事業者に譲渡・提供する際に、化管法SDS(安全データシート)により、当該化学品の特性および取扱いに関する情報を提供することを義務づけるとともに、ラベルによる表示に努める制度(SDS制度

 人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質として、第一種指定化学物質(462物質。令和5年4月1日から計515物質)が指定されています。
 そのうち、発がん性、生殖細胞変異原性、生殖発生毒性が認められる15物質(令和5年4月1日から23物質)が「特定第一種指定化学物質」として指定されています。
 なお、規制対象物質は頻繁に改正・変更されることから、後述する届出義務等の適用対象や時期等には注意してください。

第一種指定化学物質の例
揮発性炭化水素 ベンゼン、トルエン、キシレン等
有機塩素系化合物 ダイオキシン類、トリクロロエチレン等
農薬 臭化メチル、フェニトロチオン、クロルピリホス等
金属化合物 鉛およびその化合物、有機スズ化合物等
オゾン層破壊物質 CFC、HCFC等
その他 石綿、PCB(ポリ塩化ビフェニル)等

 トリクロロエチレン・ベンゼン・鉛は土壌汚染対策法 4、ダイオキシン類はダイオキシン類対策特別措置法、石綿(アスベスト)5 は大気汚染防止法・廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)6・労働安全衛生法、石綿障害予防規則等、PCB(ポリ塩化ビフェニル)はPCB特措法(詳細は後述)、フロン類(CFC、HCFC)はフロン排出抑制法の対象であり(これらに限りません)、各化学物質が別途の規制にも服することに注意すべきです。
 これに対して、第二種指定化学物質は、PRTR制度の対象物質ではなく、SDS制度のみの対象物質となります。
 以上は、2021年に改正がなされたほか、適宜変更がなされていることから、留意してください。

PRTR制度の対象事業者

 PRTR制度の対象事業者は、次の①~③の要件すべてに該当する事業者となります。

  1. 対象業種として政令で指定している24種類の業種に属する事業を営んでいる・金属鉱業、原油・天然ガス鉱業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、下水道業、倉庫業、石油卸売業、燃料小売業、自動車整備業、一般廃棄物処理業、医療業等

  2. 常時使用する従業員の数が21人以上
    ・本社および全国の支社、出張所等を含め、全事業所を合算した従業員数が21人以上の事業者

  3. いずれかの第一種指定化学物質の年間取扱量が1t 以上(特定第一種指定化学物質は 0.5t 以上)の事業所を有する、または、他法令で定める特定の施設(特別要件施設)を設置している
    ・上記①・②とは異なり、事業所単位で判断される
    ・年間取扱量:対象物質の年間製造量と年間使用量を合計した量

    ・特別要件施設:鉱山保安法に規定される特定施設、下水道終末処理施設、廃掃法に規定される一般廃棄物処理施設・産業廃棄物処理施設、ダイオキシン類対策特別措置法に規定される特定施設等

化学物質の排出量等の算出・届出

 対象事業者は、第一種指定化学物質の環境(大気・公共用水域・土壌)へ排出される量(排出量)および対象物質を含む廃棄物が事業所外へ移動される量(移動量)を個別事業所ごとに算出し、都道府県経由で事業所管大臣に届出を行う必要があります。
 具体的には、次の方法により把握を行うことになります。

  • 物質収支による方法
  • 実測による方法
  • 排出係数による方法
  • 物性値を用いた計算による方法
  • 上記の方法以外に、より精度よく算出できると思われる経験値等を用いた方法

出典:経済産業省、環境省「PRTR排出量等算出マニュアル」第4.2版第I部基本編

出典:経済産業省、環境省「PRTR排出量等算出マニュアル」第4.2版第I部基本編

 経済産業大臣・環境大臣は、請求があった場合は個別事業所の届出データ等を開示する義務があります。これによって届け出た内容が開示されることになりますので、留意してください。

罰則

 PRTR制度の届出対象となる事業者が届出をせず、または虚偽の届出をした場合には、罰則として20万円以下の過料が科されます。

条例の留意点

 なお、各都道府県・市区町村の条例において、化管法の上乗せ規制がなされている場合があるので、注意が必要です。たとえば、東京都環境確保条例・東京都化学物質適正管理指針や大阪府生活環境の保全等に関する条例(大阪府化学物質管理制度)においては、規制基準や届出対象等が大きく異なる(独自の規制対象物質があり、移動量・排出量以外にも届出が必要となるなど)ので特に注意が必要です。2

PCB特措法による規制(2022年改正対応)

法の概要

 「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(以下「PCB特措法」といいます)は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物(PCB廃棄物)の保管、処分等について必要な規制等を行う法律です 7

 その事業活動に伴ってPCB廃棄物を保管する事業者(保管事業者)・PCB廃棄物の処分をする者(処分事業者)等は、毎年度、高濃度PCB廃棄物の保管および処分の状況に関して保管場所その他の環境省令で定める事項を、都道府県知事に届出をする必要があります。

 主な要届出事項等は、以下のとおりです。

届出等の実施者 実施時期
PCB廃棄物の保管事業者または高濃度PCB使用製品の所有事業者 前年度の保管等の状況について、その次年度の4~6月
PCB廃棄物の処分業者 前年度の保管等の状況について、その次年度の4~6月
PCB廃棄物の保管事業者または高濃度PCB使用製品の所有事業者又はPCB廃棄物の処分業者 保管の場所または所在の場所を変更した日から10日以内
高濃度PCB廃棄物の保管事業者 保管の場所を変更する場合
PCB廃棄物の保管事業者または高濃度PCB使用製品の所有事業者 高濃度PCB廃棄物の処分または廃棄が完了した日から20日以内
PCB廃棄物の保管事業者または高濃度PCB使用製品の所有事業者(地位の承継を受けた者) 承継があった日から30日以内
PCB廃棄物の保管事業者または高濃度PCB使用製品の所有事業者(譲受者) 譲り受けた日から30日以内

 なお、高濃度PCB廃棄物を保管する事業者は、その種類や保管場所が所在する区域ごとに、処分期間内に自らまたは業者に委託して適切に処分することが義務づけられています。2022年5月31日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」が改定され、処理の完了時期が実質的に延長されることが公表されたことにより、2022年3月末~2026年3月末までの間に適切に処理を実施する必要があります(対象地域と期限については注意して確認してください)。

各届出書の記入事項(主なもの)

 主な要届出事項等としては、保管場所・所在場所、廃棄物の種類・製品の種類、廃棄物の型式等(定格容量(数値と単位も含む)、高濃度PCB廃棄物の処分予定年月、量(台数または容器の数・総重量)、区分(高濃度・低濃度 8・不明)、保管状況(容器の性状等)、処分業者との調整状況(高濃度PCB廃棄物)等です。

罰則

 保管事業者は、保管や処分の状況に関する届出を行わなかった場合や虚偽の届出を行った場合、届け出た保管の場所を変更した場合には、6月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます(両罰規定あり)。
 PCB保管事業者について相続・合併・分割があった場合の届出を行わなかった場合や虚偽の届出を行った場合は、30万円以下の罰金が科されます(両罰規定あり)。

条例・指導要綱の留意点

 なお、各自治体において、条例や指導要綱等において別途の規制がなされている場合があるので、注意が必要です(横浜市ポリ塩化ビフェニル廃棄物適正管理指導要綱、愛知県PCB多量保管事業者に係るPCB廃棄物処理計画策定指導要領等)。


  1. なお、本稿に関連し、猿倉健司「環境リスクと企業のサステナビリティ(SDGs・ESG)」(牛島総合法律事務所特集記事)、猿倉健司「事業会社の盲点になりやすい環境有害物質・廃棄物・温室ガス等の規制(個別規制編)」(Business & Law)もご参照ください。 ↩︎

  2. 条例改正対応におけるリスクや留意点と、条例管理をサポートする『条例アラート』」(BUSINESS LAWYERS・2022年7月14日)も参照してください。 ↩︎ ↩︎

  3. 経済産業省「届出不要物質の指定に関する公示」(2022年10月3日最終閲覧)。なお、届出不要物質一覧(令和4年3月31日)も参照してください。 ↩︎ ↩︎

  4. 猿倉健司「土壌汚染の報告・調査義務が生じる場合と義務を負う者 – 2019年改正土壌汚染対策法対応」(BUSINESS LAWYERS・2020年8月21日)も参照してください。 ↩︎

  5. 猿倉健司「不動産・M&A取引におけるアスベスト・石綿のリスクと実務上の留意点(2020年法改正対応)」(BUSINESS LAWYERS・2020年9月28日)も参照してください。 ↩︎

  6. 牛島総合法律事務所ニューズレター・猿倉健司「廃棄物のリサイクルを目的とする処理(廃棄物処理)の実務的な留意点」も参照してください。 ↩︎

  7. その他の規制内容等については、井上治・猿倉健司「所有地にPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物がある場合にとるべき対応(2022年改正対応)」(BUSINESS LAWYERS・2022年8月31日)、猿倉健司「PCB廃棄物(ポリ塩化ビフェニル廃棄物)処理の実務上の留意点(2022年改正対応)」(牛島総合法律事務所ニューズレター)も参照してください。 ↩︎

  8. 高濃度PCBにあたる廃棄物は、①PCB原液、②PCBを含む油(廃棄物(PCBを含む油)に含まれているPCBの重量の割合が、0.5%を超えるもの)、③汚泥・紙くず・木くず・繊維くず・その他PCBが塗布されまたは染み込んだ物(廃棄物(可燃性廃棄物)のうちPCBの含まれている部分におけるPCBの重量の割合が1kgにつき100000mgを超えるもの)、④金属くず・ガラスくず・陶磁器くず・工作物の新築、改築もしくは除去に伴って生じたコンクリートの破片(廃棄物に付着し、または封入されたPCBの割合が1kgにつき5000mgを超えるもの)などをいいます。 ↩︎

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